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求められるEV推進 環境意識はクルマ選びにどう影響する?

※この記事は、日刊自動車新聞の“インテージ生活者インサイト”コーナーにインテージのアナリスト秋谷祐二が寄稿した連載を再構成したものです。

2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、脱炭素が最大の課題となっています。この課題の解決には、各国政府や企業側の取り組みだけでなく、家庭部門としての生活者の行動変容が不可欠です。生活者が環境に良いものを進んで買うことで、企業と生活者の間で循環する活動として環境行動が位置付けられていくことが期待されます。

以前、「サステナブルセグメントから見る環境意識と行動~自動車の場合~」という記事でも紹介しましたが、インテージでは、この生活者の環境行動の変化を観測すべく「サステナブル行動セグメント」という指標を開発しました。サステナブルな行動をどの程度行っているかをアンケートで聴取することで、行動レベルに応じて生活者を【とても高い】【高い】【どちらでもない】【低い】の4つに分類したものです。

この記事では、「サステナブル行動セグメント」を用いて、生活者のサステナブル行動レベルの変化や、脱炭素に向けて行動変容が必須とされる自動車の購買行動とサステナブル行動の関係性を読み解きます。

サステナブルな行動」をとる生活者は増えず

サステナブル行動セグメントの構成割合を今回の2022年10月調査と前回の2021年11月調査とで比較すると、サステナブル行動を積極的にとる(【とても高い】+【高い】)層が、前回は合計で42.1%の構成比でしたが、今回は37.4%となり、4.7ポイント減少していることがわかりました(図表1)。

図表1

サステナブル行動セグメントの構成割合の推移

この変化を、回答者の年代別にみると、特に30代で構成比が大きく下がっていました(図表2)。

図表2

行動レベルが低下する中、自動車購入に対する考え方には変化はあるのでしょうか。「自家用車を次回購入する時に何を重視するか」という質問への回答を、前回調査と比較すると、「地球環境への配慮(走行時に排出されるCO2量等)」という回答が、昨年の14.1%から8.0%へ6.1ポイント低下していました。特に、20代と30代で7ポイント低下して今回調査では両年代とも4%台と、全体平均の8.0%をだいぶ下回っています。

30代の自家用車購入時重視点では「地球環境への配慮」が昨年より低下した一方で、「室内・荷室の使いやすさ」、「車両価格」、「外装・デザイン」、「運転のしやすさ」などが伸びていました。地球環境への配慮よりも、より日常生活での使いやすさや購入コストに目が向いているようです。

脱炭素やSDGsのムーブメントの中で、生活者のサステナブル行動レベルは年々向上していくものと想定していました。しかし、生活者の環境行動度が一律に向上する訳ではなく、低下することもある、ということが今回の調査結果から浮かび上がりました。

とはいえ、サステナブル行動セグメント(【とても高い】+【高い】)層は、今回の調査でも37.4%という高い構成比で存在しており、この層をターゲットとしたマーケティング戦略が、大きな効果をもたらすことが期待できます。次章ではこのサステナブル行動を積極的にとる生活者が、クルマに対してどんな意識・ニーズを持っているのかを明らかにします。

サステナブル行動レベルが低い層でもEVの購入意向が増加

図表3はエンジンタイプ別の購入意向の前回調査からの変化です。1年前と比べ、「電気自動車(EV)」の購入意向が増加し、ガソリン車とハイブリッド車の購入意向が減少していました。

図表3

このEVの購入意向をどのような層が支えているのかを、サステナブル行動セグメント別に見たのが図表4です。

図表4

サステナブル行動セグメント別の次回購入意向車のエンジンタイプ(複数回答)

サステナブル行動レベルが(【とても高い】+【高い】)層では「EV」と「プラグインハイブリッド車」の検討意向が高くなっています。【とても高い】では、さらに「燃料電池自動車」も他層と比べて高くなります。この傾向は前回2021年11月に行った調査でも同様でした。

この結果を、前回調査からの変化で見てみましょう(図表5)。

図表5

サステナブル行動セグメント別の次回購入意向車のエンジンタイプの前回との差分(複数回答)

この表中の値は、今回の回答比率から前回の回答比率を引いた差分を表しています。「EV」の購入意向は、【とても高い】層では前回と変化はなく、【高い】【どちらでもない】【低い】層で大きく上昇していることがわかります。

このサステナブル行動の度合いによって、EVに感じる魅力は異なるのでしょうか。EV購入意向ありと回答した人に絞って、サステナブル行動セグメント別にEVの魅力点の回答を見たところ、【高い】【どちらでもない】【低い】層共に、魅力点の上位3位までは「購入時の補助金」、「減税の適用」、「ランニングコストが安い」が占め、経済性が重視されていました。これに対して、【とても高い】層では、「再生可能エネルギーで発電した電力で充電すれば、CO2の排出をより抑制できる」がEVの魅力点のトップとなっていたのが特徴的でした。

比較的サステナブル行動の度合いが低い層で、EVの経済性に魅力を感じて購入意向が大きく上昇しているところに、EV購入意向層が広がっていく予兆が感じられます。

EV購入意向者の重視ポイントは、より実用性重視に

続いて、EVの購入意向者が、次に自動車を購入する際にどのようなことを重視しようと考えているのかを見てみました(図表6)。

図表6

サステナブル行動セグメント別の次回自家用車購入時の重要ポイント(EV購入意向車ベース)

