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生活者インデックスデータ

暮らし先読み、後読み予報―生活リズムの予兆を<n=1>からみる①~一目でわかる電動ママチャリという道具

マーケティングプロデューサーの辻中俊樹です。
私は、いまちょうど50代に突入し始めた団塊ジュニア世代がティーンズの頃から、もう30年以上にわたって暮らしの変化の探索を続けている。ライフステージが変わっていくことによる動きや世代の特性があるとすれば他世代とどのような違いがあるのか?など、日々の暮らしの中の動きからそれらを追い続けてきた。

とりわけ<n=1>という言い方をするように、一人一人の生活史の中での不易や流行の追跡の蓄積が、私のやってきたマーケティング視点の特性といえる。

本連載では、暮らしの変化の予兆を先読み・後読みするために、その<n=1>という暮らしをみる手法だけではなく、それからどのような洞察や仮説づくりができるのかというキーワードを伝えていこうと考えている。生活シーンの1つ1つは断片である。ただし、それらを流れ・連続性でとらえていくことで大きな潮目を見通すことができる。暮らしの文脈を可能な限り共有できるよう、可視化・物語化していくつもりである。

「マスク」をエスノグラフィしてみると

暮らしの小さな変化に気づく1つのポイントは、生活の中でそれぞれなりに使いこなしている道具を見ることである。観察をするということでもある。ここ数年の暮らしの中で面白い変化を示していると思う道具で、誰でもが簡単に見つけだすことのできるものをいくつかあげてみる。

その1つはマスクである。コロナというウィルスの流行が引き金になって、ほぼ全員がその道具の利用者になってしまった。ある意味、外圧的な強制使用を余儀なくされ、かれこれ2年近くになる。誰しもがもうすっかり慣れてしまい、予備も含めていつも2~3枚は持ち歩くようになった。人の顔を見れば必ず目に入ってくるものだから、観察対象としては申し分ない。

最初は白いマスクが中心だった。ドラッグストアなどで売られている50枚箱入りの不織布マスクだ。アベノマスクなんていうものも生まれたりしたが、そのうち純然たる白いマスクは減っていった。手作りのマスクが増え始め、スポーツ系グッズとしてのマスクなど様々なバリエーションが目立つ様になってきた。

もちろん感染防止であり、咳エチケットの必需グッズという機能性価値が鍵ではあるが、そこにそれぞれの個性や思いをうっすらと感じとることができる。全体像としてはマスクという道具の使用機会の増大ということではあるが、1人1人のミクロの視点でみればその人なりの自分史が反映しているように思われる。定量情報としてのマスクということではなく、<n=1>の1人の行動の露出としてみれば、そこに暮らしのほのかな思いを感じとることができる。想像たくましくすれば、その人の持っている潜在心理までがわかりそうな気がする。

「そんな気がする」という仮説の抽出が、定性的な情報の持つ妙味である。電車の中で、または街の中でマスクを見ているだけで暮らしの変化を見つけることができる。観察、エスノグラフィという言い方ができるが、その人なりの千差万別の中から、一つでも二つでも気づきを見つけだすことができる。

レジ袋有料化が創出した個性

変化を感じとることのできるものの1つにショッピングバッグも例としてあげることができる。レジ袋の有料化ということが、その利用の直接的な引き金になった。とはいえその前から使用している人も、スーパーのセルフサッカー台のところをみていれば3割くらいはいた気がする。それがほぼ全員になったという訳だ。

ショッピングバックの観察も、なかなか千差万別、個性あふれる状況が楽しめる。そのスーパーが売っているショッピングバッグの利用者は皆無に近い。イオンで買い物している人がカルディのショッピングバッグを使っていたりするのもざらだ。さらに面白いのは普段使いのバッグがわりにこのショッピングバッグを使っている人が増大している。街を歩いていても、電車やバスの中でも使用者が多いのだ。このバッグからネギや白菜がのぞいているというシーンを見る方が少ないくらいだ。

軽いし、荷物が少なくなれば折りたたんでしまえる。暮らしのリズムの中でのちょっとした変化に対応できる可変性がいいということになる。おかげで何か別の道具の使用機会が激減してしまうことになる。昔風にいえば、ヴィトンやグッチのかっちりとした革のバッグは本当に見なくなった。ショッピングバッグを見ていると、その人の個性や暮らしへのこだわりが垣間見える時がある。ブランド品の傘をリサイクルして、ショッピングバッグにしている人を見つけたりすると、思わず微笑ましくなってきたりもする。全体史で見ればエコインパクトによるショッピングバッグの利用増加という定量データに過ぎないが、1人1人の<n=1>の姿をみると、嗜好や個性の向こう側に、暮らしの変化を先読みしたりすることができる。

電動ママチャリ爆走中!

