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既婚男性の家事実態と意識~若年世代とリタイア世代で“家事の捉え方”はどう違う?

2022年4月に改正育児・介護休業法が施行され、今後、企業においては「男性版産休」の導入が進んでいくものとみられています。また、コロナ禍以降、企業におけるテレワークの活用も進み、在宅で仕事をする人も増えています。 そのような中、家庭における家事のやり方や夫婦の分担にも変化が出てきているのではないでしょうか。インテージでは、既婚男性の家事の実態、家事に対する意識を調査しました。

男性の家事時間・自分ゴト化に世代差アリ?

図表1は、平日における1日の家事時間を、既婚の男女で比較した結果です。既婚女性では2時間~4時間未満の人が過半数を占めますが、既婚男性では1時間未満が7割弱となっています。平均家事時間でみると、既婚男性は既婚女性の1/3程度というのが現実です。

図表1

既婚男女の家事時間(平日)

既婚男性の結果を年代別に見たのが図表2です。どうやら夫婦間の家事分担には世代差があるようです。39歳以下の若い世代に家事時間の長い人が多く、年代が上がるほど家事時間が減る傾向にありますが、50代を境目に、60歳以上のリタイア世代では家事時間の長い人が増えています。

図表2

既婚男性年代別の家事時間(平日)

そもそも、家事はどの程度自分ゴト化されているのでしょうか。家事が「自分にとって必要不可欠な仕事だ」と“自分のタスク”として捉えている人は、既婚女性で66.5%であるのに対して既婚男性では51.4%と少なくなっています(図表3)。

図表3

既婚男女の家事意識:家事は自分にとって必要不可欠な仕事か

また、既婚男性を年代別にみると、年代が若くなるほど必要なタスクだと捉えている人が多いことが特徴です(図表4)。

図表4

既婚男性年代別家事意識:家事は自分にとって必要不可欠な仕事か

つまり、既婚男性は既婚女性と比べると、家事にかける時間(行動)、家事の自分ゴト化(意識)の両面から関与が低い状況にあります。とはいえ、若年男性では「家事は自分にとって必要なタスクだ」と自分ゴト化できている人が多く、家事時間も比較的長いことから、家事担務の必要性を理解した上で協力的であると言えます。一方、60代以上のリタイア世代になると家事時間は増える傾向ですが、自分ゴト化は進んでいないことから、指示待ち型になっている可能性があります。
以前、「ミレニアル世代の夫婦にみる新しい日常」という記事で、既婚男性の30代と40代を比較した際、ミレニアル世代である30代には「家族との時間を重視し、家事を行う時間を大切にする」という特徴が見られました。若年世代の家事の自分ゴト化という意識の背景には、共働きが当たり前になった世代の家族観の変化もあるのかもしれません。

分担が進む家事・進まない家事

家事の分担について、もう少し細かくみてみましょう。既婚男女に「配偶者に任せたい家事」を聞いたところ、夫婦間で分担が進めやすい家事もあれば、押し付け合いになりそうな家事もあることが見えてきました(図表5)。

図表5

既婚男女が配偶者に任せたい家事

例えば、「日常のトイレ掃除」は既婚女性が夫にやってほしいと思う家事の上位ですが、既婚男性も妻に任せたいと思う割合が高く、拮抗しています。こういった家事の分担を企業が支援する上では、家事シェアアプリなどを活用しながら役割分担について話し合うことの提案や、ジェンダーレスを意識した家事グッズの展開などが有効であると思われます。

また、既婚男性が「妻に任せたい家事」を年代別にみると、若い年代ほど各家事を妻に任せたいと思っている人は少なく、前述の「日常のトイレ掃除」を任せたい人も多いわけではありません(図表6)。実際に、39歳以下の既婚男性の4割弱は「日常のトイレ掃除」を行っているという回答も得られました。

図表6

既婚男性が配偶者に任せたい家事(年代別)

では、既婚男性が家事をすることには、どのような障壁があるのでしょうか。図表7は、主要な家事を担う上で妨げになることを聞いた結果です。

図表7

既婚男性の家事障壁

炊事では「苦手」が最も高いものの、掃除・洗濯では「面倒」「仕事が忙しい」が最も高く、妨げは「特にない」という人が半数弱となりました。掃除・洗濯に関しては、“短時間で”“手間なく”できることがわかれば、既婚男性の関与が高まる可能性がありそうです。

既婚男性の家事参加を促すには?

既婚男性の家事参加を促すために必要なサポートについて、家事の情報源、家事サービスの活用意向、時短家電の購入状況から考えてみます。

家事の情報をどのようなところから得たいかを既婚男性に聞くと、「配偶者」「インターネットの検索サイト」が高い結果となりました(図表8)。
家事時間の長い若年男性は「SNS」を情報源として重視していることが特徴です。一方で、60代以上のリタイア世代では「配偶者に聞く」が高くなっています。企業側から既婚男性を意識した家事情報を積極的に発信することは、スムーズな家事分担に繋がると言えそうです。また、リタイア世代では、そういった情報が夫婦間のコミュニケーションのきっかけになりそうです。

図表8

既婚男性が今後、家事情報を取得したい情報源

また、既婚男性において今後活用したい家事サービス(図表9)、時短家電の購入状況(図表10)をみると、家事サービスでは「ネットスーパー」「掃除のスポットサービス」などの活用意向が高く、時短家電の購入状況では「食洗機」「ドラム式洗濯機(乾燥機能付き)」などはすでに導入者が多いことがわかります。サービスや家電の活用で“短時間で”“手間なく”家事を済ませたい、と考えているようです。

特に、家事時間の長い若年男性に注目すると、家事サービスの「ミールキット」「買い物代行サービス」や時短家電の「掃除ロボット」「カメラ付き冷蔵庫」などの導入意向が高い傾向です。夫婦間で分担が進んでいる世代では、家事の外注・機械化による負担軽減にも積極的な様子です。リタイア世帯に対しても、そういったサービス・製品の活用メリットを伝え、活用が進むことで、夫婦の家事負担が軽減されることが期待されます。

図表9

既婚男性が今後活用したい家事サービス

図表10

既婚男性の購入済み時短家電

最後に

最後に、今回の調査で既婚男性に聞いた「あなたにとって家事とは」という設問への回答を紹介します。

既婚男性にとって「家事」とは?

家事に楽しみを見出し、ポジティブに捉えている人がいる一方、家事分担がうまくいかないためか「喧嘩のもと」になっている人、「最難業務」「修行」と表現するほど難しさや大変さを感じている人も…。実際にやってみて、家事の大変さに気づいたという人もいました。

また、若年世代では家事を自らのタスクと捉えた「仕事」という表現が見られた一方で、年配世代では家事はあくまで「手伝うもの」というスタンスの回答がみられました。

家事の時短化・省力化につながる製品やサービスは、機能的な価値を提供するだけでなく、生活者の生活時間をよりゆとりあるもの、豊かなものにする可能性があります。多様化するこれらの製品・サービスが、「家事は大変」「家事は手伝うもの」という意識をどう変え、家庭内での家事分担のあり方を変えていくのか、これからも注目してきたいと思います。

新たな製品・サービスを企画・開発するためには、ご紹介したような家事の実態や意識の世代差などの情報を捉え、生活者の生活課題にフィットさせて考えることが重要です。インテージでは、商品購入、サービス利用、メディア接触、行動、生活意識など、生活者の体験そのものを描写し、理解できるデータ・リサーチ・プラットフォームを揃え、幅広く深い生活者インサイトをご提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。


【調査概要】
調査地域:全国
対象者条件: 20~79歳の既婚男女
標本抽出方法: 株式会社インテージのインターネット調査アンケートモニター「キューモニター」より抽出
標本サイズ:既婚男性1000サンプル、既婚女性200サンプル(男女各々、居住エリア・年代による人口構成比にあわせて回収を実施)
調査実施期間:2022年11月22日(火)~25日(金)


この記事の著者

インテージのカスタマー・ビジネス・ドライブ本部内で2022年に発足した異なる業界を担当するリサーチャー同士のコラボレーションにより「生活者の生活理解プロジェクトチーム」が発足。今回は、普段、日用品・雑貨業界を担当するリサーチャーと電機・家電業界を担当するリサーチャーが“家事”をテーマにコラボレーション、調査の企画・分析を共同で実施した。


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