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With コロナ ~ ペダル踏む音の向かう先 ~

1. はじめに

2022年を迎えて初めてのマンスリーレポートを準備しながら、驚異的なオミクロン株の感染拡大に脅威を感じています。 本日(2022年1月18日 19:00~)のNHKのニュース番組では日本国内の1日の感染者数としては過去最高となる32,196人に達したことが報道されていました。(※1)第5波が収束に向かい、11月に入ってから1日の新規感染者数は200~300名程度で推移していたところから一転、瞬く間に3万人を越えてしまいました。

前回のレポートでは、新型コロナの感染不安をはじめとした外出を伴う行動不安は、第5波の鎮静化とともに減少へ向かい、年末・年始の旅行や実家への帰省などの意向も見え始めるなど、さまざまな明るい兆しをお伝えしました。しかしながら今回、感染拡大をはじめとした行動不安など、コロナインパクトがもたらす「不安」は再び増加に向かいました。
生活者は警戒モードにシフトしています。

ではさっそく、定点で行っている調査結果から、第6波となるコロナインパクトについて確認していきたいと思います。

2. 回復基調から一転する景気への期待 ~ 内閣府 景気ウォッチャーから ~

内閣府が景況感の把握のために実施している調査に「景気ウォッチャー調査※2」があります。この景気ウォッチャー調査はさまざまな仕事に従事する約2000人に現在と将来における景気の実感を質問し、指数化して発表をしています。
最新の調査結果(2021年12月データ:2022年1月12日リリース)では、現在の景況感をあらわす「景気の現状DI」において、21年9月以降回復に向かっていた「家計動向」、「企業動向」、「雇用」が11月から横ばいとなっています。国内における感染者数の減少や幅広い世代へのワクチンの普及などを背景に、景況感も回復に向かっているようにもみえました。しかしながら、ヨーロッパをはじめとした海外における再拡大やオミクロン株の発生などにより、回復への実感も遠のき出していることがうかがえます。さらに将来的な景況感をあらわす「景気の先行きDI」も10月をピークに「家計動向」、「企業動向」、「雇用」ともに悪化へと転じています。(図表1)

年が明けて2022年。
「第6波」の拡大が始まり、新規感染者数はこれまでになかった勢いで増加しています。

またしても経済の回復に向かい風が吹きそうです。

図表1

3. 第6波の足音とともに ~ 不安はふたたび ~

定点調査で追い続けてきた、新型コロナの感染拡大不安をはじめとしたさまざまな「不安」を見ていきましょう。

新型コロナへの感染不安は、オミクロン株の発生による再びの新規感染者数の増加、第6波の発生を受けて大きく増加して7割に達しています。昨年8月以降、感染不安は減少に向かっていましたが、第6波を目の当たりにして、感染不安は一気に警戒モードに逆戻りしています。
そして、暮らし向きや家計の不安は依然高いままです。「今後3ヵ月先」として尋ねている今後の家庭の暮らし向きについて、「今より悪くなる(14%)」はほとんど変化がありません。また、「家計の節約を心がけている(節約意識)」についても大きな動きはなく約6割の方があてはまるとしています。節約意識に関しては経済や景気の回復がより強く影響を及ぼすため、新型コロナの収束とは異なる根深さがあります。今回、感染不安は大きく増加に向かいましたが、先行きや節約意識に関してはほぼ同水準で推移しています。

昨年12月22日に日本経済団体連合会(経団連)が「2021年年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果」を発表していますが、全業種の妥結額の平均は、前年比5.16%減の82万955円と2年連続のマイナスとなっていました。この金額は2013年以来の低い水準となっています。さらに、製造業の平均は85万3,475円と前年比1.32%減(20年86万4,862円)、非製造業の平均は71万2,019円と前年比18.01%減(20年86万8,431円)とのことで、非製造業については比較可能な1997年以降で最大の下落率となっており、過去最低額との厳しいニュースも報道されていました。※3

新規感染者減少によって、やわらかくも明るい光を感じていましたが、オミクロン株の発生により一転、また暗雲が立ち込めてきました。特に経済の回復や家計不安の解消については先の経団連発表のニュースのような厳しい実態もあり、まだまだ先となりそうです。

図表2

次に「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」、さらには「国内旅行」といった、不特定多数の人との接触リスクが心配される場所への外出行動に関する不安についてみてみると、感染不安と同様に一気に増加に転じています。特に飲食店での食事に関しては大きく増加しています。(図表3)

