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生活者インデックスデータ

電気自動車へのシフトは順調に進んでいるのか?~Car-kitから見る自動車市場

昨今、日産自動車や三菱自動車から軽自動車の電気自動車(以下EV)が発売されたり、他にもbZ4x・アリア等のSUVのEVの発売、中国のBYDが日本市場に進出したりと、日本のEV市場において多くの動きが見られます。
一方、欧州自動車工業会は、2022年度で欧州主要18か国における「EV新車販売に占めるEVのシェア」は15%まで上昇したと発表しました。(21年度は11%であり4ポイント上昇)

欧州でガソリン車からEVへのシフトが進む中、日本におけるEVへのシフトは順調に進んでいるのでしょうか。この記事ではインテージが保有する自動車パネルデータ「Car-kit」を用いて日本におけるEVの普及状況、EV購入者の特徴を分析することを通して、EV市場拡大に向けた糸口を探ります。

政府が掲げるEVシフトの目標と現状の普及率のギャップ

まず、EVシフトの現状を把握するにあたり、政府が発表した目標を確認してみましょう。日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表し、自動車分野の中では「2035年までに新車販売でEV100%を実現」と掲げています。

では現状、新車購入者の中にEVを購入した人はどの程度いるのでしょうか。上述した通り、「Car-kit」を用いてEV市場を見ていきます。Car-kitとは、毎月約70万人から前月の自動車情報を取得しているパネルデータです。現保有車だけでなく併有車、前保有車、次期意向車に関するデータを毎月調査して蓄積し、常に最新状況を確認することができます。

Car-kitでは毎月、新車購入者がどのエンジンタイプを選択したかを聴取しています。
直近5年分のデータを見てみると、EV(赤色)が新車全体に占める割合は徐々に上昇していることが確認できます。一方で、現時点でEVが占める割合は全体の約2.7%であり、政府が掲げる「2035年までに新車販売でEV100%を実現」の目標に対して順調と言える数字ではないことが分かります。

図1

新車購入者のエンジンタイプ比率

EV購入者の特徴にみる「EVと相性のいい環境」

前章ではEVの普及率を確認しました。いまだ選ぶ人が少ない中でEVを購入している人とはどのような人なのでしょうか。
まず、EVを購入しているボリューム層は60代であり、ガソリン車やハイブリッド車と比較すると若年層の購入率は低いことが確認できます(図2)。

図2

エンジンタイプ別 購入者の年代

次に夜間に駐車している場所を比較してみると、EV購入者の約85%が一戸建てに居住し、自宅に駐車していることが確認できました(図3)。

図3

エンジンタイプ別 夜間駐車している場所

一般的に、EVの普及阻害要因として「車両本体価格の高さ」や「急速充電器数の少なさ」、「航続距離の制限」、「車種ラインナップの少なさ」が挙げられます。実際、国土交通省が2023年2月に発表した充電器数の推移を確認すると、2022年の充電器数は2021年よりも減少しているなど、充電環境が整うには遠い状況です。

調査でEVユーザーの声を聞いてみると、「ガソリンスタンドに行く手間が省ける」ことにメリットを感じているようですが、逆に「夜間にEVを自宅で充電できる」ということが購入の前提条件となってしまい、主に充電環境を整えやすい一戸建てに居住している人が購入する状況にあると考えられます。 このように保有後のメリットはあるものの、EV普及に向けては、取り除かなければならない「保有までの障壁」が多岐にわたって見られます。

次に世帯年収別で比較すると、EV購入者は世帯年収が1,000万円以上の人が約3割を占めており、ガソリン車購入者より世帯年収が高い傾向にあることが分かります(図4)。

図4

エンジンタイプ別 世帯年収

世帯年収は同居する就労者の人数や居住地域(都市/地方)にも影響されます。また、居住地域によって自動車の必要度合いも変わります。地方であれば複数自動車を保有する割合が高く、近場への足としてEVの購入を選択肢に入れやすい環境とも考えられます。
EV購入には様々な要因が関連する中、上記で挙げたデータと掛け合わせて考えると、あくまで一例ですが、以下のような購入者像の仮説を立てることができます。
仮説1:1戸建てに2世帯以上で居住、軽のEVをセカンドカーとして利用
仮説2:1戸建てに1世帯で居住、SUVのEVをメインカーとして利用
このような環境にある消費者がEVと相性がいいと言えそうです。

EVの次期意向率

現時点では限られた人が購入しているEVですが、今後、EVの購入は進むのでしょうか。Car-kitでは次に買いたい自動車についても聴取しています。EV意向率をトレンドで見ると、2021年から上昇傾向にあったものの、鈍化し、20%付近を変わらず推移していることが確認できます(図5)。現状、次期意向車においてもガソリン車やハイブリッド車を考える人が多く、EVはほとんどの人の購入の選択肢にも入っていないことが分かります。

図5

次期意向車のエンジンタイプ(複数回答)

まとめ

補助金や充電設備拡充など、EV普及に向けて歩は進めているものの、EV普及は目標に対して非常に遅れているペースであることが、Car-kitのデータで確認できました。
また、次期意向率からも読み取れるように2~3年後のような近い将来にEV普及率が大幅に上昇することも考えづらい状況です。

一方で、冒頭で触れた通り、軽自動車やSUV等、国産車のEVに新たなラインナップが登場してきており、近年までリーフ一強だった市場に変化が起きています。

車種別に購入者の特徴を比較してみると、EV全体では経済的に余裕がある高齢層が購入する傾向が強いですが、SUV (bZ4xやアリア)は若年層の購入が他車種と比べて多いことが分かります(図6)。 bZ4xは2023年11月13日までに一般発売が開始されるまで、KINTO(サブスクリプションサービス)のみで契約可能でした。そのため若年層の割合が高い要因の一つとしてKINTOの顧客属性があると考えられますが、アリアも20代/30代といった比較的若い層が購入者に占める比率が軽自動車のEVであるサクラやeKクロス EVよりも高くなっています。

図6

国産EV主要車種 購入者の年代(Car-kit)

今後も各メーカーで開発が進み、様々なボディタイプでEVが出るであろうと予測できます。それにより消費者の選択肢も増え、現在アプローチしきれていない属性の人のEV購入意向を獲得できる可能性があると考えられます。

EV市場は車種ラインナップだけでなく、インフラ環境や航続距離、補助金等、市場変化の激しい市場です。その中で消費者にどのようなトレンドが生まれてくるのか、今後もCar-kitを用いて車種・ボディタイプ・エンジンタイプ単位で市場を捉え、EV普及への糸口を探っていきます。

著者プロフィール

磯上 尚規(いそがみ なおき)プロフィール画像
磯上 尚規(いそがみ なおき)
2020年に立教大学卒業後、インテージ入社。大学では認知心理学を専攻。
入社後は主に自動車業界の調査を担当している。

2020年に立教大学卒業後、インテージ入社。大学では認知心理学を専攻。
入社後は主に自動車業界の調査を担当している。


Car-kit®(自動車パネル)
株式会社インテージが毎月約70万人から前月の自動車情報を取得しているシンジケートデータです。現有車や次期意向などを聴取する市場動向把握調査と、契約者に対して購入理由や購入時の重視点などを聴取する契約者調査の2部構成で実施しています。
※Cat-kitは株式会社インテージの登録商標です。

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