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新しい暮らしの風景 ~コロナ下ににぎわいをみせる 男性による化粧品購買市場~

1. 男性の健康や美容意識の高まりと化粧品の市場の成長

コロナインパクトによって、登校や出社、ショッピングや会食など、多くの外出行動に抑制が生じて、家の中で過ごす時間(イエナカ時間)が増えました。また、感染不安から感染防止、衛生対策を行っていたコロナ発生初期の段階から、より健康的で病気になりにくい状態でありたいという想いを理由に、健康志向や免疫力強化の取り組みも増えています。
さらに、行動抑制により増えたイエナカ時間が自分自身を見つめるきっかけとなり、健康意識の高まりとともに、外見磨きや内面磨きに向かう人、いわゆる自己研鑽、自己投資といった潮流につながっているように思います。
コロナ下において成長した市場をウォッチしていくと、「プロティン」を筆頭とした健康食品などがすぐに想起されますが、「男性化粧品」も大きな成長を遂げた市場であることがわかります。健康、自分磨き、といった文脈につながる「キレイ」を求める潮流をデータとともに眺めていきましょう。

まずはじめに弊社の購買履歴データから、男性による化粧品購買市場の規模の動きを確認してみます(図表1)。2017年10月~2022年10月まで5年間のデータを眺めてみると、5年前の2018年(期間は2017年10~2018年9月)の408億円から513億円へと1.25倍もの成長を遂げています。特にコロナ上陸後の2020年からの成長が目立ちます。また、カテゴリー別の成長を確認すると、「スキンケア」市場が対18年比で1.37倍に増えており、対象とした4カテゴリーでは最も大きな成長となっています。
さらに対象とした4つのカテゴリー内の動きについて「購入されたSKU数合計(個数)」という視点で確認してみると、「スキンケア」のアイテム数が1.21倍に増えたことがわかりました。生活者の関心の高まりとともに商品そのものの魅力の向上やアイテムの充実も市場の成長の背景にありそうです。

図表1

男性の化粧品購入 市場規模の推移(2017年~2022年)

さらに対象とした4つのカテゴリーの買われ方について、「購入率」と「購入者当たり金額」という基本的な2つの指標で確認してみると、各カテゴリーともにユーザーの広がりの表す購入率に大きな変化はないものの、使っているお金を表す購入者当たり金額は増加傾向にあることがわかります(図表2)。一度購入した人が効果を実感することで、よりよい商品を、より多様に試してみる、といった健康系アイテムにしばしばみられる「カテゴリーとの関係性の深まり」を感じることができます。

図表2

カテゴリー別 購入率・購入者当たり購入金額 推移(2017年~2022年)

2. 高まるスキンケア意識

さらに「化粧品」というジャンルまで対象を広げて、「購入者数」と「購入者当たり金額」の成長率でカテゴリーの動きを確認してみると、美容液を除くすべてのカテゴリーにおいて、購入量を表す「購入者当たり金額」が増えていることがわかります(図表3)。また、美容液、クリーム、眉目料では購入者が増えていることが浮き彫りになりました。お肌の手入れという点ではクリームの利用はもちろんのこと、より高い効果を期待して美容液まで手を伸ばす人が増えているようです。

図表3

カテゴリー別 購入者数・購入者当たり金額 成長率

「クリームだけでなく美容液も」の様に、ステップで利用(併用)しているカテゴリー数に注目して分析をしてみました(図表4)。
洗顔・クレンジングなど、スキンケア関連を3カテゴリー以上併買しているグループの市場規模は、この5年間で1.55倍に成長していました。また、3種類以上購入している人は、洗顔、化粧水、乳液、クリームなどを併買していることもわかります。このことから化粧品の利用者においては併用するカテゴリーが年々増えており、「クリーム」を利用していると、さらなるスキンケアへの関心から「化粧水」や「乳液」なども併用するという動きが増えているようです。

図表4

購入サブカテ数別 市場規模の推移とカテゴリーパターンによる金額構成比の推移

また、スキンケアへの関心の高まりと購入金額の増加などを背景として、購入チャネルにも変化が生じています(図表5)。データをみると「薬局/ドラッグストア」や「宅配/通販/インターネット」が購入者や購入金額を伸ばしていますが、その他の動きに目を向けると、市場規模は小さいながらも「デパート」での購入者が増えていることにも目が留まります。
最初は手頃な商品からエントリーしつつも、より効果の高い商品を。さらにはカウンセリングやアドバイスを受けながら、より自分の肌質にあった商品を求めてデパートで。そうした動きが今後増えてくるかもしれませんね。

図表5

チャネル別 スキンケア購入者数・購入者当たり金額 成長率

3. 成長するクリーム市場 ~各年代に映る魅力ポイント~

成長する男性による化粧品購買市場。その成長をけん引するクリームについて、別の角度からも分析してみましょう。 クリームの市場規模は年々増加しており、5年前(47億円)と比較して1.64倍(77億円)と大きく成長しています(図表6)。

さらに性・年代別に分解してみると、すべての年代で市場が成長していることがわかりました。特に中・高齢層での増加が大きいことから、年代特有の「乾燥」や「シミ」などのお肌の悩みに対するケアとして手を伸ばしている様子が浮かんできます。また、若年層においても脱オイリーな肌を目指したり、保湿などより健康的なお肌を求めて、というニーズが浮かんできます。そして、「男性専用クリーム」の利用が増えていることにも注目したいと思います。男性ならではの効能に注目して選び取る、既にそうした層が生まれていることはこの市場の成長や暮らしへの定着を意味していると思います。
男性の化粧品購入、スキンケアと聞くと「若い人が」というイメージを持ちがちですが、男性全体がクリームをはじめとしたスキンケア商品への関心・関与が強まっていると言えます。

図表6

チャネル別スキンケア購入者・購入者当たり金額 成長率

健康意識の高まりや外見内面を問わない自分磨き意識の向上により、男性においてもお肌のセルフケアは身近な取り組みになってきていると言えます。特にお肌は疲れや健康状態が表れやすく、周囲からもわかりやすい部分です。その意味でも関心は高まっていると言えそうです。

健康的で疲れを感じさせないお肌を日頃のケアで手に入れる。そのためには洗顔にも力を入れるし、クリームや乳液、さらには美容液も使ってみたい、と男性にとってもスキンケア用品は身近な存在になっているのだと思います。そうした変化の兆しをこれからもデータから追い続けていきたいと思います。

4. 最後に(分析担当者との対話から)

最後に、今回分析を担当したメンバーに所感を聞いてみました。

生活者研究センター 田中宏昌(以下 田中):コロナ下に健康意識の高まりがセルフメンテナンスの意識を高め、日頃のケアでできることにはチャレンジしてみよう、という気運が高まっているように思います。スキンケアだけでなく、自宅で手軽にできるワークアウトなどの動画も人気ですよね。

CBD本部 企画・分析5部 石井陽菜(以下 石井):これまでもスキンケア用品をはじめとした男性による化粧品市場の成長には注視してきましたが、コロナ下に一層の成長を遂げたことは間違いありません。今回の分析を通じて、市場の拡大はもちろんのこと、中高年を中心としながらもすべての年代で市場が拡大していることや、オールインワンクリームも含めたクリームを中心としながら他のスキンケア用品の併買も拡大していることが確認できたことにより、男性による化粧品購買市場の成長がより大きな潮流になっていると感じました。

田中:私はてっきり若年層がけん引しているのだろう、と思っていましたが、データを見て、中高齢層の割合が高いことに驚きました。確かに「乾燥を押さえ保湿を」という効能を求めている人にとっては手軽で身近な商品ですよね。また最近では「シミ対策=見た目対策」の効果を持つものも人気のようですね。

石井:年代により求める効能は異なっていますが、スキンケアを含めたセルフメンテナンスに関する関心が高まる現在、「自分のお肌の状態に合わせて適切なケアができるクリームがある」ということをしっかりと理解してもらい、その効能や使い方がわかりやすく案内され、買いやすい環境が整うことで、より多くの新規ユーザーを呼び込むこともできると考えます。また、一度手に取り、その効果を体験することによって、より良い商品にアップグレードしたり、化粧水や乳液、さらには美容液などへのエクステンションも期待できるのでは、と考えます。

田中:新規トライアル、リピート購入、エクステンションの広がりなど、時系列分析を行うことで市場の成長要因をウォッチすることもおもしろそうですね。

石井:スキンケアから美容液の併用へ、ドラッグストアからカウンセリングを期待してデパートでの購入へ。など、支出増や購入チャネルも広がりをみせそうです。今回はクリームをフューチャーしましたが、眉目料や美容液の変化についても分析を行い、レポートも準備していますので、是非お問い合わせいただきたいです。 また、このように大きな変化を続ける市場において、ビジネス機会を探索し、力のある商品をどのように考えていけばいいのか、そのアプローチやヒントを近々セミナーでも紹介する予定です。

田中:いいですね!この続きをセミナーで詳しくうかがえることを楽しみにしています。


関連セミナー:男性美容意識の高まりと新たなビジネス機会


【分析者紹介】
CBD本部 企画・分析5部 石井陽菜(いしいはるな)
2019年 インテージに入社
化粧品業界や日用雑貨業界を中心にSRI、SCI、SLIなどのパネルリサーチを担当

著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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