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新しいマーケティングのすすめ(54)

AI時代に、ブランド認知は不要になるかも。変わって、重要な、「ブランドコミュニティ・マーケティング」とは。【後編】

(前編からの続き)

前編では、ブランドコミュニティ・マーケティングの概念と、従来のマーケティングとの違いを解説しました。後編では、マーケターがブランドコミュニティ・マーケティングを実践する上で、コミュニティを理解するために必要な視点を掘り下げていきます。

マーケターが、ブランドコミュニティ・マーケティングを行うときに必要な、コミュニティ理解に必要なこと

ブランドコミュニティ・マーケティングを成功させるためには、単にコミュニティプラットフォームを立ち上げるだけでなく、そのコミュニティを構成する「人々」と、彼らが持つ「文化」を深く理解することが不可欠です。コミュニティは生き物であり、画一的なアプローチでは決して成功しません。マーケターがコミュニティ理解のために意識すべき重要な点を以下に解説します。

コミュニティの「核」となる共通の関心事と価値観を特定する

ブランドコミュニティが形成される根底には、メンバーが共有する特定の興味・関心や価値観が存在します。これは、製品そのものへの愛着だけでなく、その製品が提供するライフスタイル、理念、解決する課題など、より抽象的なレベルで共有されることもあります。
なぜ彼らはブランドに惹かれるのか?
   ○製品の機能性だけでなく、ブランドの哲学、ストーリー、社会的貢献などに共感して
    いる可能性を探る。
彼らが共有したい経験とは何か?
   ○ブランドを通じて得られる特別な体験や、それによって生じる感情を理解する。
コミュニティが提供する「所属感」とは?
   ○同じ志を持つ人々との繋がりや、情報交換を通じて得られる安心感、喜びを把握する。

例えば、アウトドアブランドのコミュニティであれば、「自然を愛する心」「冒険への情熱」「環境保護への意識」などが共通の価値観として存在しえます。カメラブランドであれば、「写真表現への探求心」「技術へのこだわり」「作品を共有したい欲求」などが挙げられるでしょう。これらの核となる要素を理解し、コミュニティのテーマとして明確にすることが、メンバーが共感し、参加し続けるための土台となります。

メンバーのニーズと動機を深く理解する

コミュニティメンバーがなぜ参加するのか、何を得たいのか、どのような課題を抱えているのかを深く理解することが重要です。彼らのニーズや動機は多様であり、表面的な欲求だけでなく、潜在的な欲求にも目を向ける必要があります。
情報収集と知識共有のニーズ
   ○特定の製品の使い方、トラブルシューティング、最新情報など、具体的な情報を求めて
    いる。
問題解決のニーズ
   ○他のメンバーの経験談やアドバイスを通じて、自身の課題を解決したい。
承認欲求と自己表現の場
   ○自身の成果や経験を共有し、他者から認められたい。
交流と友情のニーズ
   ○同じ興味を持つ人々と繋がり、共感を得たい。
貢献欲求
   ○ブランドや他のメンバーのために何か貢献したい、という意欲。
限定的なアクセスや優遇への期待
   ○ブランドからの特別な情報やイベント参加権、共同開発への参加などを期待している。

これらのニーズを理解することで、コミュニティで提供すべきコンテンツや機能、イベントの方向性が見えてきます。例えば、情報収集のニーズが高いコミュニティであれば、Q&A機能や専門家による解説コンテンツが有効でしょう。自己表現のニーズが高いコミュニティであれば、UGCの投稿を奨励するコンテストやギャラリー機能が効果的です。

コミュニティの「文化」と「行動規範」を把握する

コミュニティには、明文化されていなくても、暗黙のルールや共有された行動規範、独特の文化が存在します。これを理解せず、ブランド側が一方的に介入しようとすると、コミュニティの活性化を阻害したり、反発を招いたりする可能性があります。
コミュニケーションのスタイル
   ○フランクな会話が許されるのか、丁寧な言葉遣いが求められるのか。スラングや専門
    用語の有無。
情報の共有方法
   ○どのような情報が価値あるとされ、どのように共有されるのが適切か。
対立や意見の相違への対処方法
   ○議論が起きた際の解決メカニズム。
インフルエンサーやキーパーソンの存在
   ○コミュニティ内で影響力を持つ人物や、非公式なリーダーがいるか。彼らがどのような
    役割を果たしているか。
コミュニティの暗黙のルール
   ○「荒らし」行為に対する反応、新規メンバーへの接し方など。

コミュニティの文化は、そのコミュニティの歴史やメンバー構成によって形成されます。最初は観察者としてコミュニティに参加し、積極的に発言せずとも、その空気感や流れを肌で感じることが重要です。コミュニティマネージャーは、この文化を理解し、尊重しながら、必要に応じて健全な方向へ導く役割を担います。

コミュニティの「成長段階」を考慮する

コミュニティは、形成期、成長期、成熟期など、様々な成長段階を経ます。それぞれの段階で、メンバーのニーズやブランドが取るべきアプローチは異なります。
形成期
   ○最初のメンバーを集め、コミュニティの核となるテーマを確立する段階。ブランド側が
    積極的に働きかけ、初期の交流を促進する必要がある。
成長期
   ○メンバー数が増加し、交流が活発化する段階。メンバー間の相互作用を促す仕組みや
    コンテンツを提供し、コミュニティの拡大をサポートする。
成熟期
   ○コミュニティが安定し、自律的に機能する段階。ブランドは裏方に回り、メンバー間の
    交流を尊重しつつ、定期的な刺激や新しい体験を提供することで、コミュニティのマン
    ネリ化を防ぐ。

コミュニティの段階に合わせて、マーケティング戦略やコミュニティマネジメントのアプローチを柔軟に変えることが成功の鍵となります。

データと定性情報の両面から分析する

コミュニティ理解には、定量的なデータ分析と、定性的な情報収集の両方が不可欠です。
定量データ
  ○アクティブユーザー数
   ▪コミュニティに積極的に参加しているメンバーの割合。
  ○エンゲージメント率
   ▪投稿数、コメント数、リアクション数など、メンバーの活動量。
  ○コンテンツの閲覧数
   ▪どのようなコンテンツがよく読まれているか。
  ○滞在時間
   ▪コミュニティに費やす時間。
  ○新規メンバーの獲得数と定着率
   ▪コミュニティの成長と健全性を示す指標。 これらのデータから、コミュニティの活発さ
    やメンバーの関心事を客観的に把握できます。


定性情報
  ○投稿内容の分析
   ▪メンバーがどのようなトピックについて話し、どのような感情を抱いているのか。
  ○コメントやメッセージの分析
   ▪メンバー間のコミュニケーションの質や深さ。
  ○アンケートやインタビュー
   ▪メンバーから直接意見やフィードバックを収集する。
  ○コミュニティマネージャーによる観察
   ▪メンバーの雰囲気、非言語的なサイン、隠れたニーズなどを把握。 定性情報は、定量
    データだけでは見えないメンバーの感情、モチベーション、コミュニティの文化を深く
    理解するために重要です。

共感と信頼を築く「人間的な」アプローチ

最も重要なのは、ブランドがコミュニティのメンバーに対して、共感と信頼を持って接することです。ブランド側は、単なるビジネス上の関係としてではなく、コミュニティの一員として、メンバーの意見に真摯に耳を傾け、尊重する姿勢を示す必要があります。
透明性
  ○コミュニティ運営の方針やブランドの意図を明確にし、誠実な情報開示を心がける。
応答性
  ○メンバーからの質問やフィードバックに対して、迅速かつ丁寧に対応する。
感謝の気持ち
  ○メンバーの貢献や活動に対して、積極的に感謝の意を示す。
人間性
  ○AIや自動応答に頼りすぎず、コミュニティマネージャーが人間としてメンバーと交流
   する。
間違いを認め、改善する姿勢
  ○万が一問題が発生した際や、メンバーからの批判があった際には、それを認め、改善に
   努める姿勢を見せる。

コミュニティは「人」によって成り立っています。マーケターは、この「人」を理解し、尊重することで、単なるマーケティング施策を超えた、真のブランド愛とロイヤルティを育むことができるでしょう。

ブランドコミュニティ・マーケティングは、短期的な売上増加だけでなく、長期的なブランド価値の向上と持続的な成長を実現するための強力な手法です。そのためには、顧客を単なる消費者としてではなく、ブランドの共創者として捉え、彼らが集うコミュニティを深く理解し、育んでいく姿勢が不可欠です。時間と労力はかかりますが、それに見合う、あるいはそれ以上の価値をブランドにもたらす可能性を秘めています。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。u003cbr /u003e2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。u003cbr /u003e2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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