生活者の情報が中心になることで、組織・企業を超えた共創を引き出す。
CCX(コンシューマー セントリック トランスフォーメーション)が目指す先。
【インテージフォーラム2022アフターレポート②】
毎年一度開催しているインテージフォーラム。今年度はCCX (Consumer – Centric Transformation)〜ビジネスをドライブする‘X’〜をテーマに、10月18日から20日の3日間、計22セッションをお届けしました。
このCCXという言葉は造語です。今ビジネスに求められているのは、生活者起点による「体験価値(CX)のデザイン」へのマーケティングコンセプトの変革と、データやデジタル技術を活用した「ビジネスプロセスの変革(DX)」だとインテージは考えており、CCXというキーワードでそれらの実現を目指しています。
この記事では、DAY2-1「今、必要なマーケティング変革」を起点に、いくつかのセッションを通して見えてきた、CCXの実現に必要な変化と、その目指す方向についてみていきます。
DAY 2-1『今、必要なマーケティング変革』
セッションは電通デジタルの田中氏、博報堂の宮澤氏、Twitter Japanの橋本氏をパネラーに迎え、「持続的な成長や市場創造のためにマーケティングはどうあるべきか?今、マーケティングに必要な変革のポイントは何なのか?」との問いかけから始まりました。
博報堂の宮澤氏は「デジタル化もトランスフォーメーションも手段であり、パーパスや社会価値といった目的を定めることが重要」と語りました。また、すべての産業のサービス化が進む中、商品機能での差別化や消費や購入をゴールとする考え方の重要性が相対的に低下していくこと、企業のコミュニケーションも人間同士のような本来の“コミュニケーション”に近づいていることを指摘しました。
電通デジタルの田中氏は、優れたCXに内在する“モチベーション”と“フリクションレス”という2つの要素を提示。従来の広告でモチベーションを上げ、購入手順や、UIなどで障壁を改善してフリクションを下げるという考えが、コロナ禍を経てDXが進んできたことで、フリクションレスだからモチベーションが上がるという新しい動きが生まれつつあると解説しました。
Twitter Japanの橋本氏は「会話の文脈を読み解く」ことを意識したうえで、企業側から「会話を始めてみる」、そして「つなげていく」ことが重要であると言います。ここで事例として味の素冷凍食品の「手抜き・手間抜き」キャンペーンを紹介。この事例を通したパネルディスカッションを通して、3者の挙げた各ポイントが具体的に理解できました。
その後、このように生み出された「生活者起点の価値共創」をCXデザイン全体に拡張するには?など、セッションを通して、今マーケティング戦略に必要な変革のポイントが掴める内容となりました。
DAY 1-4『今こそやるべき!シームレスな顧客理解によるCX推進』
このセッションでは、具体的に生活者起点のマーケティングをどのように実装していくのかについて、実践事例が豊富に語られました。導入は、「CDPやMAを入れることが目的化してしまう中、CDPの導入目的をどのように設定して活用すべきなのか?」の問いから始まりました。
株式会社サンリオの田口氏は、「デジタル化で顧客との接点が拡大し続けるなかで顧客理解を深めることが目的である」とCDP導入時のコンセプト資料を基に語ります。
株式会社SUBARUの安室氏も目的は顧客理解だと同意した上で、「オンラインだけでなくオフラインでのお客様の行動をつなげて見られるようになり、顧客理解が深まったことや、部門を超えてみんながお客様の方を向けたことが大きな変化だった」と語りました。
両社からは活用事例として、顧客理解の分析事例だけでなく、データから見えた顧客体験をきっかけにした新しいサービスの開発事例など、惜しみなく紹介がありました。
また、ロイヤル顧客との関係性向上だけでなく顧客基盤をどのように拡げていくのか?との問いに対しては、田口氏は“サンリオ時間”という全社共通のコンセプトを挙げ「未顧客の方の生活文脈を読み解いて、それぞれの生活時間のなかでサンリオを想起するCEP(カテゴリーエントリーポイント)をどのように作っていけるのかを考えることが重要だ」と、あらゆる顧客との関係性を考慮したシームレスな顧客理解の方法についても語っています。
顧客理解ができるデータ基盤を活用することで、分断されがちな組織の垣根を越え、オンライン/オフライン問わず、どのような活動をしていくべきなのか、ヒントとなる具体事例がたくさん語られました。
DAY 3-4『社会課題から発見するビジネスチャンス』
このセッションの冒頭では、独立行政法人経済産業研究所の小西氏から、コロナ禍における社会変化をビッグデータでいち早く捉えた分析事例が紹介されました。小西氏は「ビジネスを通じて得られる情報のデータ化や指標化の可能性を探り、公表することが、新たな付加価値を生み出す可能性は大いにあり、他社や公的機関の質の異なるデータを組み合わせて活用していくべきだ」と語りました。
また、味の素株式会社の森島氏からは、味の素創業時からの理念である“事業を通じて社会価値と経済価値を協創する”を基に取り組まれている“フレイル※1予防”の事例として、認知機能の維持をサポートするアプリや、疾病リスクを診断するアミノインデックスなどの取り組みをされていることが紹介されました。
このフレイル予防の事例を受け、インテージの関連会社ドコモ・インサイト・マーケティングが行った位置情報を使った分析結果を紹介しました。分析結果からは、コロナによって高齢者の外出頻度や行動距離に減少がみられており、“フレイルリスクが増大している”ことが推測されました。
このような“位置情報を活用した活動量“の指標は、企業のマーケティング活用に利用するだけでなく、官民協創することで、本質的な社会課題の解決に寄与できるとインテージでは考えています。
さいごに
ご紹介したセッションは、なぜ事業・マーケティングをConsumer-centric Transformationする必要があるのか、またそのような変革を実行するためには社内の情報基盤をどのような目的で作り、活用していくべきか、具体的な活動のヒントが見つかる内容となっています。
さらにCCXの取り組みを拡げ、企業間や官民でも情報を共有して共創することによって、大きな社会課題の解決につながっていくのではないでしょうか。
内容についてご興味がおありの方は、是非お問い合わせください。
※1 フレイル
2014年5月に日本老年医学会によって提唱された言葉で、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、生活機能障害や要介護状態などが進むことで死亡などの危険性が高くなった状態」を指す。一般的に、高齢になるにつれ状態が悪くなるが、適切な介入や支援によって、生活機能の維持が可能とされている。
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