未来に暮らす生活者は何に心揺さぶられるのか?データから想像/創造する【アウトプット編】
時々刻々と移りゆく生活者の行動様式や心の動き。これらを先手を打って深く理解し、かれらの心を掴む商品やサービスを提案するためにはどうすれば良いでしょうか。
インテージでは「実在する生活者をもとに、未来における“ありたい姿”や 、かれらが暮らしのどんな場面で心動かされるかを捉えることで、未来の豊かな暮らしを創っていくためのヒントを得る」ことが有効だと考えています。
そこで「実データに基づいて未来にいそうな生活者の人物像を構築し、かれらのライフスタイルと心動かされる場面(“ドラマ”)を推察する」自主プロジェクトを実施し、その結果が想像を広げる刺激や気づきとなるよう、ビジュアルやキーフレーズを用いたビジュアルブックを制作しました。
この「アウトプット編」では「分析ステップ編」のステップを経て構築した2名の“未来型生活者”人物像と、かれらの “ドラマな瞬間”をご紹介します。少し先の未来に向けて、生活者視点で開発テーマや商品アイデアを考えたい時などに、想像のヒントとしてご活用いただければ幸いです。
OUTPUT:ビジュアルブックで未来型生活者のドラマを描く
「分析ステップ編」でご紹介したように、ここまで、データ・エスノグラフィによって未来型生活者のファクトから気づきを得、ワークショップを経て2名の未来型生活者像を構築してきました。
最後にアウトプットとして、2名の未来型生活者の人物像、およびかれらが心動かされる場面(“ドラマ”)を描く、ビジュアルやキーフレーズを活用したビジュアルブックを制作しました。ビジュアルブック化することで、これからの豊かな暮らしを創っていくための刺激や気づきに繋がることが期待されます。
ここからは、構築した2名の未来型生活者のドラマを、ビジュアルを用いてご紹介します。
【未来型生活者像①山田未来子さん】
山田未来子さんは40代女性。夫と2人の子供と4人暮らしで、夫の自営業の手伝いをしています。テクノロジーは暮らしの身近にあり、フリマサービスやスマートスピーカーは家事の強力なサポーターです。
では、未来子さんのドラマをのぞいてみましょう。
Drama1:未来子さんの日課は、Instagramで自分と良く似た生活をする“類友”の投稿を見ることです。理由は、想像しイメージすることで、その人の体験の分も自分のものにできるから。実際の買い物においては厳選しますが、買わずとも「私だったらこのアイテムを使ってどんな暮らしになるだろう?」と想像するイメージ消費を楽しんでいます。
Drama2:未来子さんはリキッド消費の傾向があり、モノの購買に関して、「所有する」「使いきる」よりも「役目を終えたら送り出す」「回していく」という価値観を持っています。モノを購入する前に、我が家での役割を終えた後で次の買い手へ送り出せるかどうかまで吟味することを欠かしません。
最後に、未来子さんの特徴を最もよく表せるようなキャッチフレーズをつけました。
それは「ダブルエクスペリエンサー」。商品やサービスの購買による実消費だけでなく、情報を自分なりにリサーチし想像を膨らませるイメージ消費によって、体験価値を2倍楽しむ様子が表現されています。
【未来型生活者像②田中未来男さん】
田中未来男さんは30代男性。独身で、実家で両親と暮らしています。投資やオンラインサロンなど情報収集や活用にも積極的ですが、そのモチベーションは出世やお金持ちになることではなく、必要なだけ効率的に稼ぎ、趣味に情熱を注ぐことです。
未来男さんのドラマものぞいてみましょう。
Drama1:未来男さんの基本のライフサイクルは、判を押したように同じです。昼食はコンビニで完全食と飲むヨーグルト、シャンプーも変えず服も同じスタイルを貫きます。その理由は、日常生活を“無心”で楽にまわすため。何を買うか買わないか、余計な考えや悩みさえ最低限にしたいと思っています。
Drama2:そのように生活を省コスト化する理由は、全力を投じている趣味のため。好きな鉄道について毎日情報収集するのも楽しく、鉄道の写真を撮るための小旅行もよくします。自分の「好き」の純度を高めて極めたいと思っており、好きな鉄道を撮るときは自分含む人間を写さない、現地へいってリアルを体験するなどのマイルールがあります。
未来男さんにキャッチフレーズをつけるなら、「“好き”へのクエストハンター」。
あたかもゲームのプレーヤーのように、俯瞰した視点から対象を愛し、楽しみの純度を高めることを追求する日々を送っています。
未来子さん・未来男さんとその暮らしやドラマについて、イメージが浮かんできたでしょうか?ここまで読んでいただいた方にとって、2名の未来型生活者がデータドリブンなインスピレーションになれば幸いです。
未来型生活者を描くことで見えてくるもの
最後に、プロジェクトリーダーである鮎澤留美子による、今回のプロジェクトの振り返りをお届けします。
大きな社会変化のうねりの中では、わたしたちは日常での心の動きには気づきにくいまま、暮らしを送っています。特に当たり前に根付いている大切な習慣や、築きあげられた自分の文化価値観に対しては、何か刺激がなければ意識が向きにくいかもしれません。しかし、わたしたち生活者には、誰でも人生ストーリーがあり、ドラマがあります。意識、無意識のうちにそれぞれの生活者が大切にしたい自分の価値観をベースに、目指したいことに向かっていると信じています。
このプロジェクトは、“未来に向かって暮らしを元気に牽引するであろう”実在する生活者を探索する自主研究から生まれました。多様なメンバーが集い、実在する生活者のデータから、SDGs関与やこれからの未来に向かうモチベーションといった意識の関係を紐解きました。疑問から発想を拡げることで、生活者でもある我々自身の想いも投影しながら、ドラマストーリーを作り上げています。
未来に正解はありませんが、生活者が起こしている行動と想いの読み解き、私たちの発想を行き来しながら練り上げられた、“実在する生活者から示唆を受けた人物像”は、共感性の高い「未来へのメッセージ」になることでしょう。
■活用データ:
全国消費者パネル調査(SCI) クロスメディアシングルソースパネル(i-SSP)
Vois調査対象;29,115s
―2021年4月9日(金)~2021年4月14日(水)
■自主研究 共同開発パートナー;株式会社アイデアファンド
■e-book出典:InspireBook Powered By デ・サインリサーチ
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