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9か国のお金・資産の話~日本と海外の考え方の違いは?~

バブル崩壊以降、日本では長年経済が停滞し、近年では車を始めとして色々なものを所有するのではなくシェアリングで利用するなどのケースも増えてきています。お金や資産に対するあり方もだいぶ変わってきているのではないでしょうか。
そこで、今の日本のお金や資産に対する考え方を、海外の国との比較を通して探ってみました。調査は日本と中国、香港、アメリカ、スウェーデン、タイ、インドネシア、ベトナム、インドの9か国の主要都市で行い、その結果をインテージの現地リサーチャーと共に読み解いています。

人生を豊かにする資産とは

生活者が「人生を豊かにすると考える資産」とはどのようなものでしょうか?表1は9か国の生活者に答えてもらった結果です。

図表1

日本では「現金・預金」が圧倒的に資産として支持されていました。理由としては、長引くデフレの影響により現金を所持することの価値が高まっているためと思われます。また同じようにタイでも「現金・預金」意向が強い傾向が見られます。タイではまだ株式や投資信託への意欲が他のASEAN諸国・中国などに比べてそこまで高くないためではないかと考えられます。

リスクヘッジ資産である「金・金塊」に対する意向については、日本が16.5%に対してASEAN諸国では高くでています。特にインドネシアで56.7%と高いのは、インドネシアでは常に為替の変動が激しかったこともあり、「金・金塊」のような一定の価値を担保できるような資産への意向が大きいのではないかと推測されます。またインドネシア・タイなどでは街中のゴールドショップやオンラインでも金を手軽に購入できるのも要因のひとつではないでしょうか。

「車」についても一番意欲が高いのはタイですが、タイではいざというときに車がしっかりと現金化できる資産であることが反映された結果だと考えられます。一方、不動産においては、日本やタイ、インドネシアでは「戸建て」、中国や香港、スウェーデンでは「マンション・アパート」を重要視する傾向がうかがえます。ただし、中国の中でも都市部郊外の生活者には、空気が綺麗・野菜や果物も新鮮・地元には親戚も住んでおりコミュニティもある、などの理由で「戸建て」意向も一定数あるようです。

国が置かれている経済状況やこれまでの歴史によって資産に対する考え方が大きく異なること、その中でも日本が特に「現金・預金」を重視していることがよくわかります。

資産とライフイベント

では、それぞれが重視している資産は、どのようなライフイベントで需要が増すのでしょうか。まずは、「結婚」「子供を持つ」「定年退職・リタイヤ」といったライフイベントへの興味関心度合を比較してみました(図表2)。

図表2

ここで目を引くのは、日本では「結婚」「子供を持つ」「リタイヤ 」に興味がない人が約半数もいるということです。日本の次に「結婚」「子供をもつ」に興味がある数値が低いのはタイですが、この二国の、興味の低さにつながる共通点として「金銭的問題」「結婚後のやりなおしが欧米に比べてしづらい」などの要因があげられるのではないでしょうか。

また、日本を含む多くの国で最も興味があるライフイベントとされているのが結婚でした。そこで、実際に結婚というライフイベントと資産の関係性についてみていきたいと思います。図表3は資産の種類別に、それぞれのライフイベントに際して持っておきたいものを聞いた結果です。

図表3

日本は「結婚」のタイミングで「現金」を保有したいという意向が多くでてきますが、中国では結婚するのに、住む場所(新築)、車、婚約指輪、結婚指輪、三金というアクセサリー類を男性側が準備する必要があり、特に結婚のタイミングでマンション・アパートを保有するケースが多いです。 インドネシアでも結婚するのに住居や金のアクセサリーの準備が必要なのは同じですが、インドネシアでは結婚後すぐに子供を授かることが多いため結婚の時点で一戸建てを保有することが好まれるようです。
一方、インドやタイでは結婚のタイミングで金を保有することが多く、特にインドでは花嫁にどれだけ金の装飾品を持たせて嫁がせてあげるかがステータスであったり、タイでは結婚のときに両親から子供へ贈る風習もあるようです。

「生命保険」については9か国中6か国において「結婚」のタイミングで意向が盛り上がる傾向にあるようです。その中でインドは「結婚」「子供を持つ」「定年退職」のどのタイミングでも、生命保険の契約意向が高まっています。これは、インドの社会保障制度が脆弱なため、生活者が自分で自分や家族を守る大事な手段として生命保険に加入する傾向があるのではと推察されます。

日本では「結婚」「子供を持つ」とライフステージが進むと、「車」に対する意向が高まっていくのが見てとれます。中国では「結婚」のタイミングで準備するものの一つとして「車」があるため「車」に対する意向も強く、香港、スウェーデン、インドネシアなどでも結婚時に「車」に対する意向が強まる傾向にあります。

国の文化や風習によって、結婚時に持っておきたい資産は様々ですが、「現金・預金」のみが突出して高いのが日本の特徴の様です。

住宅に関する実態及び考え方の違い~世界の持ち家事情って?~

ここからは、多くの生活者にとって一生のうち一番高い買い物である「住宅」に関する実態について、みていきましょう。

(1)住宅形態の実態 (保有 VS 賃貸)

