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新しい暮らしの風景 ~インバウンドの微風~

はじめに

会社が「秋葉原」にあることから、日々、「インバウンドの風」を感じることができます。コロナ前の秋葉原は海外からの観光客が溢れ、アニメのコスプレをした人も多くみかける街でした。また、電気店を筆頭に、ドラッグストアなども海外からの観光客を意識して英語や中国語などに長けた店員さんを配置し、商品構成もかれらを意識したシフトを敷いて、万全の体制を敷いていました。そして、海外からの観光客に人気の「美白クリーム」などは、ドラッグストアの入り口に山積みされているのは当たり前ですが、駅近のコンビニエンスストアもチャンスを逃すまい!と「美白クリーム」がレジ横に鎮座しておりました。

今年(2022年)に入り、コロナインパクトによって枯れ果てた「インバウンドの風」が少しずつ戻ってきました。最初はツアー客に限定されていた海外からの観光客の受け入れも、10月11日から水際対策の大幅な緩和として、「入国者数上限の撤廃」や「個人の外国人旅行客の入国解禁」など、個人旅行客に対してもほぼコロナ前の状態へ緩和されたこともあり、街にはコスプレ姿の旅行客も見かけるようになり、秋葉原の街もようやく以前の姿を取り戻し始めました。日本政府観光局の統計をみても、まだまだ回復の途上ではありますが、確実に外国人旅行客が増えていることも確認できます。(図表1)

図表1

訪日外国人客数推移(2019年~2022年10月)

戻りつつある「インバウンドの風」を、風景描写だけなく弊社が保有するドラッグストア免税店データなども紐解きながら一緒に眺めていきましょう。

1. 入国制限の変化と海外からの観光客数の推移

2022年10月の国別訪日客数の構成比ランキングのTop3は「韓国(25%)」、「米国(11%)」、「香港(7%)」の順となり、19年同月比(10月)とは大きく異なります。19年のTop3は「中国」が29%と3割弱を占め、他の国を圧倒していました。次いで「台湾(17%)」、「韓国(8%)」となっていました。依然としてゼロコロナ政策を続ける中国については直近10月データでは4%程度に留まっています。一方で隣国の韓国は大きく構成比を伸ばしました。もともと日本のカルチャーへの関心も高く距離的にも近いことから、韓国や韓国国民がコロナ対策において新しい局面に進み始めていることが映し出されているようです。(図表2)

図表2

訪日外国人入国者の変化

6エリアにまとめた地域別にみてみると中国の回復状況が影響して「アジア」は8pt弱の減少となっています。(図表3) その一方で「北米(+6pt)」や「欧州(+1pt)」などの構成比が増えていました。中国では依然として「ゼロコロナ政策」が続いているため、海外への渡航もまだまだ先が見えない状況です。中国からの訪日観光客の回復も時間がかかりそうですね。

図表3

訪日外国人入国者の変化(まとめ)

2.コロナ感染拡大当初のインパクト

ここで少し過去の記事から2020年1月頃の新型コロナ発生当初に戻って、日本国内におけるインバウンド消費の動きを「ドラッグストア免税店データ」で振り返ってみましょう。「ドラッグストア免税店データ」は、免税店として登録された全国のドラッグストアからインテージが収集した、免税販売分の販売金額・数量のデータです。
中国では春節を前にした1月23日に複数の航空会社で武漢への運航停止が発表されました。さらに27日に旅行会社による海外団体旅行の取扱いが停止された結果、春節(1月24日~2月2日)の中国人訪日客は昨年の春節より2割ほど減少しました(観光庁発表)。また、ANAが2月10日以降の中国便を半減させるなど、その後も相次いで中国便の運休や減便が行われ、中国人訪日客は大きく落ち込みました。
その結果、日別の免税販売額を前年(2019年)と比較すると、春節の間に徐々に免税販売額が減り、2月に入ってさらに減り続けていたことが明白になりました。また、事態が深刻化して武漢への運航停止が実施された1月23日以降2月16日時点までの平均日販は、それまでの平均日版に対して化粧品で約47%、医薬品で約65%と大幅に減少していました。訪日客減少のインパクトの大きさがうかがえます。この日販減少の傾向は特に大型店で強く見られました。(図表4)

図表4

ドラッグストアでの免税販売額推移(~2020/2/16)

