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この冬の第三波 生活者行動への影響は?

新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されてから約1年、状況は目まぐるしく変化を続けています。
知るGalleryでは、夏の時点における生活者行動の変化を「2020年“いつもと違う夏”の生活者行動を振り返る」で振り返りました。

その後、秋から冬にかけての動きを振り返ってみると、
<10月>第二波が落ち着いてきて、対象外となっていた東京が「Go Toトラベルキャンペーン」対象に。「Go Toイートキャンペーン」も全国でスタート。
<11月>北海道で新規感染者数が増加。その後全国にも広がり、北海道と大阪でGo Toトラベルキャンペーンの利用制限がかかる。
<12月>急激な新規感染者数の増加で医療機関が逼迫し、政府がGo Toキャンペーンの全国一律停止を発表。変異ウイルスが国内で確認されるなど不安は高まり、「年末年始はステイホームで」と呼びかけられる。
<1月>大都市圏を中心に緊急事態宣言が発令。国会で特措法改正案が出される。
と、人々が「新しい生活様式」に慣れ、Go Toキャンペーンにより経済活性化の兆しが見えたのもつかの間、これまでにない急激な感染者の増加を受けて今また行動の自粛・制限がかかり、生活者の行動に影響が出てきています。

図表1は匿名化されたドコモの携帯電話の位置情報を元に人口を推計するモバイル空間統計®を用いて、この冬の新宿駅周辺の人口推移を可視化したものです。
※モバイル空間統計®は、株式会社NTTドコモの登録商標です。

図表1daisanpa_01.png

国内で感染が広がる前の2020年1月を基準としてみると、10月には昼間の人口は8~9割、夜の人口は7割前後にまで回復しましたが、11月の中旬ごろから休日の人口に緩やかな減少傾向が見られました。さらに、1月の緊急事態宣言発令後は20時以降の営業自粛要請の影響もあってか、特に夜の人口減が目立ちます。この冬の間にも、夜を中心に生活が大きく変わったことがわかります。

ここからはインテージのパネルデータを使い、この冬の生活者の行動変化を「買い物行動」「食」「メディア視聴」3つの観点から追ってみましょう。

この冬のお買い物行動は?

はじめに、生活者の日常の買い物(食品・日用雑貨品・化粧品・医薬品のいずれかを含む買い物)がどう変化したのか、インテージのSCI®レシートデータで見てみました。
図表2は、リアル店舗・ネット店舗を合わせた全業態計とネット通販、デパートそれぞれにおける総買い物金額の前年比です。

図表2daisanpa_02.png

全業態計での買い物金額は、コロナ禍に入った2020年2月以降、前年比が高い状態が続いており、この冬も高止まったままとなっています。特に、再び緊急事態宣言が出た2021年の1月は、1回目の緊急事態宣言が出た4~5月に次いで高くなっていました。
家にこもる機会が増えた分、「日常の買い物」にかけるお金が増えたようです。

また、もともと年末はスーパーでの買い物金額が増える時期なのですが、この冬は例年よりも早い段階から買い物金額が増え始めていました。暦の関係で例年より年末年始休暇が早く始まった影響もありますが、”Go Toトラベルの一時停止””年末年始の休業”などの報道で人々の行動自粛が促されたため、例年よりも早く年末年始に向けた「備え」をはじめたことのあらわれではないかと考えられます。

ここからは変化が特徴的だったネット通販、デパートについてみていきましょう。

●ネット通販

ネット通販は4月から継続して対前年比2桁増と好調で、この冬はさらに前年比を伸ばしています。11月12日には「全国における一日の新規感染者数が8月のピークを超えて過去最多」と報道がありましたが、ネット通販が特に伸長しはじめたのもこの直後の11月16日週からでした。第三波到来の兆しが見え、ひとびとの警戒心が再び強まったことも、ネットの伸びに影響していそうです。
また、例年の年末年始は、帰省・旅行によってネットショッピングの機会が減少し、買い物金額も減るのですが、この年末年始は高止まり傾向が確認されました。これは昨年のお盆と同じ傾向であり、旅行や帰省自粛が呼びかけられた結果だといえるでしょう。