14個の選択肢を提示したところ、EV購入意向者全体の回答は、1位「車両価格」、2位「燃料代、あるいは電気代が安くすむ」、3位「安全性」でした。一方、「地球環境への配慮」は、14項目中12位の15.0%の回答割合で下位となりました。
ここでサステナブル行動セグベント別にみると行動レベルが【とても高い】層では40.0%が「地球環境への配慮」を重視すると回答し、14項目中の6位に順位が上がります。一方、【高い】層では11位、【どちらでもない】【低い】層では最下位の14位になります。

この結果を前回調査と比較してみると、重視ポイントの上位3項目は前回も同じでしたが、前回より「車両価格」が8pt、「燃料代、あるいは電気代が安くすむ」が3pt上昇したのに対して、「安全性」は5pt低下していました。そして「地球環境への配慮」は、前回より11pt低下し、順位も10位から12位に低下していました。特に【どちらでもない】層では、前回18.3%から今回8.0%へ大きく低下していました。

以上の結果から、環境意識が高いと思われるEV購入意向者に絞ってみても、「地球環境への配慮」への重視度が低下し、「車両価格」や「燃費」などの経済性への重視度が上昇していることが分かります。

では、実際にEVを購入するにあたって障壁と考えていることは何でしょうか(図表7)。

図表7

サステナブル行動セグメント別のEV購入検討時の問題点(EV購入意向車ベース)

回答者に呈示した10個の選択肢では、いずれのセグメントでもトップは「車両本体価格が高い」でした。特にサステナブル行動レベルが【低い】層では、約7割が「車両本体価格が高い」ことを問題としています。2位には「充電スタンドが少ない」が続きます。

サステナブル行動レベルが【とても高い】層は、「電気の発電段階まで含めるとCO2の排出がゼロとは言えない」と「車両の製造段階まで含めるとCO2の排出がゼロとは言えない」が他層と比べて10pt程度高くなっています。しかし、順位としては、他層と変わらず9位と10位の下位項目ですので、障壁としての改善優先度は低いものと考えられます。

これらの結果から、EV購入意向者の重視点と障壁においては「地球環境への配慮」というニーズは低下し、「車両価格」や「燃費」、「充電」といった実用的なニーズが高まっていることが分かります。これは、EV購入意向者のすそ野が広がることによって、コストや利便性へのニーズが高まっていると解釈できるかと思います。

実利的メッセージが、生活者の態度変容に効果

最後に、現在の生活者は、EVに関するどのような訴求メッセージに魅力を感じるのかを見てみましょう。

調査では回答者に2回、車種の魅力度の評価をしてもらいました。1回目は10車種のスペックを順次呈示し、それぞれ魅力に感じるかを評価してもらいました。2回目はスペックに加えて、ブランドメッセージを呈示して、改めて魅力に感じるかを評価してもらいました。ブランドメッセージは各車種の公式ホームページやTVコマーシャルで使われている文言を抜粋して回答者に呈示しました。

1回目のスペックのみを呈示しての評価では、「ホンダ N-BOX」が魅力度36.2%で最も高くなりました。「トヨタ プリウスPHV」が32.5%で2位、「日産 サクラ」が30.5%で3位に続きます。
次に、ブランドメッセージを併せて提示した2回目の評価では、「三菱 アウトランダー」の魅力度が18.1%から22.4%へ増加し、差分4.3pt増で最も大きく伸びました。「日産 リーフ」、「トヨタ プリウスPHV」、「ダイハツ ミライース」が4pt台の僅差で続きます(図表8)。

図表8

ブランドメッセージ呈示前後の魅力度の差違

どのようなメッセージが魅力度アップに貢献したのでしょうか。魅力度が4pt以上増加した4車種のうち3車種「アウトランダー」、「リーフ」、「プリウスPHV」のメッセージの共通点を検討してみます。「アウトランダー」の呈示メッセージでは、『蓄電された電気はクルマ以外にも使えます』という言葉が入っています。「リーフ」では、『自宅では家庭用の蓄電池として節電や、災害時のバックアップ電源として』という言葉が、「プリウスPHV」では『いざという時、電源に!』という言葉が入っています。ここから、3車種に共通しているのは「蓄電池としても使える」という訴求であったと考えられます。

一方、4.0pt以上増加した残り1車種の「ミライース」の呈示メッセージでは、『小さくて軽くて、あなたにも地球にもうれしい』という言葉が入ります。また、2.3pt増加した「ATTO3」では、『電気というクリーンなエネルギーを、だれもが安心して使えるように』という言葉が入ります。この2車種のメッセージの共通点は「地球環境によい」という訴求でした。

この結果から「地球環境によい」というメッセージよりも、「蓄電池としても使える」というメッセージが、現在の生活者にとって魅力的なメッセージであり、態度変容に効果があることがわかります。

今回の調査からは、2022年10月段階において、生活者はその前年と比べてEVに対して経済性や実用的メリットを重視し、「地球環境への配慮」への重視度が低下していることがわかりました。この変化は、EV購入意向者が先進層から、一般層へとシフトが進み、より実用的な観点で検討されていることを示していると考えられます。この生活者意識の変化が一時的なものなのか、今後も継続していくものなのか、引き続き動向を見ていくことが必要であると考えます。

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