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生活者インデックスデータ

昨今の値上げで物価はどう動いている?マクロ視点で構造をひも解く

昨今、原材料価格や物流コストの高騰により、食料品や日用品、公共料金といった消費者の身近な財・サービスにおいて、様々な企業で値上げが行われています。それに伴い物価への影響も生じ、2022年4月の消費者物価指数(CPI)は前年比+2.1%と上昇傾向となっており、今後の物価の変動への注目度が上がってきているように思います。

そこでこの記事では、最も身近な消費財のひとつであり、今後も多数の値上げが予定されている食品・飲料について、SRI一橋大学消費者容量単価指数(※)を用いて物価変動の実態とその要因を明らかにすることで、消費者がどのように値上げに対して対処しているのか、どういったカテゴリーで値上げが受け入れられているのかといった、“今起きていること”を紐解きます。

昨今の値上げの動向は?

図表1は2022年4月30日時点での食品・飲料の値上げカテゴリーの表です。
※2021年1月~2022年4月の間に1商品でも値上げがされた、もしくは値上げ予定が発表されたインテージの標準カテゴリー。
値上げカテゴリーは92あり、インテージが標準としている食品・飲料の全158カテゴリーのうち約58%が値上げ対象となっていました。

図表1 

図表2は食品・飲料それぞれの値上げ実施カテゴリー数とその割合を示した表です。食品では約57%、飲料では約63%のカテゴリーにおいていずれかの商品で値上げを実施済みもしくは実施予定となっています。消費者が普段よく購入する食品や飲料で過半数と、幅広いカテゴリーで値上げが進んでいる様子がわかります。

図表2 

これらの値上げはどのように進んでいるのでしょうか。図表3は2021年1月からどれだけ値上げが行われているのかを、各週のカテゴリーごとの値上げ実施メーカー数の累計で表しています。例えば、同じカテゴリーの同じメーカーで、1,3,5月と3回にわたって値上げが行われた場合は、3回とカウントされます。これは、生活者の目に触れる値上げの延べ回数と考えることができるでしょう。

グラフを見ると2021年12月までは緩やかな増加傾向で、2021年12月27日週時点の値上げ回数は46回。しかし2022年に入ると値上げを実施するカテゴリー・メーカーは急激に増加し、2022年10月3日週時点で延べ216回の値上げが見込まれています。情報は2022年4月30日時点のものですが、その後も多くの食品・飲料の値上げ予定が発表されており、この流れはさらに加速しそうです。

図表3

また品目別に値上げ実施回数(予定含む)を比較すると(図表4)、最も多いものが小麦粉の27回であり、次いでサラダ油・天ぷら油が24回となっていました。いずれも原材料価格の高騰が要因となっています。
このようにカテゴリーによっては複数回値上げが発表され、現時点では発表が少ないカテゴリーであっても、また値上げが発表される可能性があり、今後も家計では値上げへの対処が必要となりそうです。

図表4

物価の動きとその要因を“容量単価指数”で読み解く

続いて、上述の値上げの波を受け、物価がどのように変動しているかを見ていきましょう。ここでは 「SRI一橋大学消費者容量単価指数」という物価指数でみていきます。

まずはこの指数について説明します。SRI一橋大学消費者容量単価指数(以下容量単価指数)とは、2015年5月に国立大学法人一橋大学・一般社団法人全国スーパーマーケット協会(当時は新日本スーパーマーケット協会)・株式会社インテージの共同の「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」で開発し、公開を開始した物価指数です。インテージのSRI+データの詳細な商品POS情報を用い、商品の容量単価を計算して指数化したものです。

物価の変動には様々な要因がありますが、容量単価指数は物価の動きを業態レベルやカテゴリーレベルで捉えた上で、変動要因を「新商品の投入や容量単価変更などの商品入れ替えによるもの」「既存商品の価格変更によるもの」「生活者の既存商品間での購入スイッチによるもの」「その他の要因」に分解することができます。
これは『商品単位の容量単価情報を捉えている』『新商品の販売情報を随時捉えている』POSデータの特徴を活かしたもので、公式統計による物価指数とは異なる視点から構造理解ができるデータになっています。

図表5

具体的には、容量単価指数のインフレ率は下記のように表現されます。
容量単価指数のインフレ率
価格変化効果「既存商品の価格変更によるもの」
代替効果「生活者の既存商品間での購入スイッチによるもの」
商品交代効果「新商品の投入や容量変更などの商品入れ替えによるもの」
(+調整項)

またそれぞれの効果が容量単価指数にどのように影響を与えるかをまとめたのが図表6です。

図表6

例えば、昨年新商品として発売された商品Aが今年値上げされると、既存品の値上げとなるため、商品Aの「価格変化効果」はプラスとなり、容量単価指数にもプラスに寄与します。一方で商品Aの値上げによって商品Aの購買量が減少し、代わりに商品Aよりも安い商品Bの購買量が増加して商品Aの購買量を上回った場合、「代替効果」はマイナスとなり、容量単価指数にはマイナスの寄与となります。