●デパート

デパートは、2020年4,5月の1回目の緊急事態宣言時に臨時休業を余儀なくされ、大打撃を受けた業態のひとつです。日常の買い物を捉えたSCIレシートデータでも、買い物金額は前年比50%にまで落ちこんでいました。
その後10月には消費増税による買い控えの反動を含むものの、前年並みの水準にまで回復していましたが、冬になって感染者数が増えるに従い、再度マイナス傾向が強まってきています。
例年であれば、年末年始はお歳暮・クリスマス商戦・年末セール・新春の初売り・福袋・・・など、デパートに行く機会が増える時期。また、1度目の緊急事態宣言下とは異なり、お店は開いている状態ではありましたが、新規感染者が増えていく中で「デパートまで足を延ばす」といった行動は控えた人が多かったようです。

●ネット通販で伸びたものは?

この冬、安定的に伸びが見られたネット通販。具体的にはどのようなものが好調だったのでしょうか。また、コロナ禍でネット通販の伸びが続く中、“好調なもの”の顔ぶれに変化はあるのでしょうか。
ネット通販での買い物金額の前年比が高かったものをランキングにして、第二波で迎えた夏(7-8月)と第三波が到来したこの冬(11-12月)とで比べてみました。(図表3)

図表3daisanpa_03.png

夏は家飲み需要でお菓子やつまみ類・ワイン等が伸びていましたが、冬も同様に家飲みに関するものが伸びました。特に、冬はイベントごとで飲む機会が多い上、外飲みを控えた分も家飲みが増えたためか、ワインだけでなく日本酒、焼酎、ビールと各酒類共に大きく伸びています。ネット通販における酒類の伸びは他の業態と比べても大きく、「家飲みが増えて家で消費する量が増えた」ということに加えて「たくさん買う分かさばるから、お酒を買うならネットで」という人が増えたと考えられます。

また、夏になかった顔ぶれとして、冬は冷凍水産(魚介類素材)や洋風食品(チルドのハンバーグやピザなど)がランクインしていました。クリスマスやお正月などの「ハレの日」に 外食を控えて自宅で過ごすことが多かったと思われるこの冬、ちょっと食卓を豪華にする食材や子供が喜ぶ食品を買うことが増えた、ということのようです。

雑貨では夏に引き続きヘアカラー・育毛トニックのネット購入が見られました。感染リスクを減らすため、美容院に行く回数を減らしセルフでヘアケアをしたいというニーズがうかがえます。
夏になかった特徴としては、冬は入浴剤が4位にランクインしました。選択肢の広いネット通販での入浴剤購入。巣ごもり生活が続く中、家でお風呂に入ってくつろぐ時間を充実させるため、こだわって入浴剤を選ぶといった人も多かったのではないでしょうか。

再びの外出自粛、この冬の内食事情は?

ここからは、感染再拡大後に内食機会がどのように変化しているのか、食卓実態を捉えているインテージのキッチンダイアリーのデータでみていきましょう。図表4は京浜、京阪神、東海エリアにおける内食率の推移です。

図表4daisanpa_04.png

第二波が落ち着き、10/1からのGoToイートキャンペーン開始やGo Toトラベルキャンペーンの全国拡大の影響で外出する機会が増えたためか、10月から11月にかけては一時的に内食率が下がる傾向が見られました。
しかし、12月にはGo Toトラベルキャンペーンの停止が議論され、年末年始の帰省や旅行などを控えるように自治体が要請するなど、再び自粛ムードに。呼応するように内食率も上昇に転じました。

ただし、この1月の内食率の高さは、大都市を中心に緊急事態宣言下にあったにもかかわらず、夏の第二波の頃と同程度となっています。波の大きさは違いますが、都市部における飲食店の時短営業という環境は当時と大きくは変わっておらず、生活者が行動を変えたレベルも夏とほぼ同程度だったということかもしれません。

再び家で食事を摂る機会が増えたことにより、特にどのようなメニューが増えたのでしょうか。図表5は前年と比べて食卓出現率が特に増えたメニューをピックアップした結果です。

図表5daisanpa_05.png

昼食では「ハンバーガー」「弁当」が増え、テイクアウト需要の高まりが読み解けます。また、ラーメンなど手間をかけず簡便に済ませられるメニューが並びました。

一方、夕食ではクリスマスなどイベントに伴う外出が控えられた影響からか、「にぎり寿司」「焼肉」といったハレの日に外食で選択されるメニューを家で食べることが増えたようです。

この冬のメディア接触行動は?

家で過ごす時間の増えたこの冬。テレビやスマホなど、メディアに触れる時間にはどのような変化が見られたのでしょうか。
図表6は、テレビ、パソコン、スマホそれぞれのメディアの利用時間の推移です。

図表6daisanpa_06.png

各デバイス共に、1回目の緊急事態宣言時に利用時間が大幅に伸び、その後も前年比プラスが続いています。この冬で見ると、特に緊急事態宣言が出た1月はテレビとパソコンの接触時間の前年比が大きく伸びていました。巣ごもり時間の増加がこれらのメディア視聴時間に影響している様子がわかります。

最後に、アプリ利用実態に見られた、コロナ禍ならではの動きを紹介します。

●デリバリーアプリ

図表7はUber Eats・出前館アプリの一日平均接触率の推移です。

図表7daisanpa_07.png

1回目の緊急事態宣言をきっかけに伸びたUber Eatsはその後も安定的に利用されており、2回目の緊急事態宣言が出された1月には再度伸びが見られました。
一方の出前館は、2020年10月以降に接触率を急激に伸ばしており、その勢いは続いています。有名タレントを起用したCMが話題になったり、「キングオブコント2020」のメインスポンサーに就任したりと、テレビを上手に活用したマーケティング戦略で新規ユーザーを獲得してきた成果だと考えられます。
対象エリアの拡大や、menuやWoltといった後続サービスの登場で、フードデリバリーサービスは2021年もますます盛り上がりを見せそうです。

●定額動画配信サービスアプリ

定額動画配信アプリの中では、Amazon Primeが最も接触率が高く、多くのユーザーを獲得しています。(図表8)

図表8daisanpa_08.png

1回目の緊急事態宣言時に接触率を伸ばした後、一度以前の水準に戻りましたが、その後徐々に接触率を伸ばして12月には過去最高の水準となりました。
まずは在宅時間が増えて見るきっかけができたこと、そして、話題となった恋愛リアリティ番組「バチェロッテ」のような魅力的な独自コンテンツで差別化を図ってきたことが、ユーザー獲得・定着につながっていると考えられます。

他にも、楽天トラベルやじゃらんのような旅行予約アプリの利用率はGo Toトラベルキャンペーンの動きと如実に連動していました。どのサービスも、多くの人がキャンペーン期間、自粛期間をきっかけに利用し、それらの期間が終わると利用が減る傾向は見られましたが、接触率の水準は引き上がっています。この機に「デリバリー」「有料定額配信」「ネット予約」といったサービスの利便性を体験したことで、多くの人の生活の選択肢が広がったのではないでしょうか。

2月12日現在、緊急事態宣言は当初の予定より期間が延長されてしまいましたが、新規感染者数は徐々に減り、「早めの解除」が議論されるようになってきました。また、ワクチン接種に関する情報も少しずつ入ってき始めています。知るGalleryでは、生活者の行動がこれからどのように戻っていくのか、変わっていくのか、これからも追いかけていきます。


今回の分析は、モバイル空間統計®、SCI®、キッチンダイアリー®、i-SSP®データを用いて行いました。

モバイル空間統計®】※モバイル空間統計®は、株式会社NTTドコモの登録商標です。
ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。場所×日時での人口動態を俯瞰することが可能です。
インテージは「モバイル空間統計」の1次販売店です。

SCI®(全国消費者パネル調査)
全国15歳~79歳の男女52,500人のパネルモニターによる食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品に関する消費者市場動向のトラッキングサービスです。
パネルモニターが携帯端末で購入した商品のバーコードをスキャンし、インターネット調査画面から、その商品を購入したチャネルや個数・金額などを入力することで、消費者購買行動が分析できます。継続的に収集している日々の買い物データです。
入力データをレシート単位で捉えることで、日常の買い物行動を俯瞰して捉えることが可能です。
消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません。

キッチンダイアリー®
1,260世帯の食卓・調理の状況を食場面(朝食・昼食・夕食)ごとに継続的に捉えたデータです。商品開発のヒントとして、また、流通向けの販促提案情報としてご活用いただけます。

i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)
インテージの主力サービスであるSCI®(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。

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「出典:「インテージ 知る Gallery」●年●月●日公開記事」

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