
2024年における訪日外国人の数は、12月に3,489,800人と、単月として過去最高を記録した。また2024年年間で3,600万人を突破し、過去最多となっている。(※1)
首都圏や観光地はもとより、地方都市でも訪日外国人に出会う機会は多くなっていることを皆さんも感じているのではないだろうか。
また、2024年(暦年)の訪日外国人の旅行消費額(速報値)は8.1兆円と過去最高(2023年比53.4%増)となり、いわば「インバウンド旋風」が日本を駆け抜けている。(※2)
このような中、複数回訪日経験がある外国人(以下:インバウンド)も増えている。株式会社Payke(※3)の協力を得て、米国、台湾、香港、タイから2025年2月~3月に訪日したインバウンドの訪日体験について、目的、日本での体験や購買の変化を中心にリサーチを行った。
※1 JNTO発表
※2 国土交通省官公庁発表
※3 株式会社Payke :訪日外国人が商品バーコードをスキャンするだけで、詳細情報や評価を自国の言語で確認できるアプリを運用している。累計500万ダウンロードを超え、多くのインバウンドに利用されており、スキャン履歴や興味関心など、消費関連行動に関する豊富なデータを保有している。
まずはじめに、各国からのインバウンドの滞在実態を比較してみたい。
訪日回数に関して調べたのが図表1である。
初めて日本へ訪問したインバウンドが多い国は、米国(24.8%)、とタイ(46.6%)である。
一方、訪日回数が多い国は香港と台湾であり、香港では、10回を超えるリピーターが41.4%を占める。何度も繰り返し日本を訪問しているインバウンドが多いという実態が見えて来た。リピーターは、日本に何らかの魅力やメリットを感じて、何度も訪問しているのであろう。
今回の調査では、複数回来日しているリピーターに対しては、今回の来日時の体験と、以前に来日した時の体験を聴取し、インバウンド体験の変化に関しても明らかにしていく。
図表1
日本での滞在期間は、4つの国と地域(米国、香港、台湾、タイ)にて傾向が異なる。
国別に滞在期間をまとめたのが図表2である。
米国からのインバウンドは10日以上日本に滞在した人が58.2%を占める。台湾からのインバウンドは6日以内が53.4%であった。遠方からのインバウンドは滞在期間が長く、台湾や香港から訪れるインバウンドの滞在期間が短く、図表1からも複数回日本を訪問していることがわかる。
図表2
インバウンドが訪日時にどの位お金を使っているのか、宿泊費、飲食費、買い物費用、体験費用、交通費(日本までの移動費用を含む)と平均総額を図表3で示した。図表4はその内訳である。
1回当たりの訪日に関わる総額が多いのは米国で86.6万円、ついで香港で51.6万円であった。円貨換算で高く見えるが円安の日本は、諸外国の物価が高騰しているため、インバウンドから見れば「お得な国」なのかもしれない。
国別に各費用の割合を見てみると、ショッピング(買い物)費用の構成が多いのが香港で33.5%、平均金額は17.3万円。ついで台湾の31.0%で平均金額は13.5万円であり、円安の恩恵を受けて日本でのショッピングを楽しんでいる様子がわかる。
米国、タイでは滞在日数が多い影響もあるだろうが、宿泊費が約30%を占めている。国内のホテル価格上昇の影響も受けていそうだ。
図表3 図表4
図表1にあるように、何度も訪日するインバウンドが多く、主要観光地以外の地方のエリアでもインバンドを見かけることが多くなった。リピーターを中心にインバウンドの訪日目的や体験が変化しているのではないだろうかとの仮説の元。ここからは、日本滞在中の体験について、主にリピーターにおける変化を中心に調査結果を見ていく。
はじめに訪日目的を見てみよう。今回の訪日については1位:「観光(自然)」62.5%、2位:「ショッピング」53.1%、3位:「観光(名所旧跡)」51.6%であった。
次に、2回以上の訪日経験者に絞り、前回の訪日目的と今回の訪日目的の差を確認したところ、「レジャー」が4.6ポイントの上昇、「観光(自然)」2.9ポイントの上昇がみられた(図表5)。逆に「観光(テーマパーク)」は7.8ポイントの低下がみられた。「ショッピング」に大きな変化はなく、訪日には欠かせないものなのかもしれない。
