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生活者インデックスデータ

新しいマーケティングのすすめ(8)

マーケティングにおける調査部門の新しい役割を考えてみよう

突然ですが、2021年10月の「インテージフォーラム」に参加された方はいらっしゃいますでしょうか。このフォーラムはマーケティングに関する良質な講演が多いのですが、その中でも、「データからビジネスストーリーを紡ぎ、既存事業のマーケティング計画策定に貢献する~ハウス食品お客様生活研究部との「成長機会探索プロジェクト」の事例から~」のハウス食品グループ本社株式会社 お客様生活研究部 部長 西岡 徹夫さんのお話に、私は大変多くの影響を受けました。

マーケティングの調査に関する部門が、既存事業のマーケティング計画策定に関与するというプロジェクトのご説明でした。

-新商品を出したいので、市場のニーズを調べて欲しい。
-新しい広告をテレビで放映するので、事前に広告のクリエィティブの妥当性を調べて欲しい。

多くの調査の部門ではこのような「欲しい」という委託を受け、「この調査に意味あるのか?」という「疑問」の塊を抱えながら、ある意味、社内の受託・委託仕事として、調査のオペレーションを行ってはいるのではないでしょうか?

私たちの向き合うマーケティングという仕事が順風満帆な状態で、また市場の変化がなければ、マーケティングのそれぞれの業務はバケツ・リレー方式で、それぞれの業務プロセスを行えば問題ありません。

しかし皆さんもお気づきのように、現在マーケティングの仕事は嵐の真ん中にいます。嵐という言葉を使いたくなければ、Game Changeという言葉でも良いでしょう。このような時期は業務プロセス自身も見直す必要があります。そんな中で、上述のハウス食品グループ本社の西岡氏のお話は、調査部門のあり方自体をChangeするチャレンジの事例として感銘を受けたのです。

せっかくですので、ここから数回、“マーケティングの調査部門での業務に関する再定義”や“受け身から提案型業務への転換”について議論してみたいと思います。

BestBuyのコロナ禍のマーケティング事例

私はインテージフォーラム同様に、多くのカンファレンスやイベントに参加したり、参加した方からお話を伺ったりします。去年参加したイベントの一つ、SXSW(サウスバイサウスウェスト)の中から、マーケティングの調査に関する事例を紹介したいと思います。

事例は、アメリカBestBuyのカーブサイドピックアップという取り組みです。詳細はBestBuyの動画がYouTube(https://www.youtube.com/watch?v=LeZL6lVtJtw)に公開されているので、これを見て頂くと、よりこれからの話がわかりやすくなると思います。

2020年、コロナ禍になりアメリカの小売流通店の来客は減少していました。これはBestBuyという、アメリカの家電量販店でも同じでした。そんな中、BestBuyは従業員のためにも訪れる数少ない来店者のためにも、お店を開店し続けました。しかし、人事部からある大きな課題が提起されます。「お店のスタッフのメンタル・ヘルスは大丈夫か?」という課題です。

―お店のスタッフは、お店でお客さまと会いたいのに会えない。
―お客さまも家電の買い物をしたいが、混雑しているかもしれないお店には行きたくない。

このような議論がBestBuyの中で討議され続けた中で、従業員満足度調査の中から読み取った人事部の提案により生まれたお客さまへのサービスが「カーブサイドピックアップ」です。お客さまは事前に欲しい商品をモバイルのアプリから申し込みます。商品の準備ができたら、お客さまには駐車場の位置の情報が伝えられます。そして、車が駐車場に来たら店員が商品を持って行き、駐車場で接客します。ここでのポイントは“接客”です。駐車場は単なる商品の受け渡し場所ではなく、あくまでお店とお客さまのコミュニケーションの場なのです。商品の説明や、よりお客さまのニーズに近い商品があれば、その商品に変更することもできます。

この事例には多くの学びがあります。マーケティングは全社で取り組む必要があるということ。そして、実はマーケティングのためのデータは、お客さま、競合のデータに加え、従業員のデータも必要なこと。そして、ここで開発された手法はコロナ禍のサービスではなく、コロナ後でも使えるマーケティング・サービスになっていることです。

今までの調査は、3CではWithout Company

マーケティングの調査部門について議論をする上で重要なのは、私がこの文章中「マーケティングの調査部門」と書いている点かもしれません。多くの企業では、実に多くの調査が行われています。従業員の会社に対する満足度調査や、個人情報など法規に関する運用の実態把握の調査、会社によっては、会社の事業目標の理解に関する調査などです。

その調査は、人事部門、法務部門、情報システム部門、経営企画部門など、数多くの部門が主体となって行っているかと思います。そして、マーケティングの調査を行なっている部門の皆さんは、調査票や質問票の質の悪さを気にしながら、一従業員として回答しているはずです。

このことは企業における“部門の壁”から起きている事象です。調査を行う部門が多数存在している中、そこで行われる調査は“目的”や“求められる精度”が異なります。

この読者の多くの方が所属している調査部門は、マーケティングに関する調査の担当ですので、全ての調査を担当しているわけではありません。しかし、会社の中では、事業や経営に直結する調査を行っており、調査について高い専門性を保有する部門でもあります。したがって、皆さんがお持ちの調査のノウハウや知見を少しでも社内に伝えていくことで、社内調査の質が高くなり、そこで得られたデータの価値が高いことの認知が広がり、結果として調査自体が有益に活用されるようになると思います。

皆さんもご存知の3C

皆さんもご存じであろう3C。マーケティングにおける重要なフレームワークですが、マーケティング関する調査は、このうちCompetitor(競合)とCustomer(お客さま)に集中していないでしょうか。補足すると、Company (会社)については、商品やサービスといった会社から生み出しているものの調査は行っているでしょう。しかし、Companyの人の調査はほとんど行っていないのではないでしょうか?

単純な質問をします。

ある商品を、お客さまに「欲しいか、欲しくないか」を聞いています。
市場データや過去のデータから、競合がこのような商品を「出すか、出さないか」は議論すると思います。では、従業員がこの商品を「売りたいか、売りたくないか」は確認しているのでしょうか?おそらくされてないと思います。3Cの中で、Companyに関する調査や議論が手薄になっているのです。

今回のBestBuyの事例は、従業員理解によるマーケティングの実践事例です。そして何より、従業員が行いたいことを行う場合は、マーケティングの成功確率が高くなります。このBestBuyのアプローチも、一つの新しいマーケティングの型なのでしょう。

自社の調査には、事業のヒントが多いかもしれない

今回の私の提案は、マーケティングに関する調査部門が社内の調査に関与してみること。そして、会社の中で、自社のために行われている調査データも、マーケティングの調査部門がアクセス可能な状態にするということです。

今までのマーケティングは、「製品」「サービス」の質の依存度が高いという前提で行ってきました。しかし、冷静に考えると、そのマーケティングを実行している人の状態も、マーケティングを成功するかに影響を与えている可能性があるのです。

BestBuyでは人事部がそのことに気づき、新しいマーケティングを提案しました。しかしながら、日本の人事部は従業員の状況について十分に観察できているとは言えません。

わかりやすい事例を述べます。今、多くの企業がテレワークに取り組んでいます。しかし、在宅の勤務環境を把握していたり、メンタルヘルスの相談を積極的に行っている人事部門のことは、あまり聞きません。従業員の生産性は、会社の経営にとっては重要な因子なはずなのですが。

このような状況も合わせて考えると、マーケティングに関する調査部門は、もっと会社の中で存在感を表すこともできるでしょうし、会社を支援できることがたくさんあるのだと思います。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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