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生活者インデックスデータ

東日本大震災直後の生活者を振り返る

東日本大震災から10年。
当時起こった未曾有の災害は、被災地に限らず、日本中の人々に大きな影響を与えました。
また、「震災以降」といった言葉でも表されるように、東日本、特に東北地方や関東地方に住まう人々の価値観や行動基準を変える節目となったと言えます。

この東日本を襲った未曾有の災害。
そして日本全国に被害をもたらした災害を風化させないために、当時インテージが発行していた「震災影響分析レポート」にて振り返りたいと思います。

※この記事は、発災1ヶ月後のレポートの中から、震災直後の生活者の行動・意識に関わる部分を再掲しています。

震災直後の買い物行動を振り返る

3月11日(金)の震災当日は広い範囲で交通機関が麻痺し、首都圏で515万人もの帰宅困難者が発生しました。そして翌3月12日(土)に起こった原子力事故を起因とした電力供給力の低下に伴い、輪番停電の可能性が報道されました。
経験したことのない災害と影響の大きさに不安が膨らんだ結果、生活者の買いだめ行動がおき、多くの店舗で食品などが品薄状態となりました。

図表1は4月4日~7日に行った意識調査の結果です。食品や日用雑貨品のなんらかの商品を「震災前と比べて多くの量を購入した」人がどのくらいいるかを聞いたところ、被災地に近く、停電など生活への影響が続いていた東北や関東・京浜では約6~7割の人が買い物量を増やしたと答えました。

図表1

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図表2は買い物量を増やした理由です。

図表2

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エリアによって異なる傾向がみられます。関東・京浜では「停電に備えるため」が最も高く、次いで「更なる災害に対する備え」となっており、他エリアと比べて「備蓄の入れ替え」「新たな災害に対する備蓄」が低くなっています。『いつか起こりうる災害に対する備え』というより、『現状の延長線上にある災害や不便に対する不安解消』のために購入量を増やしていた人が多かったようです。

一方、生活への直接的な影響は小さかった周辺エリアや西日本エリアでは、「離れている家族や知人への送付のため」が比較的高くなっていました。また、「買占め、買いだめ報道に対する反応」で購入量を増やした人も関東・京浜と同程度見られました。「離れている家族や知人への送付」の中には、東北や関東・京浜を中心に買いだめによる品薄が続いていたことを受けて行動を起こした人も少なからずいたと考えられます。当時、官房長官が「買いだめに法的、強制的な対応を検討する」と言及するなど、社会問題化していた買いだめ行動。エリアを問わず、広く生活者の行動に影響を及ぼしていたと言えそうです。

震災直後の消費財市場の動きを振り返る

災害時の商品の需要は徐々に変わっていきます。どのタイミングで、どのようなものが売れたのでしょうか。消費財の258品目について、インテージの小売店パネルSRIの売上推移のデータを用いてグルーピングを行いました。
影響の大きかった関東・京浜エリアにおける1週間ごとのマーケットサイズの前年比の変化を基にグルーピングしています。
※東北は震災の影響で市場データの動きが不安定だったため、対象外としています/グルーピング手法の詳細は記事の最後に記載しています

結果は図表3の通りです。A~Gの7つのパターンに分類されました。
4/4週の段階では一時的な需要増大による伸びは落ち着きつつあり、前年比プラスが続いていたのは、乾電池、ろうそくといった停電対策品が属するパターンA、マスク、ぬれティッシュといった衛生対策品の属するパターンC、ミネラルウォーター、浄水器が属するパターンEとなっています。

図表3

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それぞれのパターンの特徴と、どのような品目が該当するかをまとめたのが図表4です。
4月に入っても伸び続けていたパターンA,C,Eは、いずれも計画停電や原発報道といった当時の生活環境に伴う需要増となっています。

図表4

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一方、工場の被災等による供給力減退で納豆やヨーグルトの品薄状態がしばらく続くといったこともありました(パターンF)。

需要の増大は一時的なものが多く、大体2~3週間ほどで戻っていますが、店頭で販売されていた商品のラインナップ数を集計したところ、1ヶ月経っても少ない状態が続いていたことが確認されています。店頭が元に戻るのには時間がかかったことがわかります。

震災直後の消費マインドを振り返る

消費財のような必需品の需要は一時的に高まりましたが、当時の消費マインドはどのようになっていたのでしょうか。

図表5は支出意向を聞いた結果です。「かなり支出を減らしたい」「支出を減らしたい」といった明確な意向がある人は全体では1割程度でしたが、東北や関東・京浜地域で比較的高めでした。また、「やや支出を減らしたい」という層は各エリアで2~3割とかなり多くみられました。

図表5

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支出を減らしたい理由を自由回答で聞いたところ、「かなり減らしたい」「減らしたい」層では『震災の影響で収入が減り、支出を減らさざるを得ない』という、経済的な理由が主でした。当時既に経済不安が顕在化し、日々の生活でも切迫感を感じていた人がいたことがわかります。
また、当時2~3割を占めていた「やや支出を減らしたい」層では、収入減など経済的な理由が多く見られた一方で、経済的には切迫していないものの『被災者への配慮による自粛』『世の中の雰囲気』」『震災を契機に生活の無駄に気付いた』などが理由で支出を減らしたいと考える人も多くみられました。

さらに、嗜好品やサービスに対する消費意向を聞いた結果が図表6です。

図表6

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「国内旅行」「海外旅行」や「芸能・スポーツ鑑賞」「その他レジャー」「外食」では、利用意向が低下した層が多くみられました。また、「服飾・衣料品」についても、「やや購入・支出意向が低くなった」が10%と、弱い意向低下は見られました。
一方で、「子供の校外学習」「医療サービス」では支出意向の低下はあまり見られず、 『利用控えの対象にならない費目』とみなされていることが伺えます。

「国内旅行」「海外旅行」「復職・衣料品」「外食」の利用意向が下がった理由が図表7です。

図表7

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意向低下の激しい「国内旅行」「海外旅行」では、その理由として「被災地に配慮し贅沢するときではないから」が最も高く、次いで「贅沢を控えるなどの生活を見直したいため」があがりました。「服飾・衣料品」においても、順位は逆でしたが同様の理由が主となっていました。

以上が震災直後のレポートとなります。
震災直後の備蓄需要の高まり、その結果起きた品薄状態における代替品の需要増大、ついで買いといった動きには生活者側の混乱が表れています。コロナ禍に入ったとされる昨年の春先に似ているようにも感じられますし、消費マインドの冷え込みやその対象も、共通する点が多く感じられますね。有事の混乱を抑えるためにはどのような対策が必要なのか、自粛ムードや生活見直しの空気の中で消費意欲を高めるにはどのような提案が必要なのか、有事に求められることを改めて考えるきっかけにしたいものです。

最後に、レポート発行の責任者を務めていた弊社村上のコメントです。

“震災による影響の知見が、コロナ禍や今後も想定される災害への備えとして生かされることを心から願っています。震災によって顕在化した変化を捉え、経済、社会の両面で共有し、生かしていくことが重要だと感じています。この10年でスマホ、特にSNSは、土台を「国、企業から生活者へ」から「生活者同士」に変え、行動だけでなく消費の目的や価値観も様変わりしていると思います。また、原発の想定外のメルトダウンの経験から今では電力は自由化され生活者自身が発電方法を選択出来るようになりました。持続可能な社会へ生活者との共感を育み、一緒にエシカルな行動を促すインパクトのある経済活動が、コロナ禍、震災10年を機に求められていると感じます。インテージも微力ながら引き続き、生活とデータに寄り添い歩んでいきます。“

震災時の防災行動、情報行動について九州・熊本地震の際に調査した結果は以下よりお読みいただけます。
九州・熊本地震を経て気づいた「必要な防災情報」とは?
九州・熊本地震時に見えた、情報とのかかわり方


この記事の分析は、インテージの小売店パネルデータSRI®と、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。

SRI®(全国小売店パネル調査)
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません

インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:震災の被害を受けられた地域を除く全国
対象者条件:18~69 歳の男女
標本抽出方法:「インテージネットモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:母集団構成比にあわせてウェイトバック集計
標本サイズ:n=6,416
調査実施時期: 2011年4月4日~7日

※図表3の売上変化によるカテゴリー分類方法について
分類手法:クラスター分析(階層型・ウォード法)
使用したデータ:震災後の関東・京浜エリアにおけるマーケットサイズ(金額/飲料・アルコールは容量)の前年比の推移
ただし、震災の影響であることを明確にするために、消費需要の変化による影響を震災前13週間(2010/12/6~2011/3/6)の前年比で把握し、この数値を元に震災後の前年比水準を再計算して使用

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