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実務で解説 生活者中心で考えるマーケティングフレーム ~第9回 生活者の製品使用シーンから、ビジネスを理解する

本連載は、一般的なマーケティングフレームを、生活者の意識や行動と結びつけて捉えなおそうという試みです。STPや4Pなど、マーケティングフレームは比較的シンプルで、理解が難しいものは多くないと思いますが、実務での活用を難しく感じられる方は少なくないかもしれません。生活者の意識や行動を理解することは、マーケティング・リサーチの役割です。生活者を中心に、マーケティングフレームとマーケティング・リサーチを紐づけて考えることで、読者のみなさまのマーケティング活動が、より効果的に、より高い価値を生活者にお届けできるようになれば、という想いでお届けしています。

第8回では、第2の「真実の瞬間」、SMOTについて、定性的な生活者理解の視点から考えました。
第9回では、同じSMOTについて、定量的な生活者理解の視点から考えてみたいと思います。

1.製品カテゴリーを基準に生活する人はいない

図1は、生活者が食事する機会を模式的に表したものです。日曜日から土曜日までの1週間、毎日3食摂ることを表しています。毎日食事を摂るのは、何かの製品を使うことを目的としている訳ではなく、生活者の食事を摂るという目的に合わせて、製品が選ばれていると考えることができます。

図1

食事をする機会に、「使用する製品カテゴリー」は紐づかない

ここで挙げるカテゴリーは仮のものですが、「当社のヨーグルトを、毎朝食べていただけない理由を知りたい」といった趣旨のご依頼を頂くことがあります。このご依頼には、「ヨーグルトは、毎朝食べられるべきである」という暗黙の前提があるように思われます。しかしながら、生活者は、ヨーグルトを食べるために朝食を摂っている訳ではないので、その前提は成り立たないはずです。生活者中心に考えると、ご依頼は「当社のヨーグルトが、朝食として選ばれない理由を知りたい」になると思います。逆に、生活者が朝食に製品を選ぶときのインサイトを理解すれば、選ばれる確率が高くなり、ビジネスを伸長させられると考えることもできます。

「生活者に製品が選ばれている」という考え方に立つと、考慮集合に含まれる他の製品群について知りたくなるのは自然だと思います。ここでいう他の製品群とは、同一カテゴリーの他社ブランドではなく、他の製品カテゴリーも含みます。生活者を中心にビジネスを考えると、製品カテゴリーの枠にあてはめて考えるだけでは不十分で、他製品カテゴリーからの流入などもビジネス伸長の方法の1つに成り得ることが、理解していただきやすくなるのではないかと思います。

2.選ばれる理由を考えると、製品アイデアも広がる

引き続き、ヨーグルトで考えていきたいと思います。図2は、弊社ダイニングダイアリー調査から得られた、ヨーグルトの喫食シーンとそのシーンで求めていることです。ヨーグルトが食べられるシーンの約7割が朝食であり、ヨーグルトが喫食されるシーンに求められているのは「準備が簡単、時間がかからないこと」や「短時間で食べられること」などであることが分かります。ヨーグルトというと、健康目的で食べられているイメージがありますが、それに加えて、時短や簡便といった要素も選ばれる理由になっている可能性が考えられます。

図2

ヨーグルトの喫食シーンと、そのシーンに求めることは?

図3は、時短・簡便が求められた朝食シーンで食べられたメニューの一覧になります。ヨーグルトは、ご飯とみそ汁といった和食系のメニュー以上に、パンとコーヒーといった洋食系のメニューと一緒に食べられていることが想定されます。また、このシーンでは、ヨーグルトと同様に果物も食べられているようですが、このデータからは、ヨーグルトと果物が同じシーンで食べられているのか、ヨーグルトとは別の朝食シーンで果物が食べられているのかは判別できません。

図3

時短・簡便を求める朝食シーンのメニューランキング

このデータから発想できる新たなヨーグルトのアイデアの方向性としては、以下のようなものが考えられると思います。

  • パンとコーヒーに相性の良いヨーグルト
  • 果物の代わりになるヨーグルト
  • 果物と相性の良いヨーグルト
  • ご飯とみそ汁に相性の良いヨーグルト

さらに発想を広げると、パンとコーヒーの朝食が増えれば、それに伴ってヨーグルトが食べられる機会が増えるかもしれない、といった仮説を立てることもできます。時短・簡便ニーズをより良く満たすために、新たなパッケージ形態を模索しても良いかもしれません。