オミクロン株の急激な拡大により、行動に伴う不安は非常に強くなっています。今後、まん延防止等重点措置の適用や政府・自治体の要請に伴うさまざまな自粛の影響を受け、行動の抑制傾向も強まってくると予想します。これからのシーズンに目を向けると学生は春休み、さらには卒業旅行が控えています。そして、観光業においては春を迎えてのお花見などが控えています。また、歓送迎会なども盛んなシーズンになります。感染拡大が長びくことなくできる限り早い時期に収束するよう、感染予防に配慮して日々を過ごしたいものです。

図表3

オミクロン株の拡大を受けて「国内旅行」に関する不安は65%まで増加しました。本コロナ調査では緊急事態宣言が解除された10月から年末・年始の旅行や実家への帰省に関する予定を聴取していますが、「宿泊ありの国内旅行」の予定が今回の調査で大きく減少しました。今回の調査日程が12月31日~1月2日だったこともあり、ほぼ実態といえる数字になっていると思われます。

「宿泊ありの国内旅行」について全体では3.2%のマイナスとなっていますが、幅広い年代でマイナストレンドになっており、女性では全世代がマイナスです。男性では40代、70代の減少が大きくなっています。これらのアンケート結果から、オミクロン株の拡大の影響もあり、直前になって宿泊を伴う国内旅行の見直し(日程の短縮)、キャンセルを考えた方も多かったことがうかがえます。沖縄などの旅行にキャンセルが発生していることが年末のニュースでも報道されていました。
一方で、実家への帰省や日帰りの旅行については増加の傾向がみられました。「感染不安はあるものの昨年はいけなかったから・・・今回こそ・・・」と細心の注意をしながら実家へ向かった様子が浮かびます。

図表4

4. むすびとして ~ 穏やかな日常を待ちわびて ~

インテージが隔週で行っている定点調査において、変わらず聴取している「感染不安」をはじめとしたさまざまな行動不安は大きく増加に向かいました。1月18日には首都圏の1都3県や東海3県など合わせて13都県にまん延防止等重点措置を発令することが決まり、先行して発令されていた広島県、山口県、沖縄県と合わせて16都県にまん延防止等重点措置が適用されることになります。人々の動きはまだ少し自粛を求められることになります。

収入や家計にまつわる不安は引き続き根強く、「暮らしの先行き不安」や「節約意識」は高いまま推移しています。第5波の感染収束がもたらす期待は「リベンジ消費」といった言葉で、その明かりを呼称していました。

しかしながら、クリスマスや年末・年始に実施した弊社の自主アンケートを通じて見えてきた生活者のマインドは、「クリスマスは自宅で家族とともに。少し贅沢な美味しい食事とプレゼントを準備して ※4」、「年末年始は両親の元へ。あるいは家族と日帰りの旅行に ※5」といったように、なにかに対してリベンジをするようにお金を使うのではなく、「大切なモノ・コト・トキに対してお金を使う」という原点や本質への回帰(recursion)のように映りました。

私の実家は車で1時間ちょっとと近いこともあり、年末に一度、年が明けて一度とともに日帰りで両親の顔を見てきました。年末に訪ねた折、母親が「サドルが硬くて高さや角度が合わない・・・」とこぼしていたので、分厚いクッションのサドルを購入し、工具箱を携えて年明けにも訪ねることにしました。サドルを取り換え、高さや角度を幾度か調整し、そのたびごとに近所を一周してくる母親との時間は実家暮らしのころを想い出す、とてもこころ休まるものでした。

母親が踏むペダルの音に、また、父母ふたりしてマスクなしに自転車で出かけられる日々が来ることを祈って。

おわり

※1 NHK ニュース7(2022.1.18)

※2 内閣府 景気ウォッチャー(DI ※ディフュージョン・インデックス)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html

※3 マイナビ・ニュース
「2021年の冬ボーナス、平均支給額はいくら? 業種ごとの平均額を一覧でチェック」(2021/12/27)
https://news.mynavi.jp/article/20211227-2238103/

※4 インテージ 「コロナ禍で過ごすクリスマス」 自主調査結果(2021.12.13)
https://www.intage.co.jp/news_events/news/2021/20211213.html

※5 インテージ 「年末・年始の旅行や帰省」 自主調査結果(2021.12.21)
https://www.intage.co.jp/news_events/news/2021/20211213.html


生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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