心強いビジネスパートナー 「デザイン思考、アート思考の実践者」であるクリエイターの特徴は?
少し前から「デザイン思考」や「アート思考」という言葉がビジネス上で用いられるようになりました。デザイン思考は課題解決に焦点を当てる、ユーザー中心のプロセスです。アート思考は自己表現や創造性を重視し、自由な発想を促します。商品やサービス開発においては、「デザイン思考」を基盤としてユーザーのニーズや問題を明確にし、「アート思考」を取り入れて独自性や創造性を加えることで、実用性と革新性を兼ね備えた魅力的な製品を生み出すことが可能と言われています。
「デザイン思考」「アート思考」いずれも、その立役者は「クリエイター」であることが多い様です。「クリエイター」たちが触れている情報源を見てみたり、興味を持っていることに関心を持ってみたりすることが、「デザイン思考」や「アート思考」に近づき、商品企画やサービス企画時に、創造的なアイデアを生み出すヒントになるかもしれません。そこで、この記事では「クリエイター」とは、どんな人達であり、どのように情報を収集したり、どのような事に興味を持っている人なのかを調査によって明らかにしたいと思います。
令和2年の国勢調査(総務省統計局)によると、職業が「著述家、記者、編集者、美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者、音楽家、舞台芸術家」に分類されるのは、519,900名と就業者の1%程度 になります。また、ビジネス上で様々なクリエイティブ活動に携わる人も「クリエイター」と呼ばれます。今回、「アート思考」を実践する前者を「クリエイター:アーティスト(以降、アーティスト)」、「デザイン思考」を実践する後者を「クリエイター:クリエイティブ・ワーカー(以降、クリエイティブ・ワーカー)」としました。
ここからは、「クリエイター」である「アーティスト」と「クリエイティブ・ワーカー」に「一般の人(以降、フツウの人)」 を加えた3者を比較し、情報感度が高く、発想力や創造力があると言われる「クリエイター」の特徴をみていきましょう。
目次
1.「アーティスト」と「クリエイティブ・ワーカー」
はじめに、今回「アート思考を実践」すると定義した「アーティスト」や、「デザイン思考を実践」する「クリエイティブ・ワーカー」は、どのような作品や、役割を担当しているのかを調べてみました(図表1)。「アーティスト」がクリエイションの対象とするものをみてみると、対象としているもので高かったのは、「動画・映像(24.0%)」「音楽(19.1%)」「写真(16.7%)」でした。「クリエイティブ・ワーカー」の主な役割では、「商品企画」が最も高く、24.3%でした。
図表1
2.クリエイターの興味・関心はどこに
クリエイターが普段何に興味・関心を持っているのかを知ることにより、かれらの発想が何をベースにして生まれているのかがわかるのではないでしょうか。
そこで、興味・関心があることの回答トップ5(図表2)をみると、「アーティスト」「クリエイティブ・ワーカー」「フツウの人」いずれにおいても「音楽、映画、小説等の作品を楽しむ」「旅行や観光」「自分自身の健康」が共通してランクインしていました。
図表2
さらに「フツウの人」との差異 からそれぞれの特徴を見てみましょう。トップ5(図表3)をみると「アーティスト」は「文化や芸術を鑑賞する(フツウの人+33.6ポイント )」「自分の作品の発表(フツウの人+31.1ポイント)」など、作品に触れることへの関心がより強い人達だとわかります。「クリエイティブ・ワーカー」はというと、「車の運転(フツウの人+20.5ポイント)」「株式投資・投資信託(フツウの人+19.6ポイント)」「スポーツ観戦(フツウの人+16.3ポイント)」となります。アクティブに出かけることが多く、資産形成にも興味関心が広いビジネスパーソンが「クリエイティブ・ワーカー 」なのだと見てとれます。
図表3
3.クリエイターの情報感度
独自の発想を拡げるためには、やはり情報のインプットが大事です。情報感度が高いクリエイターは、どのように情報をインプットして、発想を拡げているのでしょうか、「フツウの人」とクリエイターの差を見て行きましょう。ここでは、商品・サービスのことや世の中の流行をチェックするための情報源に限ってみてみました (図表4)。
図表4
「アーティスト」「クリエイティブ・ワーカー」は、いずれも「ネットの記事」がトップです。「フツウの人」 は「テレビのCMや、番組」からの情報入手がトップであり、情報を受動的に入手していると言えます。「アーティスト」「クリエイティブ・ワーカー」は、自分の興味・関心事を能動的に検索し、「ネットの記事」から情報を収集していると言えます。
また「クリエイティブ・ワーカー」は「電車・駅、屋外の広告(看板やポスター等)」が上位に挙がっており、オフラインの情報チェックも欠かさず、 仕事に役立ちそうな情報から自分の趣味など実にさまざまな情報を収集していそうです。
4.クリエイターのこだわり
ここまで、クリエイター の興味・関心、情報源 を見てきました、これらのインプットから、クリエイターはどの様に創造的なアイデアを生み出しているのでしょうか。こだわりたいことを見ると「クリエイター」は、「フツウの人」と比較すると全ての項目において「強いこだわり」があることが分かります(図表5)。これまで得た情報から、この「強いこだわり」のフィルターを通して物事を観察し、アイデアにつなげているのではないでしょうか。
図表5
差異に着目してみてみると、「クリエイティブ・ワーカー」では「新しい製品やサービスにこだわりたい」「社会課題に主体的にかかわることにこだわりたい」が「フツウの人」「アーティスト」よりも特に高くなっています。この辺りのこだわりが、ビジネス上の課題解決や新製品・サービス開発に活きているのかもしれません。
5.「これから流行る(注目される)」と思うこと
クリエイターは、「文化や芸術」「投資」「政治・経済」と「フツウの人」と比較して幅広い興味・関心を持っていました(図表3)。かれらは将来を見る目も優れているのはないでしょうか。そこで、これから流行る(注目される)と思うことを聞いてみました。
結果は図表6の通り、「アーティスト」「クリエイティブ・ワーカー」「フツウの人」いずれにおいても、「人工知能(AI)と機械学習」が最も高くなりました。「アーティスト」「クリエイティブ・ワーカー」いずれも4割前後となっており、「フツウの人(28.7%)」を大きく上回っています。
図表6
また、「これから流行ると思う(注目される)」と思うことを自由に挙げてもらったところ、こちらでも「AI」が多く挙がりました。「アーティスト」「クリエイティブ・ワーカー」では110件以上となり、「フツウの人(36件)」を大きく上回りました。
さらに、同じキーワードでも「アーティスト」と「クリエイティブ・ワーカー」では注目するポイントが異なる様子がうかがえました。「アーティスト」は「AIを使った映像作品」「AIコンシェルジュ」「AIを利用したゲリラ豪雨発生確率サイト」といった、AIで何をするかに踏み込んだ回答が多くあったことが目立ちました。 「クリエイティブ・ワーカー」では「AIによる災害予測」「AI搭載スマホ」「生成AIによる働き方改革」「AI受付ロボット」といったビジネス寄りの回答が特徴的でした。
クリエイターは、同じAIに関してもより具体的な使い方まで思考出来ています。世の中の流行り言葉だけでなく、AIを何に活用したらどのようなメリットが生まれるかを、想像する力があると考えます。だからこそ、このクリエイターの発想力を、今後のビジネスのために生かせるのではないでしょうか。
6.まとめ
「アーティスト」と「クリエイティブ・ワーカー」は「フツウの人」と比較して情報への関心度が高く、より能動的に情報を収集していました。収集した情報を日頃から磨いている感性や蓄えた知識によって、取捨選択し、使える情報として変換している様子も見てとれました。「AI」や「DX」といった新しいデジタル技術の潮流を理解するとともに、社会や企業活動にどう生かすのか、まで一歩踏み込んで具体的な活用を考えていたことにもその特性を感じることができます。
また、「アーティスト」はまさにモノ・コト(作品)をクリエイトする人で、「クリエイティブ・ワーカー」は商品やサービス開発、さらには事業創造や社会創造に想いを馳せる人、といったプロファイルも浮き上がってきました。そうした姿からクリエイターはイノベータ理論におけるイノベータないしはアーリーアダプターに該当する人が多い、と考えられます。世の中にない商品やサービス開発の際に協力を求めるパートナーとして頼もしい存在と言えるのではないでしょうか。
皆さまの近くに「アーティスト」系や「クリエイティブ・ワーカー」系の方はいますか?
クリエイターを理解し、かれらの思考をトレースすることが、「デザイン思考」「アート思考」のベースになるかもしれません。 また、一緒に仕事をし、アイデアを生み出す上でも、かれらを知ることは重要です。
インテージでは、現在の職業・役職・役割や勤務先の規模などについて、事前に約91万人から聴取済みの「ビジネスパーソンパネル」を準備しており、今回調査した「アーティスト」や「クリエイティブ・ワーカー」に定量調査などでダイレクトにアプローチすることが可能です。一緒にかれらの声を聞いてみませんか。
https://www.intage.co.jp/service/platform/monitor/subpanel/
今回の調査結果の詳細をこちらからダウンロードいただけます。クリエイターが注目しているキーワードなど、公開していないデータもあります。是非ご覧ください。
調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:20歳~69歳男女を以下の条件にて区分
※クリエイターは「ビジネスパーソンパネル 」で以下の各項目に回答した人を対象とした
① クリエイター:アーティスト
職業で「著述家、記者、編集者、美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者、音楽家、舞台芸術家」いずれかに従事していると回答した人(副業を含む)
② クリエイター:クリエイティブ・ワーカー
就業者、かつ「商品企画、●●デザイナー(サービスデザイナーなど)、プロダクトマネージャーなど」のクリエイティブな役割を担っていると回答した人
③ フツウの人
条件は付けておらず、性年代別で人口構成比に合わせて回収
標本抽出方法:弊社モニター(マイティモニター)より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=3,120 (①n=1043、②n=1016、③n=1061)
調査実施時期: 2024年8月8日(木)~2024年8月14日(水)
(出典)「平成2年国勢調査結果」(総務省統計局)(第9表 職業(小分類))を加工して作成
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