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そのCX、本当に大丈夫ですか【前編】本当に届けたいのはどんな顧客体験?

近年、顧客の獲得・維持・ファン化における取り組みとして重要視されているCX(Customer Experience)。多くの企業がCX向上に注力する一方で、「思うように成果が挙がらない」といった声も聞こえてきます。
そこで、CXを考えるうえで大切にすべき視点を全3編にわたって解説。前編では、「なぜ企業がCX向上に取り組む必要があるのか」を中心にお伝えします。

市場の成熟、顧客行動の多様化、人口減少。さまざまな要因からCXの設計が急務に

CXという言葉は、マーケティングの仕事に関わる人であれば一度は耳にしたことがあると思います。日本語では「顧客体験」と訳され、既存の顧客や未顧客(まだ顧客になっていないが取り込みたい層。以降、“顧客”=未顧客も含みます)に対して唯一無二の体験を届けることで顧客との関係性(期待、満足、ロイヤリティ等)を育み、企業の持続的成長に寄与しようという概念です。ただし、人や企業によってCXの捉え方はさまざまで、「これが正解」といった解釈はありません。問題なのは、CXに取り組む意義を十分に咀嚼しないまま、なんとなく調査をしたり、専門部署をつくったりといったアクションをしてしまうこと。目的が不明瞭なままでは、いくらコストや時間をかけても思うような成果は上がりません。そのためCXと向き合う際には、「自分たちにとってCXに取り組む目的は何か?」と、少し立ち止まって考えてみる必要があります。

なぜ近年になってCXが注目されるようになったのか。それは、世の中が成熟し多種多様な商品・サービスが生まれた結果、他との差別化が難しくなったためと言えます。CXは、いわゆる「モノ消費」から「コト消費」へと、マーケティング自体のパラダイムシフトが起こる中で出てきた概念とも言われます。つまり機能ではなく、「どういった体験を提供できるのか」といった体験価値による差別化を目指そうとする流れの中で、CXが脚光を浴びるようになったのです。

また、デジタル技術やオムニチャネルの浸透も大きな要因の一つです。これらの存在によって、顧客の動きが多様化・複雑化し、従来のマス・マーケティングだけでは顧客へのリーチが困難なケースが増えてきました。こうした変化が起こる中でも、引き続き顧客との関係性を高めるアクションが重要であることから、必然的にCXへの注目度が高まってきているのです。特に人口が減少傾向にある日本では、どのようにして顧客一人ひとりと継続的に接点を持ち、期待や満足もしくはロイヤリティといった顧客との関係性を高めていくのかは、重要な課題と言えます。

デジタル技術やオムニチャネルの浸透イメージ画

「CS」と「CX」の違いとは?

さて、CXが登場する以前から、CS(Customer Satisfaction)という概念が存在していました。言葉も使用されるシーンも似ているため、同じような意味として捉えている方も多いのではないでしょうか。CSもCXも、より良い顧客体験を積み上げていくことで、企業やブランドに対するエンゲージメントを高めていくという目的は変わりません。では両者の違いは何でしょうか。

CSという言葉が主流だった頃は、顧客からのクレーム対応、すなわち「負の部分」を潰していく活動に重きを置いていたケースが多いかもしれません。しかし、市場が成熟し、顧客の多様化・複雑化が進んだ結果、「負の部分」を潰すだけでは『良い顧客体験』を積み上げることが難しくなりました。そして、一つひとつの体験価値を高めていく必要に迫られたことから、CXという概念が広まったのだと考えられます。

また、CXという言葉が一般用語化してきたことによって「顧客にこういった体験を提供したい」という企業の想いが可視化されるようになりました。CSが主流だった時代は、ただ顧客の動向をモニタリングしているだけで、企業として「こうあるべき」という指針や戦略が不在、もしくは漠然としていたように思います。

しかし、CSで取り組んでいたことも、より良い顧客体験の提供には必要不可欠です。重要なのは、CSを包含したCXの取り組みを行うことです。CSを否定する意味での「CSからCXへ」という表現も目にしますが、非常に違和感を覚えます。

CXに取り組むべき企業とは?

CXにはすべての企業が取り組むべきですが、あえて挙げるならば、市場が成熟した業界に身を置く企業は特に注力すべきと考えます。類似する商品・サービスが溢れかえる中、他社と差別化を図ることは、企業の今後を左右するレベルの重要課題だからです。

規模の観点から考えると、顧客とのタッチポイントが多い大企業は取り組むべきでしょう。顧客接点が多ければ多いほど、体験の品質にばらつきが生じやすくなり、顧客への安定した価値の提供が難しくなるからです。それを避ける意味でも、CXを軸にして体験品質の一貫性を維持することにも取り組む必要があると考えます。

直接の顧客接点を持つ企業以外では、たとえばプロダクトを扱う企業も、CXと向き合う時期に来ているように感じています。見た目や機能ばかりに注力し、ユーザーの利用シーンを想定していないプロダクトは、良い顧客体験を創出することが難しいと考えるからです。より良い顧客体験を提供するという視点を持てば、同じプロダクトでももっと別の付加価値を提供できるようになると思います。

「現状の顧客体験」「理想の顧客体験」 その両方を見据えることが大切

CXの設計や改善を進めるにあたって、ほとんどの企業が「現状の顧客体験はどうなっているのか」という点から検討を始めるのではないでしょうか。もちろん重要なことですが、顧客の評価ばかりを見ていると、その企業が本来目指すべき方向から外れてしまう可能性もあります。そのため、まずは会社やブランドとして「実現したいCXの方向性」を整理するという視点を持つことが重要です。企業としてどのような顧客体験を提供していきたいのか、現状の顧客体験はどうなっているのか、そのギャップを埋めるためにどのように活動するべきなのか。理想のあるべき姿を意味する「To be」と、現状を意味する「As is」の両方を把握しておくことが、CXを考えるうえでは大切です。

「現状の顧客体験」「理想の顧客体験」

また、大企業は事業部ごとに縦割りになっていることが多いと思いますが、これは理想のCX設計を妨げる要因となることもあります。CXは顧客の体験が時間とともに進んでいくという時系列性を伴うものなので、部門を超えてシームレスな顧客体験を設計する必要があるからです。さまざまな部門を巻き込みながら全社の共通理解をつくることができれば、CX向上はもちろん、社内の業務効率化が進み、結果としてコストの削減にもつなげることができます。

理想のCXを実現するためのアクションとは

CXの設計や改善を進めるためには、具体的にどのようなアクションが必要なのでしょうか?インテージは、「問い直す」「生み出す」「磨き込む」という3つの取り組みが重要だと考えています。自社のCXの現状や将来設計を問い直し、CXの仮説立案や検証を重ねながら真に価値のある商品・サービスを生み出し、顧客を常時モニタリングすることで商品・サービスを継続的に磨き込んでいく。さらに、これらのアクションを一貫してマネジメントする体制を整えることが重要です。

理想のCXを実現するためのアクション

中編では、理想のCXをかなえるための具体的なアクションについて、詳しく解説したいと思います。

(中編に続く)


関連サービス:CXマネジメント
CXマネジメントは、長年、顧客体験の創出と持続的向上に向けた取り組みを支援してきた当社が持つCX領域の課題解決ノウハウを凝縮したサービスです。顧客向け調査の実施だけにとどまらず、CXマネジメントにおける豊富な支援実績を持つ専任のコンサルティングチームによる総合的な支援と、これまでに蓄積されたノウハウを集約したリサーチサービスやデータ分析サービスを組み合わせ、唯一無二の顧客体験の創出と持続的向上を成し得る企業への変革を支援します。

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お問合せ先:株式会社インテージ 事業開発本部 CXコンサルティング部

著者プロフィール

森川 秀樹プロフィール画像
森川 秀樹
2010年より、JCSI(日本版顧客満足度指数)利用推進パートナーを務める。運輸・航空、自動車、流通、金融など幅広い業界で、データ活用型のコンサルティングを多数行っている。著書に「サービスエクセレンス:CSIによる顧客経験[CX]の可視化」。

2010年より、JCSI(日本版顧客満足度指数)利用推進パートナーを務める。運輸・航空、自動車、流通、金融など幅広い業界で、データ活用型のコンサルティングを多数行っている。著書に「サービスエクセレンス:CSIによる顧客経験[CX]の可視化」。

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