arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

日常生活における生成AIの浸透実態~生成AI利用実態調査 生活者編①

近年、生成AI技術の誕生と進化は、私たちの日常生活、ビジネスに様々な変化をもたらしています。このような背景のもと、インテージでは生成AIの現状と将来性の可能性を明らかにするため、生活者およびビジネスパーソンを対象とした定量調査を実施しました。生成AIと社会の関係性を多角的に理解し、その可能性と未来像を具体化する一助となることを目指しています。

このシリーズでは「生活者」を対象とした調査結果を全4回にわたりお届けします。
第1回では、日常生活における生成AIがどのように受け止められ、活用されているのかについて探ります。

1. バズワードの枠を超え、浸透が進む生成AI

初めに、生成AIが日常生活にどれほど浸透しているのかについて分析していきます。全国の18~75歳の男女を対象として生成AIの認知度・理解度を聴取したところ、「聞いたことがある程度」という回答まで含めた認知率は81.9%となりました(図表1)。2022年11月のChatGPTのリリース以降、様々な生成AIサービスが登場し、継続的にメディアに取り上げられています。また、昨春からは、一般生活者向けサービスのテレビCMの放映も増加しています。このように、日常生活の中で生成AIという言葉に触れる機会が存在していることが、認知度の向上へ貢献していると考えられます。

図表1

生成AI認知度・理解度

その一方で、生成AIの「意味まで理解している」と回答した人はわずか1割程度にとどまりました。生成AIという言葉は広く知られるようになりましたが、その意味や仕組みまで深く理解している人はまだ少ないのが実態です。これは、生成AI技術の急速な進化や情報更新のスピードに、一般生活者の理解が追いついていない現状を示唆しています。

次に、生成AIの認知度81.9%がどのような水準にあるのかを把握するため、ここ数年間で話題となった他のIT関連技術用語と比較しました。図表2では、横軸を認知度、縦軸を各技術に対する期待度(ベース:各技術の認知者)として、各技術がどのように位置づけられているかを視覚的に示しています。

図表2

IT用語の認知度・期待度

この散布図から、各技術は大きく以下の4つのグループに分類できます。

グループ1:IoT/量子コンピュータ/ビッグデータ/DX/ディープラーニング
1は、認知度が中程度で期待度が高いグループです。これらの技術は、日常生活でも既に身近である、あるいは、比較的意味が想像しやすい用語であることが特徴です。

グループ2:Web3/ブロックチェーン/NFT
2は認知度と期待度がともに低いグループです。ここに属する技術は、概念的で抽象度が高く、一般生活者にとって理解が難しいと考えられます。

グループ3:メタバース
3は認知度が高い一方で、期待度が低いグループです。メタバースは、コロナ禍を契機に注目を集め、認知度が高まったものの、現時点では一般への普及が限定的であることから、期待度が相対的に低下したと推測されます。

グループ4:生成AI
4は認知度と期待度がともに高いグループです。他の技術と比較して、最も多くの生活者に認知され、幅広い層から高い期待が寄せられています。

意味や定義が明解でない、あるいは一過性の流行として用いられる言葉は、一般に「バズワード」と呼ばれます。図表2において、生成AIは認知度と期待度が共に他の技術よりも高く、生活者の認識が異なる水準にあることが明らかになりました。これは、生成AIが単なるバズワードに留まらず、社会に根付き始めていることを示しています。

2. 認知と利用のギャップ:生成AI普及への課題とは

生成AIは高い認知度を誇る一方で、実際の利用経験者は限られていることも分かりました。図表3は、生成AIの現在の利用状況と今後の利用意向ごとに、各ユーザーの割合を面積で示したものです。

図表3

生成AIのユーザーボリューム

青系の色で示した利用経験者は全体の13.1%に過ぎず、未利用者がボリュームゾーンとなっています。生成AIの認知は広がっているものの、依然として多くの生活者は利用には至っておらず、この間に大きなギャップがあることがうかがえます。このギャップを認識し、解消していくことが、今後の普及促進における重要な鍵となります。

次に、生成AIの利用経験者を対象にその利用目的と効果について調査しました(図表4)。

図表4

生成AIの利用目的と改善率

利用目的としては、「文章の作成・改善」「情報収集のサポート」「翻訳」「文章の要約」が上位を占め、チャットAIの得意な一般的なテキスト処理や情報収集に利用が集中していることが分かります。近年、画像生成や既存Webサービスへの生成AI機能の搭載など、生成AIの活用領域は拡大を続けていますが、これらを活用するような特化型の目的はまだ多くはないようです。また、多くの利用目的で60%~70%程度の利用者が改善できたと回答していることから、生成AIは既存ユーザーに対して一定の成果を上げていると言えそうです。
一方、現状の多数派である非利用者に目を向けると、生成AIを利用していない理由として突出して多いのが「特にない」という回答です(図表5)。

図表5

生成AIを利用しない理由

日常生活で文章作成や情報検索を行う機会が少ない人にとっては、生成AIの必要性を感じにくいと考えられます。最近では、画像認識機能の搭載やスマートフォンアプリの普及により利便性は向上しているものの、多くの生活者は生成AIを「自分ごと」として捉えて活用を試みるには至っていない状況です。
さらに、「特にない」という回答の次には、「利用すべきシーンがよく分からない」「利用方法や操作方法がよく分からない」という回答が続いており、性能面での課題や具体的な欠点よりも、情報の不足が利用の障壁となっていることが分かります。大多数の生活者にとっては、生成AIはまだ身近な技術とは言えないため、生成AIの基本的な価値や具体的な活用方法を分かりやすく示していくことが、生成AIの普及につながると考えられます。

3. 社会的な利活用には、期待と不安が入り混じる

これまで見てきたように、生成AIは広く認知されている一方で、個人での利用は進んでいません。そのような状況下で社会実装が進む生成AIに対しては、期待と不安の声が混在しています。
生成AIサービス利用経験者を対象として、「現在活用されていると思う領域」と「今後活用を期待する領域」を調査しました。図表6は、それぞれを横軸・縦軸にとって散布図として可視化したものです。

図表6

生成AIの活用領域

右下に位置する「活用先行領域」にはコンテンツ生成や文章を扱う作業のサポートが含まれます。一方で、左上に位置する「活用期待領域」では、公共サービスやヘルスケア領域での社会実装が含まれます。公共サービスやヘルスケアの領域では、しばしば複雑な意思決定を伴うため、生成AIの導入は容易ではありません。しかし、これらの分野で生成AIを活用できれば、人々の生活の質を大きく向上させる可能性を秘めていることから、高い期待が寄せられていると考えられます。

生成AIの社会実装が期待される一方で、その利活用には懸念の声も多く上がっています。生成AI認知者を対象に、生成AIの利活用に関する懸念点を聴取した結果、約8割が何らかの懸念を抱いていることが分かりました(図表7)。

図表7

生成AIの利活用に関する懸念点

具体的な内容としては「誤情報の拡散」や「セキュリティリスク」、「人間の能力低下」などが挙げられます。これらの懸念は、社会構造全体への影響も含んでおり、一企業や一サービスの努力だけで解決できるものではありません。社会全体で議論し、対策を進め、乗り越えていくべき課題と言えるでしょう。

調査では、生成AIのイメージについて、自由回答形式でも聴取を行いました。図表8は、回答に含まれる名詞を抽出し、その出現頻度が高いほど文字を大きく表示したワードクラウドです。

図表8

生成AIのイメージ

「便利」という回答が最も多かった一方、「悪用」「危険」「犯罪」「フェイク」といった単語も頻出しており、生活者の期待と不安が入り混じる様子がうかがえます。自由回答でも同様の意見が寄せられていた通り、生成AIは、「人間」の「使い方」「次第」で有益にも有害にもなり得る技術です。社会全体でその可能性と課題を共有し、適切な活用方法を模索していく必要があるでしょう。

以上の調査結果から、①生成AIはバズワードの中でも頭一つ抜けて生活者へと浸透していること②認知と利用の間には大きなギャップが存在し、多くの生活者はまだ自分ごととしてとらえられていないこと③生成AIの社会実装が期待される一方で、社会全体への影響も懸念されていることがわかりました。次回の記事では、生成AIをいち早く取り入れている学生が、生成AIをどのように活用しているのか、その実態についてより詳細に探究します。
あわせて、「ビジネスパーソン」視点の調査結果もご一読ください。


この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


調査概要_生活者編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:18~75歳男女(国勢調査にもとづき性別・年代・地域を母集団構成に合わせて回収)
標本サイズ:n=21,255
調査実施時期:2024年10月28日(月)~2024年10月31日(木)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、生成AIの利用経験者
標本サイズ:n=2,156
ウェイトバック:なし
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)

著者プロフィール

松田 陽介(マツダ ヨウスケ)プロフィール画像
松田 陽介(マツダ ヨウスケ)
株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら