

2024年9月に公開した「富裕層の実態と価値観を知る」を、多くの方にご覧いただいた。直近では株価上昇や都市部の不動産価格の高止まりを背景に、ニュースでも「富裕層」という言葉を目にする機会が一段と増えている。日本銀行の資金循環統計(速報)※では、家計の金融資産残高は2,239兆円。内訳は現金・預金1,126兆円(50.3%)、株式等294兆円(13.1%)、投資信託140兆円(6.3%)、保険・年金等566兆円(25.3%)であり、国内の豊富な金融資産が経済全体に厚みをもたらしていることが分かる。
こうした背景を踏まえ、インテージでは今年も富裕層の資産保有状況や支出の特徴、価値観を捉えることを目的として、昨年に続き富裕層向け調査を実施した。2025年版では、金融資産1億円以上の「富裕層」、5億円以上の「超富裕層」に焦点をあて定量調査を行った。
2025年の調査では、富裕層がどのような事に興味を持ち、消費に結びつけているのかを明らかにするため「何を好み、どのように楽しんでいるのか」、「何をきっかけに購入を決定しているのか」を一般層と比較し、富裕層ならではの特徴をリサーチした。ぜひ富裕層をターゲットとしたビジネス検討に役立てていただきたい。
※日本銀行 資金循環統計(速報)2025年9月
本コラムでは巻末に無料ダウンロードレポ―トも用意しています。ぜひ最後までご覧ください。
今回の調査では、世帯で金融資産(預貯金、社債や国債などの債券・株、投資信託、生命保険のうち満期金のあるもの、貸出金など)を1億円以上保有している層を「富裕層」、5億円以上保有している層を「超富裕層」と定義し 、ともにインテージ金融パネル「Mat-kit®」から該当するモニターを抽出して調査を行った。
比較対象として、「Mat-kit®」から、金融資産5,000万円以上1億円未満を保有している層を「準富裕層」と定義し、インテージ「マイティモニター」から、金融資産100万円以上5,000万円未満の層を「一般層」として抽出し調査を行った。まずは今回の回答者の実態を見ていきたい。
1)回答者の分布
調査の結果、金融資産1億円以上を保有する3,243人からの回答を得ることができた。
内、金融資産5億円以上の「超富裕層」は200人(6.1%)となっている。
図表1

2)資産別年齢分布
年齢構成は図表2の通りであり、約6割を60歳以上が占めていた。また、金融資産5億円以上の「超富裕層」では、60歳以下が50.5%と半数を占め現役層も多い。
なお、男女別に確認すると各層ともに男性が多くを占め、富裕層回答者の81.2%が男性となった。
図表2

それぞれの層は月にどのくらい消費(支出)しているのだろうか。カテゴリー別に分けて調べてみた。
支出総額は「準富裕層」が35.8万円/月、「富裕層」が50.0万円/月、「超富裕層」が87.6万円/月となった。
「超富裕層」の特徴は、食費が16.5万円/月と高額であり、「準富裕層」と比較して 1.8倍にのぼる点である。また外食・会食費は10.3万円/月であり「準富裕層」との比較では3.4倍となる。同じく交際費も3.2倍となり、「超富裕層」の豊かな食生活や、幅広い交際関係の実態が見えてくる。
また、ブランド・宝飾品では3.7万円/月と「準富裕層」の17.1倍であり、「レジャー(趣味、旅行)」は、3.0倍となった。
「富裕層」(1億~5億未満)と、「一般層」「準富裕層」の支出額に大きな差はないが、「超富裕層」の食や、高級品、レジャーに関する旺盛な消費傾向がデータから明らかになった。
なお、「準富裕層」に対して「一般層」の支出額が大きいのは、「一般層」では比較的年齢が若く、世帯同居人数が多いことから、世帯支出額が大きくなっていると思われる。
図表3

富裕層の年齢や、支出額などの実態を見て来た 。ここからは、富裕層生活の実態を明らかにするために、富裕層はどのような事を楽しみにして、どのような事にお金を多く費やしているのかを知るために、一般層と大きく差が生まれるであろう「休日(オフ)の過ごし方」 に着目したい。
図表4は、直近1年間で経験した休日(オフ)の過ごし方に関しての調査結果である。
「超富裕層」は、いずれの体験においても他層を大きく上回る結果となった。特に際立っている(準富裕層との差が大きい)のは、「海外旅行(1人当たり100万円以上の予算)」に関して「超富裕層」は37.6%が体験し「準富裕層」と比較して25.3ポイント高い。同じく「会員制ゴルフ」29.3%(23.4ポイント差)、「別荘セカンドハウス滞在」24.8%(20.9ポイント差)、「デパートの外商サロン」23.3%(20.9ポイント差)などがある。
「超富裕層」で特徴的なポイントとしては、お客様を限定して招待するイベントへの参加が多く見られた点である。「ハイブランドの招待イベントへの参加」21.1%、「ハイジュエリー・ウォッチのプライベートプレゼンへの参加」16.5%、「高級車オーナー向けのドライブイベントへの参加」15.8%。多くのハイブランドでは、参加者を「超富裕層」に絞ったクローズドなイベントが開催され、招かれた「超富裕層」もステータス感を持って商品を吟味し、休日の買い物を楽しんでいる 姿が浮き彫りになった。
富裕層へのアプローチでは、限定や招待制などの特別感や、ステータス志向、富裕層同士のコミュニティ形成など、特別な演出が高額商品の購買につながると考えられる。
図表4

