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自動車販売のオンライン化を考える -8,000人の声から探る今とこれから-

※この記事は、日刊自動車新聞の“インテージ生活者インサイト”コーナーにインテージのシニアリサーチャー重岡伶奈が寄稿した連載を再構成したものです。

テスラやヒョンデ、BYDなど一部の輸入車メーカーは、日本で自動車のオンライン販売を開始しています。店舗を訪れずに購入できる点が特徴で、当然ながらディーラーによる装備説明や見積もり対応もなく、情報収集も基本的にはオンラインで行われます。

このまま、日本の自動車販売はオンライン化が進むのでしょうか。それとも、依然としてディーラー販売が主流となるのでしょうか。本コラムでは、オンライン化が進む自動車購入における現状と今後の展望を、「半年後以降に新車を購入予定」の約8,000人を対象に実施したアンケート結果を基に探っていきます。

①自動車購入時の情報収集の方法は?

まずは、自動車の情報収集におけるオンラインの活用状況を見てみましょう。自動車購入時の情報収集の方法はどのようなものが想定されているのでしょうか(図表1)。「インターネットやSNSで調べる」と回答した人は88%で、40代以下では9割を超えます。ただし、「販売店で実車を確認する」と答えた人は94%にのぼり、「インターネットやSNSで調べる」を上回る結果となりました。オンラインで完結して購入車種を決めるというよりは、販売店で実車を確認することを前提に、あらかじめ候補を絞るためにインターネットが活用されているようです。

図表1

半年後以降の自動車購入予定者が想定している情報収集の方法

では、インターネットやSNSによるオンラインの情報収集にはどのようなアプリが使われるのでしょうか(図表2)。利用するアプリのトップは Web ブラウザアプリ(SafariやGoogle Chromeなど)で85%、2位はYouTubeの55%でした。それ以外のアプリの利用率は1~2割程度にとどまります。

図表2

インターネット・SNSでの検索予定者が使用するアプリ

WebブラウザとYouTubeの使い分けを探るため、「そのアプリを使ってどのような情報を得られると思うか」を見てみましょう(図表3)。 Web ブラウザで得られる情報の上位は、「価格」「外装デザイン」「装備」などです。メーカーの公式サイトや個人ブログ、比較サイトなど、さまざまな情報源があり、特定車種に関する詳細情報まで網羅的に調べることが可能です。
一方、YouTubeにおける上位項目は「外装デザイン」「内装デザイン」「口コミ」です。Webブラウザと比較すると、「走行感」の選択率が20ポイント以上高くなっています。「走行感」が確認できるのは、動画で実際の車両や走行シーンを見られるYouTubeならではといえるでしょう。

図表3

ブラウザ・YouTubeのアプリで得られると思う情報

検索の際のキーワードは?

前章で、およそ9割の人が購入検討時にインターネット検索を行っていることが明らかになりました。次に、購入意欲の段階や重視ポイント、検討プロセスを理解する手がかりとなりそうな「インターネットやSNSで検索する際、どのようなキーワードを使っているのか」を確認します。

アンケートでは、自由記述で「検索したいワード」を記入してもらいました。「軽自動車 口コミ」「トヨタ ミニバン」のように、実際の検索行動に近づけるため、複数の単語を組み合わせた回答も可能としました。

これらの自由回答をワードクラウドに集計した結果が図表4です。ワードクラウドでは、出現頻度が高い言葉ほど大きく表示されます。たとえば、最も大きく表示されている「新車」は728回、その下の「おすすめ」は186回の出現数でした。

図表4

自動車購入権当時の検索キーワード

ワードクラウドから、以下のような言葉が多いことがわかります。

  • メーカー名(トヨタ、ホンダ など)
  • ボディタイプ(軽自動車、コンパクトカー、SUV など)
  • 車種名(シエンタ、ハリアー、アルファード など)
  • レビュー関連(人気、オススメ、口コミ、評価 など)
  • コスト関連(燃費、価格、購入、安い など)

メーカー名や車種名で検索する人は、検索を始める前からある程度購入したい車の候補が決まっており、その車が自分の求める条件に合っているかどうかを確認しているのかもしれません。

③自動車を買う時に知りたいことは?

前章では、「自動車の購入を決めた場合、インターネットやSNSで検索する際に、どのようなワードを使っているのか」の結果をワードクラウドで確認しました。車種名が多く、生活者の一定数は購入したい車種に目星をつけた上で情報収集を始めることがわかりました。ここからは、検索ワードの回答をカテゴリー分けして、定量的に確認してみます。

検索ワードとして一定の出現が見られた回答を、図表5のようにまとめました。
実際の検索行動に近づけるため、「軽自動車 口コミ」「トヨタ ミニバン」といったように、複数の単語を組み合わせて回答することも可能としました。
2つの言葉が回答されている場合は、それぞれのカテゴリーにカウントしています。

