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生活者インデックスデータ

中国自動車市場の今とオンライン販売の可能性~コロナ時代のアジア自動車ビジネス①

世界規模で流行が拡大した新型コロナウイルス。健康被害だけでなく、経済活動も大きく落ち込む国が続出する一方、収束とともに経済が力強さを取り戻し、自動車市場が回復する国も出ています。

インテージでは、日刊自動車新聞に「コロナ時代のアジア自動車ビジネス」をテーマに連載枠をいただき、中国、インド、タイ、日本の4カ国について、現地スタッフを交えて生活や自動車市場の変化をレポートしました。その内容を、知るGalleryでもお届けします。
1回目は中国。驚きのV字回復を見せる現状と理由に迫ります。

コロナ流行期を経た中国自動車市場の現在

はじめに中国における近年の販売実績を見てみます。(図表1)

図表1asia-carbusiness-1_01.png

2020年の乗用車販売は5,6月ですでに19年を上回っており、販売台数としては大きく回復しています。弊社の中国現地法人によれば、一部の地域ではまだ感染を警戒する動きがあるものの、主に外来からの輸入感染が中心で、大きな感染拡大は起きておらず、危機は脱しているといいます。現地の代表的な自動車ポータルでも、すでに「新型コロナウイルス」の文言は見られず、新技術の開発や新車種発表のニュースで賑わっているほどです。図表1のように、確かに1月から3月にかけて大きな販売台数の落ち込みは経験したものの、中国の自動車市場は回復軌道に乗ったとみてよいでしょう。

こうした急速な回復の背景にはいくつかの要因があります。ひとつは政府の施策による刺激策です。自動車購入の規制緩和や、新エネルギー車の購入に対する補助金施策など、地方レベルで数々の施策が提示されています。例えば深圳市では6月、新エネルギー車の購入支援策を発表し、新規に電気自動車(EV)を購入した場合には2万元(およそ30万円)、PHVには1万元(およそ15万円)を支給することとしました。19年は、中国自動車市場で初めてのマイナス成長となった18年をも下回る結果でしたが、弊社の中国人スタッフによれば、現在はそうしたネガティブな雰囲気が払しょくされてきているといいます。

価値観の変化も重要です。中国では近年シェアリングも拡大していましたが、新型コロナウイルスの拡大に伴い、自家用車の価値が再認識されたという面があります。中国現地の報道によると、カーシェアリングは大きな打撃を受けており、一部では外観が破損したシェアリグ用のEVが野ざらしになっている状況もあるようです。これまで毎年10%の伸びを示していたカーシェアリング市場も、ここにきて大きな試練を迎えているといえます。ただし、企業活動の再開に伴い、カーシェアリングの需要も徐々に回復してきており、これまでは10~15日に1回程度の室内消毒だったところ、クルマが使われたらすぐに消毒して一定期間置いて再投入するといった措置を取るなど、これまでより手数をかけての運用になっているようです。

もうひとつここで指摘しておきたいのは消費志向の変化です。自家用車の価値の再認識とともに、中国現地では高級車が今後伸びるだろうという記事が散見されるようになっています。例えば、中国汽車工業協会が最近発表したところによると、自動車市場を高級ブランド、合弁ブランド、民族ブランドと3つに分けたとき、20年上期の販売台数は合弁と民族ブランドが前年比70~80%程度にとどまったところ、高級ブランドは前年比でプラス成長になったといいます。図1で示した20年の販売台数の回復には高級車も一役買っているということができるでしょう。命の危険を伴う出来事を経た後、人は高級品の消費へ向かうといった分析を掲げる記事もあり、興味深い視点です。

ライブコマースでクルマは売れるか?

1990年代、私は中国に長期留学をしていました。すべてが新しい体験でしたが、中でも驚いたのがモノに対する考え方でした。例えば量販店でテレビを決めて購入するとき、中国人は店頭の展示品を購入することが多かったのです。日本であれば店頭の現物を率先して買うことは少なく手付かずの新品を買いますが、中国では逆に目の前で動作が保証されているモノを優先し、倉庫のストックは買いません。中国人のモノに対する考え方を表すエピソードです。

2020年、時代は大きく変わりました。オンラインでの購入が普及し、若年層を中心に日用品から食事、電化製品までスマートフォンを通して調達するだけでなく、自動車ですらオンラインで注文することができるようになっています。そうしたなか、近年急速に拡大している購買チャネルが「ライブコマース」です。通常のオンライン購買とは異なり、商品をリアルタイムで紹介すること、視聴者もリアルタイムに質問し、その場で購入できることなどが特徴です。近年、中国ではネット環境の向上とともに、こうしたライブ配信によるマーケティングが盛んになってきました。

同市場の20年の予測値は9610億元で、日本円に換算すると14.5兆円。17年の50倍になると言われています(図表2)。なぜ、ここまで急速に膨れ上がったのでしょうか。

図表2asia-carbusiness-1_02.png

ライブ配信によってオンライン購買への不安が払しょくされていることもありますが、エンターテインメント性もライブコマースがもたらした新たな販売の付加価値として重要です。最近は、一般人がコスプレをして商品の紹介をしたり、出演者が絶妙な掛け合いで商品の良さをアピールするなど、祝祭的な販売形式に変化してきています。

中国で「紅網経済」と言われるのもこのひとつです。紅網経済とは、KOLなどのインフルエンサーが商品を紹介することで、商品の認知度や信頼感が醸成され、大きな売り上げに繋がる例も枚挙に暇がありません。ライブコマースも、リアルタイムにモノを紹介することや、その場でコミュニケーションを通じて商品を理解することができるなど、新しい商品の売り方として急成長しているのです。

これにより、ネットで無機的に紹介される商品とは異なり、それまでオンライン購買に振り向かなかった人たちも取り込み始めています。前述のような、現物を重視する人であっても、少なからぬ安心感は得られることでしょう。中国人の目の前の現物にこだわらない流れは加速しています。こうしたライブコマースに、自動車の販売も進出してきています。

現地の報道によると、新型コロナウイルスの影響により、各メーカーの営業活動はオンラインに注力しており、VR(仮想現実)で自動車を見られるようにするほか、ライブコマースも手掛けるようになったと言います。弊社の上海現地法人によれば、自動車は大型商品であり、消費者にとっては実際に外観や室内の感触を確かめることも重要なので、これが主流のチャネルになることは難しいのでは、ということでした。

ただ一方でコロナ禍での外出制限などを経て、人々の購買行動には大きな変化が出始めています。世界最大の市場である中国で、ネット販売の流れが自動車販売にまで波及するのかは、大きな注目を集めています。こうしたオンラインでの祝祭的なライブ購買がさらに拡大していくことになれば、ニューノーマルの時代の新しい販売の形の一つになるのかもしれません。

著者プロフィール

前田 直人 (まえだ なおと)プロフィール画像
前田 直人 (まえだ なおと)
大学教員からNGOを経て商業調査の扉をたたいた異色のリサーチャー。基本的にはフィールドワーカー属性なので、現地現物原体験主義です。人生の大半を中国に捧げてしまったことから社内では「ほぼ中国人」の呼び声も高い。

大学教員からNGOを経て商業調査の扉をたたいた異色のリサーチャー。基本的にはフィールドワーカー属性なので、現地現物原体験主義です。人生の大半を中国に捧げてしまったことから社内では「ほぼ中国人」の呼び声も高い。

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