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リピートと顧客体験の関係性 ~何がリピートにつながるのか?8つのカテゴリーで分析~

市場が成熟化し、商品単体での差別化が難しくなっている中で、企業は生活者の行動に着目し、どうしたら自分たちの商品を手にしてもらえるか、リピートしてもらえるかを試行錯誤している状況にある。新規顧客獲得にかかるコストはリピート顧客獲得・維持にかかるコストの5倍必要である(1:5の法則)※1とも 言われており、企業がリピートを大切にする理由となっている。
顧客からすると、「商品やサービスを探す」「情報を入手する」「店頭で確かめる」「購入する」「使用する」「問い合わせする」「修理依頼する」といった、企業との様々な接点で得られる顧客体験の“良し”“悪し”を踏まえて、その商品・サービスがリピートに値するかを判断していると思われる。
そこで、このような顧客の体験が、実際に商品・サービスのリピートにどのように影響しているのか、8つのカテゴリー※2の商品やサービスを3年以内に購入した20歳~79歳の男女1115名を対象にアンケート調査を行い、分析した。

※1 Fred Reichheld(以下フレッド・ライクヘルド)氏が発見したと言われている。彼はNPSの考案者としても知られている。
※2 車、EV、バイク、調理家電、理美容家電、空調機器、保険、NISA・投資信託

1. 企業と顧客の一般的な接点

図表1は、商品(サービス)検討~購入~使用~廃棄に至る一般的な図である。

図表1

一般的な顧客と企業の接点

この図のように、企業と顧客の間で多くの接点が存在している。
例えば、商品やサービスの購入前には、企業のホームページで情報を入手したり、電話やメールで詳細を問い合わせたり、店頭で現物やPOPなどの情報に触れて比較検討を行う。
購入後は、商品の使用時に操作等の不明点を企業に問い合わせることもあるだろうし、不具合が起こった時やメンテナンスや点検が必要な時には、アフターサービスを利用する。
また、商材にもよるが、商品の使用後には、販売店等を経由して廃棄やリサイクルを依頼するといった接点もある 。
このように、企業と顧客の間には、購入前や使用時、使用後に多様な接点がある。

2. 「良い顧客体験」がリピートにつながる

ここからは、各接点での顧客体験の“良し”“悪し”により、リピート購入が左右されるのか、調査結果から確認していきたい。

<良い顧客体験その1:アフターサービス>

購入時の重視点を「リピーター」と「非リピーター」※ で比較したところ、車(EV以外)では「アフターサービス」を重視する割合がリピーターで20.3%、非リピーターで13.4%と6.9ポイントの差が見られた。リピーターがアフターサービスをより重視していることが分かる。 同じく空調機器では、リピーターでアフターサービスを重視している人の割合が8.4ポイント多い結果となった。

※リピーター:次も同じブランドの商品を購入した顧客 (同じブランドのサービスに加入した顧客)
 非リピーター:買い換え時(再加入時)に、同じブランドの商品を選択しなかった顧客

では、“良い”アフターサービス体験は、実際にリピート購入に繋がるのだろうか。図表2は、満足した人 のリピート購入意向を購入者全体 と比較した図である。

図表2

アフターサービス体験と、リピート購入の関係

車(EV以外)では、「リピート購入したい」 (同じブランド(メーカー)を選ぶ・たぶん選ぶ)と答えた人の割合が、購入者全体と比べて7.3ポイント高い結果になった。また、空調機器では、購入者全体と比べて27.1ポイント高い結果となった。
“良い”アフターサービスを体験した人は、リピート購入する確率が高まると言えそうだ。

<良い顧客体験その2:問い合わせサポート>

同様に、保険やNISA・投資信託において重要な顧客接点である「問い合わせサポート」の、リピートへの影響を調べてみた。
保険では、リピーターが問い合わせサポートを重視する割合が8.1%、非リピーターが重視する割合が5.6%と、リピーターの方が2.5ポイント高かった。また、NISA・投資信託では、リピーターの方が3.1ポイント高い結果となった。