3.制限緩和と免税販売の推移

コロナ感染拡大当初、急激に縮小したインバウンド消費。2022年のいま、制限緩和によってどの程度回復の動きがみられているのでしょうか。ここからは、2022年1月からの免税データの動きを見ていきましょう。
「化粧品」については22年の春ごろから免税ドラッグがじわりじわりと増加し始めました。そして、7月頃の第7波感染拡大でいったん増加が鈍化しますが、8月以降、外国人旅行者の規制緩和などの動きが顕著になってきたこともあり、大きく増加基調にあることが確認できます。また、品目ごとの売上を確認すると円安の影響もあり、単価が高いものが好調のようです。
「雑貨」については金額こそ「化粧品」には及びませんが22年の春ごろから免税ドラッグが増加傾向を見せ始め、9月以降、やはり大きな増加傾向にあります。
また、「医薬品」についても「雑貨」と似たような傾向を示しており、9月以降、一気に増加に転じました。医薬品に関しても日本製は高品質というイメージもあり、訪日観光客からは人気の高い商品ということもあり、インバウンドの増加を受けて引き続き好調な売り上げが継続しそうです。(図表5)

図表5

免税ドラッグストアの販売規模トレンド

4.コロナ前との売れ筋変化

先の章で、「化粧品」「雑貨」「医薬品」とジャンル単位での免税販売の推定規模を見てきました。ここからはもう少し詳しくカテゴリー単位で、コロナ前にあたる2019年との比較をして見ていきましょう。2022年9-10月期のTop3は「化粧水」「洗顔クリーム」「美容液」でした。これらは2019年も上位となっており、化粧水をはじめとしたスキンケア系商品の人気は揺るぎないようです。(図表6)

図表6

免税ドラッグストアの売れ筋変化 9-10月期

コロナ前と比較してやや気になる動きをいくつかピックアップしてみます。化粧品では、「洗顔クリーム」の順位が7位→2位に上がった一方で、パックが2位→6位に下がるという変化がみられました。パックはバラマキみやげとして人気のカテゴリーです。円安の影響か、上位の化粧品や美容液でも以前より高額なタイプが売れており、広く人へのおみやげというより、自分のためにいいものを買う人が増えたことが考えられます。

また、「ビタミンB1剤(14位→5位)」、「総合感冒薬(16位→10位)」をはじめ、健康関連商品(滋養強壮剤)、医薬品(解熱鎮痛剤、胃腸薬など)が順位を伸ばし、ランキングの上位に名を連ねるという変化がみられました。日本の医薬品は品質が高いというイメージやコロナ禍が影響していると考えられます。

現在は中国からの観光客が戻っていないため、中国を除く他の国からの観光客の売上が反映されたデータとなっています。コロナ前に「神薬12」として中国人観光客の人気を集めていた目薬の順位が下がっている、台湾人観光客に人気があると言われる洗顔クリームの順位が上がっている、といった変化にはこの影響も考えられ、今後、中国からの観光客が回復するとこのランキングにも大きな変化があるかもしれません。引き続き、免税店における商品の動きをデータから観測し続けたいと思います。

5. 最後に(分析担当者との対話から)

最後に、今回のデータ分析を担当した、小売りや流通、さらにはメーカーの施策等にも通じており、的確な読み解きを行ってくれるメンバーにも、本分析結果やコラムの所感を聞いてみました。
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生活者研究センター 田中宏昌(以下 田中)秋葉原を訪れる観光客の回復を感じていましたが、免税データの動きをこうして数字で目の当たりにすると、ますますその実感がわきますね。

企画・分析5部 福田知弘(以下 福田)10月に個人旅行客の入国規制も緩和したので、一気に数字も伸びていますよね。一方で、本文中にもありますが中国からの観光客は戻っていないので、その点はある意味で貴重なデータなのかもしれません。

田中:「貴重」というのは?
福田:中国を除く観光客の求める商品が浮き彫りになっている、という点です。やがて、中国からの観光客が増えると、訪日観光客の約3割程度とも見込まれるかれらの影響が大きくなってしまうので。今の数字からしか考えられないマーケティングプランもあるのではないかと考えます。

田中:なるほど。インバウンドの状況について変化の激しい今だからこそ、かれらの買い物行動をデータから捉え、的確にマーケティング施策に落とし込むことが重要ですよね。
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今後も共にデータ分析を継続して、その変化、潮流をレポートしていきます。お楽しみに。

おわり

※1 インテージ 知るギャラリー
「さらに広がる新型肺炎の影響 需要急増の予防関連消費と冷え込むインバウンド消費」(2020.2.21)


【分析者紹介】
データ分析および読み解き
CBD本部 企画・分析5部 福田知弘(ふくだ ともひろ)

2014年 インテージに入社
    旅行業、金融業、通信業、自動車産業に携わる企業様のリサーチをIT領域で支援
    もっとお客様の近くで仕事をすることを希望し、2016年春に異動    
2016年~現在
    SRI,SCI,SLIなどのパネルリサーチを中心とし、アナリストとして7年間務める
    業界は化粧品メーカーや製薬メーカー、飲料メーカーのお客様を経験
今回の記事にあげたドラッグ免税データなど、特定のパネルリサーチに関わらず、メーカー様のマーケティング課題をトータルでご支援できるよう日々の業務に意欲を燃やしている

著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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