コロナ禍においても成長を続ける、男性の基礎化粧品購入市場
2020年は新型コロナウイルス一色の年でした。外出の自粛や在宅勤務の普及、外出時のマスク着用がスタンダードになるなど私たちの生活に大きな変化がありました。外食業や観光業を中心に厳しい状況に置かれた業界も少なくなく、化粧品業界もその一つです。この記事では化粧品業界の中で、市場が拡大している「男性による基礎化粧品の購入」の実態を追いました。
化粧品市場の現状
図表1は化粧品市場全体の規模の推移です。2019年までは前年並みから前年プラスで推移していましたが、2020年は前年比89%と大きくマイナスに転じました。消費税増税による駆け込み需要の反動に加え、コロナ禍での外出機会減少による美容意識の低下が影響していると思われます。特に、メイクアップは口紅が大きくマイナスとなり前年比73%となりました。基礎化粧品についてはマスクによる肌荒れケアや「おうち時間」増でケア時間も増えたためか、メイクアップより落ち込みは小さく前年比95%とマイナスで着地しました。
図表1
男性による化粧品購入の現状
ここ数年、市場が拡大していた「男性による化粧品の購入」はどう推移したのでしょうか。男性の化粧品市場は2016年からの5年間で111%に伸長しており、2020年も前年比104%とコロナ禍でも更なる盛り上がりを見せていることがわかります(図表2)。
図表2
シェービングは外出が減ったことにより前年比93%と落ち込みましたが、基礎化粧品は前年比107%と、女性を含む化粧品市場全体の状況とは裏腹に大幅に拡大しました。
ECからの購入も大きく伸び、薬局・ドラッグに次ぐ大きなチャネルとなっています。
興味深いデータがあります。
2020年3月末時点で在宅勤務をしていた男性としていなかった男性の、2020年の基礎化粧品の平均購入金額を比較すると、前者が前年比112%、後者が前年比102%と大きな差が生まれていました。
図表3は、2020年3月末時点で在宅勤務をしていた男性と、していなかった男性の、基礎化粧品の年間購入率の変化を比較した結果です。2019年段階ではそれほど違いはなかったのですが、在宅勤務をしていた男性の方が2020年に年間購入率を大きく伸ばしており、「より多くの人が基礎化粧品を買って使うようになった」ということが読み取れます。
図表3
このデータからは、在宅勤務経験が男性の基礎化粧品の購入・使用に少なからず影響を与えている可能性が示唆されます。オンライン会議中に自分の顔を見る機会が増えて関心を持つようになった、通勤時間や飲み会にかけていた時間やお金をスキンケアに充てられるようになった、といった変化があるのかもしれません。
年代によって異なる購買の違い
基礎化粧品を買う男性の中には、女性用の商品を買っている人もいます(図表4)。その割合は、年代が若いほど多く、男性用のみ購入する人は10代では3割強、20代で約5割にとどまります。30代が約6割、40代~60代では約7割と大多数の人が男性用のみを購入しています。
図表4
近年、男性用の商品が増えてきたとはいえ、やはり、女性用基礎化粧品のラインナップの方が豊富です。情報に敏感な10代・20代は
“自分の悩みに応えてくれそうな化粧品”を探した結果、女性用に行き着いたのでしょうか。
図表5は、15~34歳と35~69歳の2つの年齢層で、男性用・女性用基礎化粧品の購入率と購入者当たり年間購入金額の推移を比較したものです。
図表5
15~34歳では、男性用基礎化粧品の購入率は2020年で大幅に下落し、女性用基礎化粧品は購入率、購入者当たり年間購入金額はともに上昇しました。35~69歳の男性用基礎化粧品はここ数年着実に上昇していた購入率が2019年と2020年で変化はなかったものの、購入者当たり年間購入金額が高くなりました。「若年層は女性用、ミドル以上の層は男性用」という傾向は年々強まっており、2020年で更に強まったと言えます。
洗顔や化粧水などのアイテム別で見ると、更に2つの年齢層で購買に異なる傾向が見られました(図表6)。
図表6
全体的な傾向として、洗顔の購入率は高く、化粧水と乳液が低いことは共通しています。
15~34歳は女性用の洗顔・化粧水・乳液全てにおいて2020年の購入率が上がり、特に乳液はプラス1ポイントと大きく上昇しました。このことから、“洗顔で汚れを落として、化粧水で保湿する”から次のステップとなる乳液を使い始める人が増えたことが分かります。
一方で35~69歳は男性用の化粧水と乳液の購入者当たり年間購入金額が大幅に上昇しました。既存の購入者がより関心を持つようになり、価格が高いものを使用するようになっているようです。
今回のデータからは特に若年層で女性用基礎化粧品の利用が増えている様子が見られましたが、最近は男性向けのスキンケアブランドの勢いも強くなってきており、大手メーカー・ブランドから新たに男性向け商品が誕生したり、若年男性に向けたインターネット通販のみで購入できるブランド、女性とシェアできるユニセックスな商品が登場したりと、着実に男性向け商品のラインアップが増えています。知るGalleryではこの「男性による化粧品の購入」が今後どのように推移していくのか、引き続き注目していきます。
センター員もりもとの生活者研究記録 【Vol.2】男性の化粧品購入ではそもそも男性向け商品を使う男性と女性向け商品を使う男性のニーズがどのように異なるのかを、ユーザー像の違いから読み解いています。こちらも併せてご覧ください。
今回の分析は、SCI®を用いて行いました。
【SCI®(全国個人消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女52,500人のパネルモニターによる食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品に関する消費者市場動向のトラッキングサービスです。 このデータからは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「いくらで買った」のかがわかります。消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。
転載・引用について
◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」
◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら