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近年、生成AI技術の誕生と進化は、私たちの日常生活、ビジネスに様々な変化をもたらしつつあります。このような背景のもと、インテージでは生成AIの現状と将来の可能性を明らかにするため、生活者およびビジネスパーソンを対象とした定量調査を実施しました。本調査を通じて、生成AIの利活用状況や便益、課題を多面的に捉え、生成AIを活用したよりよい社会を実現するための一助となることを目指します。
このシリーズは「ビジネスパーソン」を対象とした調査結果を全3回にわたりお届けします。第1回ではビジネス領域における生成AIの導入・活用状況を、第2回では利用目的や具体的な活用方法、導入時の障壁や課題に焦点を当て、その特徴を詳しく分析しました。
第3回となる今回は、ビジネス領域における生成AIサービス別の利用状況を確認します。
まず、主要な生成AIのサービス別に認知率、そして認知者における利用経験率と勤務先での導入率を確認します(図表1)。認知率は、ChatGPTが他サービスと大きく乖離して圧倒的な首位に位置しますが、実際の利用率、勤務先の導入率は他サービスと拮抗、もしくは他サービスが大きく上回っているケースがあることがわかります。生成AIのさきがけとなったChatGPTは、認知の面で優位ではありますが、今後、他サービスの認知が浸透した場合、ChatGPTにとっては脅威になると考えられます。
図表1
各生成AIサービスは、業務にどの程度利用されているのでしょうか。利用経験者をベースに、今回の調査で30人以上利用者がいた4サービス見てみましょう(図表2)。4サービスはいずれも6割以上が「日常的に利用」「時々利用」と回答、Microsoft Copilot、Gemini、GitHub Copilotにおいては「日常的に利用している」が4割以上を占めていることから、特定層においては日々の業務に定着していると考えられます。また、主要サービスと比較し、「勤務先独自のチャットAIツール」は活用が進んでいないのが現状です。
図表2
利用者における「各サービスの満足度(図表3)」は、いずれもTOP2までで5割を占めており、概ね満足を得られているといえそうです。特にGitHub CopilotはTOP1の割合が2割を超え、高く支持されており、プログラミング領域に特化したサービスとして、ユーザーのニーズや特性に合致した価値を提供できていると考えられます。 「勤務先独自のチャットAIツール」はTOP1が著しく低い点で、機能の精度、UX/UI、ユーザー教育など、何かしらの課題があることが伺えます。
図表3
前述の通り、個人の業務上では 各生成AIサービス利用者の日常的利用率 (サービスの利用者ベース)は3~4割を示していますが、会社・組織の観点から、これらのサービスはどの程度活用されているのでしょうか。勤務先で導入済みの各サービスについて、その活用状況を見てみましょう(図表4)。
図表4
いずれのサービスも、TOP2(「とても活用している」「やや活用している」)が全体の5~6割を占めていますが 、サービスごとの構造 には特徴的な差異が見られます。
たとえば、GitHub Copilotでは「とても活用している」が16%と、他サービスと比較し高い数値ですが、「まったく活用していない」も同様に高い水準を示しています。 開発者向けの機能性が 利点である反面、利用者のスキルや業務内容によって活用度が大きく異なると考えられます。
「勤務先独自のチャットAIツール」は、TOP2が5割、BOTTOM2(「あまり活用していない」「まったく活用していない」)が2割という分布ですが、カスタマイズ性が高い一方で、特定の業務に特化した仕様、業務フローとの連携不足、ユーザー教育の不十分さなどが活用度を押し下げている要因だと考えます。
各サービスが今後、ユーザーの多様なニーズにどう応えていくか、操作性や精度はもちろんのこと、業務へのスムーズな統合、ユーザー教育なども、導入後の活用度や普及度を左右するポイントとなりそうです。
では、ユーザーのニーズ、活用課題に対して、各サービスはどの程度フォローできているのでしょうか(図表5)。提供企業からのフォロー満足度についても調査をしています。各サービスに共通して、満足度TOP2(「とても満足している」「やや満足している」)は約30~40%に留まっています。一方で、「特にサポートを受けていない」という回答も一定数見られ、提供企業のフォローアップが十分に得られていないのが現状です。
図表5
最後に、各サービスを導入するきっかけとなったタッチポイントを確認します。タッチポイントのTOP10を抽出し、それぞれ以下のように色分けしました(図表6)。
赤:個人、社内外のユーザー情報
青:営業的アプローチ
黄:企業HP
緑:ニュース、SNS等の外部情報
図表6
全体の傾向として、「赤」のセルが上位に位置し、個々のユーザー体験や社内での口コミが導入を促進する重要な要因であることを示しています。個別に見ますと、生成AI領域をけん引するChatGPTは、利用者からの情報が上位を占め、開発者向けツールとして利用されるGitHub Copilotは企業間の紹介や連携などが目立ちます。それぞれ、個人や社内での成功体験や話題性の創出、専門的な技術ニーズに応じたプロモーションなど、サービス間でアプローチや戦略の違いが見られます。
第3回では、各生成AIサービスの利用動向に焦点を当てました。結果、ChatGPTは認知度において圧倒的な優位性を示す一方、認知者ベースでの利用率や企業導入率では、他のサービスが上回る結果も複数確認されました。
今後、生成AI市場の更なる成熟に伴い、サービス提供社間の競争激化が予想されます。個人利用で得られた経験や成功体験が企業導入の促進要因となる可能性が高く、一般消費者の利用拡大が企業への普及を加速させる重要な要素となると考えられます。
3回にわたりお届けした「生成AI実態調査 ビジネスパーソン編」、お楽しみにいただけましたでしょうか。インテージでは、生成AI市場の急速な成長と変革を見据え、継続的な調査・分析に取り組んでまいります。記事の内容やデータ、当調査に関する詳細についてご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せください。
一連の生成AI実態調査の結果はこちらからご覧いただけます。あわせて、「生活者」視点の調査結果もご一読ください。
この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。
シリーズでお届けしてきた「生成AI利用実態調査 ビジネスパーソン編」のExcelデータを無料でダウンロードいただけます。レポーティング等にご活用ください。
調査概要_ビジネスパーソン編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:n=20,498
調査実施時期:2024年10月25日(金)~2024年10月28日(月)
(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:n=2,083
ウェイトバック:なし
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)
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