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真夏だけじゃない?日焼け止め市場拡大の背景

年々暑さが厳しくなる中、日焼け止め市場は順調に拡大を続けています。梅雨が短く、夏が長く感じられるような気象の変化に伴い、日焼け止めの買い方はどのように変化しているのでしょうか。本稿では、好調な日焼け止めの市場動向と、その背景にある生活者の購入状況の変化について掘り下げます。

1. 今年も“長くて暑い夏”に

気象庁の9月の報道によると、今年2025年の夏(6~8月)は、日本の夏平均気温偏差が昨年、一昨年の記録を大幅に上回り、3年連続で最も高い記録となりました。また、多くの地方で過去最も早い梅雨明けとなり、7月は記録的な少雨となったことも特徴的だったようです。
図表1は、東京・大阪・福岡の3地点平均における月別平均気温の推移を10年前と比較しています。

図表1

月別平均気温の推移(東京・大阪・福岡の3地点平均)

実際の気温データを見てみると、夏(6~8月)の気温が10年前比で2~3℃上回っていることがわかります。さらに9月まで期間を延ばして見てみると、同 4.5℃も高くなっており、9月も気温が下がりにくい傾向へと変化していることがわかります。各地で年々梅雨が短くなり、夏の始まりが早まっているだけでなく、夏の終わりも遅くなっている様子が読み取れます。

2. 夏商材の中でも際立つ、日焼け止め市場の好調

このような気象の変化の中で、日焼け止め市場は順調に拡大を続けています。
図表2は、SRI+®(全国小売店パネル調査)データにおける、年間販売金額規模の推移をトレンドで示しています。

図表2

夏商材 販売金額市場規模トレンド比較

22年10月~23年9月に710億円だった日焼け止めの金額規模は、24年10月~25年9月に836億円まで拡大し、2年前比で118%もの伸長が見られます。制汗剤や冷やし中華といった主な夏商材は、それぞれ同103%、107%、と成長は見られるものの日焼け止めの成長率には届かず、夏商材の中でも日焼け止めは特に大きく成長しているカテゴリーであることがわかります。
日焼け止めは男性にも購買されるアイテムですが、今回はメインの利用者として女性を想定し、この好調の要因を、SLI ®(全国女性消費者パネル調査)における購入率(女性全体の内どれだけの人が購入しているか)と、購入者あたり金額(購入者1人当たりどのくらい購入しているか)に分解して見ていきます(図表3)。

図表3

日焼け止め 購入率・購入者あたり金額トレンド

こちらのグラフでは、折れ線で購入率、棒グラフで購入者あたり金額を示しています。購入率を見ると、22年10月~23年9月の50.3%から103%伸長し、51.8%となっています。また、購入者当たりの金額も同109%の約3,050円となっており、購入率・購入者あたり金額の両方が伸長しています。日焼け止めの規模が拡大しているのは、購入者自体が増えていることと、購入者1人当たりの金額が増加していることの両方の影響がありそうです。

3. 好調要因①:もはや夏だけではない!通年化する日焼け止め需要

では、このような日焼け止めカテゴリーの伸長は何に起因しているのでしょうか。
ここでは好調要因の1つとして、気温上昇による日焼け止め需要の通年化を考えます(図表4)。

図表4

月別売上の平均比推移

このグラフでは、各月の売上金額を年間の平均金額で割った“平均比”を示しています。これにより、各月の売上が当該期間の平均と比べてどれほど高いか・低いかが分かります。このグラフからは、①最盛期(4~7月)と②それ以外の時期(8月~3月)における売上の様子の変化を読み取ることができます。

① 10年前の水準値を見ると、4月あたりから平均値を超えるようになり、5月にピークを迎え、梅雨時期の6月に一度落ち着き、7月にまた盛り返すといったように、ピークとなる月がはっきりしていることがわかります。一方25年は4月に平均値を超え、7月までなだらかに右肩上がりで推移します。梅雨が短く気温が下がらない影響で、日焼け止めの需要が4~7月にかけて勢いを落とさずに拡大し続ける様子が伺えます。

② 8月~3月のピークではない時期についても、10年前と比較すると水準値が高くなっており、秋冬の期間でも日焼け止めが購入されるようになっているという変化がありそうです。昨今では、「曇りでも紫外線対策は必要」、「室内でも日焼け止めを」といったUV対策がSNSを中心に拡散されていることを鑑みると、単に気温が上昇したことだけが要因ではなく、各個人のUVに対する意識が高まっていることも、秋冬時期の購入量増加に繋がっている可能性があります。

このような変化に伴い、25年は10年前比で全体的にグラフの山がなだらかになっており、徐々に需要が平準化しつつある様子が読み取れます。日焼け止めはもはや夏にのみ購入される商品というわけではなく、通年で購入される商品へと変化しているのかもしれません。

