スマホで回答しやすい質問文の作り方~ネットリサーチ品質向上のポイント①
過去の記事「事例で解説! インターネットリサーチの進め方~調査票作成編②」では、ネットリサーチではスマホでの回答が増えたため、読みやすい簡潔な短い質問文を推奨しました。では実際に、質問文を短くした場合、回答に影響はないのでしょうか。
この記事では、インテージがネットリサーチの品質維持・向上のために取り組んでいる自主研究「フィールドサイエンス・プロジェクト」*で行った検証調査の結果と共に、スマホで回答しやすい質問文のポイントについてお伝えします。
背景
普段、みなさんは、アンケートを作る際、丁寧な文章で質問した方が意図が伝わりやすく、きちんと回答されやすいと思っていませんか?
スマホでの回答が増えた昨今では、丁寧故に長くなる文章より、多少そっけなくとも簡潔な文章の方が読みやすいかもしれません。しかし、説明が減ることで誤答やいい加減回答が増える可能性もあります。
そこで、質問文を短くした場合、回答にどの程度影響があるのかを検証しました。
通常の質問文 vs 短い質問文
Case1:マルチアンサー質問の場合
まずは、複数の回答を選んでもらう「マルチアンサー形式」の質問について、標準的な質問文「通常版」と、丁寧な語尾や補足文を省いた「短文版」を比較しました。
通常版では「以下の飲料のうち、あなたが直近1年間にお飲みになったものについて、あてはまるものをすべてお答えください。」と質問し、短文版では「あなたが直近1年間にお飲みになったものは?」と質問しました(図1)。
図1
結果は、通常版と短文版にはほとんど差がなく、質問文を短くしても回答への影響は見られませんでした。
Case2:マトリクス質問の場合
次に、複数の項目に対して同じ選択肢を提示する「マトリクス質問」を確認しました。 インテージでは、マトリクス質問を使う際、「i-タイル🄬」という方法を使っています。i-タイルは、表側ごとにページを切り替えて表示します。画面上で選択肢が広くレイアウトされることにより、スマホの小さな画面サイズでも回答しやすく、PCでもスマホでも回答の差異が生まれにくいという利点があります(図2)。
図2
検証調査では、通常版は「以下の決済サービスについて、それぞれあてはまるものをすべてお答えください。」、短文版は「以下についてお答えください。」と質問しました。ここでは、表側項目「知っている決済サービス」「サービス内容や特徴を知っている決済サービス」などが1つずつ表示されます(図3)。
図3
結果は、質問文を短くシンプルにしても回答に影響はありませんでした(図4)。回答者は、表示されている表側項目で判断しており、質問文は極力シンプルでも問題ないことが伺えます 。
図4
回答者にとっての回答しやすさ
最後に、回答者にとって通常版と短文版のどちらを回答しやすいと思っているのかを確認しました。
図5
結果は、「短いほうが答えやすい」が過半数を超えており、回答者視点でも短くシンプルな質問文が回答しやすいことが分かりました。
ネットリサーチでの質問文作成のポイント
以上の検証調査の結果から、インテージのネットリサーチにおける質問文作成のポイントは以下のようにまとめられます。
・スマホでも読みやすい、短く簡潔な文章にする
・補助文、丁寧な語尾は無くても良い
・マトリクス質問の場合、表側項目に質問内容が含まれるので、質問文は極力シンプルで良い
おわりに
近年、スマホ回答者が増えており、インテージのモニターでも若年層の約9割がスマホで回答しています。そこで、短い質問文と長い質問文の、スマホの回答画面での見え方を比べてみました(図6)。
図6
短い質問文は読みやすく、選択肢も2段目まで確認できます。一方、長い質問文は読むのが大変で、1段目までしか選択肢を確認できないため、スクロールが必要です。さらに質問文と「ご存じの銘柄」という表側項目の内容が重複するので、回答者にとって負担になることが想像されます。
質問文が長いと、それを読むことに労力が使われ、選択肢をきちんと見てもらえないリスクもあるため、なるべく質問文は簡潔にすることがおすすめです。
丁寧な文章で細かく説明する方が分かりやすいと思いがちですが、回答デバイス(スマホ、PCなど)などの回答環境を理解した上で質問文を作成することが、高品質なデータを集めることにつながります。
*フィールドサイエンス・プロジェクトとは
インテージでは、ネットリサーチの品質維持・向上のために、自主研究を行っています。プロジェクトでは、スマホでの回答しやすい画面の研究や脱落率を減らすための質問構成の検証など、様々な研究に取り組んでいます。
※インテージのフィールドサイエンスについてはこちらの記事をご確認ください。
使用したデータ
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:日本全国
対象者条件:15~69 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=2,400 ※性別・年代・グループ(通常版/短文版)ごとに均等割り付けで実施
調査実施時期:2024年1月18日(木)~1月22日(月)
集計:グループ(通常版/短文版)間でのサンプル属性(デバイス・エリア・職業など)で均質化処理を実施
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