自粛要請解除後 初の旅行はどうなる?~ウィズコロナの旅行需要を先読み~
5月25日の緊急事態宣言全面解除を受け、政府は観光振興の取り組みとして、6月下旬から状況を見つつ徐々に都道府県外への国内旅行を活性化させていく方針を発表しました。
旅行好きの人にとっては「我慢をしていたお出かけや旅行をしたい気持ち」と「自衛や他者からの批難を警戒する気持ち」の両面の折り合いをつけながら、今後の旅行を計画していることが想像されます。
平時の6月という時期は夏休みの旅行や帰省の予定は既に決まっている、もしくは計画中の時期になります。新型コロナウイルス感染の流行と緊急事態宣言による外出自粛要請を経て、生活者の今後の旅行に対する意識はいま、どのようになっているのでしょうか。
この記事では、緊急事態宣言解除後の初の旅行を、生活者がどのように想定しているのかを見ていきます。
第3回目の調査は緊急事態宣言全面解除からおよそ1週間後のタイミングに行いました。(実査期間6月1日~6月3日)
●これまでの自粛に関する世の中の流れ
4月7日(火) 緊急事態宣言発令(7都府県)
4月16日(木) 宣言の対象を全国に拡大
5月7日(木) 緊急事態宣言延長開始
5月14日(木) 39県宣言解除
5月21日(木) 近畿2府1県宣言解除
5月25日(月) 緊急事態宣言解除(全国)
目次
解除後の初の旅行はいつ? 8月と10月がピークの見込み
まず、5月25日の緊急事態宣言の解除を受け、次に旅行に行くのは、いつ頃を想定しているか、具体的な時期について聞いてみました。(図表1)
図表1
年内では8月と10月にピークがありそうです。6月から8月までに旅行を想定しているという回答が25%。12月までを含めた2020年以内に旅行を想定している人は52%でした。全国で約半数の方が、年内の旅行を想定しているようです。それでは、具体的にどのような旅行を想定しているのか、次で見ていきます。
解除後の初の旅行の目的は?誰と? 動き出しは温泉旅行、少人数・家族の旅行から
この先最初に行く旅行の目的はどのようなものか、年内の旅行を想定している人に聞いてみました。図表2は、夏(6~8月)と秋冬(9~12月)それぞれのタイミングでの解除後初旅行の目的を聞いた結果です。
図表2
「温泉」という回答が夏で45%、秋冬で56%と、いずれも最も多い結果となりました。年内の旅行の目的は温泉という生活者が多く、9月を過ぎるとさらにそのニーズが高まりそうです。
夏と秋冬で比較すると、夏に「家族や親戚に会う」が秋冬よりも多く、生活者の“まずは夏の帰省”で暫く会えていなかった家族の顔を見に行く・見せに行くという気持ちが垣間見えます。
また、「温泉」とともに「宿泊施設でゆっくりする」が夏よりも秋冬に多く、観光スポットを訪れる・アクティビティを行うというより、自宅以外の場所でのんびりと過ごしたいという気持ちが秋冬に向けられているようです。
続いて、初の旅行は誰と行くか、同じように年内の旅行を想定している人に聞いてみました。ここでも、夏(6~8月)と秋冬(9~12月)それぞれで結果を見てみました。(図表3)
図表3
「夫婦・カップルだけの旅」という回答が夏で31%、9~12月で36%と、いずれも最も多い結果となりました。年内の旅行はペアで旅行する生活者が中心となりそうです。
夏と秋冬で比較すると、夏は「子供がいる旅」「ひとり旅」が秋冬よりも多く、前述の“まずは夏の帰省”という目的からも、できるだけ少人数、また家族だけの旅行から、自粛後の生活者の旅行は動き出しそうです。
旅行先の施設に求めることは? スタッフと利用者双方のマスク着用など、重視するのは飛沫対策
緊急事態宣言は解除されましたが、新型コロナウイルスの流行は完全に終息はしておらず、第2波・第3波も警戒されています。この先、旅行をする際にも、生活者は注意を払いながら行動をすることが求められます。
それでは、実際に旅行を想定している人達は、この6月時点で旅行先にどのようなことを求めているのでしょうか?旅行やお出かけ先の飲食店、お土産店、宿泊施設、案内所などの施設に求めることを聞いてみました。(図表4)
図表4
