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アフターコロナの外出行動の変化とOOHメディアの活用のポイント

アフターコロナが進み生活者の外出が回復する中で、OOH(屋外広告や交通広告)への注目が集まっています。電通が発表する「日本の広告費」によれば、交通屋外広告の広告費はコロナ禍2021年から23年にかけて6.2%増加しており、今後さらなる回復が期待されています。この記事では、アフターコロナの外出行動とOOH(屋外広告や交通広告)に着目して2024年3月26日に開催したメディアトレンドセミナー「ログデータから見る生活者のメディア利用トレンド(第4回)アフターコロナの生活者行動の変化とOOHメディアの活用のポイント」の内容を再構成し、コロナ禍を経て変化した生活者の外出行動とOOHメディアの活用についてデータから考えます。

年代によって異なるリモートワークの定着

まず、コロナ禍を経た現在の生活者の外出行動を、平日のオフィス出社、休日の外出、という二つの側面から見ていきます。図表1では、オフィス街として新宿西口・丸の内・新橋・品川をピックアップし、平日14時台と20時台の人流について、2019年12月の人流を100%として表しました。昼も夜も2020年5月に、昼は41%、夜は28%と最も人流が落ち込んでいました。それ以降人流は回復していきましたが、昼と夜では回復の速度に違いが見られました。昼は出社するものの、夜は飲み会などを行わずすぐに帰宅するといった新しい生活習慣が生まれていたことがうかがえます。
コロナ五類化以降のデータで見ても、コロナ前の2019年と同じ水準までは人流が回復していません。コロナ禍に広まったリモートワークは、コロナ禍以降もある程度定着しているようです。

図表1

【平日オフィス街】昼・夜別の人流推移(新宿西口・丸の内・新橋・品川)

では、どのような人がリモートワークを積極的に活用しているでしょうか。性年代ごとに2019年と2023年の昼のオフィス街の人流を図2に示しました。
オフィス街の人流の回復の仕方は年代ごとに大きく異なっています。回復が遅れているのは子育て世代にあたる30代・40代で、コロナ禍以降も引き続きリモートワークを活用する傾向にあるようです。女性以上に男性の人流が落ち込んでいるのも注目すべき傾向です。リモートワークも可能になったことで、男性も家事や子育てに積極的に関わりやすくなったことがうかがえます。一方で、20代や50代の回復が顕著です。結果として、男性30代・40代が中心だったオフィス街の顔ぶれが、20代から50代まで幅広い層に拡大したと言えます。
多くの人が集まる通勤時間の電車内やオフィス街はOOH広告にとって重要な出稿先ですから、アフターコロナの広告プランニングはこうした生活者の行動変化を踏まえる必要があります。セミナーでは、出社スタイルの多様化がもたらすオフィス街の人口構成の変化や通勤ラッシュの分散に対応するために、ターゲットが滞在する適切な場所・時間を意識してOOH広告を出稿することがこれまで以上に重要になっていることが議論されました。

図表2

【平日オフィス街】性年代別の昼の人流変化

昼と夜で異なる休日の繁華街の人流の回復

次に休日の外出の変化を見ていきましょう。図表3には、繫華街として新宿東口・表参道・渋谷・池袋・銀座をピックアップし、休日14時台と20時台の人流について2019年12月の人流を100%として表しました。コロナの影響が最も大きかった2020年4月では、昼夜ともに最大で80%以上も人流が落ち込んでいます。コロナ禍において、休日の外出は平日の出社以上に控えられていたことが分かります。平日のオフィス街との違いとして、直近でも昼と夜の回復度合いが異なっていることが挙げられます。2019年と2023年を12月で比較すると、平日のオフィス街は昼夜ともに9割程度まで回復していたのに対し、休日の繁華街は夜の回復が8割未満に留まっています。

図表3

【休日繁華街】昼・夜別の人流推移(新宿東口・表参道・渋谷・池袋・銀座)

コロナ禍を経て変化した20代の外出先

休日の外出行動の変化をより詳しく見ていきましょう。代表的な行楽施設について、休日昼14時台の12月の人流を2019年と2023年で比較しました。(図表4)
まず、50代の休日の外出が活発になっていることが分かります。遊園地以外の施設では、コロナ前から約10%も人流が増加しています。20代の外出先の変化も特徴的です。遊園地への外出が10%以上減少した一方で、アウトレットモールへの外出は10%以上増加しています。セミナーではこうした20代の外出先の変化の理由として、近年の物価上昇の影響や出社のために通勤定期を持たない人も増えたことが挙げられました。比較的予算の制約の大きい20代は、遊園地のような出費の大きくなりやすい行楽施設ではなく、アウトレットモールや公園のような比較的リーズナブルに楽しめる施設に外出先を変化させていていることが考えられます。

図表4

【休日昼の行楽施設】行楽施設・年代別の回復度合いの比較

OOHのリーチと効果の可視化

インテージで実施したセミナー「ログデータから見る生活者のメディア利用トレンド(第4回)アフターコロナの生活者行動の変化とOOHメディアの活用のポイント」では、前述の外出行動の変化やデジタル技術の進化を受けて注目が集まるOOH(屋外広告や交通広告)について、これまで幅広いOOHの活用推進を行ってこられた株式会社博報堂DYアウトドアの沢村 健吾氏を迎えて、パネルディスカッションを行いました。

ここからは、セミナーで沢村氏にご紹介いただいたOOHの最新事情や効果検証事例など、 『OOHの現在地』について、沢村氏より改めてご寄稿いただいた内容を紹介します。


OOHはアウトオブホームの略です。生活導線上のメディアであるため、移動する生活者の生活導線すべてを接触機会としてとらえます。生活に密着したあらゆるシーンに展開され、駅、街、商業施設などでの生活者の行動に直接訴求することで購買行動の誘発も期待できるメディアとなっています。大きくは交通、屋外、店ルート、施設、家メディアの5つのジャンルに分類されています。

従来OOHは効果計測が困難なメディアとされてきましたが、近年はデジタル化が進行し、定量的な効果を見越したプラニング、バイイング、レポーティングが可能になってきました。効果計測のカギになるのが生活者の位置情報データです。GPSデータ、ビーコンデータ、wifiデータなどの位置情報データに対して、オンライン上のアフィニティやサイト来訪ログ、データクリーンルーム、テレビ視聴ログ、来店ログ、IDPOSなどを組み合わせることで、OOH実施後の施策効果の計測が可能となります。

博報堂グループでは、位置情報データを活用してOOH実施後のリーチ数やビークルフリークエンシーなどを算出し、OOHに接触したと想定される方に対してアンケートを行ってブランドリフトを見る手法での検証事例が特に増えています。

図表5は、大学構内の学食や購買に設置されたデジタルサイネージにてリクルーティング目的の企業広告を実施した際の例になります。位置情報のデータから、期間中に大学へ訪れた18歳~22歳の方の学食や購買への来訪歴を捕捉して調査対象者をスクリーニング。広告接触の有無をヒアリングし、ブランドリフト調査を実施しました。
結果、広告接触によって、就活生にあたる21歳の接触者の就職意向のリフト値が特に上がっている傾向が見えました。

図表5

OOHのリーチと効果の可視化事例

こういった事例に代表されるように、位置情報データの活用によってOOH接触者のリーチ数やデモグラデータがわかるようになってきています。また、本当に狙ったターゲットに対して訴求できているのか、や、クリエイティブによるターゲットへの訴求効果の差など、徐々にOOHの効果が可視化されるようになってきました。
今後更に可能性のあるメディアとしてOOHに対する期待が高まり、需要が増えていくことが予想されます。


まとめ

これまで、セミナーの内容を振り返りながらアフターコロナでの生活者の外出行動の変化やOOHの技術進化を見てきました。30代・40代のリモートワークの継続によってオフィス街の人口構成が変化したり、物価の上昇が進む中で20代の外出先がよりリーズナブルな場所に移ったりなど、全体として人流が回復する中でもコロナ前と異なる傾向が見られます。このような生活者の変化に対応しながら適切な場所・時間でOOH広告を出稿し、ターゲットに効果的に訴求するためには、人流データや効果計測といったデータ活用はますます重要になるでしょう。


【モバイル空間統計®】
※モバイル空間統計®は、株式会社NTTドコモの登録商標です。
ドコモの携帯電話ネットワークのしくみ(基地局の運用情報)を使用して作成される人口の統計情報です。
集団の人数のみをあらわす人口統計情報であるため、お客様個人を特定することはできません。
インテージは「モバイル空間統計」の1次販売店です。

著者プロフィール

事業開発本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 生活者データアナリスト 山津 貴之プロフィール画像
事業開発本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 生活者データアナリスト 山津 貴之
2017年からスマートテレビ視聴ログを用いた商品である「Media Gauge」の新規事業開発を担当。データベースや調査設計等の基盤構築から、視聴データ分析による広告主や放送局等での活用支援まで幅広い領域に携わる。2021年からインテージグループR&Dセンターおよび在学中の筑波大学大学院ビジネス科学研究群で、スマートテレビでの放送とアプリの視聴実態について研究を開始。

2017年からスマートテレビ視聴ログを用いた商品である「Media Gauge」の新規事業開発を担当。データベースや調査設計等の基盤構築から、視聴データ分析による広告主や放送局等での活用支援まで幅広い領域に携わる。2021年からインテージグループR&Dセンターおよび在学中の筑波大学大学院ビジネス科学研究群で、スマートテレビでの放送とアプリの視聴実態について研究を開始。

著者プロフィール

株式会社博報堂DYアウトドア 交通メディア部(兼)デジタルプロデュース部 沢村 健吾氏プロフィール画像
株式会社博報堂DYアウトドア 交通メディア部(兼)デジタルプロデュース部 沢村 健吾氏
2017 年博報堂DYアウトドア入社。営業推進グループリーダーを経験したのち、リテールを中心としたデジタルサイネージメディアの開発を担当。現在は屋外広告の効果計測ソリューションの開発と推進を中心に活動を行っている。

2017 年博報堂DYアウトドア入社。営業推進グループリーダーを経験したのち、リテールを中心としたデジタルサイネージメディアの開発を担当。現在は屋外広告の効果計測ソリューションの開発と推進を中心に活動を行っている。

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