バーチャルホームツアー カンボジア・ベトナム編
~ベトナムとの比較から見る、カンボジアの現在と未来~
東南アジア・インドシナ半島南部に位置するカンボジア。現在はLower-middle income(低中所得国)に分類されているものの、そのGDP成長は著しく、政府は2030年までにUpper-middle income(高中所得国)となる目標を掲げています。これは同じ東南アジアのベトナムと同水準であることから、カンボジアの7年後を予測するためにはベトナムの今を知ることが役立つのではないでしょうか。
そこで、この記事では、インテージが提供する生活者データベース「Consumer Life Panorama」を活用し、ベトナムとカンボジアの比較を交えながら生活実態を見ていくことで、カンボジアの未来の兆しを探ります。
※本記事は2023年12月14日に実施されたセミナーを再構成してお届けします。
■ベトナムとカンボジアの概要
まずは統計データをもとに、ベトナムとカンボジア両国の概要を見ていきましょう。
ベトナム社会主義共和国(ベトナム)の人口は9,946万人(日本比0.79倍)で、カンボジア王国(カンボジア)はベトナムより少なく1,555万人(日本比0.12倍)です。人口増加率はそれぞれ年0.87%・1.16%で、どちらも人口が増え続けています。
また、平均年齢はベトナム31.9歳・カンボジア26.4歳と若く、人口増加と合わせて今後の成長が期待されます。経済面ではベトナムのGDPは日本の10%、カンボジアは0.7%となっており、経済規模が日本よりも小さいのが現状です。ただし新型コロナウイルスの流行以前は年6~7%の成長を遂げており、コロナ禍後の現在では従来の勢いに戻りつつあります。
■ベトナム住居のバーチャルツアー
ここからは、「Consumer Life Panorama」のバーチャルホームツアー機能でベトナムとカンボジアの住居の違いを見ていきしょう。
まずは、経済がカンボジアより数年進んでいると言われるベトナム・ホーチミンの住宅です。
ベトナム都市部の主要住宅タイプは3つです。伝統的にもっとも多いのは4階建てや5階建ての長屋のようなタウンハウスで、ベトナムで持ち家といえばタウンハウスが一般的です。コンドミニアムは近年人気が上昇しています。モダンなデザインと立地や利便性、ジムなどの共用施設が長所で、主に若い世代に広まっています。もう1種類のショップハウスは大通りに面して建てられており、1階に飲食店や店舗、2階以上に所有者が住むタイプの建物です。
まずはタウンハウスを見ていきましょう。ベトナムの平均月収約4万円よりもゆとりのある、世帯月収約10万円、Aクラス世帯の3人家族です。広さは122㎡で2階建てに住んでいます。
ベトナムの家では、玄関を入るとすぐにリビングルームがあります。正面は家全体の顔という考えのため、ゲストを歓迎しおしゃべりする場所として利用されています。家族がテレビを見て団欒したり、子どもが遊んだりするのは別の部屋です。このリビングにエアコンはなく、換気のためにドアを開放するのが一般的です。
キッチンは散らかりやすいため他人に見られたくない場所とされており、家の奥にあります。壊れないかぎり物をなかなか捨てられない国民性のため、多くの物があふれがちです。キッチンには冷蔵庫や電子レンジなどがあり、安全性の高さからIHを設置する家庭が増えています。
2階にはファミリーベッドルームがあります。
この家の唯一のエアコンが設置されています。省エネのために寝室のみにエアコンを付けるのはベトナムでは一般的です。
次にコンドミニアムです。
世帯月収約24万円、こちらもAクラスの4人家族です。88㎡の部屋に住んでいます。
タウンハウスとは作りが大きく異なり、最近ではこの家のように玄関の先に最初にキッチンがある住居もあります。ウェットマーケット(生鮮食品市場)ではなくスーパーマーケットでまとめ買いすることが多いため、食材は大きな冷蔵庫にたくさん詰めています。
リビングの天井にはシステムエアコンが備え付けられていますが使用頻度は低く、普段は扇風機と冷気が発生するクーラーファンを使っています。
