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新しいマーケティングのすすめ(37)

「生活者の〇〇シフトは、マーケティングの永遠のテーマ」

生活者のデジタルシフト

この「知るギャラリー」に、「生活者のデジタルシフトはどれだけ進んだ?生活者とメディアの “今”」という記事が公開されています。この10年間のメディアの利用に、どれだけ違いがあるかを説明している記事で、マーケティングのプロモーション領域を担当している方には、有益な情報です。

今回はこのメディアの環境変化ではなく、「シフト」という言葉を取り上げたいと思います。実は、生活者の中に起きている「シフト」を考えると、私たちマーケターに多くのヒントを与えてくれます。特に、Product、つまり「製品開発」や「サービス企画」を行っている方には、「シフト」の理解は重要なテーマです。

「シフト」を日本語にすると

まず、この「シフト」を日本語で言い換えてみましょう。「変化」「転換」「転移」のような言葉が相応しいのでしょうか?

「生活者のデジタルシフトはどれだけ進んだ?生活者とメディアの “今”」では、顧客との接点のデジタル化についての解説でしたが、一般にマーケティングにおけるデジタルシフトを考えるとその範囲は、多岐にわたります。

  • 顧客との接点のデジタル化
     ► ウェブサイト、SNS、アプリなどを通じて顧客と直接つながり、情報発信やコミュニケーションを行う
  • マーケティングツールのデジタル化
     ► デジタル広告、SEO、リスティング広告、マーケティングオートメーションなど、デジタルツールを活用して効率的に顧客獲得や育成を行う
  • データ分析の活用
     ► ウェブサイトアクセスデータや顧客行動データなどを分析し、マーケティング施策の効果測定や改善を行う
  • パーソナライズマーケティング
     ► 顧客一人ひとりのニーズや嗜好に合わせた情報提供やサービスを提供する

などが、該当します。

世の中で起きている「シフト」はもっと広範囲

ところで、私たちマーケターは、世の中の変化に対応するビジネスを行っています。では、マーケティングより広い、世の中で起きているシフトには、どのようなものがあるのでしょうか?

  • 働き方改革シフト
     ► 意味:従来の画一的で長時間労働型の働き方から、個人の能力やライフスタイルに合わせた柔軟な働き方へと転換すること
     ► 例:テレワーク、フレックスタイム制、リモートワーク、副業の推奨など
  • グローバルシフト
     ► 意味:国内市場中心のビジネスから、海外市場への進出や国際的な事業展開を積極的に行うこと
     ► 例:海外への進出、海外企業との提携、グローバル人材の育成など
  • サステナビリティシフト
     ► 意味:企業活動において、環境問題や社会問題への配慮を重視し、持続可能な社会の実現に貢献すること
     ► 例:環境負荷の低減、再生可能エネルギーの利用、地域社会への貢献活動など
  • DXシフト(デジタルトランスフォーメーションシフト)
     ► 意味:デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセス、組織構造など、企業全体を根本的に変革すること
     ► 例:AIやIoTの導入、データ分析の活用、顧客体験の向上など
  • モバイルシフト
     ► 意味:スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末の利用が普及するにつれて、ビジネスや生活においてモバイル端末中心の行動に移行すること
     ► 例: スマホアプリの利用、モバイル決済の普及、モバイル広告の活用など
  • 人工知能シフト
     ► 意味:人工知能 (AI) 技術を活用することで、業務の効率化、新たなサービスの開発、意思決定の支援などを行うこと
     ► 例:AIによる自動運転、AIチャットボットによる顧客対応、AIによるデータ分析など

このように、実は世の中には「シフト」があふれていて、その「シフト」は、マーケティングに大きな影響を与えているのです。

電子レンジに起きた「シフト」

このシフトは、生活の中でも起きています。今回は、「電子レンジ」におきたシフトを考えてみましょう。

皆さんにとって「電子レンジ」の利用目的は何でしょうか?この電子レンジは、料理方法を「シフト」させています。

私の家に「電子レンジ」がやってきたのは、私が中学生の頃でした。タイマーしかついていない、シンプルな電子レンジは、もっぱら私がご飯や、親が作り置きをしてくれたご飯を温める目的で利用していました。つまりこの時の電子レンジは、「温める」目的で利用していました。

ところで、最近「電子レンジ」を、家電販売店で見たことはありますか。2000年代以降、電子レンジは進化し、スチーム機能、オーブン機能、グリル機能などを搭載した複合的な製品が登場しました。これらより、電子レンジで様々な料理が作れるようになり、家庭料理の幅が広がりました。つまり、電子レンジは「料理器具」にシフトしたのです。

さらに直近では、電子レンジがインターネットにつながり、電子レンジを使ったレシピ情報が簡単に手に入るようになり「自動料理器具」になったのです。

ここで重要なのは、電子レンジの機器の進化と一緒に生活者、つまり電子レンジ利用者の電子レンジの利用方法に変化が起きていることです。この生活者の変化が、マーケティングでとても重要な、新製品開発のヒントになります。

実際に、この電子レンジのシフトによって生まれた商品が数多くあります。
・ 電子レンジ用蒸し器
・ 電子レンジ対応のシリコンスチームケース
・ 電子レンジ用蒸し料理キット

特に、電子レンジ用蒸し料理キットは、とてもユニークなカテゴリーで、代表例に味の素の「Steam Me スチーミー」があります。そして、この新製品は、料理器具でもあり、調味料、料理キットでもあります。

このように、世の中や、生活者の「シフト」を理解することは、マーケターにとって重要な仕事です。次回も、この「シフト」について考えてみましょう。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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