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With コロナ ~「メリハリ」するココロをつかまえる ~

1. はじめに

第5波の拡大に伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が10月1日からすべて解除となり、早2か月が過ぎようとしています。先月下旬には飲食店に対する営業時間短縮の要請なども解除され、飲食店が集まる街にも活気が戻ってきているようです。また、大規模イベントに求めていた1万人の観客数上限についても11月1日をもって解除されました。感染の再拡大を防ぐため、収容定員を原則50%以内に抑える措置は当面維持されるものの、スポーツ観戦や音楽ライブなどが数万人単位の観客を入れて開催することも可能となりました。

11月20日現在の新規感染者数は全国で112人となっており、ここ最近は100~200人台を推移していますが、昨夜のNHKのニュースでは北海道においてはやや増加の兆しあり、との報道もありましたし、ブレークスルー感染の増加や抗体減少に伴う3回目接種の決定、新たな”懸念される変異株”の発見もあり、まだまだ予断を許さない状況のようです。

新型コロナワクチンの2回目までの接種率もNHKの新型コロナ特設サイトによると全人口で75.8%に達しています。年代別で一番接種率が低い12~19歳でも65%と半数近くに達し、着実にワクチン接種も進んでいるようです(11月19日現在)。※1

弊社が行っている定点アンケートにおいても、今回もまた新型コロナの感染不安は大きく減少しています。これまで感染を警戒して抑制していた外食や外出などの意欲も回復の兆しをみせつつあります。これからクリスマス、そして年末・年始とイベントも目白押しです。また、ボーナスシーズンでもあります。消費意識の変化や購買行動、旅行をはじめとしたエンタメ消費なども気になります。弊社データの中から変化の兆しの今月も少し紹介したいと思います。

2. 第5波の収束と希望 ~ 内閣府 景気ウォッチャーから ~

内閣府が景況感の把握のために実施している調査に「景気ウォッチャー調査※2」があります。この景気ウォッチャー調査はさまざまな仕事に従事する約2000人に現在と将来における景気の実感を質問し、指数化して発表をしています。
最新の調査結果(10月データ:11月9日リリース)では、現在の景況感をあらわす「景気の現状DI」においては「家計動向」、「企業動向」、「雇用」ともに回復に向かっています。内訳をみてみると家計動向の回復をけん引するのは飲食関連となっており、緊急事態宣言の解除や営業自粛要請などの解除により、ようやく景気についても明るい光が差し込んできたことが伺えます。一方で、将来的な景況感をあらわす「景気の先行きDI」は先月までの大きな回復基調はいったん落ち着きをみせて、雇用関連以外は慎重な回答となっています(図表1)。

振りかえると第3波は昨年の11月後半、秋が一層深まり、「いよいよ冬に」という時期から始まり、1月上旬をピークに感染者が増え続けました。ワクチン接種は進んでいますが、抗体減少やブレークスルー感染の発生とともに「第6波」が頭をかすめているのかもしれません。

図表1

3. 新型コロナ感染不安の減少と警戒下の行動欲求

定点調査で追い続けてきた、新型コロナの感染拡大不安をはじめとしたさまざまな「不安」を見ていきましょう。

新型コロナ感染不安は新規感染者数の減少を受けて今回も6割を下回りました(今回57%、前回58%)。しかしながら、前回の報告のように大きくは減少することなくごく僅かな減少に留まりました。不安が減少に向かっている一方で、暮らし向きや家計の不安は依然と高いままです。「今後3ヵ月先」として尋ねている今後の家庭の暮らし向きについて、「今より悪くなる」は前回と変化はありませんでした(今回14%、前回13%)。また、「家計の節約を心がけている(節約意識)」についても大きな動きはなく61%の方があてはまるとしています(前回58%)。節約意識に関しては、感染者数の増減との相関が弱いことは以前もこのコラムで紹介していますが、経済や景気の回復がより強く影響を及ぼすため、新型コロナの収束とは異なる根深さがあるようで、今回も感染不安や行動不安は減少に向かいましたが、先行きや節約意識に関しては、微増に転じました。目前に迫る冬のボーナスの支給額の予想なども踏まえての回答のように映ります(図表2)。

図表2

また、「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」、さらには「国内旅行」といった不特定多数の人との接触リスクが心配される場所への外出行動に関する不安ついても減少傾向は継続しており、今月も各項目ともに観測以来の低スコアを更新しています(図表3)。

図表3

「国内旅行」に関する不安も、今月は50%まで減少し、過去最低のスコアとなりました。緊急事態宣言が解除された10月から年末・年始の旅行や実家への帰省に関する項目を聴取していますが、直近のデータをみると少しずつ意向が芽生えてきていることがわかります(図表4)。新規感染者数の減少とともに、「日帰り」、「2泊以下の国内旅行」、「実家への帰省」などがわずかに微増の傾向をみせています。

図表4

また、実家への帰省に関しては、女性10~30代において特に顕著に増加しており、長びくコロナ下において「来年のお正月には実家で」という希望があらわれているように映ります(図表5)。

図表5

現在、景気回復のための施策として、「Go to トラベル」の再開も検討されているようですが、最も動きの多くなりそうな年末・年始は避け、来年の1月下旬の再開が濃厚との報道もあります。年末・年始の旅行や帰省などの予定は、今後も感染者数の動きや「Go to トラベル」などのお得情報に目配りをしつつ検討が重ねられるものと思います。

外出行動の拡がりもデータの中に表れています(図表6)。
弊社の家の中の食事に関するデータ※3を見てみると、第5波の収束とともに休日における昼食や夕食の家中での食事は減少に向かっています。休日に友人と外出先でランチを食べたり、家族で夕飯に出かけたりと外食を楽しむ姿も戻ってきているように思います。

図表6

在宅勤務やリモートワークの利用も落ち着きを見せ、企業によっては以前の働き方に戻しつつある企業も出てきています。弊社のデータでも休日だけでなく平日の内食も減少傾向にあり、食卓の風景も変わってきているのかもしれません。今後は内食という食べる側だけでなく、作り手の目線(調理)でも変化を想像してみることが重要になってきそうです。

調理についてはコロナ下において、「簡便・時短」が一層進んだという話や、男性の調理機会の増加なども話題となりました。その影響か、弊社の買い物データでも依然として「冷凍食品」は売上好調のようです。また、スーパーやコンビニなどでは冷食やチルドの売り場を拡大してそれらの需要を捉えようとしています。こうした変化についても機会を見て、その後を追っていきたいと思います。

4. むすびとして ~ 「メリハリ」のココロを掴む ~

インテージが隔週で行っている定点調査において変わらず聴取している「感染不安」をはじめとした、さまざまな行動不安は前回のレポートに引き続き、減少傾向にあります。10月1日から緊急事態宣言やまん延防止等重点措置も解除され、リバウンドを懸念しながらも新規感染者が反転増加することもなく推移していることもあり、人々の動きは戻りつつあるようです。

一方で、収入や家計にまつわる不安は先のレポートの通り、まだまだ根強く残っており、「暮らしの先行き不安」や「節約意識」は高いまま推移しています。本来であれば、クリスマスやボーナス商戦や年末・年始に向けたクリアランスセールなど、生活者の消費マインドがおおいに刺激される時期に突入します。また、クリスマスパーティや忘年会、新年会など、人との会食の機会も増える季節です。しかしながら、海外ではイギリスや韓国、国内では北海道で感染者増のニュースが取り上げられるようになってきて、一気に「リベンジ消費!」とはいかないようです。

そのような中、「メリハリ」をつけた消費がキーとなりそうです。

単なる価格の「高い・安い」だけではなく、「安心・安全とリスク」や「簡便とこだわり」などの「メリハリ」です。「すべてが質素節約に」ということではなく、「しっかりと感染対策をしているホテルや宿を選び、比較的近くに短期間で旅行に。その代わり食事や部屋はいつもより少し贅沢に」、「クリスマスにレストランには行かないけど、仲のいい友人数人を招いてこだわりのお取り寄せグルメでホームパーティを」、といった具合です。

「リベンジ」などと粗々しい消費でなく、家族や愛すべき人に日頃の労いや感謝を、そして、がんばった自分にはご褒美を贈る。そうしたココロ暖かい消費を期待したいですね。

おわり

※1 NHK 特設サイト 新型コロナウィルス -日本国内のワクチン接種状況
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/progress/

※2 内閣府 景気ウォッチャー(DI ※ディフュージョン・インデックス)  
https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html

※3 インテージ キッチンダイアリー® 京浜・京阪神・東海の1,260世帯の食卓・調理の状況を食場面(朝食・昼食・夕食)ごとに継続的に捉えたデータです。
https://www.intage.co.jp/service/platform/diary/

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生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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