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猛暑の夏と自然災害への備え ~生活者スナップショット Vol.2

1. はじめに ~ 日傘咲く

毎日、暑い日が続いていますね。さて、このところめっきり日傘姿の男性が増えたと思いませんか?ニュースでも男性の日傘市場の成長が取り上げられており(※1)、このコラムをお読みの方の中にも「私も使っています」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ニュースによれば、「若い男性の関心が特に高くなっている」とのことでした。そんな情報も頭の隅に置きながら道行く人を眺めてみると、確かに10~20代くらいの「日傘男子」の姿が目立ちます。彼らの共通する特徴を探るとすれば、みな一様に「日焼けしておらず肌がきれい!」ということでしょうか。肌を刺すような強い日差しを遮って少しでも涼しく、といった「涼を求めて」という理由以上に、無防備に紫外線を浴びてお肌にダメージを受けたくない、という「キレイな肌」を求めての潮流かもしれません。

暑さを避けて通りを見下ろせるコーヒー屋さんに避難して、アイスコーヒーを飲みながら、行きかう日傘姿の人々を男女問わず眺めてみるのも楽しいものです。「絶対に紫外線を浴びたくない!」と主張しているかのような銀色の厚めの生地でできた日傘、人気のアウトドアブランドがつくった超軽量の日傘、陽の光を跳ね返すようなライトブルーやオレンジなど鮮やかな発色の日傘、北欧のテキスタイルデザインメーカーの印象的な柄で彩られた日傘など・・・まるで酷暑に咲く花々を見ているようです。

みなさんのまわりにも「日傘男子」はいませんか?

2. 感染不安、再び ~9回目の波音を聴きながら

「第9波」という言葉も行きかっていますが、依然として感染者もそれなりの人数で発生しているようです。定点調査から行動に関する不安について確認しておきましょう。
新型コロナの感染不安は感染者数の増減によって変化してきました。第9波とも表現される現在、感染不安はやや高い位置にあります。この感染不安と行動にまつわる不安は強い相関があり、感染不安が増加すると行動不安も連動する動きをみせてきました。

感染不安に関しては5割弱の方が不安を感じており、大きくは上昇トレンドの中にいます。そして、外出や行動不安に目を移すと「テーマパークや繁華街、人の集まる場所への外出(41%)」、「飲食店での食事(26%)」、「国内旅行(26%)」といういつもの3指標ともに、大きなトレンドで眺めるとここ数か月は第9波とともに上昇トレンドにあります。しかしながら今週はわずかに減少の動きを見せています。ここ最近の行動不安の小刻みな上下動を見ると、不安を感じつつも夏を楽しみたいという生活者のマインドが浮かんでくるようです。(図表1)

図表1

感染拡大不安・飲食店での食事、外出・国内旅行への不安

新型コロナの感染不安もありますが、「夏」と言えば台風、さらには最近では「ゲリラ豪雨」や「線状降水帯」といった言葉も耳にします。そうした不安は居住しているエリアによって違いはあるのでしょうか?
定例調査では、これまで紹介してきた感染不安や行動不安以外にも、「地震や台風などの自然災害」に関する不安といった項目も収集してきました。こうして2つの不安を比較してみると、感染不安よりも自然災害の不安の方が大きいようです。また、最初に緊急事態宣言が発令された先行7エリア(東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡)とそれ以外という大きなくくりではありますが、エリア別の差異がほとんどないことも浮かび上がってきます。さらに、どちらの不安も男性よりも女性の方が強く不安を感じていることも興味深いですね。(図表2)

図表2

晴れない不安:新型コロナ感染拡大・自然災害の不安(エリア別)

日本には活断層が2千以上もあると言われています。また、地震は一定の周期を持って繰り返し発生することから、「自分の住んでいるエリアでもいつかは・・・」という不安や備えの気持ちは誰しもが強く感じているのかもしれません。

3. 防災の日を前に ~猛暑はもはや自然災害

9月1日は防災の日です。そして、9月1日は関東大震災が発生した日でもあり、防災の日の由来でもあります。関東大震災は1923(大正12)年、今からちょうど100年前の出来事でした。時刻は11時58分。ちょうどお昼の支度のために火を使っている家も多かったことが火災被害を大きくしたとも言われています。また、マグニチュードは7.9と推定されています。
そうした防災の日を前に、自然災害に関する意識や対策を確認するための調査を行いました。※2

はじめに、自然災害をはじめとした様々な脅威について、どの程度不安を感じているかを尋ねたところ、「地震」と回答した人が最も多く、「とても不安」「不安」「やや不安」を合わせて全体の85%という結果になりました。2位は「猛暑(高気温)」(82%)となっており、アンケートを行ったタイミングの影響もあるかもしれませんが地震同様に8割を超える数字に驚きを覚えました。「過去3年間で不安が強まった対象」を聞いてみたところ、「猛暑(高気温)」は1位になっており、「より一層、夏が暑くなっている」と感じ、そのことに不安を感じているのではないでしょうか。そして、3位は「集中豪雨・大雨・暴風」(79%)となっていました(図表3)。

