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新しいマーケティングのすすめ(53)

AI時代に、ブランド認知は不要になるかも。変わって、重要な、「ブランドコミュニティ・マーケティング」とは。

顧客との関係構築がこれまで以上にブランドの成否を分ける時代になりました。一方的な情報発信では、顧客の心を掴み続けることは難しくなりつつあります。今回と次回の2回にわけて。ファンを巻き込み、共にブランド価値を創造していく「ブランドコミュニティ」について、解説します。SNSのファンとは、すこし異なっています。既存のマーケティング手法との比較、そしてマーケターがコミュニティを理解するために必要な視点を整理します。

ブランドコミュニティ・マーケティングの定義

ブランドコミュニティ・マーケティングとは、ブランドの顧客やファンが自発的に集まり、ブランドを中心に交流し、情報共有や意見交換を行う「ブランドコミュニティ」を形成し、それをブランド側が積極的に支援・育成していくマーケティング手法のことです。単に製品やサービスを提供するだけでなく、顧客がブランドに対して抱く共通の情熱や価値観を共有する場を提供することで、顧客ロイヤルティを深め、ブランド価値を向上させることを目指します。

このコミュニティは、オンラインフォーラム、ソーシャルメディアグループ、オフラインイベント、あるいはそれらを組み合わせた形で存在しえます。重要なのは、ブランド側が一方的に情報を発信するのではなく、顧客同士が互いに繋がり、ブランド体験を共有し、新たな価値を創造していくプロセスが核となる点です。

具体的には、以下のような要素が含まれます。
共通の興味・関心を持つ顧客の集まり
   ○特定のブランドやその製品、サービスに対する強い愛着や共通の価値観を持つ人々が
    自然に集まります。
相互作用と交流
   ○コミュニティ内でメンバー同士が自由に情報交換し、疑問を解決し、経験を共有しま
    す。ブランド側もその交流をサポートします。
ブランドとのエンゲージメントの深化
   ○コミュニティ活動を通じて、顧客はブランドとの心理的な距離を縮め、より深く関与
    するようになります。
共創と価値創造
   ○顧客がブランドに対してアイデアやフィードバックを提供したり、新しい使い方を
    発見したりすることで、ブランド価値の共創に貢献します。
ブランドロイヤルティの向上
   ○コミュニティでの良好な体験は、顧客のブランドに対する忠誠心を高め、長期的な
    関係構築に繋がります。

ブランドコミュニティ・マーケティングは、顧客を単なる「消費者」としてではなく、「ブランドの共創者」として捉え、顧客との長期的な関係性を築くことを目的とした、より人間的なアプローチと言えるでしょう。

今までのブランド・マーケティングと、ブランドコミュニティ・マーケティングの比較

これまでのブランド・マーケティングとブランドコミュニティ・マーケティングでは、その哲学、顧客との関係性、コミュニケーションの方向性において大きな違いがあります。

従来のブランド・マーケティング(一方通行のコミュニケーション)

従来のブランド・マーケティングは、主に「ブランドから顧客へ」という一方通行のコミュニケーションが中心でした。
目的
  ○製品やサービスの認知度向上、販売促進、ブランドイメージの確立
主要な手法
  ○マス広告
   ▪テレビCM、新聞広告、雑誌広告など、広範囲なターゲットに一斉にメッセージを
    届ける。
  ○プロモーション
   ▪セール、クーポン、キャンペーンなど、短期的な購入を促す施策。
  ○広報活動
   ▪メディアへの情報提供、プレスリリースなど、ブランドの露出を増やす。
  ○CRM(顧客関係管理)
   ▪顧客データに基づいたパーソナライズされた情報提供や特典付与。
顧客との関係
  ○機能的価値の提供
   ▪製品の性能、価格、利便性など、実用的な価値の提供が重視される。
  ○購買行動の促進
   ▪顧客を「購買者」として捉え、いかに購入してもらうかに焦点が当てられる。
  ○受動的な受信者
   ▪顧客はブランドからの情報を受動的に受け取る立場。
ブランドの役割
  ○ブランドメッセージの発信者、製品・サービスの提供者。
コミュニケーションの方向性
  ○ブランドから顧客への「プッシュ型」が主流。

従来のマーケティングは、ブランドが主体となって顧客に情報を与え、購買を促すという図式でした。もちろん、これは現代でも非常に重要な手法ですが、消費者の情報収集行動の変化や、ソーシャルメディアの普及により、この一方通行のコミュニケーションだけでは顧客の心を掴み続けることが難しくなってきています。

ブランドコミュニティ・マーケティング(双方向・多方向のコミュニケーションと共創)

一方、ブランドコミュニティ・マーケティングは、顧客を中心とした双方向・多方向のコミュニケーションと、顧客との共創に重きを置きます。
目的
   ○顧客ロイヤルティの深化
    ▪顧客がブランドに深く愛着を持ち、長期的な関係を築く。
   ○ブランドの擁護者育成
    ▪コミュニティメンバーがブランドのファンとなり、自ら情報を発信し、推奨する
     「アンバサダー」となる。
   ○顧客理解の深化
    ▪顧客の生の声、ニーズ、課題をコミュニティから直接吸い上げ、製品開発や
     サービス改善に活かす。    
   ○ブランド価値の共創
    ▪顧客がブランド体験を共有し、新たなアイデアや使い方を生み出す。
主要な手法
   ○オンラインコミュニティプラットフォームの構築・運営
    ▪フォーラム、SNSグループ、専用アプリなど。
   ○オフラインイベントの企画・開催
    ▪ファンミーティング、ワークショップ、ユーザー会など。
   ○ユーザー生成コンテンツ(UGC)の奨励
    ▪顧客によるレビュー、写真、動画の共有を促進。
   ○コミュニティマネージャーの配置
    ▪コミュニティ内の交流を活性化し、メンバーのサポートを行う。
   ○コミュニティメンバーへの特典や優遇
    ▪限定情報、先行アクセス、共同開発への参加機会など。
顧客との関係性
   ○情緒的価値の共有
    ▪ブランドを通じた共感、一体感、自己表現の場を提供する。
   ○共創者としての位置付け
    ▪顧客を単なる購買者ではなく、ブランドの価値を共に創造するパートナー
     として捉える。
   ○能動的な参加者
    ▪顧客はブランドの活動に能動的に参加し、自身の意見や経験を発信する。
ブランドの役割
   ○コミュニティの場と機会を提供するファシリテーター、顧客の意見に耳を傾ける
    聞き手。
コミュニケーションの方向性
   ○双方向
    ▪ブランドと顧客の間で意見交換が活発に行われる。
   ○多方向
    ▪顧客同士の交流が活発に行われ、情報や知見が共有される。

項目従来のブランド・マーケティングブランドコミュニティ・マーケティング
コミュニケーション一方通行(ブランド→顧客)双方向・多方向(ブランド⇔顧客、顧客⇔顧客)
顧客の捉え方購買者、消費者共創者、パートナー、ファン
目的認知度向上、販売促進ロイヤルティ深化、エンゲージメント、共創
主な価値機能的価値機能的価値に加え、情緒的価値、社会的価値
ブランドの役割発信者、提供者ファシリテーター、聞き手
長期・短期短期的な成果も重視長期的な関係構築が主眼

まとめると、ブランドコミュニティ・マーケティングは、従来の「売る」という行為だけでなく、「繋がる」「共創する」「育てる」という側面を重視する、より長期的で人間中心のマーケティングアプローチと言えるでしょう。顧客との関係性が深まることで、結果的に購買行動にも良い影響を与え、持続可能なブランド成長に繋がると考えられています。

(後編に続く)

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。u003cbr /u003e2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。u003cbr /u003e2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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