では、“良い”問い合わせサポート体験が、リピート加入に繋がっているのか検証してみたい。
図表3は、満足した人 がリピート加入をするのかを確認した結果である。

図表3

問い合わせ体験と、リピート加入の関係

保険では、リピート加入(同じブランド(サービス)を選ぶ・たぶん選ぶ) が、加入者全体と比較して21.1ポイント高い結果になった。同じくNISA・投資信託では、加入者全体と比べて21.4ポイント高い結果となった。
こちらの調査結果からも、“良い”問い合わせ・サポートを体験した人は、リピート加入する確率が高まることが分かる。

ここまで、顧客と企業の接点である「アフターサービス」「問い合わせ・サポート」時に顧客が“良い”体験をすると、リピートにつながることを確認してきた。価格や性能、品質、デザインといった要素も顧客が購入を決めるポイントであるが、リピートを増やすためには、各接点での“良い”顧客体験を大事にしたい。

3. リピート購入時の情報検索行動

初回購入時と買い替え購入では、アップグレードされた機能の内容や自分がお気に入りの機能が継続されて搭載されているかなど、購入時の情報検索行動や媒体が異なっていると思われる。
今回その行動を明らかにするために、リピーターと非リピーターの購入時の情報検索行動の差を検証してみた。
まずは購入者全体の購入時の情報検索行動を確認してみる(図表4)。
リピーター と非リピーターの情報行動検索行動に大きく差が出た「理美容家電」と「NISA、投資信託」を取り上げて説明する。(記事の最後で紹介するダウンロードレポート では8カテゴリーのデータを記載している。)

図表4

購入時の情報検索行動(TOTAL)

理美容家電では、1位は「店頭で確かめた」で34.6%、NISA・投資信託では、1位は「店員/担当者の薦め」「公式ホームページ」 で共に22.9%となった。

では、リピーターと新規顧客では、情報検索行動にどのような差があるのであろうか、両者間の差の上位3位、下位3位に注目してみる(図表5)。

図表5

理美容家電の情報検索行動(リピーター、非リピーター)

“理美容家電”のリピーターがより重視している情報は、「公式ホームページ」29.1%である。非リピーターと比べて18.1ポイントの差がみられた。逆にリピーターが新規顧客と比べて重視しなかった情報は「店員/担当者の薦め」8.2%であることが分かる。非リピーターとは-8.0ポイントの差がみられた。
調査結果からは、“理美容家電”のリピーターは、店員の薦めではなく自身で情報を集めていることが分かる。リピーターを増やす具体的な施策としては、「公式のホームページ」にてリピーターが欲する情報の充実が大事であろう。

図表6

NISA・投資信託の情報検索行動(リピート、非リピート)

同様にNISA・投資信託に関して確認すると、リピーターは情報検索時に非リピーターと比べて、「インフルエンサーからの紹介」を重視していることが分かる。インフルエンサーマーケティングを行う場合は、リピーターを意識した方がよさそうだ。

このように、カテゴリーによってリピーターが重視する情報元が異なっている。リピートを獲得するためには、リピーターが欲している情報を知り、リピーターが重視する情報元から発信することが重要である。

4. 一般的な購入重視点と、リピート理由の違い

前述の通り、リピート購入には、商品・サービス利用時の問い合わせ・サポートやアフターサービスでの“良い”体験が影響する。とはいえ、リピート購入する理由はそれだけではない。最後に、今回調査した8カテゴリーについて、「リピート購入する理由」にどのような特徴があるのかを見てみよう。

1)一般的な購入重視点

まず、「リピート購入」「買い替え購入」 に限らないで、何を重視して購入したかを複数回答で聴取したのが図表7である。

図表7

購入重視視点(複数回答)(上位10位までソート)
※大きな文字でご覧になりたい場合は、資料のダウンロードをお願いします。

多くのカテゴリーで「価格」が1位となったが、カテゴリーによりTOP10に入る重視点は様々となっており、例えば以下のようなことが読み取れる。
・EV(100%電気自動車)と車(EV以外)でも購入重視点が異なりEVでは「ブランド」が1位、「商品仕様」が2位であるのに対し、車では「価格」が1位、「品質」が2位。
・家電製品(調理家電、理美容家電、空調機器)では、購入重視点の2位が「品質」(調理家電43.0%、理美容家電37.5%、空調機器38.8%)となった。毎日使用するからこそ、故障への不安を払拭したいとの想いが「品質」につながったと考えられる。
・保険では、2位に「店員/担当者の薦め」25.4%が挙がり、NISA・投資信託では、3位に「店員/担当者の薦め」20.5%となった。見て判断が難しい保険や、投資商品では、各商品のサービス内容の差異などを担当者から聞くことが、加入判断のポイントになっているようだ。