図表3

自然災害やさまざまな脅威に対する不安とその変化

「地震」については、「2千以上の活断層」という話を書きましたが、「猛暑」についても日本中が毎年のように異常気象に見舞われ、いたるところで「過去最高気温」というニュースが飛び交っています。テレビの天気予報では気温を赤色~青色で表現するヒートマップの日本地図を目にすることも多くなりましたが、北から南まで日本中を眺めてみても、多少の濃淡はあれども「真っ赤」になっていて、もはや「日本に避暑地はなくなった」とも映ります。また、「集中豪雨・大雨・暴風」についても、毎年のように「過去最高の降水量を記録」という言葉とともに、増水して氾濫した河川の映像とともにニュースが流れています。我が家(神奈川県川崎市)は多摩川から4kmほどの距離なのですが、浸水ハザードマップによれば多少の浸水の可能性もあるらしく2020年10月に関東を襲った台風19号の際は刻一刻と増水する川崎市内の多摩川の映像を眺めながら不安な夜を過ごしました。

また、「無差別殺人・通り魔の巻き添え」や「テロ・武力行為(ミサイル飛来)」といった自然災害以外の脅威も身近な不安として変化してきていることがわかりました。こちらも現代の世相を反映した結果と言えそうですね。

2011年に発生した東日本大震災。「東日本」とは名付けられたものの、福島第一原発事故での放射能汚染や現在も連日ニュースで報道されている処理水などの影響は「東日本」に留まるものではなく、そのインパクトや不安は多くの方にも今なお残り続けているのではないでしょうか。そして、この大震災をきっかけに、ご家庭での防災対策の見直しや、避難所や避難ルートへの案内表示など、自治体の取り組みを確認したり家族で情報を共有する機会が増えた方も多いのではないでしょうか。12年が経過した2023年現在、生活者の防災意識はどのような状況なのでしょう。ここからは、家庭での対策実態、自治体の各対策への評価などについて見ていきましょう。

家庭でのなんらかの防災対策については、全体の47%、2人に1人が「防災対策をしている」と回答していました。対策への関与程度については、「自分自身が防災対策をしている」は24%と4人に1人、「家族が対策をしているが自分も関与」は18%、「家族が対策をしており、自分は関与していない」は5%となっていました。この結果をみると防災対策を行う際は一人暮らし家庭を除いては、「家族で一緒に対策準備」が基本となっているようです。
その一方で「防災対策をしていない」という回答も41%にのぼりました。「わからない」を合わせると過半数を超えてしまいます。
「備え」についてはやや不安な結果となりました。

図表4

防災対策の状況

「家族で一緒に対策準備」という言葉を記したので世帯人数別にも対策状況を見てみましょう。その結果、単身世帯では防災対策をしていない人の割合が圧倒的に多く、7割近い方が対策をしていないことがわかりました。単身世帯者を年代別にみてみると対策をしていない割合が特に多いのは若年層(10代79%、20代80%)となっており、最も低い70代でも53%が対策をしていないと回答していました。
単身世帯における対策実施・強化については同居家族の支援も受けられず、すべてを自分自身で行わなくてはなりません。また、「一緒に暮らす家族を守る」というモチベーションも抱きにくいという課題もあります。そうした環境を配慮して、今後はより一層、若者が帰属する学校や職場、さらには高齢層向けとしては市区町村や町内会など、各年代層や環境に応じたコミュニティを通じた啓蒙活動、対策支援が有効なのではないでしょうか。

では続いて、防災対策として実際に行っていることを確認していきましょう。
「水」(32%)、「レトルト・インスタント食品」(29%)がトップ2で他を引き離す結果になっており、3割程度の人が命を保つものとしてこの2つを真っ先に挙げていました。水は飲み水として、また、レトルト食品を湯煎(お湯で温める)したり、即席めんなどのインスタント食品にはお湯を注いだりと、この2つの組み合わせは切っても切れない間柄と言えます。3位以下に目をやるとペーパー類、乾電池、ビニール袋、缶詰といった主に暮らしにまつわる品々が続きます。最近では「ローリングストック」という言葉で知られるようになりましたが、食料や日用品の備蓄を行いながらも、賞味期限や有効期限を目安に上手に日常の暮らしの中で使いながら備えを運用していく、そうした習慣も根付きはじめているのではないでしょうか。(図表5)

図表5

家庭の防災対策:対策している/今後対策したいもの(対策済みTop20)

なお、「今後対策したいもの」についても尋ねたところ、水や食料が多くそれぞれ2割弱、「簡易トイレ」や「ポータブルバッテリー・発電機」など断水や停電なども考慮してか、生活に必要なものの意向が高い結果となりました。特に「ポータブルバッテリー・発電機」はスマホの充電用としての意向が高そうです。最新の情報を入手するとともに、位置情報をはじめ自分の現在の状況を誰かに伝える力も持つスマホは、食と並ぶくらいに「命」に係わるものと言えます。
「ポータブルバッテリー」は最近次々と使いやすくおしゃれなモデルが登場していますし、アウトドアやキャンプブームも後押しして、急速に広まっているようです。昨年、我が家でもポータブルバッテリーを専用のソーラーパネルと思い切って一緒に購入しましたが、幸いなことにベランダで日向ぼっこをしたときにしか使ったことはありません。

これまで個人の抱える不安や備えについてみてきましたが、ここからは「公助」にあたる自治体の防災対策に期待していることを見ていきましょう。自治体の防災対策や備えは、その地域の地理的環境や過去の災害実績をもとに推進されています。最近では防災意識の高まりとともにハザードマップの見直しなども頻繁に行われ、より実態に即した被害想定やその対策準備などもなされるようになってきたようです。

自分が住んでいる自治体の防災対策において強化を期待することを聞いたところ、「水など備蓄倉庫の設置」(51%)が最も多い結果となりました。水をはじめとした食料や日用品などの備蓄という意味では、ご自宅での備えと重なるところがありますね。避難生活における基本的な物資類が1位になる一方、「生活再建支援制度」(39%)や「応急仮設住宅の設置」(26%)などが上位に挙がっていることから、短期的な対応として必要な物資だけでなく、被災後の生活を見越した中・長期的な支援への要望も高くなっていました。被災後できるだけ早く生活を立て直したい、そのための住まいや資金などを支援してほしい、という期待が強いと読み取れます。そして、それらの期待は「もし自分たちが被災したら、なかなか再建・復興が進まないのではないか?」という不安の裏返しなのかもしれません。(図表6)

図表6

自治体の防災:強化してほしいもの

これを機会に今住んでいるエリアのハザードマップや避難設備、さらには自治体の防災対策を確認してみてはいかがでしょうか?また、ご家族一緒に「もしも」を想定したお話をしてみるのも良いかもしれません。

4. むすびとして ~ ヒグラシの鳴き声は彼方に

私事ですが、10年程前に現在暮らしている神奈川県川崎市に越してきました。、引っ越しをしてきてすぐの夏の朝早くに近所を散歩していたところ、小さな公園のクヌギの樹にカブトムシのメスがいることを見つけました。早速、スマホで付近の里山やカブクワの出没情報を検索し、かれらに出会えそうな場所にせっせと足を運びました。このあたりは車で20~30分も走れば、川崎市内や横浜市内にもカブクワを見ることのできる大きな森林公園や里山が点在しており、今ではかれらとの出会いは毎年の楽しみになっています。

捕まえたカブトを肘のあたりにつかまらせてみる。小さな鍵のような爪のある6本の足を器用に動かしながら腕から手の甲へ、手の甲から指先へと歩いていく。すっかり指先まで行きついてしまうと左右の前足を儀式のように空に向かって何度か動かす。そして突然、黒光りした背中の甲冑が割れて、きれいな羽を広げる。一瞬の間のあと「ブーン」という大きな羽音を立てて森に飛び立つ。

この10年、夏の間にカブクワを探して緑地や里山を歩き回っていて少し気になっていることがあります。年々、明け方になると鳴き始めるヒグラシが少なくなっているのです。以前は朝の4時くらい、カブクワ探検も一息ついて木立の中を歩いていると、明るくなる空とともにヒグラシの鳴き声に包まれているような感覚になるほどでした。しかしながら、最近は以前と比較して、「包まれる」という感覚を味わうこともなくなってしまいました。

これもまた地球の温暖化、猛暑の影響でしょうか。

ではまた次回。

おわり


※1 日テレNEWS
「都内では今年初の猛暑日 メンズ日傘の広がり「日傘の威力すごい」(2023.7.7)
渋谷ロフトでは「男性用の晴雨兼用傘の、2023年6月、1か月の売り上げは前年同月比で約1.5倍」
※2 インテージ 広報リリース
「関東大震災100年 地震・集中豪雨など不安8割も「対策せず」(2023.8.28)
※3 テレ朝NEWS
「都内でカブトムシ大量発生!? 「例年の数倍以上」木に異変か」(2023.8.9)

著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 電通リサーチ(株式会社電通の100%グループ会社 当時)に入社。
1994年より電通の大規模生活者データベースの立ち上げメンバーとして参画。
以後、2012年まで消費者研究センターや電通総研などの横断機能組織に駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。
その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。

2012年 楽天グループ(株)を経て、2013年 インテージへ。
2020年より現職。

思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。
記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。
趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 電通リサーチ(株式会社電通の100%グループ会社 当時)に入社。
1994年より電通の大規模生活者データベースの立ち上げメンバーとして参画。
以後、2012年まで消費者研究センターや電通総研などの横断機能組織に駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。
その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。

2012年 楽天グループ(株)を経て、2013年 インテージへ。
2020年より現職。

思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。
記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。
趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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