2020年“いつもと違う夏”の生活者行動を振り返る
コロナ禍で迎えた夏は異例の夏でした。第2波の到来によって、行動が制限されたり、一斉休校による授業の遅れを取り戻すべく子供たちの夏休みが短縮されたり。
また、新型コロナウイルスとは関係ないところでも、7月の長雨、8月の猛暑と記録的な天候不順が起き、生活者に影響を与えました。
そんな“いつもと違う夏”の、いつもと違う行動を追いました。
この夏の特徴は?
改めてこの夏を振り返ってみましょう。
Point① 第二波到来、連休なのに外出自粛
東京五輪のため、特別シフトが組まれていた7月の4連休。ただ、6月の終わり頃から東京を中心に新規感染者数が増えはじめ、4連休を前に始まったGo To トラベルキャンペーンから、東京は除外扱いとなりました。
その後、他の地域にも感染が拡大し、各知事が不要不急の外出や飲み会の自粛を要請するなど、Go To トラベルキャンペーンと自粛ムードが交錯する夏となりました。
8月の東海道新幹線の利用客は75%減(JR東海発表)と、お盆に帰省や旅行をせず自宅で過ごした方も多かった模様です。
Point② 子どもの夏休み短縮
2月末に始まった一斉休校による授業の遅れを取り戻すため、多くの学校が夏休みを短縮。 最短で9日間という学校もみられ、子供たちもいつもの夏とは違う生活を過ごしました。
Point③ 7月の長雨、8月の猛暑
7月には九州や東海・東北の一部地域での豪雨災害が発生。また関東甲信では7月中に梅雨が明けないなど、長梅雨となりました。長雨と日照不足の影響に加え、コロナ禍で内食需要が伸びていることもあり、野菜が軒並み値上がりし、家計に影響を与えました。
8月の平均気温は東日本で平年差+2.1℃、西日本で同+1.7℃と、共に8月としては観測史上1位の高温となり、記録的な暑さに。さらに、コロナ対策で夏でもマスクをする人が多く、例年以上に堪える暑さとなりました。
例年であれば花火大会やお祭り、お盆の帰省など大型イベントが目白押しのところ、軒並み自粛・中止となったのも、いつもと大きく違う点です。夏ならではの外出が減り、ステイホームの機会が増えたこの夏、生活者の行動はいつもとどう違っていたのでしょうか。
この夏の買い物行動 ネット通販利用は進んだ?
はじめに、生活者の日常の買い物(食品・日用雑貨品・化粧品・医薬品のいずれかを含む買い物)がどう変化したのか、インテージのSCI®レシートデータで見てみましょう。図表1はリアル店舗・ネット店舗の全業態を合わせた買い物全般と、感染防止の観点で推奨されているネット通販での買い物の、総買い物金額の変化です。(図表1)
図表1
全国一斉休校が発表され、日本国内での感染拡大が実感され始めた2月24日週から夏にかけて、日常の買い物にかける金額は継続的に“コロナ前”を上回っていることがわかります。
また、ネット通販での買い物金額は、大幅に“コロナ前”を上回っていました。ただし、ネット通販の伸びは通常の夏休み期間に入った後、少し落ち着きを見せています。
このとき、買い物行動がどう変わっていたのか、「買い物の回数」と「1回に買い物する金額」をそれぞれ追ったのが図表2です。
図表2
全業態計でみると、買い物の回数を減らし、1回の買い物でまとめ買いしている様子が見てとれます。この動きは、緊急事態宣言下で顕著に見られますが、夏にかけても続いています。
一方、ネット通販では、買い物の回数が増えており、コロナ禍で利用機会が増えている様子がわかります。
図表3は、このネット通販での買い物金額が去年と比べてどうだったのかを比較したものです。
図表3
2019年の動きからわかる様に、本来夏休み、特にお盆は帰省や旅行で留守にすることが多く、ネット通販での買い物金額が減ります。対して今年の夏は、お盆に特に減るという動きは見られませんでした。夏の帰省や旅行が自粛され、移動する場合もお盆期間の集中を避けて分散した結果だと考えられます。
この夏の買い物行動 ネット通販で何を買った?
コロナ禍で利用機会が増えたネット通販。特にどのようなものが買われるようになったのでしょうか。図表4は各買い物チャネルでの、この夏の買い物量の前年比を、商品分類別に比較したものです。
図表4
全業態計では、食品、雑貨が特に伸び、化粧品の買い物金額が減っていました。在宅時間が伸び、食品や雑貨の家庭内での消費機会が増えた一方、化粧品の使用機会が減った結果が表れています。
ネット通販は化粧品含め、どの商品分類も前年より買い物金額が増えていました。特に食品の伸びが目立っています。買うモノの幅も広がってきていると言えそうです。
では、ネット通販で伸びたのは具体的にどのようなモノなのかを見てみましょう。
図表5はネット通販で買い物金額の前年比が伸びたカテゴリーのランキングです。
図表5
食品で目立つのは、お菓子やつまみ類の伸び、そして調理が簡便な食材の伸びです。
飲料でワインが伸びていることからも、家呑み需要でのネット通販利用が増えたと考えられます。また、野菜ジュースの伸びには、この夏の野菜高騰も影響していそうです。
雑貨で目立つのは、衛生関連用品の伸びです。在宅時間が増えた今年の夏、居住空間をキレイにするための買い物も増えたようです。また、育毛トニックやトリートメント、ヘアーカラーが伸びているのは、感染が気になって、なかなか美容院に行けない分のケアを自分でするためと考えられます。
再びの外出自粛、この夏の内食事情は?
ここからは、この夏の内食事情を振り返ってみましょう。図表6は、これまでの内食率の変化です。
図表6
緊急事態宣言解除後、通勤や登校など徐々に外出する機会が戻ってきたことで、内食率も下がってきていますが、この夏もコロナ前の水準と比べて高いままであることがわかります。
図表7は2020年7月、8月それぞれの内食率を2019年と比較したものです。
図表7
朝昼夕を合わせた全食場面の内食率は、7月、8月共に対前年で4~5ポイントの増加がみられました。昼食だけでみると、7~8ポイント増加しています。感染の再拡大や夏休みの短縮にともなう外出自粛や帰省・旅行の機会減少の他、引き続き在宅勤務が継続していることの影響を受けて、昼食を中心に家で食事を摂る機会が増えていたことがわかります。
家で摂る機会が特に増えた昼食。調理法やメニューにも変化が生じているのでしょうか。図表8は昼食時の調理法の構成比を2019年の7,8月と比較したものです。
図表8
手作りが減少した一方で、冷凍やインスタント、チルドや惣菜といった調理済み素材の利用が増加していました。
さらなる出現率が増えたメニューについて見てみると、「弁当」の利用や、「焼きそば」など手間のかからない麺類、「ピザ」「フライドポテト・ハッシュドポテト」のような子供が好きそうなメニューが並びました。(図表9)
図表9
昼食を家で摂る機会が増える中、弁当や総菜などを活用しながら簡便に食事を済ませる人が増えたようです。
この夏の買い物行動、内食行動には在宅時間が増えた影響が表れていました。そして秋、東京都の警戒レベルが1段階下げられ、9月の4連休には空港や観光地がにぎわうなど、巣ごもりの反動もあってか徐々に「特別な外出」の機会は増えてきています。一方で、日常の生活はどう変わっていくのか、知るGalleryでは今後もWithコロナの生活者の行動を追っていきます。
転載・引用について
◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」
◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら