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デジタルメディアとシニア層~メディアログが明かす現在(いま)~

現在の50~60代は、幼少期からテレビが娯楽の中心にあった世代のため、今も他の年代の層よりテレビの利用率が高く、コミュニケーション手段としてもテレビCMがもっとも効果的と見られています。
しかし、高年齢層への情報発信は本当にテレビだけで問題ないのでしょうか?
また、デジタルメディアは若年層へのコミュニケーションツールとしての活用だけで本当によいのでしょうか?

この記事では、メディアの利用ログを取得しているインテージシングルソースパネルi-SSPのデータを、高年齢層を中心に分析し、その層におけるデジタルメディアの利用実態を探ってみました。

スマートフォンの利用浸透が進む高年齢層

高年齢層がどのようなメディア、コンテンツに触れているのかを見る前に、まずはスマートフォンの利用率を確認していきましょう。

図表1は、インテージで年に1度アンケート調査をしている「デバイス利用率調査」におけるスマートフォン利用の結果を、2017年から時系列トレンドで整理したものです。月1回以上の利用を利用者と定義して集計しています。
利用率は全年代で上昇しており、若年層は非常に高い値で高止まりしています。しかし、注目すべきなのがグラフ下部で急激な上昇をしている高年齢層です。特に60代は2017年と比較すると+31ポイントも上昇していました。新型コロナウイルス流行に伴うデジタルコミュニケーションの普及もあり、スマートフォンがより身近な存在になっている様子が伺えます。

図表1

スマートフォン 年別利用率推移(%)

では続いて、デバイス利用の「奥行」を示す利用時間を確認しましょう。図表2は、i-SSPで取得している操作ログを元に、スマートフォンの利用時間がどのような推移になっているのかをまとめたものです。

図表2

スマートフォン 1日当たり1人あたり平均利用時間(分)

利用率と同様に、全ての年代で共通して、利用時間もゆるやかに増加し2019年を境に大きく増加しています。特に10代の利用時間は長く、2023年では1日の約5.7時間はスマートフォンを使っているという結果になりました。
高年齢層も他の年代と比べると利用時間は少ないように見えますが、2023年では1日あたり約190分、およそ3時間程度スマートフォンを利用している形になっています。これは2017年と比較すると約1時間増えており、利用率の急激な上昇も考えると、利用時間も今後ますます増えていくことが考えられます。

高年齢層が使っているアプリ、観ている動画

続いて、高年齢層がスマートフォンで何をしているのかを見てみます。
図表3は、スマートフォンでどのようなアプリを使っているのかを集計したものです。

図表3

スマートフォンアプリ利用時間ランキング(分)

トップには検索アプリのGoogle Chrome、次点でコミュニケーションツールのLINE、3位には動画サービスYouTubeが入っています。
実は、他年代で同様に利用時間のランキングを出すと上位のコンテンツは上記とほぼ同じとなり、検索アプリ・動画サービス・コミュニケーションツール・SNSといったカテゴリーが上位に入ってきます。年齢が異なったとしてもスマートフォンで使われているアプリには大きな差がないことが分かりました。

では、視聴時間3位の動画アプリ「YouTube」で、高年齢層はどのようなチャンネルを視聴しているのでしょうか?図表4は、i-SSPで確認できるiOSのモニターの視聴YouTubeチャンネルの中で、視聴が多かったチャンネルを年代別に集計したものです。

図表4

iOS ユーザー 接触YouTubeチャンネル

各年代に共通してニュース系のチャンネルがランクインしています。年代別の特徴を見ていくと、10-20代は映画やバラエティといったエンタメ系のチャンネルが比較的多く、30-40代にも同様の傾向が見られます。 50-60代の高年齢層はランキングのほぼすべてがニュース系チャンネルとなっており、視聴している動画コンテンツでは差がみられることが分かりました。

テレビの接触率でも、高年齢層は情報ワイドショーやニュース番組に多く接触していますが(図表5)、スマートフォンを用いてYouTubeでもニュース系のコンテンツを視聴していることから、高年齢層のメディア利用の大きな目的は「ニュース」を視聴することにあるのかもしれません。その点では、速報性の高いスマートフォンデバイスやデジタルメディアと、高年齢層のニーズは合致しているといえます。

