arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

新しいマーケティングのすすめ(16)

マーケティングにおいて、調査は、言うまでもなく、重要な仕事です。
前回のこの連載では、その調査の中で、広告に関する調査について考えました。

近年では、広告の領域でデジタル・メディアの活用は普及しています。Webサイトでは、アクセス分析も普及しています。つまり「どのページ」を「何人」が「いつ」閲覧したのかが、正確にわかるということです。他のメディアの広告に比べて、取得できるデータが多いのがデジタル・メディアの特徴のひとつですが、このデータがあれば、デジタル・メディアに対する生活者の意識調査が不要なのか?そのことについて、今回は考えてみます。

Windowsのマウスの変化は、サイトの閲覧方法を変えた!

Webサイトの設計を行っていると、Webデザイナーから「このデザインだと、ファースト・ビューに、重要項目が入りません」という指摘を聞くことがあります。最初にPCでサイトを訪問した瞬間の閲覧範囲は、とても重要だという指摘です。

これが、真実か、真実ではないのか、皆さんは考えたことがありますか?

私は、これに関する調査結果を、予期しない瞬間に得たことがあります。
過去、私は何度もWebサイトのグループ・インタビューを行いました。行った理由は、Webサイトも、お客様に提供する製品だと考え、その製品に欠陥がないかをサイト公開前に確認を行いたかったからです。

その調査で、驚くべきことが起きました。実際にお客様にPCに触れていただき、グループ・インタビューをしていただいた時のことです。その時は、Windowsのマウスに、ホイール(真ん中の、スクロール用のリング)が付いたばかりの時代でした。

なんと、ユーザーはそれをスムーズに使い、私たちが経験したことのない速度で、Webページをスクロールさせたのです。

今でこそマウスにはスクロール用のホイールがついていますが、初期のパソコンのマウスには、ホイール機能はついていませんでした。実際に、今もWebブラウザーの右側に、画面スクロール用に、矢印アイコンと、ページ位置を示す棒が表示されているかと思います。
ホイール機能のないマウスの時代には、ブラウザーのスクロール・メニューを使ってスクロールを行っていました。

つまり、マウスにホイール機能がついた瞬間、「ファースト・ビュー」の滞在時間が短くなったのです。そして、私たちWebサイトの専門者よりも、お客様はマウスのホイールを使いこなしていたのです。

これは自社が想定していた「お客様」と実際の「お客様」のギャップに気づいた出来事でした。そして変わりゆく時代の変化に適応する必要性を感じた出来事でもありました。

冷静に考えれば、私たちWebサイトの専門家は、Webサイトの研究のために丁寧にサイトを閲覧します。しかし、お客様はWebサイトを使って、自分の本当にしたいことを早く行いたいのです。Webサイトを見て、料理を作るとか、商品を買うとか、本当に行いたいことは、サイトの訪問後にあるのです。そのため、サイト閲覧は可能な限り効率的に行いたいのです。

どのようにWebページを見ているのかという行動は、実はWebアクセス分析では取得できません。お客様のWebページの使い方が分からないのに、Webページの企画や設計ができるでしょうか。つまり、Webサイトというデジタル・メディアも、実際の調査が必要だということです。思い返すと、テレビや雑誌のメディアも、先人たちは多くの調査を行い、テレビや雑誌のメディアの価値を理解したのでしょう。それを新しいデジタル・メディアで、も行うのは、必然であると言えるでしょう。

アクセス分析のサイト内行動分析は、調査で、きちんと補おう

デジタル・メディアを使った広告の調査を行う理由は、他にもあります。
このお客様のサイト内の行動、つまり、どのページを見て、次にどのページを見たかというデータは、Google Analytics内の「行動フロー」や、ユーザー分析の「ユーザーエクスプローラ」から、取得可能です。

従って、データは取れています。しかし、わからないことがあります。なぜ、その行動をしたのか?それは、その人固有の行動なのか。それとも、他の人も同じ行動をするのか?
これは行動直後に聞いてみないとわからないのです。

デジタル・マーケターの多くは、『デジタル・マーケティングはデータ・ドリブン・マーケティングである。それこそが旧来のメディアを多用するマーケティングと異なる』と語ります。この解釈は正しいです。しかし、真のデータ活用を行なっているかといえば、そうではなく、むしろデータの沼にはまってしまっているのかもしれません。

ここで、とてもシンプルな質問をしましょう。
お客様が、あるWebページを訪問した理由を教えてください。答えられますか?

この答えを考える、私のエピソードを紹介しましょう。

私は、Webサイトの設計をチームで行っているときに、よくメンバーに「Webサイトは、お客様にとっては迷路だ」とよく話していました。

お客様は、Googleなどの検索サイトで、今知りたいことは、明確に決まっているケースが多いのです。その検索で、たまたま表示されたページを訪問した、というのが、お客様のリアルな行動である可能性は高いです。お客様は、検索サイトで、偶然紹介されたサイトにアクセスし、そしてそのページに複数ある次のページのリンクを、とある確率でクリックするのです。

この際、お客様自身が「情報への欲求が高く詳細な情報に接したい」のか、または、そうでないのか?により行動は大きく異なります。しかし、Webサイトのアクセス分析では、どちらも同じ1アクセスという数値になります。

つまり、数値よりも詳細な「リアル」を知るためには、Webサイトに関する調査は行った方が良いのです。

そして、今はスマートフォンの時代

私が、最初にWebサイトのグループ・インタビューを行いたいと、代理店と調査会社に相談した時には、手法もシステムもありませんでした。

とても初歩的なことですが、お客様が見ている画面をミラーリングして、それを調査関係者が集まっている部屋で確認する方法すら、悩んだものです。

今でこそ、Webサイトの調査も充実し、「アイカメラ」や「マウス・トラッキング」なども活用できるようになりました。そして、User InterfaceやCustomer Experience向上のための調査も増えましたが、かつては調査のインタビューアーもWebサイトのインタビュー経験はなく、自分たちで試行錯誤しつつ、いくつかの調査を実施していました。

次世代に向けて次に私たちに必要なのは、スマートフォンによる、企業サイトへのアクセス方法や、閲覧方法の調査です。お客様が、スマートフォンをどのように使って、情報を探索しているのか?ゲームや他のアプリ内広告を、お客様は、どのように活用し、または思っているのか?このような基本的な調査が重要です。

コトラーの『マーケティング5.0』の中に、デジタル体験による世代の分類があります。実は、スマートフォンの利用は、この世代ごとの特徴がよく表れているかもしれません。
デジタル・マーケティングを、本当に行おうと思うのであれば、アド・テクやデジタル・マーケティングの手法の理解も重要ですが、実はデジタルな生活をしている、お客様の理解も重要なのです。

さて、この話には、続きがあります。 次回のこの連載では、お客様のデジタル空間での情報探索に関して、調査で理解できることを整理したいと思います。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら