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産学連携生活者研究プロジェクトで生活者理解を深める④~アカデミックな視点から生活者を理解してみる

インテージ 生活者研究センターが中心になって部署およびグループ横断で取り組んでいる「産学連携生活者研究プロジェクト」について、4 回に分けてお届けしているこのシリーズ。最終回は、生活者研究センターの小林 春佳がプロジェクトで実施している「有識者・実務者による講演会」を振り返ります。

1.有識者を招いた講演会の狙い

産学連携生活者研究プロジェクトでは、4つの骨格を作り、活動をスタートしました。

①類似するマーケティング課題を持つ企業を業界・業種を問わず集める。
 異業種であればなお良し。
②マーケティングを学ぶ大学生(Z世代!)を集める。
 エリア特性を考慮し大学も広く全国に集う。
③研究者や有識者の知識や、実務者の実務的な知識や経験から得られる「学び」を織り込む。
④参加企業、大学・学生はオープンフラットな関係を構築し、「創発・共創の舞台」として活動する。

3つめの「研究者や有識者の知識や、実務者の実務的な知識や経験から得られる「学び」を織り込む」を狙った取り組みが、「有識者・実務者による講演会」です。
社会人になると、学生時代では当たり前だった「インプットの機会」は少なくなり、自ら機会を作らないとなかなか情報を得ることが難しいと感じます。また、インプットの機会も、書籍やeラーニングのような一方向のコミュニケーションが中心になりがちです。

産学連携生活者研究プロジェクトにおいて私達が考える「学び」とは、学生とのワークショップや参画企業間の対話を通じて知見を「獲得」した後、有識者やプロジェクト参加者との双方向コミュニケーションにより「深化」させ、自社に持ち帰ってあらためて振り返ったり他のメンバーに「拡散」したりすることでナレッジを深め「蓄積」することです。

有識者・実務者による講演では、前半をインプットのパートとし、後半は双方向コミュニケーションを行うようにしています。現在抱えている課題や疑問を共通のテーマとして対話することで、有識者からの新たな着想が解決の糸口の発見やアイデアの創出に寄与し、「学び」をより深めることができます。

ここからは、これまでの講演会のエッセンスを一部ですがお届けしたいと思います。

2.第一回講演会 「新しい消費の兆し」

日程:2023年1月25日(水)16:00~17:30(第一クールでの活動)
目的:マーケティング課題の一つである「消費者行動の多様化」において、新たな消費スタイルの一つであるリキッド消費を理解する

プログラム構成:

第一クールの共通テーマとして着目した「リキッド消費」について、青山学院大学の久保田先生をお招きしてご講演いただきました。この講演では、久保田先生の研究を基にリキッド消費とは何か、具体的な事例を踏まえながら解説頂きました。

また、リキッド消費を正しく捉えるための重要な要素を上げていただきました。
・リキッド消費は、消費者の価値観や行動の変化であり、実際に生じている「シェアリング」や「サブスクリプション」などはその一部でしかない
・リキッド消費は、従来の消費からの拡がりであり、従来のソリッド消費からのシフトではなく、かつ明確に分けることができない
・若年層にリキッド消費傾向の強い人が多いが、他世代にも存在し、Z世代に固有の現象ではない
定量調査を読み解く前に参加者で理解を深めることができました。

この会では、2001年生まれの現役Z世代であり、SNS総合プロモーション事業に携わっている株式会社memeの三吉康貴様にも、「企業はSNSとどう向き合っていくのか?」と題して、SNSプロモーションについて実務者の立場でお話を頂きました。ご自身もインフルエンサーという立場から、各SNSのアルゴリズムやコンテンツなどの特徴を分析した結果に基づく投稿のコツを説明されました。社会性の高いコンテンツとインフルエンサーとの関係として「ギフティングマーケティング」については、インフルエンサーであるご自身と食品関連団体と一緒に取り組んだ経験を披露しながらわかりやすく解説されました。

3.第二回講演会 ソーシャルメディア活用術

日程:2023年9月5日(火) 15:00-16:30(第一クールでの活動)
目的:ソーシャルメディアを効果的にマーケティング活用するための知見獲得

プログラム構成:

後日予定していた大学機関ディスカッションで直接大学生と議論するテーマとして「ソーシャルメディアをどう活用すべきか」という課題が複数社から挙げられていたことから、ソーシャルメディアをご研究されている国際大学の山口先生をお招きして、エビデンスに基づくソーシャルメディアの基礎知識の解説とアカデミアの立場からソーシャルメディアとの付き合い方についてご意見を伺いました。