図表5

検索ワードのカテゴライズ

では、「車種をすでに決めている人」と、「まだ決めていない人」では、検索行動の違いはあるのでしょうか。

まず、車種をすでに決めた状態で検討行動を始めた人については、第2章ですでに車種に目星をつけている人が多そうだ」と言及しましたが、実際には30%程度の人が「車種名を含めて検索する」と回答していました。
車種名と一緒に検索(例:アルファード 新型、ジムニー 評判 など)されている言葉を集計すると、図表6の通りの結果でした。レビューを確認したり、最新モデルの特徴を調べたりという人が多いようです。
車種名だけで検索してもメーカーの公式HPなどにたどり着くこともできるので、車種名のみでの検索が多いことも特徴です。

図表6

車種名と一緒に検索されるワード(3%以上のものを抜粋)

では、車種名を決めずに検索する人はどのような情報収集をしているのでしょうか。車種名を含めずに検索されたワードの上位は図表7の通りです。メーカー名やボディタイプはすでに決めたうえで、カテゴリー内で絞り込みがされているようです。それ以外には、燃費(電費)・価格といったコスト面が続きます。

図表7

車種名なしで検索されるワード(3%以上のものを抜粋)

そもそも自動車の車種を調べるよりも先に、自動車の「買い方」を調べる人も3.7%います。自動車を初めて買う人は、「自動車の買い方自体が分からない」という人も多いでしょう。

「外装デザイン/カラー」を調べる人はわずか1.2%となりました。
デザインも自動車選びにあたってはかなり大きな要因ですから、少々意外なことのように感じます。ただし、自動車のHPやその他レビューサイトにも必ず外装や内装の写真は掲載されていますから、わざわざ検索ワードとして打ち込む必要はないとされているのかもしれません。

販売店に求められていることは?

ここまで、インターネットでの情報収集について詳しく確認してきました。すでに購入候補となる車種を絞ったうえで情報収集を始める人が多いこと、それ以外にはレビューやボディタイプ/価格の重視度が高いことがわかりました。

では、販売店に求められる情報は何なのでしょうか。

自動車を購入する際、「インターネットやSNSで調べる」人は88%と、情報収集のオンライン化は着実に進んでいます。しかし、「販売店で実車を確認する」は94%と、オンラインのみで検討を終えたいという考えの人はまだまだ少ないようです。
実際に、WEB完結で車を購入できるサービスを利用したいか、という質問には「ぜひ使いたい」と回答した人はわずか3.6%でした(図表8)。

図表8

WEB完結で車を購入できるサービスの利用意向

では、販売店に求められていることは何なのでしょうか。ここからは、「それぞれの検討行動において、どのようなことを期待して情報収集を行うか」を確認してみましょう。

まずは、オンラインでの情報収集についてです(図表9)。 Web ブラウザ(Safari・Google Chromeなど)では、「口コミ」「価格」「安全性能」の確認が上位に挙がっています。YouTubeも同様に「口コミ」の確認が多く、加えて「外装デザイン」「内装デザイン」といった視覚的な情報の収集が主な目的となっているようです。

図表9

オンラインでの情報収集で確認すること上位3項目

次に、販売店で求められる情報について見てみましょう(図表10)。

図表10

販売店での情報収集で確認すること上位3項目

販売店員との相談で確認したいことの上位は、「価格」「安全性能」「装備」です。

これはWebブラウザで確認したい項目と似ていますが、自分で調べるだけではわかりにくい装備の詳細や、オプションを含めた価格など、より具体的で細かな情報を得るためには販売店員との対話が重要と考えられているようです。

一方、実車確認では、「内装デザイン」「外装デザイン」「車両サイズ」の確認が重視されます。特に「車両サイズ」は、自身の体格と照らし合わせて確認する必要があるため、実車での確認が不可欠です。試乗では、ほとんどの人が「走行感」の確認を行っています。

このように、インターネットサイト・動画と、販売店での相談・実車確認・試乗では、それぞれに求められる情報が異なります。オンラインである程度の情報を得たうえで来店する生活者には、オンラインでは伝えきれない細やかな情報を提供することが求められているようです。

少し話はそれますが、自動車よりも先にオンライン販売が進んだ業界として、衣類業界があります。2004年、「洋服は現物確認・試着が必須だ」という常識を覆す存在として、ZOZOTOWNがサービスを開始しました。

現在ではZOZOTOWNだけでなく、各ブランドも独自のオンラインショップを展開しています。とはいえ、オンラインで購入した服を着てみると「なんだか似合わない…」という失敗も少なくありません。「試着は絶対にしたい」「店舗で購入したい」という人も多く、オンライン化が進む一方で店舗販売も根強く残っています。

洋服よりも高額な買い物である自動車では、「乗ってみるとなんだか違う」という失敗は簡単にはできません。WEB会議サービス「Zoom」などを活用したオンライン商談が可能になり、自動車販売のオンライン化も進んでいますが、「実車の確認」「試乗」を価値として、店舗販売のニーズは残り続けるでしょう。

販売店側も、顧客との貴重な接点である「実車の展示」「試乗体験の提供」自体がより魅力的で印象に残る体験になるような工夫が必要かもしれません。

著者プロフィール

重岡伶奈プロフィール画像
重岡伶奈
2021年に大阪大学卒業後、インテージ入社。大学では行動経済学を専攻。
入社後は主に自動車業界の調査を担当している。

2021年に大阪大学卒業後、インテージ入社。大学では行動経済学を専攻。
入社後は主に自動車業界の調査を担当している。

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