マスク、ショッピングバッグと同じような流れの中で、ここのところよく見かけるシーンとして電動ママチャリがある。歩道を歩いていたりする時、後ろからこのチャリに追い越されたりするとドキッとすることがある。また、夕暮れ時には前から走ってくる電動ママチャリのライトがまぶしくて困ることもあったりする。もっとドキリとするのは、このチャリには貴重な荷物が満載されているのだ。運転席のママの前には小さい子供、後ろの荷台のところにはもう1人の大きい方の子が乗っかっている。そしてさらに前のかごにはショッピングバッグがはみだしそうに載せられていたりする。総重量でいえば100キロ近いこともあるのではないだろうか。

交通法規の問題や安全の問題も多々あるが、この道具はもう手放せないのだ。軽自動車よりさらに利用価値があるといっていい。

写真は仕事帰りのママが駅に駐輪しておいたこのママチャリの前のかごに買い物荷物を載せ、保育園で下の子をピックアップし、学童に行っていた上の子を後ろに乗せて、帰宅を急いでいるといったシーンである。

郊外住まいの働いている子育てママには、軽であっても車は使い勝手が悪いし、日々の生活のリズムには合わないのだ。だから電動ママチャリは、一番頼りになる暮らしのリズムを支えてくれる道具なのである。

全体史ということでいえば、衰退していっていた自転車の市場が、ここ5~6年で下げ止まったということがある。

https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20210728hitokoto.html

衰退の一途をたどっていたのが、昔のママチャリ(軽快車)である。とりあえず買い物や通勤の足として使い、おっかなびっくりだけど子供を乗せたりしていたママチャリである。とりあえずなきゃ困るから、安ければ安いほどいい訳で1台1万円以下のデフレマーケットそのものだったのである。ここに電動が登場してママチャリルネッサンスが起こったのだ。100キロ近い重量を運ぶには電動は必須なのだ。一台の価格は10万円近い。ケタが1つ変わったのだ。それだけの暮らしのリズムを支える価値があったから、デフレの中で、全く驚異の価格が創出されたのだ。

アクセサリーというアフターマーケット

出荷数量データには、電動自転車はあっても電動ママチャリというカテゴリーはない。これは観察することでしかわからないことだが、同じような電動チャリが駐輪場に2台止まっていてもすぐに見分けがつく。それはその自転車に取り付けられた補助道具でわかる。運転席のサドルの前につけられたチャイルドシート、後部座席の子供用シート、前のかごの大きさなどなど、いわゆるアクセサリーが全く違うのだ。

電動ママチャリというマーケットには、自転車メーカーの出荷後に、大きなアクセサリーのアフターマーケットが成立しているのだ。その中にはシートなどのハードだけでなく、雨よけシートなどの工夫が膨大にくっついてくるのだ。なんだか後部シートにはまるで温室のような雨よけ、風よけツールがセットされていたりする。おまけにキッズ用のヘルメット、雨用のポンチョやハットなど、たくさんのアクセサリーが工夫されているのだ。

こんな電動ママチャリに乗って、ママやキッズたちは、一体どこを爆走することになったのだろうか。これは生活をストーリーでみることでしかわからないことだが、その先読み、後読みについてはまた次回に。

著者プロフィール

マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)プロフィール画像
マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)
青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
最新刊は「米を洗う」(2022年3月 幻冬舎)
など編著書は多数。

青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
最新刊は「米を洗う」(2022年3月 幻冬舎)
など編著書は多数。

Make-TipsちゃんねるURL:https://www.youtube.com/channel/UCmAKND92heGN-InhC0sp7Kw

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