2回目以降の訪日では、日本の豊かな自然や、日本でのレジャー体験などが目的となっていることがわかる。インバウンドの「モノ消費」も依然として好調であるが、複数回訪日するインバウンドが増えるにつれて、彼らの訪日目的に合わせ、有名観光地のみならず、地方の自然回遊を含む旅行プランや、レジャー体験などの「コト消費」は今後も増加していくであろう。
図表5
では、インバウンドは訪日旅行中にどのような体験をしているのであろうか。訪日2回目以上のインバウンドに滞在中 の体験を確認したのが図表6である。
こちらも同じく、前回訪日時と今回の訪日での体験の差を確認すると、「日本食を食べること」10.2ポイント増、「自然・景勝地観光」9.2ポイント増、「繁華街の街歩き」7.8ポイント増、「お寺・神社への参拝」7.1ポイント増であり、インバウンドが2回目以上の訪問で、より日本を深く探索し楽しんでいることがわかる。
一方、「旅館への宿泊」「温泉入浴」の増加率は他と比べて低い。旅館/温泉のみではなく、その土地での体験(食事や、散策など)がセットで提供されることが、複数回訪問のインバウンドには望まれるのではないだろうか。
図表6
次に、訪日時の購入物を、今回訪日時と、前回の訪日時で各々確認したのが図表7である。
今回訪日時の上位購入品は、「食品」79.2%、「医薬品/サプリ」77.4%、「アパレル(服)」72.1%である。
前回訪問時と差が大きい購入物は「アパレル(服)」10.2ポイント増、「食品」6.4ポイント増、「お土産(他者への)」6.3ポイント増、「美顔器」4.8ポイント増であり、これらの商品が伸びている。
国別にみると、米国では「化粧品」が17.0ポイント増、「美顔器」が17.1ポイント増であり、香港では「アパレル(服)」が14.2ポイント増、「ブランド品」が10.9ポイント増、台湾では「アパレル(服)」が10.4ポイント増と大きく伸びている。
海外へ多く進出しているアパレルや、化粧品、理美容家電メーカーの商品が、円安の日本でお買い得になっているのではないだろうか。インバウンドの購入物が徐々に変わりつつあることが見えて来た。
図表7
コロナ後のグローバルでの経済活動の活発化、円安の影響などの好影響も重なり、インバウンドの年間訪日者が3,600万人を超え、消費総額も8.1兆円と盛り上がりを見せている。
特に円安効果により「お得な」旅行先として日本が注目されている面もある。しかしこれは一過性であり、複数回訪日するインバウンド(リピーター)に対して、毎回新たな価値を提供し続けないと、このブームをさらに拡大することはできない。
今回の調査で、リピーターの「自然」「レジャー」「街の探索」に関する訪日体験が増加していることが分かった。
リピーターに満足してもらうためには、インバウンドのニーズに合わせたサービスの提供が重要となる。まだまだ紹介しきれていない「全国の美しい自然」、「日本独自の文化や歴史や自然を活用したレジャー」などの体験を提供し続けることが、ブームを一過性として終わらせない秘訣ではなかろうか。
※今回の調査で明らかになった詳細なデータやチャートは、無料のダウンロードレポートでご覧いただけます。レポートのみにて提供している項目は以下です。ぜひ、ダウンロードしてください。
<ダウンロードレポートのみ掲載項目>
・性別/年齢分布
・同行した訪日者
・訪問先の都道府県/次回訪問したい都道府県
・訪日時に一番印象に残った体験
・訪日前/訪日中の情報入手ルート
・日本ブランドが優れている理由
など
調査概要
調査地域:米国、香港、台湾、タイ
対象者条件:20~59歳男女個人
標本抽出方法:Paykeアプリ利用者から適格者を抽出
標本サイズ:米国:n=117、香港:n=128、台湾:n=408、タイ:n=58
(訪日後1か月以内のインバンドが調査対象者)
ウエイトバック集計:なし
調査実施時期: 2025年2月7日(金)~2025年3月9日(日)
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