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オンライン優先時代に求められる、インタラクティブ性のある新しいWeb調査

コロナ禍下でマーケティングリサーチを行う状況も1年を超えました。この間、オフラインで実施する調査をなるべく避け、オンライン調査を優先する方針をとった企業も多いのではないでしょうか。しかしながら、CLT調査での現物提示や機器を用いた生体反応測定、フォーカス・グループインタビュー内での参加者間相互の刺激(グループダイナミズム)などは、オンラインでどう実現するかという課題が残っています。今回はその中で、参加者間のインタラクティブ性の実現についてとりあげます。

1.オンライン調査におけるインタラクティブ性

インターネット調査がマーケティングリサーチの主流となって久しいですが、その方法は「質問」に対する「回答」を得る一方向のもので、インターネットが持っているインタラクティブ性を活用した調査はそれほど多くありません。

インタラクティブ性には参加者間でのインタラクション(相互作用)と、調査実施者(企業)と参加者の間のインタラクションの2つの方向性があります。

欧米を中心に一般化しているオンライン・コミュニティ調査(MROC)は掲示板形式などを用いてその両方のインタラクションを実現しようとする手法です。しかし、日本では定着が進んでいない現状があります。その原因としては、日本で行う調査では参加者間でのインタラクションが活発になりにくい点や、長期間に及ぶ調査実施者の運用負担などがあげられます。

こういった課題やAI等技術の発展を背景に、最近はMROC以外にもインタラクティブ性に着目した方法がいくつか生まれてきています。例えばRemesh社のプラットフォームでは、参加者が一斉に質問に答えるチャット形式の調査が可能で、自由回答に対する参加者間の共感度をベイズ推定技術を用いて即時に算出することができます。また、インサイト・ファクトリー社の「アイディア・エボリューション」は他の参加者のアイデアを参照した上で再度アイデアを回答する仕組みで、より評価の高いアイデアを生み出すことができます。これらに共通しているのは、参加者間のインタラクションをコントロールされた形で生み出し、利用するところです。

インテージでも、通常のインターネット調査システムをベースに参加者間のインタラクティブ性を実現した手法「ダイナミックサーベイ」を複数社と共同で開発しています。ここからは、この「ダイナミックサーベイ」の仕組みや特徴、テスト調査結果の解説を通して、オンライン調査にインタラクティブ性を取り込むメリットを確認していきましょう。

2.ダイナミックサーベイとは

ダイナミックサーベイは「アンケート画面内で他の参加者の回答内容を利用した設問や情報を出し、参加者間のインタラクションを活かした聴取を行う」手法です。例えば、自由回答設問の回答内容を他の参加者の選択肢として用いることで、その評価を得るようなインタラクションが実現できます。

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ダイナミックサーベイの特徴やその活用テーマとして、以下の3つがあげられます。

① 即時に回答を評価:意見への共感度やアイデアの人気度など、回答に対する評価を次のアンケート配信を待たず
に実施できます。ブランドイメージ収集、商品カテゴリの価値探索等の場面で活用できます。

② 刺激を受けて発想:他の人のアイデア・意見を見て刺激を受けた上で、インスパイアされた新しい発想を聴取で
きます。新商品アイデアのタネや改善案の収集、不満点の調査等の場面で活用できます。

③ 回答を楽しむ:他の人に見られることや評価結果が表示されることで、参加者の回答に対するモチベーションを
高めます。従来の調査を離れた形で、投票結果がわかるアイデア募集や診断・クイズ形式での聴取等の場面で活
用できます。

以下章では、2つの活用例を紹介します。

3.ニーズ探索に「即時回答評価」を使った活用例

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1つ目は、「①即時に回答を評価」の活用例として、アルコール飲料開発でのニーズ探索を想定し、お酒を居酒屋などの飲食店で飲むことを意味する「外飲み」をテーマとして実施したテスト調査を紹介します。上図左側のように、「外飲み」の魅力について自由記述で回答された内容を選択肢として表示し、共感できると思うものを聴取しました。

結果として共感率が高かった回答をランキング形式にしたものが右表です。事前に選択肢を作成して聴取した場合と比べて、選択肢間で内容の重なりはありますが、価値を率直に表現した言葉が生活者視点で得られていることがわかります。
具体的には料理に関するものが中心で、雰囲気やコミュニケーションの魅力について触れている回答が共感率の上位となっています。表にはありませんが共感率が中位程度の回答を見ていくと、「非日常」「リラックス」「生ビール」「多様なお酒」などより多くの観点があり、幅広いニーズや対応するキーワードを見出すことができます。

また、今回は「共感できる」を評価として用いましたが、例えば「目新しい」と思うものについても聴取することで、「共感度が高く新奇性が高いもの」に注目するような、2つの評価軸を用いた活用も可能です。

4.アイデアのタネ収集に「刺激を受けて発想」を使った活用例

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2つ目は「②刺激を受けて発想」の活用例として、飲料アイデアのタネ収集のニーズを想定し、缶コーヒーの新鮮な視点のアイデアを集めたテスト調査を紹介します。上図左側のように、「こんな缶コーヒーがあったら」と発想してもらうものです。参加者によって「びっくりだ」「嫌だ」と表現を変えて依頼をしています。ここで入力されたアイデアを選択肢として表示し「面白い」かの評価を聴取しました。
このアンケート画面で特徴的なのが、他の参加者のアイデアを評価した後に、再度同じ様に発想してもらう設問を投げかけていることです。これによって、他のアイデアから刺激を受けて磨かれたアイデアを集めることを可能にします。

結果を「面白い」評価順にランキング形式にしたものが右表です。「びっくり」という視点で発想した左側のアイデア内容は、温度に関するものが多くを占め、それほど多様性がありません。一方、「嫌だ」という視点で発想した右側のアイデア内容はなかなか思いつかない自由で荒唐無稽な発想が集まっていることがわかります。一見あまり違わないような2つの「お題」の言葉ですが、発想内容に大きな違いが生まれるのはとても興味深いところです。こういった「お題」を使いこなす工夫をし、得られたアイデアのタネを商品アイデアレベルに発展させるワークショップなどと組み合わせることで、本方法は有効なアイディエーションとなり得るでしょう。

5.まとめ

ここまでオンライン調査でも参加者間のインタラクティブ性を実現する方法としてダイナミックサーベイをご紹介してきました。フォーカス・グループインタビューほど参加者間の自由なインタラクションが得られる方法ではありませんが、コントロールしやすい形で特定の設問に関するインタラクションを数多く発生させ、定量的に扱うことができるという特性にダイナミックサーベイの強みがあります。また、得られた回答への自然言語処理の導入など、今後の技術展開の可能性も多く残されており、今後の発展が楽しみな領域と考えています。

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