マスターベッドルームにもエアコンが設置されており、家族全員同じ部屋で寝ることでエアコンを使用した際の電気使用量を抑えています。
ベッドルーム奥には広いバスルームとトイレがあります。この家にはもう1つコンパクトなバスルームがありました。
■カンボジア住居のバーチャルツアー
次にカンボジアの住居を見ていきましょう。
カンボジア都市部の主要タイプは上記の3つです。ベトナムと同様、もっとも多い住居タイプはフラットと呼ばれるタウンハウスです。コンドミニアムも最近増加しており、他に都市部にも一定数の一戸建てがあります。カンボジアでは家を持つことは重要なステータスであり、多少無理しても購入したいという価値観があります。購入用の資金として、金融機関ほかにデベロッパーも住宅ローンを提供しています。
まずは奥に長い集合住宅・フラット(ベトナムでいうタウンハウス)を見ていきます。中間収入が約9万円のカンボジアで約22万円を得ている5人家族です。2018年に約11,800万円で購入した202㎡の住居に住んでいます。
家に入ると、まずリビングがあります。リビング手前には盗難防止のために室内にバイクを置いています。この家庭ではリビングに子どもの遊び場(画像内右)も設けていました。
リビング奥には簡単な簡易なテーブルセットがあり、ここで食事をとったり、知人を招いたりします。木調の家具や仏壇を置いているのも一般的なカンボジアの家の特徴です。
奥に進むとキッチンがあります。ベトナムと異なり、キッチンを人に見られるスペースという意識があるため、リノベーションなどの場合にはリビングの次にお金をかけたい場所とされています。
ガスボンベを使った据え置きタイプのコンロや一口のカセットコンロを使用して料理を行います。ベトナムと異なり、まとめ買いの感覚があまりないため冷蔵庫に食材は少なく、近所のウェットマーケットでその都度新鮮な食材を購入します。
この家庭は収入が多めのためウォーターサーバーを設置していますが、電子レンジはありません。
マスターベッドルームに両親と子どものベッドを並べています。ベトナム同様に夜はエアコンをつけるため、同じ部屋で寝ることで電力の消費を抑えています。
バスルームはベッドルーム一部屋ごとに設置されており、基本的にバスタブはありません。シャンプーやボディソープは家族全員で共用するのが一般的です。
次にコンドミニアムの紹介です。 3人家族の世帯で、月間収入は中間層よりもやや低い約7万円です。カンボジアでは収入が高くなくても家を買うのは一般的で、21㎡のコンパクトなコンドミニアムを購入して住んでいます。
入口を入るとすぐにキッチンがあります。こちらの家庭は電子レンジがありますが、スペースが限られているため調理の際はカセットコンロを収納から取り出して使用します。
家族が過ごすのはこの一部屋のみで、通常はリビングダイニングとして利用し、夜には布団を敷いて寝室にしています。洗濯機を置くスペースがないため洗濯は手洗いで、ベランダに干しています。
エアコンは収入に関わらず必須アイテムで、就寝時にタイマーを設定して扇風機と併用します。
最後に戸建てをご紹介します。
月間収入約22万円の4人家族です。2017年に約11,800万円で購入した163㎡の駐車場付きの家に住んでいます。なお、カンボジアでは戸建てに住んでいるからお金持ちというわけではなく、資産に余裕がある家庭がフラット(タウンハウス)を選んで住んでいるということもあります。
他の家と同様に玄関の先には来客を迎えるためのリビングがあります。この家には駐車場があるため、バイクは車と一緒に駐車場に停めています。
キッチンはデザイン性がある収納扉やタイル調の壁紙など、意識的にアレンジしています。料理は二口コンロを利用しており、オレンジ色のものがガスボンベです。冷蔵庫に食材はあまりストックせず、ウェットマーケットに週3回程度訪れて調達しています。保存が効く調味料や洗剤などの購入先はスーパーマーケットです。
2階には複数の寝室とバスルームがあります。トイレとシャワーには仕切りを設置していました。