富裕層の休日(オフ)の過ごし方に特徴があることが判明した。では平日(オン)はどのように過ごしているのであろうか。富裕層の平日の勤務時間(オン)に関して聴取してみた。(図表5)
「一般層」~「富裕層」までに、勤務時間に大きな差異は見られなかった。一方、「超富裕層」では、1日当たりの仕事時間が3時間未満11.2%、9時間以上が30.5%と二極化していることが分かる。長時間稼働型と効率重視型の二つのスタイルが存在しており、超富裕層の働き方にも差があるようだ。
図表5

次に、富裕層は多忙な中、様々なコト・モノにお金をかける上でどのようなことを重視しているのかを見て行きたい。 図表6は、商品・サービス購入時の考え方を調べたものである。
「富裕層」「超富裕層」に見られる特徴は高い“こだわり”である。特に「超富裕層」では“強いこだわりをもって選んでいる商品やサービスが多い”が57.0%(「準富裕層」と比較して26.6ポイント高い)、“作り手の思いに共感して買う”が41.0%(同25.7ポイント高)。
加えて“自分軸”に関する項目でも差がついた。“気持ちの良いことや快適なことにはお金をかける”が76.0%(同20.3ポイント高)、“自分を向上させるために時間やお金を使っている”が60.0%(同19.4ポイント高)、“自分の時間を捻出できるものにはお金をかける”が58.0%(同18.3ポイント高)となった。自分が成長するためや、快適さ、自分の時間を捻出するために、より多くのお金をかけていることが分かる。
特に「超富裕層」の差が目立ったのは「ステータス志向」 に関する項目であった。“有名ブランド/メーカーのものを選ぶ”が46.0%(同20.5ポイント高)、“人の持っていないものを身につけたい”が29.0%(同15.6ポイント高)と特徴的であった。
「富裕層」「超富裕層」は豊富な資金を背景に、自分自身の成長を重視した「自分軸」を持ち、養われた選択眼により「こだわり」を持って商品・サービスを選択している。また、他者との差異を通じ自分を際立たせる「ステータス志向」を意識した購買行動をとっていることが明らかになった。
「富裕層」「超富裕層」をターゲットとした商品・サービス開発では「自分軸」「こだわり」「ステータス志向」の価値観や購買動機を踏まえることにより、通常の商品との差別化が図れるのではなかろうか。
図表6

2025年の調査結果からは、富裕層・超富裕層の生活実態や消費行動に加え、彼らの価値に基づく、時間やお金の使い方、さらには働き方の特徴も明らかになった。
特に富裕層へのビジネス展開においては、「こだわり」「ステータス志向」「自分軸」を重視した商品・サービス選択がみられる。
富裕層をターゲットとしたビジネスを検討する上では、
① 「自分軸」(快適・時間創出・自己向上)を満たす商品・サービス設計
② 「こだわり」(作り手・由来・希少素材)を語れるストーリー設計
③ 「ステータス志向」(限定・先行・オーダーメイド)を担保する会員施策を中核に据える
ことが有効であると思われる。
富裕層は、単なる高所得者ではなく、上記のような価値観を持つ生活者として捉え、彼らが興味を持つ「スイッチ」を刺激するマーケティング戦略が有効となる。
インテージでは、富裕層・超富裕層を対象とした定量調査を通じて、こうした生活者像の解像度を高める支援を行っている。
※今回の調査で明らかになった詳細なデータやチャートは、無料のダウンロードレポートでご覧いただけます。レポートのみにて提供している項目は以下です。ぜひ、ダウンロードしてご覧ください。
ダウンロードデータ(富裕層パネルBook 2025)のみ掲載項目
富裕層の地域居住区分
富裕層の職業
富裕層の業種
富裕層の住居形態
富裕層の住宅購入価格
富裕層の世帯年収
富裕層の金融商品/所有物
富裕層のこだわり
富裕層の価値観
富裕層が大切にしたい時間
調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:20~79歳男女個人
標本抽出方法:富裕層、超富裕層、準富裕層:Mat-kit®データから条件適格者をサンプリング
      一般層:マイティモニターより適格者を抽出
      (ウェイトバック集計:無し)
標本サイズ:合計:n=4,380、一般層:n=726、準富裕層:n=411、富裕層:n=3,043、超富裕層:n=200
調査実施時期: 2025年9月26日(金)~2025年9月29日(月)
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