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生成AIの活用格差~生成AI利用実態調査 ビジネスパーソン編①

近年、生成AI技術の誕生と進化は、私たちの日常生活、ビジネスに様々な変化をもたらしています。この背景のもと、インテージでは生成AIの現状と将来性の可能性を明らかにするため、生活者およびビジネスパーソンを対象とした定量調査を実施しました。生成AIと社会の関係性を多角的に理解し、その可能性と未来像を具体化する一助となることを目指しています。

このシリーズでは「ビジネスパーソン」を対象とした調査結果を全3回にわたりお届けします。
第1回は、ビジネスの場で生成AIの導入状況と活用の広がりについて、その全体像を探ります。

1. 生成AIの認知は進むも、内容理解度や導入状況に濃淡あり

生成AIの認知と活用は、ビジネス領域でどのように進展しているのでしょうか。ビジネスパーソンにおける認知度はおおよそ82%と高水準ですが 、十分な理解に至っている割合は半数以下でした。この傾向はビジネスパーソンのみならず一般生活者においても共通しており、認知が先行し、内容理解が追い付いていないのが現状です(図表1)。

図表1

生成AIの単語認知と意味理解度

生成AIの導入状況を所属レイヤー別に見てみましょう(図表2)。

図表2

ビジネス領域における生成AIの導入・活用状況

企業や組織全体のレベルでは、生成AIを「活用している」企業はわずか5%にとどまり、「導入済み」の企業が13%、さらに「導入を検討中」の企業が20%という状況です。これらを合計しても、導入・活用に取り組む企業は全体の1/3にとどまっており、まだ少数派です。

特に注目すべきは、生成AIの「導入」に至った企業の中でも、「実際に活用」している企業は非常に限られているという点です。多くの企業で、生成AIを業務に組み込む際に障壁があり、活用段階に進めない現状が明らかになりました。この点については、第2回の記事でふれたいと思います。

また、生成AIの活用・導入・検討の進行度について、組織全体>部署>個人という構図が見られる点も特徴的です。これは、導入に関する意思決定がトップダウンで行われることが多く、現場のビジネスパーソン一人ひとりが自発的に導入を推進するというより、組織全体の戦略や指針が導入・活用を主導している状況を示しています。

2. 業種や規模で異なる生成AI導入の進行

生成AIの導入状況を業種別に見ると、その進行度には大きな差があることがわかります(図表3)。

図表3

業種別 生成AIの導入・活用状況

トップの「ソフトウェア・情報サービス業」に対し、「医療・教育」「公務員」「運送・輸送」「卸売・小売」「建設・不動産」は低い傾向です 。これらの業種が生成AIに求める高度な正確性や専門性、または現場の業務特性が、導入を阻む要因となっている可能性があります。

生成AIの利用状況は、企業規模や個人の職位によっても異なります(図表4)。従業員規模が大きい企業ほど、また、職位が高い層ほど生成AIの導入率が高い傾向が見られます。ただし、こうした層でも実際に活用に至っている人はわずかで、多くは導入段階や検討段階にとどまっています。

図表4

従業員規模・職位別 生成AIの導入・活用状況

また、研究開発や技術職、自由職業など、テクノロジーと親和性が高い職種では、生成AIの導入が比較的早い傾向にあります(図表5)。

図表5

職業別 生成AIの導入・活用状況

これらの結果から、生成AIの活用が進む一方で、その恩恵を受ける層には格差が生じていることが伺えます。

3. 大企業・上職位層で生成AI導入のフェーズが進行、今後の生成AI発展に期待

最後に、ビジネス領域における生成AIの浸透度合いを、アメリカの調査会社、ガートナージャパン株式会社が発表したハイプ・サイクルに基づき確認します。この指標は新技術が誕生してから社会に定着するまでの成熟度を示すフレームワークで、同社によると、生成AIは2024年7月時点で「過度な期待」のピーク期を超え、現在は「幻滅期」への移行期にあると考えられています。

本調査では、このフェーズ区分を基に、あくまで回答者の実感として、生成AIがどのフェーズに位置しているかを確認しました(図表6)。なお、4つのフェーズの特徴は下記の通りです。
① 黎明(れいめい)期:理解が十分でないため、よく分からない・判断できない
 ● 情報不足や不確実性により、生成AIの価値や可能性が見えにくい
   →情報収集や初期的な検討を行う
② 「過度な期待」のピーク期:若干の理解ができ、様々な分野での活用について大きな期待を頂いている
 ● 新たな可能性や活用領域に関心が高まる
   →アイディア検討、導入のポテンシャル評価を行う
③ 幻滅期:理解が進み、適用できる範囲が分かったことで、一時期より期待は小さくなった
 ● 活用事例や課題が明らかになり、理想と現実のギャップを認識
   →実現可能な範囲での戦略を模索、期待の再評価を行う
④ 啓発期:さらに理解が進み、具体的な活用の方針が立ったことで、一定の期待を抱いている
 ● 導入に向けた具体的な計画策定と現実的な期待形成。
   →導入・運用への移行、継続的な計画を立てる

図表6

従業員規模・職位別 ハイプサイクル

全体では約半数が①黎明期に 位置しており、生成AIという単語の認知は先行しているものの、実態が理解されていないことがわかります。この傾向は、中小規模の企業、かつ職位が比較的低い層で強い傾向にあります。一方で、従業員規模が大きい、また、職位が高い層ほど、②ピーク期、④啓発期の割合が高く、生成AIに対する高い関心が見られ、生成AIの可能性・実現性を理解した上で、その発展に対する期待が寄せられることがうかがえます。

以上の調査結果から、生成AIの認知は広がっているものの、実際に導入している企業はわずかであり、その導入と活用状況については、業種や企業規模、職位等により格差が生じていることがわかりました。次回の記事では、ビジネス領域で生成AIがどのように利用されているのか、また導入に際する障壁や課題についてより詳細に探究します。
あわせて、「生活者」視点の調査結果もご一読ください。


この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


調査概要_ビジネスパーソン編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:n=20,498
調査実施時期:2024年10月25日(金)~2024年10月28日(月)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:n=2,083
ウェイトバック:なし
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)

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