ここからは、以上をふまえ、実際のデータで物価の動向とその構造変化を見てみましょう。

 “容量単価指数”から見た、今の値上げの構造

図表7は食品・飲料カテゴリーに加え、雑貨カテゴリーも含む日用消費財の全カテゴリー計における容量単価指数の前年比の動きと各効果に分解したグラフになります。この3年の動きを見てみましょう。

図表7

2020年4月以降、容量単価指数は基本的にプラスに推移してきました。特に2020年の4月頃の伸びが大きくなっています。この頃は新型コロナウイルスが日本でも話題になり始めた時期であり、マスク需要が大きく増加したことで様々なメーカーから需要に応じた高めの価格でマスクが発売されていました。このように大量のマスクの新商品が投入されたことにより、商品交代効果(灰色棒グラフ)がプラスとなっていました。価格変化効果(濃い青色棒グラフ)もプラスになっていますが、これは既存商品の値上げが行われたというよりも、お店が密にならないためにチラシやセールの実施を控えたことで、結果として販売価格が前年より高くなっていた影響が大きいと思われます。

そして値上げが本格的になった2022年1月以降、容量単価指数は減少傾向にあり、2022年2月14日週にほぼ0となっていました(赤枠)。この間は代替効果が増えており、低価格商品へのスイッチが進んでいたことがわかります。
しかし2022年3月14日週以降は既存商品の価格変化効果の影響が代替効果を上回り、さらに商品交代効果がプラスとなっていることで容量単価指数は上昇傾向に変わっています。(紫枠)商品交代効果がプラスとなった背景には、価格は据え置きで容量を減らしたような商品や、価格を上げつつその分付加価値を加えたような商品など、新商品の投入があると考えられ、これらが容量単価指数の増加に寄与していることがわかります。

2022年5月2日週時点での容量単価指数は1.1%と、急激な上昇は起きておらず、値上げの波が押し寄せる前の2020年と比較しても低くなっています。ただ、その構造を見てみると、生活者の買い物行動の変化によって急激な上昇が抑えられている、といえるのではないでしょうか。

続いては個別の値上げカテゴリーについて、物価の動向とその要因を紐解いていきましょう。図表8はサラダ油・天ぷら油の容量単価指数の推移です。

図表8

2021年6月からメーカー各社で値上げが実施され、その頃から容量単価指数も上昇し続けていました。容量単価指数の動きについて要因を分解すると、価格変化効果(濃い青色の棒グラフ)による寄与度が高く、既存商品の値上げの影響が大きく表れていることがわかります。一方で代替効果による寄与度はマイナスとなっており、商品の値上げがされたことにより消費者が少しでも安い商品へ購買をシフトする動きが一定見られます。(赤枠)とはいえ、代替効果は2021年6月以前と比較して特段増加しているわけではなく、多くの消費者は値段が上昇しても、いつもと同じ商品を購入している動きが推察されます。(紫枠)

図表9はレギュラーコーヒーの容量単価指数の推移です。

図表9

レギュラーコーヒーは2021年9月に値上げが実施され始め、容量単価指数もその時期から上昇傾向にありました。要因を分解してみると、サラダ油・天ぷら油とは異なり、商品代替効果(灰色の棒グラフ)が大きくプラスに寄与しています。
レギュラーコーヒーを販売する大手メーカーの発表では、鮮度感を保ったまま飲み切れるようにするための内容量を減らした商品の販売や、コーヒー豆の配合や焙煎手法を見直して品質向上を図った商品へのリニューアルを行うケースも見受けられました。こういった品質維持・商品価値向上のための企業努力の様相が商品代替効果として表れていました。

このように物価上昇といっても、その構造がカテゴリーによって異なることが、要因分解によって見えてきます。

まとめ

2022年以降、様々なカテゴリーで値上げが実施されていますが、現時点では日用消費財の全カテゴリーの容量単価指数は前年同期比で1%程度に抑えられていること、さらに、値上げによる価格上昇に対し、消費者は安い商品へ購買をシフトすることで対処していることがわかりました。

またカテゴリーによって容量単価指数の変動要因も異なり、値段が上がってもいつもと同じ商品を購入する消費者が多いようなカテゴリーもあれば、付加価値型の新商品が活性化するカテゴリーもあるなど、消費者の値上げに対する受け取り方も様々あることがわかりました。裏を返せば、カテゴリーによって、メーカーの取り得る戦略にも違いがあると言えます。

このように、物価の変動に対しては、その結果だけに囚われることなく、どのような要因から起きているのかを分解し、その背景に消費者・流通・メーカーのどのように動きがあったのかを考えることが、今後も続くことが見込まれる、商品値上げ時の意思決定において必要となるのではないでしょうか。


この分析は、SRI一橋大学消費者容量単価指数を用いて行いました。
【SRI一橋大学消費者物価指数】
一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構、全国スーパーマーケット協会と株式会社インテージとの共同プロジェクト「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の一環として作成している経済指標です。インテージのSRI+のデータを用いて消費財の物価の変動とその構造変化を可視化します。 物価の構造変化を「新旧商品入れ替え効果:新商品による影響」「価格変化効果:既存品の値上げ・値下げによる影響」「代替効果:既存品の中で消費者が購入商品をスイッチしたことによる影響」に分解することで、要因を捉えることができます。

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