山口先生は、「ソーシャルメディアの効果的活用をするための基礎知識」と題して、ソーシャルメディア・マーケティングの国内外の複数の事例とともに、それらのマーケティング効果と活用方法を説明されました。一方でネット上のクチコミや炎上が一部の消費者の声であり、世論を反映していないことを先生の研究から解説されました。ソーシャルメディア・マーケティング成功のための一つの手段として、「愛されるアカウント」の事例をいくつか挙げられたほか、インフルエンサーと連携した「インフルエンサー・マーケティング」の有効性が紹介されました。

実務者として、ご登壇いただいた株式会社WUの水上陽介様は、マイナビティーンに長らく勤め、渋谷109の催事スペースを使ったグッズ販売イベントを担当し、年間数十人のYouTuberやVTuberとコラボレーションをしてきた経験を持ちます。2023年に独立し、クリエイターのマネジメント業務をはじめ、ファン向けイベントの開催やグッズ制作を行っています。
ご経験の中からYouTuber・クリエイターと言っても様々なジャンルがあり、ファンの熱量もジャンルにより偏りがあることを説明いただきました。また、SNSマーケティングで連携する場合、数百万人のフォロワーがいる人と連携することで「マス」にアプローチできると思われがちですが、「購買」への効果が低いといいます。フォロワーの中でもアクティブユーザー(熱量の高いフォロワー)を見極めていくことが重要で、コメント・リポスト(旧Twitterの場合、RT)・いいねの優先順位でチェックすることが重要であることを、事例と共にお話されました。

4.まとめ

参加者からの個別具体的な課題に対して、有識者からアカデミックな視点で先行研究や企業の有益な事例に基づいた見解が示され、加えて実務者からは経験や実績の共有や具体的な打ち手のアイデアなどが提示されるようなやり取りが多くみられました。普段は交わりを持つことが珍しい有識者と実務者ですが、有識者の理論を体現されている事例も多く、お互いに「学び」に繋がる部分があったと言っていただき、活発な会合となりました。最後のディスカッションでは、登壇者・傾聴者という垣根が取り除かれ、参加者全員で考える知識を深化させる機会となりました。

5.一人でする旅よりも一緒に旅をしよう

「旅は道連れ世は情け」私が幼いころ、よく父にこの言葉をかけられ、いろいろなところに連れまわしてもらったことを思い出しました。改めて大人になってこの言葉を辞書で引くと、「一人で旅をするよりも、誰かと一緒に旅をすると助け合えたり、心の支えとなったりと心強い様」と書かれていて、まさにこのプロジェクトにしっくりくる言葉だと思います。もし、この記事を読まれ、自社だけでは解決できないような課題や同じ悩みを抱える仲間を探したいと考えている方がいらっしゃれば、お気軽にインテージに相談いただければと思います。

1クールあたり約6ヶ月を活動期間としている本プロジェクト。お陰様で第一クール、第二クールを終え、そして現在第三クールをスタートすることができました。これもひとえに参画いただきました企業、研究者・学生、実務者のみなさま、そして、第三クールに参加いただいているみなさまのおかげです。心からの感謝をお伝えいたします。本当にありがとうございました。リサーチや研究は、続けていくことで価値が蓄積されると思います。このユニークなリサーチの「舞台」で「ミライを遠望するため」に、今後も皆様に活用いただけますように尽力して参ります。また、今回の連載のように広く情報も発信していきたいと思いますので、今後もぜひご覧いただけますと幸いです。


久保田先生は、先日2023年11月7日に「Z世代のリキッド消費を徹底分析!」セミナーでも同様のお話をされています。聴講者アンケートでも非常に高い満足度となっていた本セミナーはマナビヤインテージでも視聴できますのでご関心のある方は、ぜひ視聴ください。(事前登録が必要となります。)

アーカイブ配信“マナビヤインテージ” https://seminar.intage.co.jp/
Z世代のリキッド消費を徹底分析!https://seminar.intage.co.jp/campaign/62027/apply


インテージ内では、ナレッジの蓄積として、現場課題に応じて技術活用支援の社内セミナーを定期的に開催しています。本講演でも社内セミナーのノウハウを活用してアレンジしました。  
インテージR&DセンターHP:https://www.intageholdings.co.jp/rd/blog/academicprograms/contents202106010000.html

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