このように生活者は商品やサービスを選定する時に、やはり「価格」を重視する傾向があるが、価格の次に重視するポイントは、商品やサービスの特性によって異なっていることがわかる。

2)リピート購入の理由

次にリピーターに対して、リピートに至った理由を確認した(図表8)。

図表8

リピート購入(加入)した理由(上位10位までソート)
※大きな文字でご覧になりたい場合は、資料のダウンロードをお願いします。

購入重視点では「価格」が多くのカテゴリーで1位となったのに対し、リピートの理由を確認すると「価格が手ごろ(コスパが良い)」は、車、家電製品では上位に挙がらず、多くのカテゴリーで「品質が良い」が1位となった。不具合なく使用できることがリピート購入の理由となっていることが分かる。
また、「使用していて心地よいから」が車で1位34.1%、理美容家電で2位33.2%と、使用した実感“心地よさが”リピートの上位の理由に挙げられている。

一方で、保険、NISA・投資信託では、購入重視点と同じく「価格が手ごろ(コスパが良い)」27.9%が上位に挙がる。他社・他ブランドでも同様のサービスが存在することが、リピートを妨げる原因になっているのではないか。このように差別化が難しいカテゴリーでは、前章で説明したリピートにつながる「問い合わせサポート」の良さなど、顧客に“良い”体験を提供することが重要と言える。

5. まとめ

車・家電では生活者が商品を使用する時間が長く、商品を通じた体験や経験の良さ「品質」「心地よさ」がリピートにつながるほか、「アフターサービス」時の“良い”体験が、リピート購入につながっていた。
保険、NISA・投資信託では、「サービス仕様/コンテンツ」に加え「問い合わせ・サポート」時の“良い”体験が、リピートにつながっていた。
商品やサービスの成熟化やコモディティ化が進み、差別化がさらに難しくなる中、価格や機能一辺倒の訴求だけではなく、顧客が商品やサービスを通じて“良い”体験ができるような商品/サービス設計や、問い合わせ/アフターサービスの仕組みづくりを行うことにより、顧客に心地よい体験を提供し、その“良い”体験により次回購入(加入)リピートにつなげる戦略が、ますます重要になってくるのではないだろうか。



調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:20~79歳男女個人
標本抽出方法:マイティモニターより適格者を抽出
EVのみCar-kit® にて補填
標本サイズ:合計n=1115
ウエイトバック集計:なし(国勢調査にもとづき性別・年代・地域を母集団構成に合わせて配信)
調査実施時期: 2024年10月11日(金)~2024年10月15日(火)

著者プロフィール

濱 賢太郎(はま けんたろう)プロフィール画像
濱 賢太郎(はま けんたろう)
株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 
未来共創センター長
・大学卒業後家電メーカーへ就職、ワープロ、FAX、携帯電話、通信映像端末、
太陽光発電の商品企画を担当。
・2013年株式会社インテージに入社し、国内外の生活者リサーチ、
コンサルティングに従事。
・2017年「未来共創センター」を設立。
企業との共創による新価値の創出を軸に、共同研究(POC)、
生活者研究を多数実行中。
・現在はWell-being領域に興味関心を持ち
(社)データビリティコンソーシアムに参画
「Well-being部会」を立ち上げ、異業種との共創活動に取組み中。

株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 
未来共創センター長
・大学卒業後家電メーカーへ就職、ワープロ、FAX、携帯電話、通信映像端末、
太陽光発電の商品企画を担当。
・2013年株式会社インテージに入社し、国内外の生活者リサーチ、
コンサルティングに従事。
・2017年「未来共創センター」を設立。
企業との共創による新価値の創出を軸に、共同研究(POC)、
生活者研究を多数実行中。
・現在はWell-being領域に興味関心を持ち
(社)データビリティコンソーシアムに参画
「Well-being部会」を立ち上げ、異業種との共創活動に取組み中。

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