若者にも聞いてみた・・・“あなたにとっての理想の老後のすまい方は?”
人生100年時代構想が進む現在、定年後10万時間問題や老後資金2,000万円問題などが様々なメディアで取り沙汰されており、見えない将来について多くの人が不安を抱えています。
さらにコロナパンデミックのような未曾有の事態を経験した現代人にとって、早期に計画的なライフプランを考えることが今後より重要になると想定されます。
インテージでは、幅広い年代の方に老後のすまい方を聴取する自主企画調査を実施、世代間による認識の違いや、ニーズの違いを明らかにしました。この記事では、調査結果の一部をご紹介します。
老後は何歳から?年代によって異なる「老後」の捉え方
図表1は、「あなたにとって、老後とは何歳からですか?」と聞いた結果を年代別に比較したものです。
図表1
回答者全体でみると、「65歳以降~」が老後の開始年齢と回答する方が37%で、最も多い層となりました。定年後かつ年金受給の開始となる方が多くなることから、“働いて生活費を稼ぐ”という経済活動からの引退も大きく影響していると思われます。
「老後」年齢の捉え方は年代によって異なっています。若い世代ほど「60歳以降~」を老後と考える人の割合が高くなっていました。これは、現在多くの企業がシニア割引などを「60歳以降」としているために、イメージが先行しているためと考えられます。
一方で、「60歳以降~」の身体面や活力などの心理面を実際に体験している60代では「70歳以降~」の回答が最も高く、「80歳以降~」という回答も多くみられました。「今ではなく先の話」と考えられている層が過半数という結果になっています。
平均所得や将来受給年金額の減少から経済活動引退が先送りとなりそうな今後、多くの人にとって老後を自覚する年齢が高齢化する可能性は大いにありそうです。
老後を意識するのはいつから?
老後についてどの程度考えているかの問いに対しては、年齢が上がるほど「考えている」人の割合が増加しています。(図表2)
図表2
ただ、「老後について気になっている・考えている」20代は53%と過半数を超えており、若年層でも老後について関心を持っていることがわかります。一方で「老後について考えていない」と回答した60代も16%存在し、老後を自分ごととして捉えるかどうかは年代だけでなく個人の感覚の差があることが分かります。そこで、続く質問では「老後についてどの程度準備できていますか?」を伺いました。(図表3)
図表3
「老後について準備は完全である」と自信をもって回答できる方は全世代でも2%に満たず、60代の方でも「ある程度できている」と回答した方は40%程度にとどまっています。様々な要因で十分な老後の準備ができていると回答することは難しいものの、リアルな老後が近づいている50-60代が「ある程度できている」と回答できる社会福祉制度の充実や、民間による新たなサービスの展開が求められます。
「理想の老後のすまい方」を実現するために大事なものとは?
「あなたにとっての理想の老後のすまい方は?」という設問に対しては、どの年代でも「のんびり生きたい」、「人に迷惑かけない」、「健康第一」、「家族時間を大切に」といった精神面で安定性を求めるような傾向が強く出ました。(図表4)
年代による特徴としては、20代では「趣味優先の生活」、30代では「パートナーと仲良く」、40代以降は「堅実な生活」が上位5位内に挙げられ、自分中心の価値観から変化が起きている様子が伺えます。
図表4
続いて、「あなたが想う理想の老後のすまい方は実現すると思いますか?」という問いに対して、「実現できると思う」と回答したのは60代が最多で20%強、そのほかの年代は10%程度に留まりました。(図表5)
図表5
どの年代も、約半数が「部分的には実現できると思う」と回答しています。部分的な実現で満足という人も一定は存在すると想定されますが、目指す実現度合いは人により意見が分かれそうです。現時点で考える老後を「ワンランクアップ」するには、どの部分が実現できないと思っているのかを整理し、そのニーズやウォンツに注目することが新たなビジネスにつながるのではないでしょうか。
最後に「理想の老後のすまい方を実現するのに必要な要素Top3は?」という質問への回答をスコアリング(上位から3点、2点、1点を付与)し、年代ごとのスコア分布を算出したところ、全世代で「健康な体」、「お金(金融資産)」、「夫、妻、パートナー」となりました。(図表6)
図表6
「健康な体」のスコアは年齢とともに上昇し、全体として上位に入らなかった「趣味」、「友人」は若干ですが20代の方が高い傾向にあります。
健康を維持するための予防処置に投資を惜しまない若い世代が今後より増える可能性を感じさせる結果となりました。
すまい方の価値観で変わる、老後との向き合い方
ここまで年代別の老後のすまい方に関する調査結果をご紹介してきましたが、老後のライフスタイル嗜好性を左右するのは年代要因のみならず、「すまい方に関する価値観」に大きく影響を受けるはずとの仮説から、「すまい方に関する価値観」を軸としたセグメンテーションを行い、アンケート対象者を5つのグループに分類しました。
分類した結果が図表7です。
図表7
『前のめりプロアクティブ』さん: 何歳になってもヒト・コミュニティとのつながりを求めて、多種多様なアクティビティに参画する、情報感度の高い層 『家族想いロールモデル』さん: 家族との時間を重要視し、物事の判断基準も家族中心で考えるファミリー層 『もういいから好きにさせて』さん: 自分時間を優先的に考え、周囲とのつながりよりも趣味に没頭できる環境を重視する層 『さとりの自然派』さん: 家族や友人との繋がりは大事だけど各自の意思も尊重し、住環境は適度に街で緑の多いエリアを好む現実的で飾らない層 『無関心』さん: 周囲との関係性や自分、家族の将来などについて意思が弱く、流動的に過ごしている層 |
それぞれの「理想の老後のすまい方」を比べてみると、『前のめりプロアクティブ』さんは36.5%が「2~3か所の決まった場所を行き来したい」「住む場所を転々としたい」と定住にこだわらない人が多いのに対し、ほかの層は20%程度に留まりました。この層は老後に向け、バケーションホテルのサブスクリプションや移動先で受診できるオンライン診療等の利用を検討し始める可能性が高そうです。
『前のめりプロアクティブ』さんは、老後について早くから考えているという傾向も見られています。すまい方の価値観によって、老後の捉え方や備え方が変わる様子がうかがえます。
20代でも半数が老後を意識する時代、商品・サービスの購入や利用を検討する際に、「長い人生の中で本当に必要か?」といった長期的視点が含まれている可能性を示唆する結果となりました。「価値観に合った老後を迎えられそう」と感じられる商品・サービスとの出会いは、世代を選ばず価値ある体験となりそうです。
この記事で紹介した調査データは以下よりダウンロードいただけます。
今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:日本全国
対象者条件:20-69歳の男女、エリア・性年代・未既婚構成比は人口統計にあわせて回収
標本抽出方法:弊社保有パネルへアンケート配信
標本サイズ:n=1,023(男性512、女性511)
調査実施時期: 2021/2/24~2021/2/26
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