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車を持たない消費者を紐解く

※この記事は、日刊自動車新聞の“インテージ生活者インサイト”コーナーにインテージのシニアリサーチャー山田健介が寄稿した連載を再構成したものです。

2023年11月、4年ぶりに開催された「ジャパンモビリティショー」の総来場者は111万と、日本自動車工業会が目標に掲げた来場者数100万人の目標を達成し、大盛況の中終幕となりました。そんな盛り上がりを見せたモビリティショーですが、輸入車メーカーの出展数が前回2019年と比べて減少し、自動車の日本市場における現状を考えさせられる側面もありました。

ところで、「若者の車離れ」という言葉が叫ばれて久しく、消費者の高齢化は日本の自動車市場における重要な課題として認識されているかと思います。しかし、「車を持たない人」は本当に若者だけなのでしょうか?筆者自身もモビリティショーの現場に足を運びましたが、若いカップルや親子連れの姿を多く見かけました。少なくとも、若い人でも車に興味・関心を持つ層が一定数いる印象を受けています。
では、実際には「車を持たない人」はどのような人なのでしょうか?

この記事では、車を持たない人(非保有者)と保有者との対比を中心にデータを見ていくことで、車を持たない消費者がどのような存在なのかを紐解いていきます。
使用するデータは、インテージが毎月約70万人から回答を集めている自動車に関する調査「Car-kit®」の2023年10月回答データです。

車を持たないのは若者だけ?

はじめに、車の保有者・非保有者それぞれのデモグラフィック属性を比較してみます。図表1は年代構成比です。車非保有者は「20代以下」の割合が車保有者に比べて大きく、確かに「若者」が多いことを確認できます。ただし、30-40代のいわゆる「ミドル層」の割合も大きく、車を持たない消費者は「若者」に限った話ではないといえます。

図表1

車の保有者・非保有者の年代構成比

次に居住エリアを見てみましょう(図表2)。「東京」「神奈川」「大阪」の3都府県の割合が、車保有者では約17%であるのに対し、車非保有者では4割強を占めており、電車やバスといった公共交通機関が特に発達している都市部に集中していることがわかりました。

図表2

車の保有者・非保有者の住居エリア構成比

逆に、車保有者で大都市圏以外の地方の割合が高いのは、公共交通機関が発達していない住環境と若者の少なさが相まっているためでしょう。

車を保有したい気持ちと持たない理由

そもそも、車を現在持っていない人は「車を欲しい」と考えているのでしょうか?調査の結果、現在車を持っていない人のうち、約4割の消費者が車を「欲しい」と回答しており、20代以下に限れば約5割の人が「欲しい」と回答しています(図表3)。

図表3

車非保有者の車保有欲

前章で、車の非保有者は「30-40代のミドル世代」も持っていない人が多く、車離れは若者に限った話ではないことを述べましたが、「車を欲しい気持ち」に関しては、むしろ若者の方が強いという結果になっています。

では、車を「欲しいけど持っていない」人が保有に踏み切れない理由は何でしょうか。
図表4は「車を保有しない理由」を示したデータです。欲しい人は「経済的な余裕のなさ」や「維持・メンテナンス費用の高さ」、「駐車場代や保険料」等、イニシャル・ランニングとコストの双方が理由の上位に挙がっています。逆に言えば、金銭的な余裕があれば車の保有に踏み出すのかもしれません。

図表4

車の保有欲別 車を保有しない理由(上位10項目)

一方、「欲しくない」と回答している人は、経済的な理由も同様に挙がる一方、「乗る機会が少ないと思う」「ペーパードライバーだから」「車に興味がない」「運転に興味がない」といった理由が多く挙がり、保有しない理由にも違いがみられます。

車を持たない人のお金の使い道

車を保有しない人の特徴について、さらに詳しく見ていきましょう。図表5はお金や金融商品に関して当てはまる項目を選択してもらった結果です。

図表5

車の保有者・非保有者のお金・金融商品に関する考え方(上位5項目)

上位には「将来に向けた不安」や「生活に困らないくらいお金を残したい」、「投資や資産運用をしなければならない時代だと思う」といった項目が入り、将来に関する不安感が垣間見える結果となっています。ここで注目したいのが、車保有者に比べて非保有者の方が「お金を残したい」と考える人が少ないことです。先ほど、車を保有していないのは経済的な理由であることが多いと述べました。しかし、非保有者は、将来の貯蓄に対する意識が低い傾向にあります。これは、短期的な経済的な余裕があれば、車の購入を考える可能性があることを意味します。

一般的な消費価値観についても見てみましょう。図表6は、車非保有者のうち「車が欲しい」人と「車が欲しくない」人それぞれの消費タイプの内訳です。
※消費タイプ:全55項目の消費価値観のデータをもとに、6つに分類した生活者セグメント

図表6

車非保有者の消費タイプ

非保有者全体の特徴として、「消費に低関心」「フォロワー気質」の構成比が高く、消費そのものに対してあまりポジティブではない傾向が見られますが、このうち「車が欲しい」人においては「旺盛消費」の人が比較的多くなっています。前述の通り、経済的なゆとりが生まれれば、むしろ積極的に車の保有に向かう人が一定数いると考えられます。

そのほか、日常生活においてお金をかけていると思うことを見てみると(図表7)、非保有者で「車を欲しい」と考えている人は比較的お金をかけているものが多く、消費に積極的な様子が見て取れます。

図表7

お金を使っていると思うこと

ちなみに、車保有者にとって、自動車はお酒を含めたグルメ・旅行・ショッピングに次ぐ支出先となっており、健康・医療と同程度と、自動車への支出がそれなりに大きなモノとなっていることがわかります。一方、車の非保有者は支出先として上位にあがる内容は変わらないですが、全体的にお金の使い先に挙がる各項目のスコアが低い傾向です。自動車を保有していない分ほかにお金を回せるのでは?と思いますが、実態としてはむしろ保有者の方が消費に積極的であることが伺えます。

非保有者は“今“お金を使う余力がなく、消費に対しても消極的で、将来に向けた貯蓄意識も高くない、という人物像が見えました。しかし、「車を欲しい人」に限ると、旺盛消費な意識を持ちあわせ、日頃から消費に対して積極的な実態が見え、金銭的な余力(可処分所得)が増えれば、車の所有に踏み出すポテンシャルの高さが意識・生活実態から伺える結果となりました。

車の保有ポテンシャルがある消費者とは

ここからは、非保有者の車保有に対するポテンシャルを考えていきます。 まず、「車は欲しくない」という意識のある消費者はどのような特徴だったか振り返ってみましょう。かれらは日常生活において車に接する機会が少なく、そもそも車に対して関心がないことを述べました。また、車に限らず消費に対して消極的な傾向がみられ、日常生活においても保有者に比べてお金の使い道が少ないことが確認できました。車への興味関心度が低く、消費に消極的な非保有者は、ライフステージや居住環境の変化など、特別な事情がない限り、車保有への態度変容は見込みが薄いと考えられます。

一方、非保有者の中でも「車が欲しい」という意識の消費者はどうでしょう。将来に対する経済的な不安があり、車の非保有理由として「経済的な余裕のなさ」が挙がりました。一方、そもそも「旺盛な消費意識」が車を欲しくない人に比べて高く、日常生活においても車を欲しくない人よりお金の使い道が多いことが確認できました。このことから、車を買う経済的な見込みが立てば、短期的にはお金を使うことを厭わない人物像が見えてきます。

そんな「欲しいけど持っていない人」の短期的な経済力という課題に対して、「車を買う際、金融商品を利用してもらう」という手段が、車保有の背中を押す一手になるかもしれません。図表8のデータは、2020年~2023年(11月時点)における、車の購入時(新車に限る)における支払い方法の推移を示したものです。

図表8

車の購入時における支払い方法(※新車に限る)

いまだに現金一括購入者が半数を超え、一般のローン・残価設定型のローン/クレジット・リースといった、いわゆる「金融商品」に該当する購入方法を選んでいる人は少ないことがわかります。時系列の観点で見ても、この4年で金融商品の選択率はステイで上昇はしていない状態です。各社が様々な金融商品を取り揃えていることを鑑みると、消費者側の金融商品に対する「知識の会得・理解」が進めば、「短期的に見た経済的な余力のなさ」から購入を踏みとどまっていた消費者が車購入に動くかもしれません。

この記事では、車の非保有者に着目してデータを分析していきました。確かに「若者の車離れ」という言葉の通り、非保有者は若い世代が多いことは事実です。しかし、車を欲している気持ちはむしろ若者の方が強く、また、短期的な金銭面の課題が解消されれば、旺盛消費なかれらは積極的に車保有に動く可能性も見えました。かれらが車の保有に向かえば、市場に与える影響は小さくないでしょう。
ミレニアル世代の筆者としても、自分を含めた同世代が各自の車を持ち、友人たちとマイカーを自慢しあう未来に期待し、今後も消費者の意識を追いかけていければと思います。

おわり

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