はじめに、住宅の保有についてです。

図表4

図表4をみると、日本以外のすべての国で、現在持ち家に住んでいる人の割合が過半数を超えています。特に中国は「賃貸」の割合が10.2%と最も低い状況です。一方で、日本は「賃貸」の割合が39.5%と9か国の中で最も高くなっています。

(2)住宅に関する意向~必ずしも新築じゃなくても?~

実際に自宅を購入する場合の新築意向に違いはあるのでしょうか。

図表5

9か国の中で、中国、タイ、ベトナム、インドでは「新築」を意向する割合が70%を超え、「新築派」が多数派でした。一方で、日本、香港、アメリカ、スウェーデン、インドネシアでは、「新築、中古にこだわりがない」という割合が30%を超え、アメリカやスウェーデンに至っては「中古」をあえて意向する割合も20%近くあるのも面白い傾向です。

(3)住宅購入時の重視点

次に、住宅を購入する際に重視する点を比較してみましょう。

図表6

日本以外であまり重視されていない項目として、「日当たりの良さ」が挙げられます。また、日本は「家の購入価格」は一定割合で重視しますが、「将来のリセールバリュー」を重視する割合が他の国に比べて極めて低くなっています。

一方、海外に目を向けると「治安の良さ」を重視する傾向がみられます。これは犯罪から家族を守るためであり、タイやインドネシアなどではゲートとガードマン付きのコミュニティもあるそうです。 自然環境の条件では空気の良さを重視する傾向が、中国・タイ・ベトナムなどに見られますが、これは別に田舎を好むということではなく、空気がよさそうな公園・緑地近くの住宅が人気ということらしいです。
医療の条件をみますと、インドネシアでは三世帯で住んでいる場合が多いため、医療サービスを受けやすいことを重視して購入している割合が高く、実際大型病院の近くの住居はリセールバリューにもつながっている現状のようです。 教育・保育の条件の部分では、中国やインドにおいては良い教育が受けられる学校の近くに住居を購入している人たちも一定層いるのがみてとれます。

(4)家の中で大切にしている場所

ここで少し観点を変えて、「家の中で最も大切にしている場所」がどこなのかみてみましょう。

図表7

家の中で大切にしている場所の1位として、日本では「リビング」を挙げている人が多数派でした。
香港、アメリカ、タイ、インドネシアでは「ベッドルーム」、スウェーデンでは「キッチン」が多数派である中、他の国ではあまり見られない傾向としてタイの「外観」の32.6%というのがあるでしょう。 タイでは「家は自分の顔である」というような表現があるそうで、家の外観を整えることが周りからの評価にもつながっていくという意味でも大切にしているようです。

日本は新築が選好され、中古住宅市場が他の先進国ほど流動性がないなどのニュースも目にすることがあるかと思いますが、中国、タイ、ベトナム、インドなどアジアの国々と比べると日本もそこまで新築に拘っていないという見方もできるかもしれません。また、日本では住宅のリセールバリューの重視度合が他の国より低いことから、住宅を資産として見なす人も相対的には少ないと言えそうです。

車に関する実態~車の必要度ってどれくらい?~

最後に、人生のなかで住宅の次に大きな買い物である、車に関する実態も探っていきたいと思います。

(1)車の保有実態

図表8は車の保有率です。9か国の中で、中国、アメリカ、スウェーデン、タイは車の保有割合が50%以上と過半数を超える一方で、最も車の保有率が低いのが日本となっています。

図表8

(2)車の保有形態の意向(保有 VS レンタル VS シェア)

次に車の所有に関して、「保有」「レンタル」「シェア」のどの意向が強いのかを比較してみました。

図表9

日本、香港、スウェーデンは、今車を持っていない人の「そもそも必要ない」という回答が多いのが目立ちます。今回のアンケートの対象者が首都圏のため、車を持っていなくても不便ではないということもこの結果につながっているではないかと考えられます。
一方、カーレンタルやカーシェアリングなどのサービスを見聞きする機会が増えたとはいえ、今回の9か国ではレンタルやシェアといったサービスを使用したい人はまだまだ少数派ということが分かります。

日本に限らず、実際に車を保有しているかどうかとは別に、レンタルやカーシェアリングでいい、という意識はそれほど進んでいないと言えそうです。

国によって大きく異なる、資産に関する考え方や、ライフイベントと資産の関係性。比べてみると、改めて日本の生活者の価値観が見えたのではないでしょうか。


本記事は『ライフイベントと資産に関するグローバルウェビナー』から抜粋して掲載しました。 より詳細をご希望の方は『ライフイベントと資産に関する9か国調査グローバルレポート』(有償)もご用意しております。人生のどのライフイベントのタイミングでどのような資産の需要が盛り上がるかということを、皆様のマーケティング活動にお役立ていただける内容となっています。

詳細はこちらから>> https://www.global-market-surfer.com/report/detail/136


今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:日本、中国、香港、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、アメリカ、スウェーデン
対象者条件:男女20歳~49歳、(人口構成比に合わせてウェイトバックあり)
・主要都市在住(以下参照 )・SEC 中間層以上
標本抽出方法:オンラインアンケート調査
標本サイズ:標本サイズ:n=328(日本)n=407(中国)n=329(香港)n=323(タイ)n=341(ベトナム)n=339(インドネシア)n=344(インド)n=324(アメリカ)n=327(スウェーデン)
調査実施時期: 2022年2月16日~3月16日

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