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暮らし先読み、後読み予報~生活リズムの予兆を<n=1>からみる⑨~おにぎりと「全体最適」「部分最適」~

「全体最適」の変化に気づく

前回の麻婆豆腐の話や「ナン」のことはどう思っただろうか?
麻婆豆腐という「メニュー」、あるいは「アイテム」が調理され登場するには、それなりの確固たる理由がある。

たとえば、賞味期限切れの豆腐を使い切りたいといった「冷蔵庫在庫一掃」スイッチだったり、辛い味わいを欲求したいといったスイッチである。このスイッチがその時の心理と行動を支配することで、麻婆豆腐というメニューが成立したといっていい。

私の言葉と概念でいうと、このスイッチは「部分最適」である。

麻婆豆腐を成立させている部分という背景にとっての最適解がこれだったのである。 この「部分最適」が成立していることで、おかげさまで食卓全体、あるいは食シーン全体の過去の定型であった「全体最適」が崩れ去っているのである。今の食シーンを共有しているメンバーにとっては、これこそがむしろ「全体最適」だったとみておいた方がよいのだ。「部分最適」の解である麻婆豆腐と、前夜の残り物のヒレカツ、蒸し野菜が共存していることこそが「全体最適」だったのである。

同様にこれは「ナン」というアイテムでも起こっている。ここでの「部分最適」のスイッチはOKストアの「ナン」を食べたいというスイッチに尽きていた。だから「ナン」を核にした組合せとしての定型からは全くズレた食シーンになっていた。「全体最適」は崩壊している。むしろこの食卓の主人公にとっては、これが「全体最適」ということだといっていい。

つまり、過去の定型、常識は実態と大きくズレていると言えるのだ。

「お弁当」と「絶滅危惧種」

中華風であったり、インド風であったり、はたまた典型的な和風であったりといった「全体最適」というスイッチは、もうどこにも存在していない。古典的な言い方をすれば、主菜や副菜、一汁三菜などという「全体最適」のパターンは探す方が困難であり、これも私の言い方では「絶滅危惧種」ということになる。逆に「絶滅危惧種」だからこその価値もある。
一種のあこがれに近い特別仕立てというスイッチになることもあるのだ。ただ、日常繰り返されている場面では希少である。

日常風景の中でもこの「全体最適」というスイッチが核になっていることも出現する。これまで述べてきたことの例でいえば、「お弁当」ということがこれに当たるといっていい。

ベランダ弁当や庭弁当という例を挙げたりしたが、これは「お弁当」という食べ方が、「全体最適」のスイッチを押した典型といっていい。もちろん、このスイッチを押すきっかけの一つにお天気ということがある。春の予感やさわやかな日射しこそが、「お弁当」という「全体最適」の典型をイメージさせることになったといえる。「お弁当」という食べ方には、むしろ「全体最適」というモチベーションしかないという言い方もできる。つまりこの「お弁当」ということを選択したことによって、それを構成するアイテムに対する「部分最適」の視点はほとんど消去されているといっていい。

極論、何が入っていてもいいということになるからだ。もちろん、卵焼き、ウィンナーといった一番バッター、二番バッターは存在している。だが、それはいつでも変更可能であり、そこには「部分最適」はない。「お弁当」という器に入った途端に、「全体最適」だけがすべてのスイッチを支配することになるのだ。

カフェプレートを考えてみると・・・。

それでは、いわゆる「カフェプレート」はどうだろう。白いごはんを食べるためのおかずがバランスよく器に入っているという「全体最適」でもない。ごはんというアイテムもまた「全体最適」を構成するための重要な配役の一人にすぎないのである。以前紹介したヤオコーの弁当を買ったおばあちゃんの食卓はこれだった。この購入した弁当を含めたプレート全体が、「お弁当」という食べ方だったのである。器に入っていなくても「お弁当」は作り上げられることができる。だから、この時のおばあちゃんにとっては、十六穀米のごはんの量目が多すぎて残してしまうことになった。「部分最適」の解として考えられていたごはんという配役の比重が重すぎたのである。

カフェプレートといわれている食べ方やその構成は、この「全体最適」としての「お弁当」の価値と極めて近いところがある。あるいはRF1(惣菜屋)などのランチ用の日替わり弁当風などもこれに近いところがある。ごはんを活用したアイテムも入っているが、それは主人公ではなく、他のアイテムと同じウェイトを持った構成要素の重要な1つになっている。

主食って何なのだろう・・。主菜、つまりメインディッシュって何なのだろう。

こんなことの気づきの中から、「部分最適」といったことを考え直してみる必要がある。そして残り物といわれているものの実際の暮らしの中での活用価値が再編されたりもする。

こんな「お弁当」の中で、唯一「部分最適」をあわせ持っているものがおにぎりということになる。チビッ子たちが春の日射しを浴びて食べていた「お弁当」も、このおにぎりが出色の一品だった。おにぎりというアイテムがあるだけで、その食シーンの価値が確実に成立していることがある。ここに紹介したおにぎりによるランチシーンは、「お弁当」にはなっていないが、「お弁当」という「全体最適」の解になっている。残り物のおかずが弁当風にはなっているが、これがお茶碗に入っている白いごはんだと、恐らく食べたいというスイッチは押されていなかったのだ。それだけおにぎりにはコーディネーターとしての力があるのだ。

「おにぎり達人」の登場

おにぎりには「全体最適」というものをパワーアップさせる力があると同時に、「部分最適」としての最強のアイテムでもあるのだ。ある意味、このおにぎりというものが核としてのスイッチを押すという食シーンがある。言い換えればおいしそうなおにぎりが想起されれば、もうそれだけで食の満足度が誕生するということである。

先ほどの写真のおにぎりシーンは一人での場面の豊かさにつながっているが、同じ女性が夫婦二人でおにぎりを想起して完成した食卓が次の写真である。

ミニストップの店内で手作りしたおにぎりを買いたいと思い、実現したシーンである。もうおにぎりだけで満足度は百点満点になっている。

このおにぎりを掘り下げてみよう。
おにぎりといえば、母が手作りでにぎってくれたものというイメージがある。おにぎり、おむすびという言葉通り、手でごはんを握ったものである。ただ、時代は変化していっている。お弁当に入っていたり、テーブルで食べられていたりしているこれまで紹介してきたおにぎりだが、これは手で握られていたり、むすばれたりはしていない。

たとえば「おにぎり達人」といった道具で作られている。

炊き立てのごはんを手で握るのは熱いといった理由もあるが、型に入れて作った方がうまくいくし、いっぺんにたくさん作れるという利点もある。具材もいろいろと入れ易いということもある。手で握られていないおにぎりやおむすびの時代の到来なのである。かつて母が手作りでにぎってくれたおにぎりが、いまは道具で作ることができるように、当然「部分最適」や「全体最適」の実際も変わっていくことになるのだ。

著者プロフィール

マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)プロフィール画像
マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)
青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
最新刊は「米を洗う」(2022年3月 幻冬舎)
など編著書は多数。

青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
最新刊は「米を洗う」(2022年3月 幻冬舎)
など編著書は多数。

Marke-TipsちゃんねるURL:https://www.youtube.com/channel/UCmAKND92heGN-InhC0sp7Kw

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