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アルファ世代が考える2030年未来の社会②~2030年の社会課題から小学生が描く、2030年の暮らし

インテージグループR&Dセンターが共同研究機関として参加している、産業能率大学の小々馬敦先生との研究プロジェクト「ミライ・スケッチ2030」の中で、インテージは、アルファ世代(現役小学生)の考えや思いを引き出すことや、アルファ世代に影響を与えている保護者の考えを伺うことで、アルファ世代をより深く知ることに挑戦しました。この挑戦について、全四回にわたって紹介していきます。(「ミライ・スケッチ2030」」については、「アルファ世代が考える2030年未来の社会①」で詳しく説明しています。)連載第二回は、インテージクオリスの泉山が実際に行ったアルファ世代(現役小学生)の考えや想いを引き出すワークショップについてお届けします。

1.自由に自分のことばで語ってもらうということ

本ワークショップでは、アルファ世代(小学生6年生)の4名でチームを組んでもらい、少し先の未来における社会の進歩や変化を想像しながら、「2030年の自分と暮らし」について一緒に考え、リアリティのあるイメージを語り、描くことにチャレンジしてもらいました。そのチャレンジにおいて私たちが最も配慮したのは、かれらに自由に伸び伸びと空想あるいは想像してもらい、自分のことばで語ってもらう、という点でした。アルファ世代の子どもたちは、その特性から自分の置かれた状況を敏感に感じながら周囲に期待される「模範解答」を準備しがちです。しかしながら、今回はSDGsの17ゴールのような未来を描いてほしいわけではありません。模範解答探しを離れて、より自由に発想し、自分のことばで語ってもらうために「2030年の自分」を創るところから始めてもらいました。

「2030年の自分」は19~20歳くらいのはずです。身長はどのくらい?どんな髪型?どんな服?どんな勉強や仕事をしていそう?など、想像を働かせながら「未来の分身」を描いてもらいました。(画像1)

画像1

2030年のわたし

描いてもらった「分身=未来のわたし」は「目は悪くなっていて、スマホ一体型メガネをかけている」、「転んでも破れずに怪我もしないズボンを履いている」など、想像や空想が入り交じった人物像になっていました。さあ、これで自分自身を「主人公」として未来を描き、自分のことばで語る準備が整いました。

2.想像や空想をカタチに。そして、ことばに。

「未来のわたし」ができたら、次は「肩書外し」です。
「安心・安全な場」という表現がありますが、子どもたちに対しては特に「何をどんな風に話しても大丈夫」という場づくりをしてから接することが重要になります。そのためにも本ワークショップでは冒頭で「肩書外し」と言われる工夫をしました。本名や普段の呼び名だと「友達の前の自分」や「親の前の自分」を「演じてしまう」ことがあります。そこで「2030年に暮らすわたし」として、「今」に囚われることなく、より自由におしゃべりをするために自分自身で「ニックネーム」を考えてもらいました。子どもたちの表情をみていると、お互いに真新しいニックネームで呼び合うことで、みんなの気持ちもフワっとほぐれる効果もあるようです。

さらに今回のワークショップでは、「絵」を描くことを通して想像や空想をカタチにあらわす「グラフィックファシリテーション」を活用しました。絵を使うことで、考えたことを言葉や文字であらわしてもらうよりも連鎖的な発想も生まれやすく、会話も活発になります。
また、だれかの発言や付箋に書かれた「言葉」に対して「それってどういう意味?」と質問することは、ハードルが高いと感じてしまう子どもも多いようです。そして、質問された人も、自分の思うことが伝わらなかったことにショックを受けたり怒りを感じてしまうこともあるようです。そのため「絵」を介すことで、その人に質問しているのではなく、「絵」について問いかけをしているという形になり、質問するハードルも下がるとともに、答える側もリラックスして説明することができるという変化が生まれます。

「分身=未来のわたし創り」、「肩書外し=ニックネーム」、「絵=グラフィックファシリテーション」などは、子どもとのワークショップをより豊かなものにする有効なアプローチ方法と考えています。そして、終始、楽しそうにペンを取り、夢中でお絵かきをする姿やワイワイとおしゃべりをする姿に、子どもたちも楽しみながら2030年を考えることができたのでは、と感じています。(画像2)

画像2

ワークショップの風景

3.アルファ世代の描く2030年のミライ

机いっぱいに広げた模造紙を囲むように子供たちが散らばり、好きなところに「ミライの私」を置いて、思い思いに絵を描いていきました。最初は自分のすぐ前に自分なりのミライを。しばらくすると、誰かが描いたミライに自分のミライを重ねたりと、みんなのミライが重なっていきました。そうして約2時間のワークショップが終了する頃には机いっぱいに広げた模造紙の上には5つのまとまり感を持つ世界が浮かび上がっていました。それぞれの世界について子どもたちにおしゃべりしてもらいながら、「ジブリパーク」「病院」「AI・アバター」「おじいちゃん」「キッズコーナー」と命名していきました。(画像3)

画像3

2030年のミライと5つの世界

では、ここから少しだけ5つの世界を覗いていきましょう。

[AI・アバターの世界]

AIやアバターは、オンラインミーティングやゲームの着せ替え人形的なものではなく、「おばあちゃんも遠くの孫に会いに行くのがめんどくさいじゃないですか」という、ある男の子の発言が物語るように、面倒くさいことや大変なことをアバターが代わりにやってくれるという形で、あたかもアバターを「コピーロボット(パーマンやドラえもんに出てくる自分をコピーしてやりたくないことをやってくれる道具)」のような存在として描いていました。(画像4)

画像4

AI・アバター

[ジブリパークの世界~キッズコーナー~おじいちゃんの世界]

ジブリパークの世界には、女の子が中心になって、VRなどの技術が進化して、映画の世界が「体験」できるようになっているというミライを描いてくれました。ホウキにまたがって空を飛んだり、心に残るシーンに入り込んで追体験できるなど、次々と空想が広がっていきました。
そして、元々はキッズコーナーに描こうとしたけれど、おじいちゃんも一緒にやりたいかも、とおじいちゃんの世界の近くに描かれた水戸黄門には、チャンバラを「体験」できるという男の子の空想が反映されていました。(画像5)

画像5

ジブリパーク、水戸黄門

この世界ではどちらも「体験」という言葉があらわれていることが興味深いですね。大変なことや面倒なことは自分の代わりにアバターが行い、楽しいことや実際にやったことがないことや行ったことがない世界はVRなども駆使して「体験・体感してみたい」と言っています。かれらの描くミライへの期待が溢れているようです。

[おじいちゃんの世界~病院の世界]

次におじいちゃんの世界の「バリア」というイラストに注目してみましょう。この発言をした男の子によると、「バリア」はおじいちゃん(おばあちゃん)を守ってくれるものと捉えていました。コロナ禍によりワクチンについて様々なところで目にし、実際に自分も接種したことで「ワクチン」が病気を予防するものと理解したようです。それがミライでは注射をしなくてもよい「バリア」になっている、あるいはなってほしいと考えたということでした。ワクチンの経験により医療が「治療」というイメージから、「予防」さらには「守る」という物理的接触を遮断させる方向にイメージが変化していっていることが読み取れます。
さらに話を聞いていくと、「バリア」ができれば医者もいらなくなるといったようにAI・アバターの世界とむすびつきながら話が広がっていきました。また、「バリア」が効かなかった時には「骨折を瞬時に治せる薬」や「ロボットによる手術」も実現しているという話へつながっていきました。(画像6)

画像6

バリア、病院エリアの手術ロボットなど

これらの話からは病気やケガに対しての対応が「対処」ではなく、「未然に防ぐ」ことへの期待が強いことがうかがえます。コロナに関しては高齢者が感染すると重症化しやすいという話がニュースをはじめ、さまざまなところで語られていたことから、かれらもまた見聞きしていたかもしれません。ひょっとすると仲のいいおじいちゃんがワクチンの予約をする、恐る恐る接種会場に出かける、といった光景を目の当たりにしていたかもしれません。そうした不安や苦労を「バリア」なら解決してくれるのでは、と想像したのかもしれませんね。あるいは、チクッとした予防接種の腕の痛みを想い出したのかもしれません。病気やケガをしない、そして、万が一、病気やケガをしてしまっても「スマート」に治してくれる。そうしたミライを心待ちにしているようです。

4.むすびとして

連載第二回目はアルファ世代の豊かな空想や発想を引き出すためのアプローチ方法について、実際に「ミライ・スケッチ2030」で実施したワークショップを元にご紹介しました。
紹介しきれなかった方法も含めて、さまざまな工夫や仕掛けを組み込むことによって、子どもたち同士が自宅の一室で遊んでいるかのように伸び伸びとおしゃべりをしながら、落書きのようにスケッチをする。だれかの言葉やイラストに刺激を受けて、空想が広がり新しい言葉やイラストへとつながっていく。例示したイラストにそうしたダイナミズムの一端を感じていただけたら、と思います。

そして、「ジブリパーク」のように一見すると、アニメの世界を追体験したいのかな?とも捉えてしまいそうですが、それらの空想をリアリティのある「体験」を希求する強い欲求と捉えてみると、さまざまな場面で「体験・体感」がキーワードになっていることがわかります。さらに踏み込めば、豊かな表現力を持つゲームなどを見慣れているかれらはVRやアバターについてもリアリティを感じながら語っており、「バーチャル」と「リアル」を隔てる壁は私たちよりもずっと低く薄く、軽やかに行き来できているのかもしれません。
また、「バリア」という空想の根っこに「コロナインパクト」によって脅かされた「安心・安全・便利・快適」といったものをより揺るぎないものにしたいという想いを感じずにおれません。

未来において私たちはかれらにどのような「安心できる豊かな体験」を届けることができるのでしょうか?今度は私たちが空想や想像をする番です。そして、構想し創造する番です。いや、かれらと一緒に、かもしれませんね。

次回の連載第三回ではワークショップ後に行ったインタビューから、アルファ世代本人だけでなく、保護者の視点も交えてアルファ世代の実態についてさらに深掘りしていきたいと思っています。

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