2030年の未来を考える~インテージ 未来レポート 序章
様々な社会課題がある中で、その解決手段として各種データや先端技術の活用が期待されています。インテージグループでは、先端技術動向を踏まえて2030年の未来を予測し、バックキャスティングで今後必要となる技術検討と研究開発を行うことを目的に、「インテージグループ未来レポート」を作成しました。
このシリーズでは、「未来レポート」で描かれた4つのシナリオを通して、2030年の未来を考えていきます。初回となる今回は、シナリオを描くにあたり、2030年の課題とその解決手段について環境分析を行った結果を紹介します。
2030年の重点課題
2030年、日本は2つの難題で持続可能性の岐路に立つと考えられます。
一つは温暖化・SDGsです。2050年にカーボンニュートラルを達成するため、2030年までに温室効果ガス排出量を2010年比で45%削減する必要があります。目標が達成できないと、2050年に地球の平均気温上昇は2.0℃を超え、地球や人類の活動に不可逆的なダメージを与えると言われています。
カーボンニュートラル達成に向けては、自動車、エネルギー、化学など主要産業の大転換が迫られるほか、それ以外の事業者や生活者においてもモノの製造や廃棄、エネルギー利用などの大幅な抑制が求められます。温暖化の影響は一次産業の不振や都市機能の低下、感染症の増加など広範囲に及びます。
もう一つは人口減少・高齢化です。2030年にはボリュームを占める団塊世代が80代に突入し、高齢化が深刻化します。労働力人口減少は顕著で、65歳以上の高齢者1人を現役の働き手(15~64歳)が何人で支えるかの人数は、2000年が働き手3.9人に対し、2030年は1.9人と約半減するとの推計があります。
高齢化と人口減少が及ぼすダメージは大きく、国を支えるヒト・モノ・カネのうち、ヒトは減少、カネも社会保障費増と税収低下、インフラ老朽化などモノの劣化も激しくなります。この状況を覆すには抜本的な生産性や付加価値の向上が欠かせず、テクノロジーとアイデアによるブレイクスルーが求められます。
高度なデータ活用への期待
これらの問題の解決手段として期待されるのが高度なデータ活用です。
プロジェクトでは、データ活用を取り巻く環境についてPEST分析を行いました。 それぞれ、以下のキーワードで整理されました。
Politics(政治)
データ活用による新たな生活経済モデル
・エネルギー環境負荷削減と人口減少期に入った国内経済の持続可能性と経済発展を両立するため、政府統計では対応しきれない、速報性かつ詳細なデータとして民間データの活用が進む
共助のデータ連携基盤
・企業間の協調領域において、政府と民間のデータ連携が進む [1]
Economy(経済)
シェアリングエコノミーへの移行 [2]
・企業の提供価値が、販売からサービス提供に変わり、領域ごとの専業サービスやユーザー視点での“生活丸ごと”定額サービスが設計される
・適切な在庫管理、細かなパターンに対応する利用を促進するため、柔軟で弾力的なサービスが設計される
データ協調領域の出現
・企業間の協調領域が拡大し、コアコンピタンス以外でのデータやインフラの共有化、合理化が進む
Society(社会)
社会全体でのゼロエミッション達成
・環境負荷への関心の高まりを受け、物・設備の製造、輸送、維持、管理、廃棄は、現在より高コストとなり、煩雑な管理ルールが発生する
・ロスに対してコスト的な側面だけでなく、社会的なペナルティが発生する。所有をするのは専門企業がまとめて扱うことのメリットが強くなる
シェアリングによる生活者ニーズの充足
・個人間流通が浸透し、新品嗜好が薄れる
・シェアリングが一般化し、経済的な負担及び煩雑な管理・取引・廃棄ルールを避けるために、所有からサービス利用への移行が加速する
Technology(技術)
高度データ活用社会で整備される技術
・IoTやデータベース技術が発展し、低コストで権利管理とデータの複雑な処理・運用が可能になる。
・稼働率を上げて収益の最大化を図るため、ダイナミックプライシングなどのモデルとシステム実装が進む
新たなデジタル生活基盤の構築、さらに高度なデータ活用が進むことで、省資源と発展を両立する社会の実現に繋がると考えられます。特に進むと考えられるのが、超高齢化社会における医療・介護費や、社会インフラ予防保全、エネルギー消費削減やゼロエミッション達成など、増大する社会コストの抑制に向けたデータ活用です。
おわりに
「未来レポート」では、ご紹介したような社会課題解決に向けて、高度なデータ活用が進むことを想定し、そこで起きる社会変化について、
①生活者のライフスタイル
②企業のマーケティング
③街づくりと生活者のウェルビーイング
④医療・ヘルスケア
の4つのテーマでシナリオを描きます。
次回以降4回に分けて、それぞれのシナリオと、その背景にある変化や技術動向を解説します。楽しみにお待ちください。
【インテージグループ未来レポートとは】
2030年の未来に向けた社会変化から取り組むべき課題を検討することを目的に、インテージグループR&Dセンターで描いた未来予測レポート。生活者、企業、街、医療の4領域を予測し、SFプロトタイピングの手法により、バックキャスティングで必要となる技術を描き、研究開発テーマとして検討を進めています。
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