図4は、ヨーグルトの有無に関係なく、各シーンに求められる要素をまとめたものになります。

図4

喫食シーン別に求めること

昼食や夕食では「自分が好きなものを食べたい」シーンが最も多く、夕食後に何かを食べるときには「体にやさしいものを食べたい」シーンが最も多くなっています。ヨーグルトに当てはめて考えると、昼食や夕食に食べてもらうことを考えるのであれば、より嗜好性の強いヨーグルトの提案が良いかもしれませんし、夕食後に食べて貰うことを考えるのであれば、ヨーグルト本来のやさしいイメージを訴求するのが良いのかもしれません。

このように第2の「真実の瞬間」、SMOTを量的に把握することでも、新しい商品アイデアを発想することが可能になります。

3.SMOTを量的に把握する方法

SMOTを量的に把握するためには、そのオケージョンを漏れなく被りなく(=MECE)に捉えることが重要になります。比較的簡単にそれを実現するためには、時間や場所といった絶対に重なることのない軸を用いることになります。先ほどのダイニングダイアリーは、時間軸を使ってシーンを捉えた例になります。

SMOTを量的に把握するための、もう一つのポイントは、生活者の行動を起点に使用シーンを聴取することです。ヨーグルトを例にすると、喫食シーンをアンケートで聴取する際に以下のような設問を設定する場合がありますが、この聴取方法では、ヨーグルトと競合するカテゴリーについて、理解することができません。

     設問:   ヨーグルトを食べるシーンを教えてください
     選択肢: 1 朝食時
          2 昼食時
          3 夕食時
          4 その他

冒頭で書きました通り、製品カテゴリーを基準にして生活している人はおらず、生活者はシーンに合わせて製品を選んでいますので、その行動に合わせて以下の様に聴取することで、競合カテゴリーを把握することが可能になります。

     設問:  朝食時に食べる製品/メニューを教えてください
     選択肢: 1 ヨーグルト
          2 ゼリー
          3 果物
          4 ・・・

分析対象のシーンで食べられる可能性のある製品すべてを挙げる必要はないと思いますが、このように聴取することで、ヨーグルト以外の競合カテゴリーについての情報も得ることが可能になります。

4.まとめ

第2の「真実の瞬間」であるSMOTを、量的な生活者理解の視点で考えました。繰り返しになりますが、生活者は、「事業者が考える製品カテゴリーを基準に行動している」訳ではありませんので、製品の観点で「真実の瞬間」を捉えるのは難しいと考えられます。生活者は、自社の製品を買わないのではなく、シーンに合わせて自社以外の製品を選んでいます。そう考えることで、同一カテゴリーの競合ブランドだけでなく、他カテゴリーの製品も考慮集合に入ることが理解でき、視野が広がることで、新たな製品アイデアの創造にも近づくことができます。

※)調査結果は、調査設計や分析手法によって大きく左右されます。本記事でご紹介したSMOTの考え方や、量的な把握にご興味のある方がいらっしゃいましたら 、弊社HPを通じてご連絡頂くか、営業担当までご連絡ください


関連サービス
Dining Diary(ダイニングダイアリー)
間食や外食、男性・単身世帯を含む全ての喫食シーン、食べたもの・飲んだもの、気持ちの実態が分かる2週間の日記調査。

調査概要
調査手法  WEBアンケート (日記式調査)
調査エリア 全国
対象者条件 男女15-79歳
最終サンプル数     1,409名
聴取食数  1日あたり 最大9食
実施期間  2023年2月13日 – 2月26日(14日間)
※2024年版は規模を3,412名に拡大して実施。

著者プロフィール

平井 公一 株式会社インテージ マーケティング企画推進部 プリンシパル・コンサルタントプロフィール画像
平井 公一 株式会社インテージ マーケティング企画推進部 プリンシパル・コンサルタント
大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

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