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2023年 日本人のSDGs意識「優先順位」に見られた新たな動きとは?

インテージが毎年実施しているSDGsに関する自主調査。17のゴールの優先順位を時系列で見てみると、その年の人々の関心事が透けて見えてきます。2023年には、これまでは優先順位が低かった「働きがいも 経済成長も」が上位に登場するという新たな動きが見られました。その背景には何があるのでしょうか。2023年1月に実施した、生活者2,513人を対象にした自主調査から、最新動向をお届けします。

2023年、SDGs認知・理解は微増にとどまる

インテージでは、2020年から継続的にSDGsに関する自主調査を実施し、認知率や生活者が「優先的に取り組むべき」と考えるゴールについて、時系列で分析しています。
SDGsの認知率*は2022年まで毎年大幅上昇していたものの、2023年には83.7%と微増でした(図表1)。「内容を知っている」「内容をある程度知っている」人も2022年と同水準の53.8%に留まり、「SDGsの認知」としては、言葉の認知・内容の認知ともに、これ以上は大きく上昇しない水準に達したと言えそうです。
*認知率:SDGsについて「内容を知っている」「内容をある程度知っている」「言葉は聞いたことがあるが、内容は知らない」計

図表1

SDGs認知率(2020年‐2023年)

優先的に取り組むべきゴールは世相を反映

次に、「SDGsで優先的に取り組むべきゴール」がこの3年間でどのように変化したのかを見てみます。図表2は、優先的に取り組むべきだと思う順に選択された3つのゴールを足し上げた結果です。

図表2

SDGsで優先的に取り組むべきだと思う順に上位3つ 計(2021年‐2023年)

2021年から継続して、「すべての人に健康と福祉を」「平和と公正をすべての人に」「気候変動に具体的な対策を」「貧困をなくそう」「人や国の不平等をなくそう」が上位5位に入っていて、上位となるゴールの顔ぶれ自体には変化は見られません。
ただし、順位の入れ替わりには、世相の影響が見られます。2022年首位だった「貧困をなくそう」は、2023年には4位に下がっています。長引くコロナ禍で経済活動の縮小に直面していた昨年に対して、2023年には感染対策と経済活動の両立が進み、「貧困問題」が相対的に意識されにくい状況となったのかもしれません。

また、2023年には「平和と公正をすべての人に」が、「すべての人に健康と福祉を」に続いて2位となりました。「平和と公正をすべての人に」はコロナ禍真っただ中だった2021年2月には1位でした。このときには、「現在世界が直面しているこのコロナ問題に対しては、自国の利益だけ考えて利己的な行動を取っていては解決できず、公正性が求められること」を反映しているのではないかと考察していました。一方、2023年に再度順位を上げたのは、「平和」を求める思いの表れと考えられます。昨年2月に始まったウクライナへの軍事侵攻は未だ続いていて、現地の被害状況や避難民の様子、経済やエネルギー面も含めたさまざまな戦争の影響が連日報道されています。戦争が終結し、平和が取り戻されることへの願いが反映された結果と言えるのではないでしょうか。

もう1点、2023年に注目したいのは「働きがいも 経済成長も」の伸びです。2021年・2022年は上位10位圏外だったのが、2023年には7位となりました。その背景には何があるのでしょうか。

「経済成長」なしでは生活が楽にならない?

生活者が関心を持つ社会課題・テーマと関連付けて見てみると、「働きがいも 経済成長も」への関心が高まった背景には、昨今の物価上昇・生活費高騰の影響があることが見てとれます。

図表3は、30の社会課題・テーマの中から「関心のあるもの(いくつでも)」「最も関心のあるもの(1つ)」を選んでもらった結果となります。「関心のあるもの」「最も関心のあるもの」ともに1位は「物価上昇、生活費高騰」でした。「最も関心のあるもの」としては2位以下に8ポイント以上差をつけています。物価高が生活を直撃する中、日本では20年以上にわたって賃金が伸び悩んでいる状況です。一部企業では賃上げの動きが見られるものの、経済がよくならないと生活も楽にならないという思いが、「働きがいも 経済成長も」への関心の高まりにつながっているのではないでしょうか。

図表3

関心のある課題・テーマ

ライフステージに直結する課題に関心

次に、生活者の関心のある社会課題・テーマを年代別に見てみます。全体的には、ライフステージに直結する社会課題・テーマに関心を持つ傾向が顕著に見られます(図表4)。

図表4

関心のある課題・テーマ

現役世代真っただ中の20-40代は「働き方、ワークライフバランス」、これから家族を持とうというタイミングだったり幼い子どもがいる20-30代は「子育て、少子化」、自身の親の介護が始まったり現役を引退する50-60代では「超高齢化社会、介護、世代間格差」が上位です。

また、テックネイティブと言われるZ世代の中でも若年の15-19歳は「デジタル化」が上位に。他にも、「教育格差」「ジェンダーギャップ、ジェンダー平等」が他の年代よりも高い傾向が見られました。「教育格差」については、「親ガチャ」という言葉が近年一般的になるなど、教育の機会の不平等感の高まりが背景にありそうです。「ジェンダーギャップ、ジェンダー平等」は、自分らしさを大切にし、多様性を尊重するこの世代の価値観の表れかもしれません<関連記事はこちら>

一方、どの年代でも共通して上位に入っているのは、「食品ロス」。生活者にとって身近な小売店で食品ロス対策が取られるようになったり、食品ロス削減のためのサービスが生まれたりと、生活の中に浸透した様子が見受けられます。もう1つ注目したいのが、「心の健康、孤独」です。20、30、50代で上位となっています。孤独・孤立が社会問題となり、政府も対策を強化しようとしている孤独の問題。今回の調査から、生活者自身の関心も高いことが確認できました。

さいごに

ここ数年で、SDGsは広く認知されるようになりました。次の段階としては、どう行動に結びつけられるかが関心事となっていきそうです。インテージで実施したさまざまなサステナビリティに関する自主調査の結果から、「行動」に進む上では、時間やお金、心のゆとりや、自分へのメリットが感じられることが重要であることが示唆されています。サステナブル行動の推進においても、地球・環境や社会への良い影響だけでなく、生活者自身にどう良いのかも含めて考えていく必要がありそうです。関心のある社会課題・テーマの調査結果からは、自身の生活に直結した課題への関心の高さが見てとれます。今後、サステナブル行動を推進していく上では、「自分(の暮らし)にどうよいか」に「翻訳」してコミュニケーションをしていくことが重要となりそうです。


今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。

【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】 
調査地域:全国
対象者条件:15~69 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2020年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2021年度の構成比にあわせてウェイトバック

<2023年1月調査>
標本サイズ:n=2,513
調査実施時期:2022年1月18日(水)~1月20日(金)

<2022年1月調査>
標本サイズ:n=2,556
調査実施時期:2022年1月25日(火)~1月27日(木)

<2021年2月調査>
標本サイズ:n=2,544
調査実施時期:2021 年2月5 日(金)~2 月8日(月)

<2020年1月調査>
標本サイズ:n=3,206
調査実施時期:2020 年1月20 日(月)~2020 年1 月22日(水)

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