図表5

高年齢層TV接触率ジャンルランキング

ネットに「ためになる情報」を求めている高年齢層

今度は意識の面から、高年齢層のデジタル利用を見てみましょう。
i-SSPの調査協力モニターに対して1年に1回実施している「メディア利用に関する定点アンケート調査」によると、高年齢層のYouTubeの利用理由として特徴的に高かったのが、「知りたい情報を探すため」でした(図表6)。
ログデータに表れていた、ニュースコンテンツの視聴やGoogleなどの検索アプリの長時間利用といった実態と、ニーズが一致していました。一方で、10-40代では、「娯楽として楽しむため」や「暇つぶし」といった利用理由が高く、年代による利用理由の違いが見られます。

図表6

YouTube利用理由(ベース:普段動画サービスを利用している人)

また、YouTubeに対する態度や行動についての質問 では、高年齢層は「ためになる」や「ここでしか得られない情報がある」といった回答が目立っていました。10-40代では、「楽しい気持ちになる」や「身近に感じる」といった回答が多く、接触コンテンツによる影響の違いが見られます(図表7)。

図表7

YouTubeに対する態度・行動(ベース:YouTube1週間以内利用者)

ログデータの傾向とも一致するように、高年齢層のYouTubeの利用に関しては、若年が重視している娯楽的な面白味や癒しといった目的だけでなく 、より生活に役に立つようなためになる情報や、自身が知りたい情報を探し求めていることが見えてきました。

しかし、「信頼できる」という項目では、若年ほど回答が多く、高年齢になるにつれ値が低くなっています。
逆に指摘をするならば、高年齢層の覇権デジタルメディアといってもいいYouTubeにおいて、この「信頼性」という部分の印象を好転できれば、高年齢層はさらにYouTubeを利用してくれる、とも言い換え出来そうです。
高年齢層の視聴しているYouTubeチャンネルにおいてもANNやNHKといった知名度がある企業の動画に多くリーチをしていることから、出自の担保・情報の安全性に注目していることが伺えます。
その意味でも高年齢層の「YouTube×ニュースコンテンツ」は広告の出稿先としての価値や可能性を感じます。

デジタルメディアに高年齢層が求めるものは?

メディアの利用ログから高年齢層がどのようにスマートフォン、デジタルメディアを使っているのかを確認したところ、ログデータからも意識のデータからも共通して、生活に必要となる「ためになる情報」さらに言うと、「暮らしに役立つ情報」を求めていることが分かりました。 その際、信頼性という部分に重きを置いている高年齢層において、発信される情報とコンテキスト(文脈)のあった商品・サービスの広告訴求はより一層効果的と考えられます。

元々、高年齢層のメディア利用は、ラジオや新聞といった報道要素が濃い媒体と馴染みがあるためか、デジタルメディアにおいてもニュースコンテンツや即時性といった点で親和性が高いことが、ログデータからも伺えました。
直近でマイナンバーカード申請やワクチン接種予約などで、必要に迫られてデジタルシフトをした高年齢層が、YouTubeや検索ブラウザを触ってその利便性とニーズがハマったことが、利用率・利用時間の上昇に影響を与えているのかもしれません。

今後も急速な拡大が見込まれる高年齢層のデジタルメディア利用。今回、i-SSPの利用ログを分析することで、ためになる情報・ニュースといった高年齢層のニーズや、デジタルメディアに感じているネック(信頼性への不安)も見えてきました。このようなニーズをうまく捉え、ネックを解消できるコンテンツを高年齢層にターゲティングすることで、拡大する市場のスイートスポットを獲得することができるかもしれません。


i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。

著者プロフィール

事業開発本部CXマーケティングプラットフォームユニット 次世代消費者パネル事業開発部 脇田 光(わきた ひかる)プロフィール画像
事業開発本部CXマーケティングプラットフォームユニット 次世代消費者パネル事業開発部 脇田 光(わきた ひかる)
2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、2022年2月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」のテレビ視聴調査リニューアルプロジェクトに参画しながら、社内外への情報発信・運用効率化など、パネルデータの利活用を促す業務を担当。

2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、2022年2月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」のテレビ視聴調査リニューアルプロジェクトに参画しながら、社内外への情報発信・運用効率化など、パネルデータの利活用を促す業務を担当。

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