施設内で実施してほしいことでは、「施設スタッフのマスク着用」「人との間隔を空けた座席の配置」「接触箇所の定期的な消毒」「食事の際はビュッフェではなく配膳式にする」、利用者に対して実施してほしいことでは、「利用者のマスク着用義務化」「利用者に対する消毒の要請」「利用者に感染者が生じた場合の開示や連絡」「利用者の制限」で4割以上の回答がありました。また、情報提供してほしいことでは、「感染防止対策の開示」が36%の回答がありました。
マスク着用や間隔を明けた座席が上位となり、“飛沫”に対する警戒が“直接の接触”に対する警戒よりも強いように思われます。また、施設そのものよりも、自身と同じ“利用者”へのマスクや消毒などの対策とその徹底を施設側に求めているようです。
県外からの旅行者 地元の人が施設に求めることは? 利用者のマスク着用義務化で安心アピール
先ほどは旅行者が受け入れ側の施設に求めることを確認しました。一方、観光地では旅行者の要望だけではなく、「県外から旅行者がくること」を地元の人の許容してもらうことも重要になります。同じように、県外から旅行者を迎える地元の飲食店、お土産店、宿泊施設、案内所などの施設に求めることを聞いてみました。(図表5)
図表5
「利用者のマスク着用義務化」が最も求められており、約5割の回答がありました。
また、施設内で実施してほしいことでは、「施設スタッフのマスク着用」が44%で最も多く、「人との間隔を空けた座席の配置」が41%、「接触箇所の定期的な消毒」が40%で続いています。一方で、「直近2週間の体温履歴の提示」「新型コロナウィルスの陰性証明書の提示」は1割に満たず、そこまでの対策は、この6月時点では求められていないようです。
また、情報提供してほしいことでは、「感染防止対策の開示」で34%という回答でした。
旅行を想定している人と同じく、地元の人も同じような対策を求めているようですが、“利用者のマスク着用”への要望は特に強いようです。
この数か月で、新型コロナウイルスに対して効果のある(と思われる)対策についての情報は日々変化しています。
今は“情報”よりも、“目に見える対策”を講じることが、地元の人の理解を得ることにつながりそうです。
「Go To Travelキャンペーン」はどれくらいの人が利用する? 6~7割が年内利用に前向き
最後に、政府よる観光需要喚起策で、7月下旬以降に開始される見通しとなっているGoToキャンペーン事業の一つ「Go To Travelキャンペーン」について、宿泊割引やクーポンなどの利用意向について聞いてみました。
2020年の夏(6~8月)と秋冬(9~12月)、そして2021年のそれぞれの旅行について、意向を聞いた結果が図表6です。
図表6
2020年では、夏に旅行を想定した人のうち約7割が、秋冬で約6割の人が利用に前向きな回答がありました(積極的に利用したい+前向きに利用を考えたい)。2021年に旅行を想定した人で見ても、約5割の人が利用に前向きなようですので、“旅行に行きたい気持ち”の後押しに一定の効果はありそうです。
飲食店等も含めたGoToキャンペーン事業全体の予算は1.7兆円という、観光促進事業として、過去に類をみない規模で計画されています。1泊1人あたり最大2万円分のクーポン付与というインパクトもあり、観光業界のみならず、 数か月に及んだ“巣ごもり”が続いた生活者にとっても、今後も注目されていくのではないでしょうか。
日々刻々と変わる状況の中、生活者のサービス利用に対する考え方や意識は今後どのように変化していくのでしょうか。知るGalleryでは、今起きている変化を引き続き追いかけます。
今回の分析は、自主企画調査を用いて行いました。
【自主企画調査(ネットリサーチ)】
調査地域:日本全国
対象者条件:15~79 歳の男女
標本抽出方法:弊社キューモニターより抽出しアンケート配信
ウェイトバック:2015年度実施国勢調査から推定されたエリア×性年代の人口構成比に合うようにウェイトバック集計
標本サイズ: n=819
調査実施時期: 2020年6月1日(水)~6月3日(金)
調査項目:自粛要請中のサービス利用状況、流行以前の状態に戻るサービスとその具体的な時期、働き方・テレワーク実態、 自宅での過ごし方(ゲーム・動画など)、外出時の移動手段 など
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