データから考える、多様化するSNSの“使われ方”と“使い方”
生活者の利用するメディアは変化し続けており、メディアを使ったマーケティングコミュニケーションにおいてはこの変化を理解することが不可欠です。インテージでは、お客様に生活者のメディア利用の変化をキャッチアップいただけるよう、定期的なオンラインセミナー(メディアトレンドセミナー)を実施しています。
この記事では、SNSに着目して2023年9月26日に開催したメディアトレンドセミナー「ログデータから見る生活者のメディア利用トレンド(第2回)メディアの多様化とユーザー起点でのSNS活用のヒント」の内容を再構成しながら、変化するメディア環境とSNSの活用についてデータから考えます。
テレビからスマホへ、若年層で先行するデバイスのシフト
まずはメディアを視聴するデバイスの変化を見てみましょう。図表1に、テレビ、スマホ、PCの利用率を2017年から示しました。利用率が減少しているのはテレビとPCです。2017年にはテレビの利用率は100%に近い数値であったのに対し、直近2023年では90%以下まで10ポイント程度低下しています。PCの利用率は2017年には70%弱でしたが、60%弱まで、テレビと同様に10ポイント程度低下しています。
対照的に利用率が増加しているのがスマホです。2017年の70%から2023年の83%へと増加し続けています。年代別の分析からは60代のスマホ利用率が同じ期間で30%から2倍の60%に増加していることも分かっています。このような高齢層へのスマホの普及が、全体でのスマホ利用率の上昇に寄与したと言えます。
図表1
次に、一人あたりの利用時間の観点で年代別にデータを見てみましょう。図表2には、テレビ、スマホ、PCのログデータを用いて、年代別に各デバイスの1日あたりの平均利用時間を示しました。年代による差が大きいのはテレビです。15-29歳のテレビ視聴時間が1日平均1時間40分程度なのに対し、50-69歳では4時間近くになっています。15-29歳はテレビに代わってスマホの利用時間が長く、1日5時間近くにも及んでいます。若年層ほどテレビからスマホへと利用デバイスが移っていることを表しているデータだと言えます。
図表2
SNSの多様化と使い分け
15-29歳では1日5時間近くも使っているスマホですが、その中でYouTubeに次いで長い時間使われているのが、X(旧Twitter)やInstagramといったSNSです。Meta社が新たに開発したテキスト型のSNSであるThreadsのリリースによっても改めて注目され、多様化が進むSNSですが、生活者はどのように各SNSを使っているのでしょうか。
図表3には主なSNSの性年代別の利用率を示しました。全体としては、モバイル利用時間の長い若年層ほどSNSを多く利用していること、女性はInstagramを好み、男性はXを好んでいることが分かります。ただし、男性では30代のXの利用率が約5割、女性では40代でもInstagramの利用率が5割近くにまでなっており、特に人気が高いXとInstagramは若年層に限定されず30~40代にも広く利用されていると言えます。
また各SNSの利用率が最も高い年代に着目すると、世代ごとに人気のSNSが異なることがうかがえます。日本版が2008年にリリースされたFacebookの利用率は30代で最も高く、同年リリースのXは20代の利用率が最も高くなっています。しかし、2010年にリリースされたInstagram、2017年にリリースされたTikTokの利用率が最も高いのは10代です。このような各SNSが使われやすい年代の推移からは、テキストから画像、画像から動画へとSNSのフォーマットが遷移していることが読み取れます。SNSを使ったマーケティングにおいては、このようなフォーマットの遷移にも対応していく必要があるでしょう。
図表3
このようにフォーマットが多様化するSNSですが、生活者はどのように使い分けを行っているのでしょうか。SNSの利用率が特に高く、複数のSNSを使い分けることも当たり前になっている10代のデータで見てみましょう。図表4に、10代のSNS利用率をサービス別、時間帯別に示しました。
平日に着目すると動画、画像をフォーマットとしたSNSであるTikTokとInstagramの利用率が夜21時と22時にピークとなっているのに対して、テキストをフォーマットとしたSNSであるXは朝7時、昼12時にもピークがあることが特徴です。朝の通学の時間やお昼ご飯といった外出先のちょっとした時間には、イヤホンをつけて音を聞かなくても短い時間で利用できるテキスト型のSNSが好まれているようです。反対に、自宅での夜のゆったりした時間には画像や動画のSNSが楽しまれていることが伺えます。
パネルディスカッションにご登壇いただいた、企業のSNS活用の支援をするカラビナハート株式会社の吉田啓介氏からは、各SNSが使われる生活シーンに合わせたメッセージが、SNSマーケティングにおいて有効だという指摘がありました。
図表4
SNSで効果的に情報を届けるには
最後に、SNSを使って生活者にメッセージを届ける際の方法について考えてみましょう。図表5は、商品やサービスをSNSで認知する際に、企業からの広告や投稿で認知することがあるか、インフルエンサーの投稿で認知することがあるかを訊ねた調査の結果を示したものです。データから、30代までは年齢が高いほど企業からの発信で商品やサービスを知ることが多く、若い世代ほどインフルエンサーが認知のきっかけになっていることが多いと分かります。特に女性でその傾向が顕著です。性別や年代によって誰からの情報発信が有効かは大きく異なっているようです。
図表5
一見するとシニア層へのインフルエンサーマーケティングは有効でないようにも見えるデータですが、実際にSNSを使った情報発信をされている吉田氏からは、シニア層が共感しやすいインフルエンサーの数が少ないという可能性もあり、むしろチャンスであるとの意見が挙がりました。現時点でシニア層がインフルエンサー経由で商品・サービスを認知する機会が少ないからといって、インフルエンサーマーケティングがシニア層に効きづらいとは言い切れません。40代以上をターゲットにしたインフルエンサーマーケティングはまだまだ伸び代がある分野だと考えることもできるでしょう。
若年層はSNSの利用率が高いにもかかわらず、SNSにおける企業からの広告、投稿が商品・サービスを認知する機会になってない可能性も見えてきました。企業のSNSマーケティングにおける示唆が読み取れるでしょう。もし現在の広告が若年層に十分響きづらくなっているとすれば、インフルエンサーによる情報発信の方法や要素を取り入れることが有効な可能性もあります。
セミナーでは生活者研究センターの田中から、「若年層にとっては広告を視聴することが、推しているインフルエンサーを収益面で支援する“推し活動”としても受け入れられている」という研究結果の紹介がありました。
SNSを有効に活用することは、マーケティングコミュニケーションを行う上で欠かせない要素となっています。
SNSの多様化にともない、生活者は時間帯によってテキスト、画像、動画のSNSを使い分けるようになっています。またテレビ放送とは異なり企業からのメッセージとインフルエンサーからのメッセージが共存するSNSの世界では、性別や年代によってどちらから影響を受けているかの違いが見られました。
SNSに限らず、メディアを使ったマーケティングコミュニケーションでは、生活者がどんな時に、どんな気持ちでSNSを利用しているのかを理解し、メッセージの内容を合わせることが重要です。ログデータに基づいて生活者理解を深めながら、マーケティングの実務者とともに実際の活用シーンや打ち手などを一緒に想像することで、マーケティングコミュニケーションは生活者の実態により一層フィットしたものになるでしょう。
また、マーケティングの実務者が感覚的に持っていた生活者の変化をデータで裏付けできれば、生活者の変化に即したこれまでとは違う企画にもつながるはずです。インテージでは、そういったデータを基にしたマーケティングの実務への示唆を、今後もセミナーを通してお伝えしてきたいと思います。
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