実際に、日焼け止め年間購入個数別の人数推移を見てみると(図表5)、年間で複数個購入者が伸長傾向にある中、5個以上購入者は106%と、最も伸び率が高くなっていることがわかります。夏の猛暑により1度の使用量が増えていることも考えられますが、シーズン中の2~3か月の間で5個以上消費されるというよりは、年間を通じて購入されるようになったことによる影響が大きいと考えられます。
やはり昨今、XやInstagram、YouTube、TikTokといったSNSを通じて多くの情報を得られるようになったことで、UV対策への意識が高まっており、「日焼け止めは年中塗るもの」ということが美容の観点からは新常識となりつつあるのかもしれません。通年での使用にあたって、夏の強い紫外線から肌を守ることだけでなく、日常で使いやすい形状・使用感のものが求められるようになっていることも考えられます。こうしたニーズの変化に合わせて、スティックやパウダーといった外出先での塗り直しで使用することを想定したアイテムや、日中用スキンケアの一環として普段の工程にプラスできるようなスキンケア効果を備えたアイテムが発売されるなど、日焼け止め自体も進化を続けています。このような意識の高まりやアイテムの進化に伴い、「日焼け止めは通年で使用するアイテム」という認識が、今後ますます定着していくのではないかと予想します。

図表5

日焼け止め年間購入個数別 購入者数トレンド

4. 好調要因②:日焼け止め市場の拡大をけん引する「トーンアップ機能」

もう1つの好調要因として考えられるのは、日焼け止めの中でもトーンアップ機能をもつアイテムの拡大です。
※トーンアップとは、メイクやスキンケアなどの効果により、肌のトーンが明るくなる、明るく見える効果や機能のことを指します。
図表6は2022年10月~2025年9月の日焼け止め市場全体における、トーンアップ日焼け止めの金額規模をトレンドで示したものです。

図表6

トーンアップ日焼け止め市場規模トレンド

対2年前比でトーンアップ日焼け止めの金額規模は128%と、日焼け止め市場全体以上に好調に推移していることがわかり、日焼け止め市場全体の規模拡大を後押ししている1つの要因になっていると考えられます。
では、なぜトーンアップ日焼け止めの市場が好調となっているのでしょうか。ここからは生活者のスキンケア・ベースメークを選択する際の意識の変化から好調要因を探索します。

図表7

スキンケア・ベースメーク選択時重視点 回答率(%)

こちらのデータはスキンケア・ベースメークを購入する際に重視している項目として、5段階評価のうち「非常に重視している」「重視している」と回答した人の割合を示した数表です。スキンケア・ベースメーク重視点のうち、日焼け止めの付帯機能として考えられる項目のスコアを比較すると、24年から25年でトーンアップのスコアは+2.3ポイントとなっており、メインの機能である紫外線対策/UV対策と比較しても重視度の伸び率が高まっていることが分かります。

このことから、スキンケア・ベースメークの意識トレンドに付随して、日焼け止めにもトーンアップが求められる傾向が高まっている可能性も考えられます。このような意識の高まりにより、日焼け止めには本来の役割にとどまらず、トーンアップを目的とした化粧下地のようなアイテムの代替品として使用されているのかもしれません。さらに、2章において日焼け止めの年間購入個数が増えていることを確認しましたが、こちらは単に同じものを複数回購入しているのではなく、「化粧下地としてトーンアップ日焼け止め」「体用には通常の日焼け止め」といった使い分けにより購入個数が増えていることも背景にある可能性が推察できます。

5. さいごに

近年、日焼け止め市場が伸びている主な要因は気温の上昇や猛暑の長期化により、夏に限定せず年間を通して日焼け止めが使用されるようになったことにあると考えられます。今後も日焼け止めの使用時期が通年化していく中で、消費者は単にUV対策の機能だけではなく、スキンケアやベースメイクの機能を兼ね備えたアイテムを求めるようになることも予測されます。特に秋冬などの使用を想定すると、単に強い紫外線をカットする機能を持つだけでは消費者のニーズを十分に満たせない場合もあり、季節や目的に応じた付加価値が求められるようになるかもしれません。実際に、日焼け止め市場の中でもトーンアップ日焼け止めは好調に推移しており、市場全体の拡大を支える要因の1つともなっています。
今後も気温上昇や猛暑の長期化を背景に、年間を通じた日焼け止めの使用傾向はさらに強まると考えられ、トーンアップなどのUV対策以外の機能を充実させた製品には年間を通して大きな商機がありそうです。


今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
【SLI®(全国女性消費者パネル調査)】
全国の15~79歳の女性約4万人の消費者から継続的に化粧品やヘアケア用品、下着などといった美と健康に関連した買い物情報を収集し、蓄積したデータベースです。「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※バーコードがない商品に関して仮コードをセットすることで、ネットや通信販売系の商品も集計可能です。 ※SLIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません

【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo.1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。 ※ SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません ※1 2025年6月現在

著者プロフィール

五十嵐 栞奈
新卒にてインテージ入社後、国内のパネルリサーチを担当。

主に化粧品業界におけるマーケティング調査を多数担当し、売上/購買データ分析の経験を積んでいる。

新卒にてインテージ入社後、国内のパネルリサーチを担当。

主に化粧品業界におけるマーケティング調査を多数担当し、売上/購買データ分析の経験を積んでいる。

著者プロフィール

川本 野々華
新卒にてインテージ入社後、国内を中心にカスタムリサーチ(定量調査/定性調査)を担当

マスブランド~高価格帯ブランドまで多様なブランド様を支援。化粧品業界担当としてリサーチャー経験を積んでいる。

新卒にてインテージ入社後、国内を中心にカスタムリサーチ(定量調査/定性調査)を担当

マスブランド~高価格帯ブランドまで多様なブランド様を支援。化粧品業界担当としてリサーチャー経験を積んでいる。

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