
人の流れは、そのエリアの特性を映し出します。
このシリーズでは、特定のエリアの人の流れを、データで見ていきます。
今月は京成電鉄の沿線エリアに注目します。
コロナ前と比べて、まちの顔はどのように変わってきているのでしょうか。
京成電鉄は千葉県市川市に本社をおき、上野‐成田空港間を結ぶ本線・成田スカイアクセスをはじめとする7路線・91駅、総延長178.8kmの鉄道網を運営する、首都圏の主要私鉄のひとつです。2025年4月に子会社であった新京成電鉄を吸収合併、京成松戸線として支線に加えることで、総延長距離では国内で第5位の私鉄となりました。 鉄道のほかバス・タクシーなどの公共交通機関を子会社に持つとともに、東京ディズニーリゾートを経営する株式会社オリエンタルランドの筆頭株主でもあります。鉄道区間としては1912年開業の押上‐市川間等を端緒に船橋・千葉方面および本来の目的地である成田への延伸を進め、現在では23区東部から千葉県北西部にわたる広域をカバーしています。 今回の分析では、7路線の全91駅についてそれぞれ駅をおおむね中心とする1km四方を駅周辺エリアと定義し、モバイル空間統計によるエリア滞在者の総数および性年代別・居住地別内訳を、路線別に合算集計したものをご紹介します。 |
はじめに、2024年10月の平休日・14時台での路線別エリア滞在者数を、コロナ前の2019年10月と比較してみました。
主要幹線である京成本線が平休日ともに全体の4割程度を占めている状況はコロナ前と変わらずですが、京成沿線全体ではコロナ前と比較して平日で0.3%、休日で1.5%と、休日の増加率の方がやや高くなっています。支線である押上線・金町線や今春経営統合された松戸線など、都心への通勤アクセスに利用される各路線では平日の伸び率の方が高く、千葉市周辺を走る千葉線・千原線や成田スカイアクセス(成田空港線)では休日の伸び率が高い、という傾向がみてとれます。
下表は、同じくコロナ前の2019年と2024年での14時台の滞在者の増減数および増減率を駅別に比較したものですが、増減率では平休日ともに京成高砂駅がトップとなっています。
平日では京成高砂に近い堀切菖蒲園のほか、鬼越・京成八幡・東中山など市川‐船橋間の駅が上位に来ているのに対して、休日では、都心への結節点である京成上野を除くと、京成船橋や千葉中央・京成千葉など千葉県内の繁華街で滞在者人口が顕著に増加している様子がわかります。
各路線ごとの時間帯推移をみてみると、平日・朝夕の通勤時間帯にピークタイムが出現しているのは京成本線と成田スカイアクセスで、松戸線と押上線・金町線は日中がボトムとなるいわゆるベッドタウン型、千葉線・千原線は日中に滞在者数が増加する中心市街地型の特徴を示しています。
一方休日では、各沿線とも時間帯による変動幅が比較的小さくなる中、成田スカイアクセスと千葉線・千原線は日中に滞在者数がやや増加している傾向にあります。
2024年10月、14時台での性年代構成をみると、平休日ともに、路線間での差異は±3%以内でほとんどない状況ですが、千葉線・千原線では若年層、松戸線・押上線・金町線ではシニア層の割合がやや高めなのと、成田スカイアクセスで30-40代の割合がやや高めといえそうです。
また休日は30代までの若年層の構成比が若干高くなり、60代以上の構成比が低くなるのも全路線に共通の特徴です。
2024年10月、14時台での沿線滞在者の居住地分布をみると、沿線全体としての1都3県外からの流入はわずかに4-5%程度で、平休日とも地元や近距離移動の利用者が中心であることがわかります。都道府県別でみると、京成本線は千葉在住者が5割強、東京在住者が4割弱を占めています。松戸線・千葉線・千原線では千葉在住者が9割以上、押上線・金町線では東京在住者が8割強、といった状況です。成田スカイアクセスは、成田空港への直通ラインという性格から、東京5割・千葉3割で埼玉+神奈川と1都3県以外が約1割ずつ、という構成になっています。
市区町村別の滞在者数をみると、平休日とも上位10市区町村までの顔ぶれはほぼ同じですが、5年前からの伸び率が10%以上と特に大きかったのは以下の市区町村となっています。
・滞在者数の居住地 上位10市区町村
平日:船橋市、葛飾区、松戸市、市川市、千葉市中央区、習志野市、荒川区、墨田区、足立区、千葉市花見川区
休日:船橋市、葛飾区、松戸市、市川市、千葉市中央区、習志野市、荒川区、墨田区、鎌ヶ谷市、千葉市花見川区
・5年前からの増加率が10%以上の市区町村
平日:船橋市、葛飾区、松戸市、市川市、習志野市、千葉市花見川区、印西市、袖ケ浦市
休日:葛飾区、千葉市中央区、習志野市、千葉市若葉区
今回は”私鉄沿線シリーズ”として、京成電鉄の各路線エリアについての人口構造分析の一端をご紹介しました。7路線で東京‐千葉を結ぶ広範エリアをカバーする京成線ですが、都心の足回りの一部である本線・押上線・金町線と、千葉方面のサテライト都市周辺を走る千葉線・千原線とでは、やはり利用者層や居住区域に明確な差異があることが確認できました。
余談になりますが、京成電鉄では5月10日~8月9日の3か月間にわたって、人気アニメ「葬送のフリーレン」とのコラボ企画「京成のフリーレン」を展開していました。
具体的なコンテンツとしては、
1) 限定アクリルスタンドセット スカイライナー券(乗車券付き);京成上野・空港第2ビル・成田空港の3駅
2) スタンプラリー;京成上野・日暮里・青砥・京成真間・京成船橋・成田空港・京成曳舟の7駅
などを展開していたのですが、このようなイベント・キャンペーンでどのくらいの集客効果があったのかを検証する際にも、今回ご紹介したような駅別の人流データが活用できます。
たとえば2) のスタンプラリーの対象7駅について、人流データからキャンペーン期間中の日付・時間帯別の滞在者数の変化量を把握することはもちろんですが、TV番組視聴データやwebサイトへの接触状況などドコモ会員ベースの他のデータソースと組み合わせることで、コラボしたTVアニメの視聴者やアニメへの関心の高い層に今回のキャンペーンがどのくらい刺さったのか、といった分析も実施できます。ご興味のある方は、是非弊社営業担当者にご相談ください。
データについて:
【モバイル空間統計®・国内人口分布統計(リアルタイム版)】
※モバイル空間統計®は、株式会社NTTドコモの登録商標です。
ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。
集団の人数のみをあらわす人口統計情報であるため、お客様個人を特定することはできません。
インテージは「モバイル空間統計」の1次販売店です。
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