生活者のデジタルシフトはどれだけ進んだ?生活者とメディアの “今”
メディアや生活者の行動の変化に伴い、十数年前と比較してメディアと生活者の関係性の変化は驚くほど速くなっています。
この変化に対応し、生活者と適切なコミュニケーションを取り続けるためにはメディアと生活者の変化を継続的に捉えることが重要ではないでしょうか。
そこで今回は、インテージが保有しているメディア接触ログデータやアンケートをもとにメディアと生活者の変化を捉えた「メディアライフ・レポート」の内容を一部抜粋し、生活者のメディア利用がどのように変わってきているのかをまとめてみました。
1.テレビとスマートフォンの利用時間
まずはメディアを視聴するデバイスの利用について確認してみましょう。
「若者がテレビから離れ、デジタルメディアにシフトしている」と、各報道機関で特集されるようになって久しいかと思いますが、実際のデータを見るとどうでしょうか。
図表1、図表2はインテ―ジで保有しているi-SSP(インテージシングルソースパネル)のデータから年代別の1日あたりのテレビとスマートフォンの平均利用時間を表したものです。
図表1・図表2
2023年の1日あたり平均利用時間を見てみると、確かに他の年代と比較しても10代20代のテレビの利用時間は約1時間~2時間と短く、反対にスマートフォンの利用時間は約5時間~6時間と長いことが読み取れます。このことから、若年層はテレビよりもスマートフォンを通して各メディアに接触する傾向があることが分かります。
しかし、2017年からの変化で見ると、テレビの1日当たり平均利用時間が最も減っているのは60代のマイナス21.3分です。また、テレビの平均利用時間は10代以外の全年代で減っています。
スマートフォンを見てみると、1日当たり平均利用時間が最も増えているのは20代ではあるものの、それに続くのは40代、30代となっており、50代、60代も1時間以上増えています。
つまり、若年層が他の年代と比較してテレビの利用時間が少なく、スマートフォンの利用時間が長いという実態に加え、テレビ離れやデジタルシフトは若年層に限らず全年代で生じているということが分かります。「若者がテレビから離れ、デジタルにシフトしている」という仮説は正しくもあり、全体像を捉えた言葉でもないと言えるでしょう。
2.視聴習慣の変化① コネクテッドテレビの利用状況
次にコネクテッドテレビの利用状況を確認していきます。
昨今、インターネットに接続したテレビや、テレビに接続するだけでインターネット接続できるストリーミングデバイスの普及により、コネクテッドテレビの利用が加速しています。
図表3・図表4は先述のi-SSPの調査に協力いただいている方を対象に、テレビへのインターネット接続状況を聴取したアンケート調査の結果です。
図表3・図表4
このデータを見ると、2023年時点で約半数以上のテレビがインターネットに接続されていることが分かります。
また年代別では、自身がテレビや周辺機器の購買に直接関わる可能性の低い10代を除いてほとんど差はなく、年齢関係なくコネクテッドテレビの普及が進んでいると言えるでしょう。
そんなコネクテッドテレビを各年代ではどのように利用しているのでしょうか。
図表5は、性年代別に普段視聴しているコンテンツを表したものです。
図表5
年代が上がるにつれ、従来通りの地上波テレビ放送を視聴している割合が高くなります。 50代60代は約90%が「地上波のテレビ放送(リアルタイム視聴)」を視聴しているのに対して、10代20代は約70%と、約20ポイントの乖離があります。
ここで YouTubeを見てみると10代20代は約60%が利用しています。一方50代60代は約40%と、地上波テレビ放送とは反対の傾向が見受けられます。
若年層はシニア層と比較して、テレビデバイスを「放送を見るため」ではなく、「配信コンテンツをみるため」に利用している傾向が強いと言えるでしょう。
1つ注目したいのは、50代60代も45%以上がいずれかのインターネット動画サービスを利用しているという点です。若年層の方がコネクテッドテレビでのインターネットコンテンツの利用率が高いとはいえ、テレビ画面で見られるコンテンツが増加して選択肢が広がった結果、シニア層もインターネットコンテンツの視聴のためにテレビを利用しているという事実は抑えておく必要があります。
ちなみに母集団人口*とインターネット動画サービス計のコンテンツ視聴率から人数ベースで試算すると、日本においてコネクテッドテレビでインターネット上のコンテンツの利用者は10代20代で約1,650万人、50代60代で約1,750万人となり人数では50代60代の方が多いという結果になります。
この結果を見ると、シニア層をターゲットとした広告コミュニケーション施策を検討する場合も、デジタルメディアからのアプローチを検討すべきかもしれません。
テレビはまだまだ「テレビ放送」を見るためのデバイスとしての役割が大きい現在ですが、今後さらにコネクテッドテレビの普及が進むにつれ、年代問わず、テレビは「コンテンツ」を見るためのデバイスとして使われることが当然となっていくといえるでしょう。
3.視聴習慣の変化② SNS・動画配信サービスの利用状況
続いてSNSと動画配信サービスの利用状況について見てみましょう。
まずはSNSアプリです。図表6は2017年以降のSNSアプリの月平均利用率の推移を表しています。
図表6
直近2023年の利用率はLINEが最も高く、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTokと続いています。Facebook以外の利用率は上昇傾向にあり、2019年にInstagramの利用率がFacebookを追い抜いていることが分かります。
また昨今、主に若年層での利用者数の急増や高い拡散力から、企業の広告媒体としても注目されているTikTokですが、月平均利用率の視点で見るとまだまだ他の媒体とは差があるということも読み取れます。
続いて、図表7は各アプリ利用者の1日当たり利用時間です。
図表7
直近の2023年においては、 X(旧Twitter)が最も利用時間が長く、2019年にLINEを追い抜いています。また、TikTokも2021年から2022年にかけてLINEを追い抜き、利用者あたりの利用時間が2番目に長くなっています。
このようにSNSアプリの中でも連絡手段としての利用が多いLINEは利用率としては最も高いですが、アプリ内滞在時間は一部SNSアプリと比較すると短くなっています。
反対にX(旧Twitter)やTikTokは目的をもって利用・視聴するというよりも、なんとなく開いて見てしまうというサービス上の特性から、他のSNSアプリと比較してアプリ内滞在時間が高く、アプリ内広告の利用率や利用頻度も高まりやすいと考えられます。
こういった事象を、感覚として理解している方は多いかもしれません。ただ、実際にデータで明らかにすることは、関係者の認識を統一し、広告コミュニケーションの意思決定をする上で役に立つのではないでしょうか。
次に動画配信サービスです。
図表8、図表9、図表10はAVOD(広告型動画配信サービス)とSVOD(定額制動画配信サービス)それぞれの利用率の推移を表しています。
図表8・図表9・図表10
AVODではYouTubeがTVerとABEMAを大きく突き放しています。
次点のTVerは2020年にABEMAの利用率を上回り、引き続き上昇傾向が続いています。
SVODではAmazon Prime Videoが最も高く、2番目のNetflixと大きな差があることが分かります。
この大きな差は、日本においてはNetflixと比較してAmazon Prime Videoの月額料金が安いことや、ネットショッピングのAmazon Prime会員であればPrime Videoを含む他サービスが付帯するという特性(反対もしかり)により、他の動画配信サービスのみを提供しているサービスよりも利用者が圧倒的に多いことが背景として挙げられます。
図表11
最後に先述の主要SNSアプリと動画配信サービスの年代別の月平均利用率を見てみましょう。(図表11)
ここに挙げたすべてのサービスで最も利用率が高い年代は10代20代です。
やはりまだデジタルサービスにおける主な利用はどちらかといえば若年に偏っています。
しかし、50代以上の伸長率を見てみると、2017年と比較して約150~200%増えていることが読み取れます。
デバイスやコネクテッドテレビのチャプターでも言及した通り、徐々にシニア層でもデジタルデバイスの利用増加やデジタルコンテンツの視聴が増えてきており、この傾向は今後も続くと考えられます。
4.さいごに
先述のSNSアプリや動画配信サービスの利用率の推移をみると、2017年と比較してInstagramの利用率は約2倍、TVerは約6倍に伸び、反対にFacebookは約半減していることが分かります。また各SNSの利用時間も機能拡充で増加するなど、目まぐるしく変化しています。
長らくマス媒体の力が強かったこれまでと異なり、生活者のメディアとのかかわり方は、数年単位で大きく変化するようになりました。これを広告コミュニケーション施策に置き換えて考えると、前年踏襲では狙った効果を出しにくくなってきていると言えるでしょう。
また、冒頭にも触れた通り、「若者のテレビ離れ」「デジタルシフト」のようにメディアトレンドを表現する言葉はいくつか存在しますが、実際のデータで確認すると、事実を捉えた部分もあれば、正確に捉えきれていない部分もあったように思います。
このように、感覚と実態にはズレが生じていることがあり、特に感覚については、関係者内でも異なることがあります。その状態で広告コミュニケーションの方針を議論してしまうと、より効果・効率的な打ち手に繋がらない、議論が収束しないといった可能性があるため、ファクトデータを基に目線を揃えて議論してはいかがでしょうか。
今回は、インテージが保有しているメディア接触ログデータやアンケートをもとにメディアと生活者の変化を捉え、発行している「メディアライフ・レポート」の内容を抜粋し、実際のデータを基にメディアと利用者のトレンドをご紹介いたしました。
「メディアライフ・レポート」では、今回ご紹介したデータに加えて、代表的なSNSアプリ・動画配信サービスの利用者の詳細プロファイリングやテレビCMの購買・コンバージョン効果に関するデータもございます。
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【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
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