全体的にカンボジアの家は広め、対してベトナムは狭めの印象です。ただし持っているもの・家に置くものはベトナムのほうが多い傾向にあり、今後カンボジアもそうなることが予想されます。
■ベトナムとカンボジアの“持ち物”の違い
では現在家にあるものにはどのような違いがあるのでしょうか。ベトナム・カンボジアの家庭の持ち物を比べてみましょう。現在のベトナムの状況を見ることで、近い将来カンボジアで普及するアイテムが予測できるはずです。
<キッチン家電>
カンボジアの家庭はカセットコンロや据え置き型コンロで調理をするのが一般的です。炊飯器、電気ケトル、冷蔵庫は多く普及している一方で、電子レンジ、オーブン、トースターはあまりありません。
都市ガスが普及していないベトナムでは電子レンジのほかにIHコンロやノンフライヤーもある程度見かけるようになりました。カンボジア・プノンペンでも都市ガスは利用できないため、今後IHコンロが定着する可能性があります。
持っているブランドとしては、カンボジアではグローバルブランド、ベトナムでは日系を含むグローバルブランドが多い傾向です。
<掃除グッズ>
カンボジアでは一般的に掃除機ではなくほうきやブラシ、モップを使って掃除をします。一方、ベトナムでは掃除機だけでなくロボット掃除機も普及し始めました。また用途や目的に応じて洗剤の使い分けをするのもベトナムの特徴です。
<メイクアップ・スキンケア類>
カンボジアでは必要最低限のアイテムのみを使用する傾向にあります。日焼け対策や白い肌へのニーズから、UVカット機能の付いた保湿ローションを使っている人も多いようです。欧米ブランドや日系ブランドのほか、韓国ブランドの商品も見られます。
一方でベトナムはカンボジアよりも使用アイテム数が多く、メイクを落とす際にきちんとクレンジングを使うという考え方も定着してきました。保湿アイテムに加えて美容液も支持されており、また敏感肌向けアイテムや皮膚科学に基づくダーマ系コスメなどの高付加価値ブランドが注目されています。
■まとめ
現在のカンボジアは、ベトナムと比べてもまだまだ豊かな生活水準には達していません。しかし、すでに約7割もの女性が社会に参加していることから、今後は家事を効率的にこなすニーズが増加するでしょう。加えて、高い経済成長率を維持していること、また地理的・文化的に近いことから考えると、カンボジアの消費者市場規模は少なくとも現在のベトナムに追いつく可能性が高いと見られています。
さらに詳しくカンボジアの生活者について知りたい方は、「日常ルーティン」「食事」「掃除」「移動」などを、Global Market Surferの記事にてご紹介しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
>> https://www.global-market-surfer.com/pickup/detail/455/
インテージではカンボジアやベトナムなどのさまざまな国の生活者の価値観やライフスタイルを理解するための、さまざまなサポートを行っています。記事で紹介したバーチャルホームビジット機能をお試しになりたい場合は、以下よりトライアルをお申し込みください。
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Consumer Life Panoramaとは・・・
インテージが提供する、海外消費者の居住空間、デジタルライフ、モビリティライフを始めとする消費者のリアルな生活実態の理解を深めるためのウェブサイト型データベースです。
住環境、一日の生活の流れ、デジタルライフなどが閲覧でき、海外消費者の実際のリアルな行動を読み取ることで、様々なターゲットに合ったマーケティングや商品開発にいかしていただけます。
紹介動画:https://www.consumer-life-panorama.com/demo/guide?l=jp
デモサイト >> http://consumer-life-panorama.com/demo/
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